妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】   作:ノイラーテム

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第三部
裾野か、頂きか


 新生したてであまり意味のない新年が始まる。

しかし神様のお陰を持って、十分に充実した一年が始まると言っても良い。

 

周囲を取り巻く状況は丸で変わって居ないのに、たかが助言一つで変わるのだから我が神が軍師の神様だというのも十分に頷けようものだ。

 

『手を広げるのももちろん重要なのじゃが、積み上げるのもまた重要であろう』

「中途半端と言う事ですか?」

 前々から感じていた事だが、指摘されるとやるせない。

あれもこれもとしたくなるし、前世にまるで足りないのだから焦りもする。それぞれが時間の掛かる改良作業でもあり、少しでも進めたかったのもある。

 

そんな事は判っていたし、他の誰かが指摘する可能性もあった。

だがあえて神様が助言してくれたのは、神の言葉ならな僕も素直に聞くし、角が立たないという事なのだろう。

 

『例えばそこの茶碗よな。木製の椀は見ずぼらしいが、陶器の方もまるで話にならぬ。しかしそなたならば解決策程度はあろ?』

「エルフの職人に作ってもらって、ドワーフに染色してもらう事ですね」

 当然ながら森に生きるエルフは木製品に囲まれている。

その加工技術は優れているが、残念なことに用途が十分ならばワザワザ染色はしない。暇人というか趣味人が見事な掘り込みを行うくらいで、特に売り物として成立してないから多い訳ではなかった。染色に至っては植物性の色合いが僅かにあるくらいだろう。

 

それに対してドワーフは顔料を始めとした染色に長けている。

主に石であるが彫刻技術もあるのでそちらは優れたものだ。とはいえ樹木は手に入っても道具の一部で、木工品はそれほど多くないと言えるだろう。

 

「そして図案は僕が用意します。彼らの文化は彼らの文明あってこそ。こちらの文化に馴染んでいるわけではありませんし……仲立ちをすることで、彼らの間を取り持てます」

『その通りじゃ。彼奴が交易をしておらん以上は、ソレがそなたの村の利益にもなろう。彼奴等が買わずとも、町に売ることもできような』

 実際に使う以上は、僕らが判断するのは当然だ。

商売を行うことで、二次加工・三次加工を行える。彼らに人間社会の用途に合わせた様式は即座に作れないし、彼らに真似されて困ることもあまりない。他の人間が真似しようとしても、異種族との付き合いがないので難しいだろう。

 

そしてこれらの事で、木工と陶芸に割いていた労力を一本化できる。僕が持つ前世知識にしても、漆塗りやそこから派生する螺鈿の蒔絵などもあるだろう。流石に全ての知識は持っていないが、同じ時間を掛けるならばこちらの方が効果が高いとすら言えた。

 

『他の技術や知識にも言える事じゃが、深みを備えた上で幅を広げるがよかろう。そうじゃのう……そなたの張る結界は何もかもを拡げようとしておるようなものじゃ。広さだけ、強度だけ、形状だけ……と個別に設定できるのであれば今の洞府ももそっと良く成ろう』

「可能なのですか!?」

 ハッキリ言ってそれは意外だった。

というかゲームじゃあるまいし、防御力だけ上げるとか大きさだけ広げるとか無理だと思っていたのだ。

 

まあ言われてみれば納得のいく理由と方法だったのだけれども……。

 

『対象一つの維持が簡単で、結界の維持が難しい事など自明の理。広さと対象の範囲が大幅に違おうぞ? ではどうして自分自身と自分の表面の結界、あるいは掌なり服なりの一部のみを覆う結界が簡単にできるのか? 同じことがどうして他人に出来ぬのか? その理由は判断出来ぬからに決まっておる』

「判断が出来ない……」

『認識できないと言い換えても良い』

 娘々が言った使い道は、故郷に居た時にやったことがあった。

寒い時に自分の体温を保持したり、双葉と一緒に出歩くようになってからは僕の表面に使って風避けになったりしたものだ。

 

二人して雪山で遭難した時などは、体の一部を密接させてその温度変化を保全していた。その部分は確かに暖かったし、分かり易かったからだ。そう言えば……あの後、獣が嫌う臭いを保存するのに入り口に幕を作るような使い方をしたような気がする。

 

「つまり僕が明確な形状や大きさを理解できないだけで、無意識に自分中心とかやってるせいで詳細な使い道が出来ていないだけ?」

『左様じゃ。現に強度と維持を保つために炎に対する温度の保全や、さらに絞って延焼のみの保全をしておろ? そういう使い道ができるのであれば、四角であったり壁の形状であったり作れぬ理由などはない。現にそなたの形や、盾と盾を繋ぐような形状を作っておろうに』

 それは緋雁原を攻略するためにやった使い道であった。

ガンガン火の魔法で攻撃されることが判っていたためにに結界を張ろうとし、それが魔力消費の問題で難しいので、まずは盾そのものを、そして短期間のみだが壁のような使い道をしたのだ。

 

ソレを考えれば形状や大きさなどに絞った使い道は出来るのも当たり前ではないだろうか? 確かに強度だけならば現状でも可能なのだから。

 

「では修業を繰り返せば認識を広げて様々な使い道ができると……それは凄いです! 今まで無理だった消費とか効率とか!」

『待て待て。肝心な修行方法をまだ説明しておらぬわ』

 早合点で修業を始めたがる僕を推し留め、娘々は修行効率を上げる小道具を教えてくれた。

それこそ転生前に最初に使い道を教えてくれた、とある保全能力の応用であった。そう……指南車を保全能力で使うコツの焼き直しなのだ。

 

娘々は僕の脳裏に指南車を思い出させ、自らはそれに乗るような形で指示を出し始める。

 

『覚えておろ? 最初に説明したコレを用いる。そなたがオオトカゲ捜索に使ったやつでも良いぞ? ようは方向や数字を認識できれば良いのじゃ。最も近い結界の際、最も大きな結界の際……そのように無数の針を作ってしまえば数値を用意できる。まずは魔力の消費、次に大きさ、さすれば形状へと移行できよう』

「あ……そうか! 僕自身が確定させる必要はないんだ!?」

 我ながら迂闊と言うか、そんな応用があるとは思いもしなかった。

最も近い相手を割り出すのではなく、相手の位置をコンパスの様な使い道をしたことがある。その位置を特殊な対象ではなく、結界の位置や強度に設定すれば良いだけの事なのだ。

 

術は白と黒、同じ方法で別の使い道があると聞いたことはあるのだが……まさに目から鱗であった。

 

『最初は外で慣れるが良い。人の集中できる時間は限られておるからのう。魔力が尽きるのを基準にするが良い。その上で慣れたら小さな結界針を洞府に組み込めば効率的に運用できようほどに』

「ありがとうございます! これで悩ませていた問題が一気に解決します!」

 今まで洞府のエリアや建物の配置に頭を悩ませていた。

しかしこの技術というか認識方法が完成すれば、不要な位置の結界は無理に作らなくても良くなる。それこそ温度変化を保全する能力などは薄皮一枚でも良いくらいなのだから。

 

実際にどれだけ意味があるかは試してみないと分からない。

だが基本形だけに様々な事態に応用が可能になるだろう。それこそ鍛冶場から送られる空気や水蒸気などは、全体ではなく配管だけを覆えば良いのだから……。

 

「と言う事は……木工品とかは紅梓さんが居ないので、適当なエルフの人に伝言を頼むとして……漆や柿渋みたいなのを探してもらうか。既にあるかもしれないし、それを自分達でも染色しながらドワーフに発注すればいい」

 同じように手を広げ過ぎな分野は一本に絞る。

絞らない方は維持しながら地味な改良で良いし、重点的に高めた技術からフィードバックも可能になるはずだ。

 

他にだが例えば畜産もそうだ。

餌を豊富にやる個体とそうでない個体を区別して育てる様に言った。もしそれを鶏と豚の両方ではなく、片方……食事量の少ない鶏で試し、その結果を豚にフィードバックしてはならに理由はないのだから。

 

「後は新しい指南車の開発かな。時間管理の問題も指摘されたし、砂時計と一緒に剛盾さんに発注しとくか」

 どうせ暫くはすることがないのだ。

焦ることなく一歩ずつ試せば良い。鶏が順調ならば卵が何時でも食べられるし、デザートも作り易くなる。そしたら鶏を出荷できるほどに増やすか、それとも豚の改良にも手を出すかと悩むことができる。

 

そして結界の形状や大きさだけを個別に使用することができるようになれば、様々な事を試せるようになるだろう……。




 と言う訳で第三部開始。
第二部で再現しようとした色々な技術・知識ですが、第三部では絞って精錬します。
というか中途半端に広げ過ぎると、なろう系の良くある話になりますからね。
お城、結界、一部の技術。
その辺を基部にして、あちこちで使って独自性を出したいと思います。

●結界
 ゲーム的に言うと

0:良いエネルギーを吸収する
1:維持に使用、取り込んだ内部結界に分配する
2:大きさを広げる
3:特殊な形状を設定する
4:すべてではなく、一部の現象を保全する
(これらは本来一括りだが、認識が上手くなると個別に設定できる)

と言う感じですね。
こういうのが発展し、知識込みで強化されると
「蚕の好きな葉っぱが育ちやすくなる」→「蚕が食事に困らなくなる」
「蚕だけじゃなくて、特殊なモンスターも可能に?と言う感じで発展可能。
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