妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】   作:ノイラーテム

31 / 118
技術と知識の精練

 特殊能力は想像を超える力を持ち、使い手に足りないモノとは可能であるという確信。

この文面が一体何の物語であったのか、原作ではどのような言い回しが正解だったのは既に覚えてはいない。

 

だが我が神によって可能だと知れた以上は、方法を思いつくことはできる。再び眠られた神が目覚めるまでに覚えておくのが良い使徒という物だろう。と言う訳で領主館の内、近くに結界の無い……練習し易い部屋に行く。

 

「まずは指南車モドキを作成する為に結界を認識できないとね。指標は何がいいかな」

 指南車モドキは設定した指標への方向を保持する為の物だ。

回転軸を作り動作を固定しなければコンパスの様に動く。ソレを複数造り、盤に好きな文字と目盛りを付ければ六分儀のような計測だって出来る。

 

とはいえ今回は結界の端と端、複数跨った向こう側なども認識するならばソレも含めて二つか三つを設定すればおしまいだ。

 

「やっぱり『光景』がいいかな。目に見えるから指させるし。……結界作成。この遮光を保存」

 窓際に移動し、入り込んでいる太陽の光を保全する。

言葉に出して対象を明確にし、意識に刻み付けることで確定させる。そして魔力を支払い術を発動してからカーテンを掛けると……。

 

そこに先ほどと同じ光景が残されていた。

カーテンで隠したにも関わらず同じ光量であり、カーテンの枚数を増やそうが取り囲もうが同じ光景が続く。まあ魔力を使い切れば消えるけど。

 

「次に針を取り出しまして……と、指標針の作成。最も身近な結界の僕の側への方向を保全。指標針の作成二、最も身近な結界の僕より遠い側への方向を保全。指標針の作成三。二番目に近い結界の方向性を保全……」

 と言う感じで遮光を保全した結界が消えない内に指標針を作る。

そのまま移動することで、二本の針が光景のこっち側と向こう側という短いエリアを指し続けるのを確認。三つ目の針は相変わらず同じような方向を指しているので、洞府にある結界でも示しているのだろう。

 

こうすることで、おおよその結界の位置が判るようになった。

後は少量の魔力消費で何度も結界を作っては消し、自分の感覚と針の動きの差を無くすだけだ。結界に色なんか付いていないからこそ判り難いだけで、魔法で作成した物だから感性を研ぎ澄ませれば全く分から無いと言う程ではないのだ。空気中の陽炎や川の中の小魚など見分け方が判れば判り難くても何となく区別できるのと同じである。

 

「次は軽い物が良いんだけど……流石に塩でやったら怒られるよなあ。外に出るか」

 砂状の物を遮断する結界を張る。

対象物が砂なのは、軽くて消耗が少ないからだ。布よりも軽く、一つ一つが反発して直ぐに弾かれるので消耗し続けない事が大きい。

 

そして外に出ると目の細かい砂を選んで握り込む。

 

「対流入遮蔽幕の作成、『く』の字型。……こんなものかなっと」

 作り出した結界に砂を放ると、おおよそのイメージ通りに砂が流れて落ちる。

ここで指南車モドキを見ると……イメージしたよりも、指標針1と2の幅が広かった。余計な幅で作ってしまっているという事だろう。

 

こうやって結界の位置確認と作成を繰り返し、思い通りの形状で作れるようになれば消耗も抑えられるだろう。もちろん冒険とか戦闘ではそれほど役に立たないが、洞府に組み込むことで様々な効果が期待できる。少なくとも書庫の湿気・虫対策などは格段に行い易くなるだろう。

 

「これで形状はOK、派生系で広さも問題なし。強度は元から対象物を絞ってるから、逆算で魔力の込める量を図るべきなのか?」

 そこまで考えて少しだけしまったと思った。

今朝から幾つかの保全やら結界作成を行ったが、どの程度のサイズであるかとか計算して居なかったのだ。

 

要するにどれほど魔力をそれぞれに使用したかが判らず、最低限の魔力をその都度に使ったと思うしかない。

 

「こんな凡ミスをするなんて、この集中力じゃあ今日はもう駄目かな。強度に関しては、対流の遮蔽幕を何回か強くしてみて本格的な計測は明日だな」

 今は砂の流入を弾く程度のつもりだったが、布を弾くレベルで試すとしよう。

流石に矢を止める程の結界はオーバー過ぎるだろう。やはりこれから何日も繰り返すことで、データや経験を蓄積していくべきなのかもしれない。

 

そうする間に集中力を欠いていると自覚し、女神のお勧め通りひとまず修業をいったん切り上げ部屋に戻ることにした。

 

「とりあえずデザインが決まったら木工品の発注と染色を依頼するとして、陶器の研究は据え置き。次は家畜を増やしていく計画かあ」

 正直な話、それほど増やす余裕はない。

中世をイメージした小説で、鶏は卵を産まなくなるまで飼い続けて生まくなったら潰す。そういうサイクルになるのが判るような気がする。初期投資として大量に買うような余裕がなく、卵を日々の食事や販売に回すと、鶏を次々に増やすような余裕もない。

 

要するに当たり前の思考で考えると、鶏を若い内に処分して肉へ変える発想に繋がらないのだ。飼い易い鶏ですらそれなので、豚はともかく牛に関しては猶更だろう。そういう意味で美味しい肉類を食べたいなら生産量を集中させるしかない。

 

「とはいえうちはまだオオトカゲをもらったからな。移動用や耕作用に余裕があるからマシか」

 エルフの領域で邪魔者をしているオオトカゲを飼う事に成功した。

馬ほど早くなく牛ほどに力強くはないが、代用は可能だ。唯一の欠点は食べてもマズイらしいが……まあ荷車や鋤鍬を引かせるだけなら十分である。

 

どうせ森に居ても邪魔なだけなので、お願いすればそれなりの金額……手間賃レベルで送ってくれる。牛は飼わないか肉食用として緩やかに増やす程度で良いだろう。

 

「その辺を踏まえるとやっぱり豚は適度に飼って、鶏に特化かな。まずは卵に余裕のある生活を目指して、いずれは若鶏を食べられる食生活。牛は……年一回ほどお祭りか何かでいいや」

 豚と牛を一定数に固定すれば、余力を鶏に割ける。

厩舎の配分に穀物の作付けの計算もし易くなるし、イザとなれば豚の方はどこの村からでも仕入れる事は可能なので保険は効いた。

 

こう考えてみると確かに、中途半端に色々と研究するよりも特化した方が研究し易いのも確かである。飼料やスペースを鶏に絞ることで、その派生形で卵料理が豊富になり肉も食べられる可能性が出た。仮に砂糖が手に入ればお菓子も充実するだろう。

 

「偏り過ぎると何だけど……まあ三圃式にしたことであっちの具合で調整すればいいか。飼料が採れ易いとも思えないし」

 新しく組み入れた荘園の方は、人手が足りないので一部しか育てていない。

三分の一を畑にして、残りは休耕田と牧草地に変えている。牧草地には文字通り牧草の他に豚が食べる根菜も適当に植えているが、要するに放牧しているだけなのだ。これらのバランスに従うしかないので、いずれ適度な配分になるだろう。

 

農業に関しては後は水路を作り、広く浅くして暖かい水を引く程度である。その水路をコンクリートの底と煉瓦の塀で補強すれば殆ど手を出すところは無かった。

 

「山鳥とか鴨とかの養殖は無理だろうなあ……というか試そうとしたら食われちゃったし」

 そもそも殺すのはともかく、捕まえるのが難しい。

双葉の眠りの魔法で捕まえ得るにしても、かなり接近しないといけないので警戒されたら終わりだった。その上、何とか捕まえた山鳥を考え無しのアホが『非常食で置いといただけだろ?』と食ってしまったのだ。

 

なお他にも食料があるのに非常食に手を出す馬鹿は、新型のクロスボウの試射を兼ねて山へ狩りへ行かせている。小型の予備兵装用から、大型武装レベルまで用意したので暫くは返ってこない筈だと思いたい。

 

「次は武器を絞るとして、どんな方向が良いのかな。面倒なら美術品としての日本刀にすればいいんだけどさ」

 正直な所、難しい話ではある。

剛盾には新しい物を作りたい欲求があるのだが、洗練する大切さも知っているはずだ。しかし『大通連』と言うある種の厄介者には、新しい物を見たい覚えたいという思いが形になったようなところがある。

 

当面は彼が以前に手に入れた武装を、彼の体格やら戦法に合わせて作り直すだけでも良いだろう。しかし一通り終わったらまた新しい玩具を強請るに違いあるまい。

 

「せめて大通連が設置型兵器に興味を示してくれれば、防衛兵器の開発に舵を切れるんだけど」

 試したところ、巻き上げ式のクレイン・クロスボウは大丈夫だった。

しかし台座固定式のアーバレストには興味を示さなかったので、それこそチャリオットに取りつけて戦車でも作らないと駄目だろう。かといって大砲を作るには技術も知識も足りなさ過ぎた。

 

銅張の馬車とアーバレストによる戦車はいずれ作っても良いが……今は過剰戦力で何に使うのかと言われたら困る。馬車の改良とかに手を出した後に派生させるくらいで丁度良いだろう。

 

「ダメだ……何にも思いつかない。こういう時は駄目だな。日本刀の技術をフーィドバックした武装で誤魔化しとこう。付与魔法の使い手でも呼ばないと手詰まりだなあ」

 この世界の魔法のアイテム作成は上級魔法の一種だ。

僕が状態を保全したり結界を張れるように……アイテムに魔法を持たせる職種が存在する。最初は大したことはない術師から初めて、上級職と呼べるまで鍛え上げると専門分野を選ぶらしい。

 

その時に自分の専門分野として付与魔法を選んで研究する術者が、アイテムを製造することになるのだ。

 

「とはいえ招請して雇えるような余裕があるわけでも無し、剛盾さんや大通連みたいに何かの条件をこっちが吞むしかないかな。そんな都合の良い奴いるわけないし学生に声掛けて奨学金でも出すくらいか」

 おそらくは何年か越しの話になるだろう。

適当に名前が売れたところで話を付けて都にある魔法学院の学生をリクルートするか、冒険者の術師として登録する者に声を掛けて送り出す形になるだろう。

 

そういった学生が付与魔法を専門分野に選ぶ可能性は少なく、うちの領地専属になってくれる可能性はもっと低い。だが一から専門家を呼ぶと金が掛かり過ぎるのでそれでもマシな可能性と言えるだろう。

 

そしてそんな分野に金を出すくらいならば、もっと先に色々と投資する場所があり、そもそもそんな余裕はないという事に落ち着くのだが……。




 と言う訳で第三部はやって来た事を絞る事です。
結界技術はなんとなく「此処に結界!」で造ってたけれど、認識を新たにすることで
広さ・強度・形状を弄れるようになりました。
内政ゲームで言うと、基礎レベルが上がって各単位に振り分け可能になった感じ。

あとは技術・知識も絞っているという描写ですね。
前にも書きましたが、なろう系みたいに何もかもできませんし。
陶器・香水・石鹸とか作ろうとするのは立派だけど、大したものではないから停滞。
技術だけ維持して時間と素材と予算を、別方面に集中する感じです。
(なお、ガラスのコップとか器を結界のイメージから思いつくのはまだ先)

武器とかも趣味とか豪傑の為に作りましたが、そろそろ一本化。
自分達の主要装備位は確定させようぜって感じになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。