妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】   作:ノイラーテム

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新しい目標に向けて

 時間と資材の使い道を絞り、なけなしの資金を締めると……することが随分と減った。

とはいえそれは絞った方向性に使う為の物であり、意味のある積み上げに使わなければならない。

 

間違っても余ってるから何に使っても良いというわけでは無いのだ!

 

「なんで……こんなになってるのかな? ちょっと説明して欲しんだけど。いや、先に理由を告げてから計画的に使ったのなら文句は無いんだ」

「あ? 駄目だったか?」

「バカモン! じゃから止めたろうに……」

 気が付いたら僕のアイデアノートが消えていて、幾つかの武装が用意されていた。

まあ銅張鉄鋼馬車じゃないだけ良いんだ。アレを勝手に作って他所の人間……伯爵家とか侯爵家の連中に見られたら何を思われるか分からないからさ。

 

だからといってフル・アーマーを幾つも作られたり、失敗作で兜割りの練習をされたらたまらない訳です。スクラップは溶かせばリサイクルできるけれど、薪は貴重なんだからさ。

 

「剛盾さんも剛盾さんですよ。もちろんOK出してるレベルならまだ良いんですけどね。どう考えてもお願いしている他の装備やら文物に使う資材を突っ込んでますよね?」

「あー……いや、まあなんじゃ。結界で高炉モドキも出来たし、使ってみたいじゃろ」

 どうも話を聞く限り、洞府に出来た余裕を使って炉をアレンジしたのが原因らしい。

温度変化やら炉自体の保護を個別に設定したことで、コークスがまだないために風の強い谷でしか出来ない炉を疑似的に作成したのだ。

 

前述の理由から高炉は鍛冶の巧みであるドワーフ族ですら、中々所持していない設備なので、夢中になって使い熟すために繰り返したらしい。

 

「それにじゃノートに書かれた、あれほどのアイデアを放っておくこともあるまい? ガハハ!」

「ノートってまさか……」

「そうだよな! 駄目な奴はどれも駄目だけど、良いパーツもあるぜ!」

「「黙っとけ!!」」

 なおノートは何冊かあるが、見られてしまったノートは黒歴史に近い。

いわゆるマジカル・アーマーの類で、合体変形させると動物の形やら大型武装の形状になる。考え事をしている時に気晴らしに作るネタ帳であり、『無理だろうな~』とメモ書きにして残したものだ。

 

なぜそんな物を残しているかと言うと、紙が貴重な事、お遊びで他愛ないアイデアであろうとも真剣に取り組む為にちゃんとデザインしているというだけである。

 

「他の為に用意した物を勝手に使ったという事を覚えておいてください。何のことか理解していない大通連へ説明すると、夏まで君の酒を割り当て無しにするくらいかな?」

「はあ!? なんでそんな事するんだよ! ケチくせえなあ!」

 こいつケチ臭いという誤謬しかないのだろうか?

それとも僕がケチだと思われたくないから、そう言えば聞くと思っているのだろうか? まあいいけどね。

 

とはいえコイツが呑むときは勝手に呑むので、溜息吐きながら代案を提示しておこう。

 

「幾つかお願いを用意するから、ソレを片付けてくれればいいよ。簡単なので言うと獣を狩って来るとか、面倒なのだと魔物を退治……誰にも迷惑かけずに倒して来るとか」

「なんでえ! その程度なら簡単だぜ。そいつにしといてくんな!」

 馬鹿で助かった。適当に……はマズイので監視付きで魔物でも倒させよう。

それはそれとしてやってしまった事は仕方がない。この二人のプライドに泥を塗らない程度の穴埋めをさせつつ、ペナルティとして任務を割り振っていく。

 

その上で造ってしまった物は、適当な理由で有効利用せねばならないだろう。

 

「現物に関しては使えるパーツのレポート。戦に行く装備と、魔物退治なり調査用に向いた簡易装甲でも設計し直しましょう。剛盾さんへのペナルティはそれでいいですか? もちろん頼んだ物は剛盾さんの責任で完成させてください」

「ぬう……そういう事なら仕方ないのう。しかし用途専用の鎧か……」

 完成した鎧は黒歴史だが、逃げてはいけない。

全部バラバラにして、長距離移動する調査用とか、魔物用とかの簡易装甲を割り出すのに使えば無駄ではないだろう。

 

確か何かの小説だかゲームの資料だったかで読んだのだが、人間相手に必要な鎧と魔物や獣相手に必要な装備は違うそうなのだ。

 

「何かの文献で読んだのですが、獣が噛み付く時は相手の動きを止める為に四肢を狙ったり、人間の方で急所を庇おうと腕で塞ぐんだそうです。籠手と脛当て……あとは胸当てだけなら動き易いと思いませんか?」

「そうじゃのう。人間と違って突き技など使わんしの」

 脇腹を抉られることはあるが、胴中央を獣は突かない。

汎用装備として胸当ては重要だが、ある意味で獣相手には不要と言える。四肢を籠手などで守り、脇腹を革製の補助鎧で覆えば騎士の軍装よりも遥かに軽量で済むだろう。

 

使う資材もずっと減るし、ずっと鎧を着て旅など出来ないのだから丁度良いと言える。

 

「確かに傭兵たちも手前勝手に使う部分だけ残すことが多いか。しかし……ちとみっともないというか、せっかく作った他のパーツが惜しい気もするが」

「その辺はサンプルとして必要ならば残しましょう。そして好評な部位だけ備蓄すればいいんです。上級の付与魔法の使い手でもお知り合いに居れば別ですが」

「付与魔法じゃと?」

 ドワーフのおっさんが首を傾げても面白くないので簡単に説明しよう。

この世界ではその手の武具の進化が始まっていないというか、せいぜいが特攻武器と呼ばれるスレイヤーウェポンとか大通連の戻って来る投擲武装などだ。

 

いちおうは能力向上アイテムなどもあるが、そういう魔法武具を組み合わせて特化するという概念がないのである。ある意味で『凄い武器を作ろう』以上の概念がないのだ。

 

「簡単に言うと平均的に強くなるんじゃなくて、速度を上げる鎧や護符で常人の二倍にして攻撃特化の槍を持ったら強いですよね? 逆に呪い対策や魔法防護をかけまくった鎧を持って、対魔族用のデモンスレイヤーを持てば魔族の部隊を単騎で倒せます」

「ははあ。専用の鎧……いや武具一揃いを専用で造ろうという訳じゃな」

「お! スゲーじゃねえか! それ作ろうぜソレ! 付与魔術師が必要なら……」

「出来たら苦労しないってば。ていうか、前にも言ったじゃん。攫って来たらダメだってさ」

 当たり前だが自主的に来てくれるならともかく、誘拐は駄目だ。

もちろん招請する資金などないので、この問題児二人の様に『何らかの目的で研究したい学者馬鹿』を許容するのが一番手っ取り早い。

 

その場合は三馬鹿を許容することになるが、そこまで行けばいっそ諦めて人材管理を徹底すべきだと思えてくるから不思議である。

 

「いいかい、勝手に連れて来るの禁止! 地位とか予算で釣るのは無理! 知り合いとか友人に術師が居て、こっちで資材とか触媒を用意する範囲で研究するっていうなら良いけどね」

「流石にそんな都合の良い相手はおらんのう」

「居たらお目に掛かって見てえよな」

 鏡を見せてやりたいが、おそらく通じないだろう。

おそらく列車とか飛行船とか、そういうこの世界にはないであろう発明品を見せてからある意味発狂させないと早々に学者系がお馬鹿さんにはなら無いのである。

 

とりあえずこの話はここまでであり、以前に魔法の武器を考えた時とループし始めるのでここまでだ。しかし気になる事が一つだけあった。

 

「そういえば質問なんだけど、なんでノートなんか持ち出したの? アイデアだけなら定期的に出してるよね?」

「うん? そりゃあ双葉の奴が……」

「バカモン! それは禁句じゃと……」

 ああ、尋ねるのではなかった。聞きたくない台詞に上位に位置している。

まあNTRされて徴発とも満足ともつかぬ顔をされても困るわけだが。しかし微妙に怒り難い相手である。

 

これから浮気と言うか本妻と結婚して上下関係を作る身勝手な夫が、我儘を言っただけの恋人を怒れるのかと言われたら少し微妙である。それはそれとしてノー・ペナルティでは示しがつかないだろう。

 

「双葉にも何らかの用件を飲んでもらいます。美味しい物を食べさせるってのは約束だったからね。……でも勝手にやって良いって訳じゃないんだ。二人もどうしてもやりたい研究があれば、理由と採算を説明する事! 釣り合うお願いを聞いてくれれば出さない訳じゃないんだからさあ」

「ガハハ。次からはちゃんとそうするわい」

「そうそう。ちゃんとやるってよ!」

 子供の自制心並に信用できないが、この二人は得難い人材なので仕方ない。

問題は惚れた弱みがある上に、正妻戦争の敗北者にしてしまった双葉への対処である。どうした物かと思うが、おやつ抜き以外のペナルティを考えておこう。どうせ僕も一緒に節制する羽目になるからストレスが溜まるだけである。

 

それに美味しい物を作る理由が『僕に食べさせるため』とか『正妻戦争で敗者復活戦するため』とかだといまいち怒り難いしね。とりあえず目の前の二人の前では何らかの適当なペナルティを与えるとだけ言っておいて、思いつかなければエッチなお願いでも要求しよう。

 

(しかし物は考え物だな。行動と資材を絞ったからこの双葉や二人が暇を持て余したとも言える。全体的にそうなのだとしたら……分かり易い目的でもあった方が良いのかな?)

 小人閑居して不全を為すというが、暇だから馬鹿な事をする余裕があるのだ。

何らかの目的があり、目的に邁進している途中なら自然とその方向性で修業でもするだろう。

 

となると今の洗練作業とは別に、何か目標を作るべきだろう。さすがに結婚問題とかは目標にしたくはないが、最初のお祭りなり魔物狩りなり適度で分かり易い内容にしたいものである。

 

(目的があればするべきこと自体が変わって来るよね。お祭りとか目標があれば、それこそ双葉がノートを持ちだしたのだって、つまみ食いとかじゃなくて試食程度になるはず)

 もちろん僕の大目標は豊かな生活であり、神様の信仰を広める事だ。

その仮定にこの地に城を作り、冒険者ギルドを通して軍師の神様のくれた知恵だと喧伝する。他にも色々アイデアはあるが、最終目的が決まっているから注ぎ込む情熱と時間と予算の方向性は決まっているわけだ。僕や双葉以外の協力者たちにしても同じことが言えるだろう。

 

例えば最終目標に列車があって、その手前で装甲馬車があって、大前提として馬車の改良を行う。そんな目標があればこんなに馬鹿馬鹿しい無駄使いをするわけがない。日常的にパーツの改良を繰り返し、余った資材があってもそれに費やすはずである。仮に付与魔術師がいたとしてもその研究成果は列車に関連するはずだ。要するにこの現状は判り易い目的を設定して明示しなかった僕にも責任はあるということだ。

 

「よし、秋にでもお祭りしようか。収穫祭と一周年を兼ねて、そこで色んな作品の発表会を行うんだ。蚕とか間に合わない物は生糸にして、来年はフリル、その次は布。そしていつかは最新の服に成ればいい。もちろん武器とか紙とかも展示するよ」

「おお! では早速力作を……」

「まずはお願いしたのを先にね」

 当面の計画は積み上げで、対アンデッド用浄化作戦とかもまだ先の話だ。

宣伝を考えると伯爵家の御嫁さんとかもその前後だろうし、踊りとかで誘うのは双葉になるだろう。何だったら御嫁さんをお祝いする宴も並行して、今年の主役は双葉と言う事にしても良い。

 

そして展示会があれば商人を呼んで宣伝し易いし、技術と知識の展覧会にかこつけて女神様の事も伝えても不自然ではない。いや、そもそもお祭りというのは神事であったと思うから、神様を広るのも当然ではないだろうか?

 

こうして今年の目標として、最初のお祭りに向けて村全体が動き出すことになった。




 と言う訳で新目標として、お祭りを兼ねた秋の展覧会です。
むかしプリンセスメイカーとかで良くあった秋口から始まるイベント群ですね。

●高炉モドキ
 吹き込む風の勢いを保ったり、火の上昇を妨げる効果を何とかしたり
炉自体を熱では傷み難くするとか、そういう方面で効率化してます。
コークスが存在しなかったりするのでまだ冶金技術が低く、
そういうのは強い風が吹く谷の、これまた強い風が吹き続けるシーズンのみ営業。
なのでモドキであっても、十分通用するレベルといえるでしょう。

●資材の勝手な流用とエッチな目標
 某桃太郎なゲームでボンビーに勝手な売買されるだけでも腹が立ちますが
資源が貴重な村で勝手に自分の研究にぶち込んだら、そりゃ怒られる訳です。
今回はドワーフの名工とか豪傑とか、惚れてる恋人がやったので程ほどの罰ですんだ感じ。
なお幼馴染の双葉ちゃんは面倒くさいの嫌な……いわゆるマグロなので、こういう下世話な話に
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