妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】   作:ノイラーテム

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島へ

 水棲種族の領域は当然水中をメインとしているが、陸だって重要なファクターだ。

地震や嵐が来れば高波だって来るし、丘の上に作っている施設は簡素な分だけ大変。その規模の問題に成れば、海の中も無事なわけでは無い。

 

だからこそ島やら入り江の形状で守れる場所に棲んでいるのだそうだ。海中のみにしか入り口の無い洞窟などは、絶好の安全地帯なのだという。

 

「それは良い話を聞きました。実物を見せていただければ族長たちに掛け合わせていただきましょう」

「ではサンプルを一つ二つ提供後に、それを輸送する費用と、土地を提供する場合の差でご判断ください」

 情報収集ついでに雑談して居たら、気が付いた時にはセールスをしていた。

波消しブロックやら水津壁をコンクリートで造って、海に沈めて安全地帯を作るという計画が俄に持ちあがったのだ。

 

最初は水棲種族の中でも、大岩を動かして波消しブロックにするという話を聞いたくらいだったのだが……。その時に『丁度良い形状の岩が無くて動いてしまう』とか、地上の土壁を見て『こんな感じで壁が作れたらなあ』と嘆いていたので、可能かもしれないと相談に乗った結果である。

 

「どうして僕はゼネコンみたいな事をしてるんだろう……。というか拠点から輸送するのと、こっちで工場建設やら材料集めやらするのとどっちが簡単なのかな」

「「ゼネコン?」」

「コンクリ製品の商人のことだよ」

 魚滑玉が人の手配に行ってる間に双葉や紅梓たちに解説。

何を取り決めたかを伝えながら、今後について考えておく。蜂退治の事に関しては現地に行ってみるしかないので今の処はゼネコン問題だ。

 

何人かいるエルフに頼みエルフの領域経由で、荘園からコンクリ製品を送ってもらう手配をするところまでは確定だ。荷車は二つ用意し、人間の領域経由と合わせて二つのコストを見比べておく。

 

「こっちにもらえる土地で造れば良いんじゃないの?」

「将来的にはね。もっと南にも火山があるそうだし、材料自体は何とかなるとは判ってるんだけど……。出生率とか生態系的に大丈夫かなって」

 あまり考えたくない話だが、下手に保護壁を作ると増え過ぎる可能性もある。

現時点で水棲種族は無数に生まれて無数に死ぬという出生率であり、そのバランス的に人間よりもやや下の発展度である。もしこれが劇的に改善されたらと思うと不安でならない。

 

何しろ先ほどの会話でも、水棲種族が愚かではないことは知らされた。養殖だけでなく波消しブロックなどの概念が既にあるのだ、陸上種族が思いつくのが数百年先の利便性だとしても、水に棲んでいる彼らにとっては目の前の問題なのだから当然とはいえる。

 

「流石にそこまで増えないでしょ? っていうか、そうなるようなら売らなきゃいいのに」

「今の処は逢った人は良い人ばかりって話だけど、良い人でも長に成れば別の判断するかもしれないじゃない? どの種族もエルフやドワーフみたいに個人と指導者の考えが同じではない……と考えておくべきじゃないかな」

 輸送費を考えれば高額だけど民を守れる防護壁。

そう考えれば財布と相談しつつ増やすか考慮する程度の存在に過ぎない。しかし沿岸ならまだしも島の上に工場があるなら判断が変わって来るかもしれない。

 

現時点で人間と争うのは得策では無いからしてないだけであるならば、工場を制圧して種族が安泰に成るならば、島程度ならば攻めてくる可能性もゼロではないだろう。

 

「判らないでもない話じゃが、お前さん以外の連中が売り渡したら同じじゃないかの? あるいは子供が生まれて引き継いだ時はどうじゃ?」

「そこまで責任は持てないよ。僕は僕の気分の範囲で彼らに適度な味方をしたいだけだよ。迂闊に隙を見せて取り上げられたくはないけど、他の連中の面倒まで見切れない。生まれて来る子供たちが彼らに協力したいとか資金が必要になったのなら、それはそれで尊重するだけの話さ」

 別の言い方をするのであれば、自分が責任取れる範囲での協力だろうか。

波消しブロックやコンクリ壁で集落の幾つかが安全に成れるなら喜んで協力するが、人間たちとの戦乱を起こさせたいわけでもない。僕の影響を受けた人間たちが、僕の忠告を無視して商売するのは僕の責任の範疇外だろう。

 

もっとも水棲種族はそう長くは外に出られないそうなので、戦争が起きても沿岸までだろう。よほど人数が増え過ぎたり、逆に人間の方が悪どい事をしない限りは問題ないと信じておこう。

 

 そうこうする内に一人目の案内人がやって来た。

この村の周囲で活動する人だという話で、水の中よりも陸上の方が能力が高いという部類だそうだ。

 

具体的に言うと視力が高く、両目とも5:0以上はありそうである。水中だと鮫並に鼻が良い方が重宝されるので、あくまで陸上向きは二次的な扱いなのだとか。

 

「蝦鷹視です。みなさまの偵察役を仰せつかりました。途中で案内人を呼びますので、そちらの方もご安心ください」

「よろしくお願いしますね」

 現れたのは海老頭の水棲種族だった。

首筋は甲羅で覆われているのに、特に防御力が高い訳でないというのは不思議である。

 

まあ神の加護はランダムなので文句を言う筋合いなどない。

勇者も聖女も都合が良いタイミングに有名になればそう呼ばれるだけで、選べないという意味では水棲種族も同じような物なのだろう。

 

「ご予定はいかがでしょうか?」

「手紙をもう一種、合わせて二通書いたらここでの用事は終わるので、現地入りを目指してください。情報持って居そうな人や、食料その他の補給場所が途中にあれば立ち寄る程度で」

「承知いたしました」

 本当は不要な手紙なのだが、僕も学習したので先手を打っておく。

この村に一通、赤色湾に一通残しておく伝言である。誰に充てた手紙かと言うとこの場に居ない大通連だ。これまで彼が引き起こした問題を考えると、事前に釘を刺しておいた方が良い筈だ。

 

幸いにもというか大通連は旅の武芸者でもっと南国の生まれなのだそうだ。水棲種族に関しても知っているはずなので、敵対せずに話を聞くに留めるだろう。しかし釘を刺しておかないと勝手に暴れ回って作戦が崩れかねなかった。

 

(今回は巣を見つけるのが優先だからね……勝手に暴れてジャイアント・ビーのフェロモンをまき散らされても困るんだよね)

 疑うのは良くないが、いつも迷惑をまき散らすので先手を打つ。

内容自体はいたって普通で『秘密戦力として投入する作戦の都合上、拠点の裏側からコッソリ合流して欲しい』というものだ。隠密作戦でも何でもないが、細かく指定しておかないと勝手に判断しかねない。

 

指示を出した当初は守ることが多いので、魚滑玉さんに渡しておけば良いだろう。……拠点にも同じ物を用意して、呼ぶまで待機してろと告げるべきなのだろうか?

 

「心得ました。現地でも食料になる樹はありますが、途中で立ち寄る島にあるバザーを用いましょう」

「お願いします」

 こうして中型船に乗り込み、馬車と小舟を運ぶことにした。

馬車は安全に籠って中から魔法を掛ける為であり、小舟は自分たちの都合で移動する為でもある。

 

海原に乗り出すつもりはないが目的地が『群島』であるためだ。

 

「群島の北辺に人間の施設、西辺からはギリギリで歩けるんでしたよね?」

「正確には干潮時になんとか繋がるという具合でありますね。私共にとっては丁度良いのですが、人間の方々には少々手間かと思われます」

 蝦鷹視は人間社会の近辺で生活している事もあり、尺度が近いのが助かった。

彼の加護は視力を高めるモノなので、安全に接近できるし、干潮時に人間だと困るという具合を判断できるのも助かる。

 

もし彼の一族の中で不遇であるならば、高給で雇っても良いと思うくらいには有望な人材だろう。戦闘力を見ていないので比べられないが、物腰しも柔らかく傭兵であればかなり重宝されると思われた。

 

「確認いたしますが、群島内は小舟で移動されるおつもりですか?」

「その予定です。今乗って居る船では調査するのに迅速に動けませんし、蜂が少ない場所であれば少人数でコッソリ動く方が安全ですから」

「承知いたしました」

 蝦鷹視は僕の答えに何事かを考えていた。

タイミング的におそらくは案内人を誰にするか、知識と加護を天秤にかけて誰なら確実かを考えている物と思われる。

 

こういってはなんだが、部族の中から有望な加護持ちや魔法持ちを引っこ抜けるという意味で、彼らの手腕は手際が良い。海は舐めている熟練者でも直ぐに死ぬから、こういった時の配分が早いのだろう。

 

「では鯨守人を案内人に呼びましょう。彼は守りの加護がありますので、万が一蜂に襲われても大丈夫です。それと干潮時以外に限りますが、イザという時は小舟をひっくり返して泳いでください。小舟にある空気で過ごせるはずです」

「ああ! それは良い手ですね。何から何まで痛み入ります」

 斥候という職業は軍でも有能な人物が配されることが多い。

よく軍記物で『心利いたる者』と評されるメンバーが揃られるのだ。その意味で、この蝦鷹視はかなり有能だった。彼を付けてくれた魚滑玉氏には感謝をしておこう。

 

「ねえ。私……泳げないんだけど」

「ワシもじゃ」

「……後で練習しようか。基本的に逃げ込むときだけだから問題ないよ」

 こうしてその日の内に施設入りし、経年劣化した部分の確認や掃除を始める事になったのである。




 と言う訳でようやく現地入りです。
とはいえ種族的な説明と、他愛ない商売の話を入れて今回は終了。
なろう系でコンクリート製品を使う話とか、波消しブロックとか見たことないので
入れてみました。
というか異種族に知恵があるなら、養殖にしても波消しブロックとかも実用しますよね。
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