妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】   作:ノイラーテム

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捨拾選択の要

 信仰が集まってきたせいか、神様の来臨ペースが早い。

やはり大規模農業と三圃式農業を組み合わせ、そのコンボを神様の知恵だと広めたことが大きいのだろうか?

 

ともあれ村に戻って真っ先に洞府に顔を出すと、九天玄女様がお目見えになった。

 

「と言う訳で何とか順調なのですが、予算に限りがあって流石に全てが上手くはいきません」

『ホホホ。銀は贅沢者よのう』

 現状を報告したら軽く笑われてしまった。

もちろん以前よりも信仰が集まっているので、文句はないのだろう。僕の方も未熟なのは当然なので特に不満はない。

 

『そのような時の心得を教えてしんぜよう。銀や、そなたの好きにするが良い。どうせ同じならば最後にそのくらいは好きにしてよかろう。どうでも良い物に関しては、儲け話であっても取られようが押し付けようが意味は変わらぬ』

「で、ですが……流石に好き勝手というのは……」

『獣頭人身の輩を引き取ったは結局、そなたの自儘であろ?』

 好きにして良いという言葉は流石に躊躇った。

上に立つ者が自分勝手で良いのかと言われれば、違うと言いたいのがこれまでの僕の人生であった。しかし獣人たちの処理が色々ある中で、助け船を出したのは僕の我儘でもある。

 

最終的に足りない労働力になるからという理由で自分を誤魔化したが、もし発覚してしかも魔物扱いされた時の事を考えると、微妙な判断だったのは確かだ。

 

『もそっと判り易い例えをしよう。ここに器がいくたりかあるが、それぞれに差異があれど同じモノじゃ。何を普段から使う?』

 玄女様はそういうと、成果を見せるために持って来た物の前に移動した。

木製の器は漆塗り・丹塗りまではいったが、まだ螺鈿までは完成していない。陶器の器は以前と同じで、ガラス製は切子を作ろうとして失敗している。鏡やら細工物はともかくとして、ガラスの器もまた大して変わってはいなかった。

 

これらの器には一長一短があり、どれが良いかとは中々言えないのは確かだ。コストや売値を考えればともかく、器としてはどれも同じと言えなくも無かった。

 

『木は誰でも彫れるが上を見みればキリがない。陶器は簡単に増やせるし型も自在じゃが……この分では売り物は無理じゃな。そして硝子は最も良いが最も高価である。ならば好きにする他あるまい? そして下の者を導き責任を追うならば、そのくらいは自儘にせよ』

「心得ましてございます」

 言われてみれば同率一位になったら、最後は好みでしかない。

もちろん他の判断材料が混ざれば別だろう。木は薪や建築資材にもなるから量産には向かないし、高額で売れるならば手を掛け装飾して売りに行くなり献上品にすべきだろう。陶器は大量生産可能だが木の器を誰でも作れるからこそ意味がないが、僕でも簡単に形状を決められるのだから、魚の形の器に魚を盛るとか遊び心を反映させ易かった。

 

それらの中で贈答用にも売り物にも良いのがガラスなのでこれを主力製品になるが、売り物だから手元には残らない。だからそこまで行きつけば、最後に残るのは僕の好みであるわけだ。

 

『それとな……ようやった。何もない村ではあったが、よう一年でここまでこぎつけたの。いずれ『格』が上がればなんぞ権能を授けよう。今の内から考えておくが良い』

「っ!? ありがとうございます! 一層の精進を重ねます!」

 思わず平伏したが、その価値はある言葉だった。

一年間の苦労、そこに至るまで行った傭兵としての流浪生活。それを褒められたことは嬉しい事である。

 

そして何より……神職としての権能がもらえそうだというのは大きい。色々な物を奉納するという代価は必要であるが、神様に応じて力の一部を分けてもらえるのだ。分かり易い所で『加護の鑑定』であるとか『結界の特殊化』などがソレに当たるだろうか? よく漫画で神主とか巫女さんとかが持っている特殊能力の定番がソレである。

 

「……あ、もうお帰りになられたのか。寂しいけど前よりペースが早いし……ここは努力のしどころだよねっ」

 今までと特に何かが変わったわけでは無い。

だが、いずれ何らかの能力が得られると聞けばゲーマーとしては心が浮きたつ。どんな物を奉納すれば喜ばれるとか、選べるならどんな能力にしようかとか、そのコンボで何ができるかを考えるだけでも楽しいのだから。

 

だが、ここで最も役立ったのは、先ほどの忠告であったというのが、後々まで頭の下がるところである。

 

 神様のお話が終わった所で、早速に懸案事項を処理することにした。

出張中ずっと考えていた代官問題だ。これで緋家からの正式な圧力以外で勝手に差配される可能性は無くなる。

 

早速に書類を作成し、同じ内容を念の為にもう一枚用意しておく。適当な人物に預けて置き、同じ内容の文章の控えがあると書いておけば無視ることも少ないだろう。

 

「三硯なら代官の重要性も判るでしょ? 基本は僕が居るから問題ないと思うよ」

「意味は分かりますが……未来の奥方様に文句を言われる相手が私になるだけじゃないですかね?」

 黄三硯は留守を任せた三人の傭兵上りの中で、元学者だけに一番先が見える。

書面で優先事項や僕の同意がない場合の勝手な変更を縁者でも禁止する文面を見せれば、何を問題視しているかを理解してくれたようだ。

 

不平を言うのはいつものことだが、面と向かって文句を言うのは珍しい。正確にはそんな状態で受け入れるべきだと承知しつつも、何かを切り出したくてウズズしているところだ。

 

「何か意見があるの? 修正するアイデアがあれば採用するけど」

「そうじゃなくてですね……。厚かましいのを承知で言いたいんですが、お願いしても良いですかね? それさえ受け入れてくれるなら心労も吹っ飛びます」

「内容に寄るけど?」

 引き替えに要求したいことがあるとは思わなかった。

こういうのは引き受けるか受けないかで、交渉材料ではないと思うのだが……。まあ元仲間の顔見知りから、ちゃんと登用して部下にするという過程だと思えば間違いではないか。

 

領主や荘園主と同じ村に住んでるだけで、軍師系キャラが仲間になるかと聞かれたらゲーム的にはあり得ないもんな。給料を払ってるけど、どちらかと言えば物納とか待遇面なので正式に雇っているとも言い難かったし。その意味でストレス直面する代官にすると言われたら要求の一つもしたくなるか。

 

「実はですね! 私の妹が中央の士学に居るんですが、今年の導術師の門を叩くことになりまして! 何とか援助を頂けませんか? いずれ此処に呼んで協力させますから!」

「……言ってる意味は分かるけど、なんか急だね」

 要するに魔術師学校に行かせたいから、その金を出してくれと言う事らしい。

うちの領地には今の処、それほど金の入る余地がない。判っているだろうけど直ぐには頷けない問題だ。

 

ちゃんとした魔術師が加入してくれるなら戦力面でも、便利系な魔法と言う意味でも凄くありがたいのは確かだが……。これって有能でないと意味が薄い上に、有能だと中央にリクルートされ易いんだよね。どうしたもんか。せめて上位魔術師になるところなら話はまるで違ってくるのだが。

 

「フラフラするのを止めて、ここに在住することになったじゃないですか? 一応は給金も出る事になったし、妹に鑑定を受けさせたんですよ。そしたら見事に魔術師向きの加護を持ってまして……」

「あー。なるほど。それは育てたくなるよね。元から妹さんを気にしてたんだろうし」

 この世界ではみんな神の加護を貰えるが、誰もが知ってるわけでもない。

鑑定してもらうには神殿または魔術師の学校に寄付を積んで、鑑定をしてもらわなけれななら無いのだ。神殿の場合は奉納したら神様にもらった能力が使えるという、僕がさっき考えた選択肢の一つが機能する。

 

基本的には奉納物の問題で高額になるか、まとめて一気にやる時に混ぜてもらう事になるのだが、今回はあえて高い方を選んだのだろう。自分の加護も知らないのに、良くやるとは思う。

 

「偶然自分が成りたい職業の加護なんて、滅多に無いから気持ちは判るよ。それでどんな加護なの?」

「魔力が増え易くなるというやつらしいです。どうでしょうか? 村の守りなり発展に協力させますんで!」

「それは確かに考えるなあ……多分、学校でも同様だろうねぇ」

 ちなみに能力が上がる加護はメジャーな祝福ではある。

その中でも『魔力が増える』というのは二種類あり、純粋に『魔力が多い』タイプと、『成長したら人よりも増える』タイプが居る。前者は気が付きさえすれば誰でも、どのレベルでも活躍できる判り易い能力だ。後者ならば成長すれば成長する程に、覚える労力を魔法系に絞ればかなり有用な加護といえる。

 

この場合はおそらく後者なのだろうが、冒険者になるにしても土地で何かを開発するにしても向くだろう。身内びいきを考えても悪くない選択にみえる……予算と言うものに限界が無ければの話だ。

 

(……どうしたものかな。最終的にちゃんとうちにきてくれるかな? 五年先か十年先に卒業としても、そこから中央に在籍してやって来るのは何十年先とか言われても困るんだよな。でも……欲しい未来があるなら……投資するのも悪くは無いか)

 来る保証はないが、金を出した相手の要望を無視することも少ない。

来てくれた時のリターンは大きいが、現時点で予算が少なく、来てくれる時期も判らないのではマイナスも多い。かなりの金を使う話で無ければ即座に頷きたいが、他にも用件を重ねてるところでこの出費、そして保証がないというのがなんとも難しい。

 

だが、これまで魔術師の知り合いが居ない状態でこの話ならば乗るべきではないだろうか? 何よりもこれから部下になってくれる人物の家族である。そしてかねてから考えていた、マジックアイテム作成に関して付与魔術師を得られる可能性は捨てがたいのだ。

 

「認めるには条件がある。どのみち作ってる文物を売りさばくには中央に窓口が必要だからね。そのついでに資金を渡していくなら何とかなりそうだ」

「何でしょう? 自分にできることなら……」

 今度は要求する立場が逆転した。

出資自体には納得するし、資金の稼ぎ方も説明した。三硯もゴクリと喉を鳴らして話を待っている。

 

「むしろ妹さんが何を研究したいかの好み次第だよ。やって欲しいジャンルなら出資しない手は無いでしょ? 上位魔術師への道が開けた時、幾つかある術門のうちやって欲しいとこならむしろこっちから出資をさせて欲しいとは思う。逆に強いだけの魔術師だと……ね」

「それは確かに。……ですが妹は私と同じく面白い物が大好きでして!」

 一番の理想は付与魔術師で間違いがない。

マジックアイテムが作れるならば死霊や精霊相手でも困ることがなくなるし、自分たちの要求次第で欲しい能力アイテムが作れるなら強度が低くても意味が大きい。

 

少し離れたところで錬金術師だろうか? 薬品とかは色んな研究に使えるし、それこそ溶鉱炉代わりに上位の火術で解かせるだけでも村の発展に役立つと思われた。流石に下位魔術を全体強化する四大精霊系とかっ精霊そのものを呼ぶ召喚系とか居ても、何に使うのかイメージできないだけに困り物なのだが。

 

「とりあえずマジックアイテム作る付与魔術とか、薬品造れる錬金術とかそういう生産系が望みだね。三硯と同じ性格なら大丈夫かもしれないけど、この辺は相性もあるからゆっくり妹さんと話してきてよ」

「承知しました! この黄三硯、銀さまの代官として奨励いたします!」

 これまで聞いたことのないような真面目ぶりに苦笑しつつ、この話はこれで切り上げておくことにした。

ドワーフからの返事が来て鉄の代わりに出すモノの交渉をしたり、西の水路を増築する件でエルフやら近くの領主が何か要求するかもしれないとか、考えることは色々あったからだ。

 

魔術師の方は直ぐではないだろうし、ダメもとで向こうの情報を得るくらいで我慢しておくことにしよう。




 と言う訳で新しい判断基準と次なる成長の展望が見えました。
といっても神様の格も、主人公の神職の格もまだ低いので先の話ですが。

●神職のレベルアップ
 格が上がると色々できるようになりますが、基本的には基礎能力の向上。
しかし一定段階が進むと、神様の傾向によって様々な選択肢が出ます。
『神の加護を鑑定する』とか、『周囲が浄化される』とか、『収穫が増える』
とかですね。まあ神様次第なので有用で無い物もありますが……。
少なくとも九天玄女様は知恵とコツを司る軍師系なので、鑑定は選べます。
もっとも選べるのは一つだけなので、何をやっても強くはなりませんが。
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