妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】 作:ノイラーテム
●
今回の探索行は概要だけならば組んだ予定通りに進んでいる。
中央が命じそうな奪還・再建場所の確認は終わったし、アンデッドの脅威に対して確認もできたからだ。余計な付録さえなければ成功裏に終わったと言ってよいだろう。
問題があるとすれば僕らの方は妙に自己主張の激しい商人と出逢った事であり、紅梓たちの方は予想外の大物が居たことである。
「と言う訳で数だけなら殿の予想を下回っていた。しかし別の脅威が問題でな……」
「代わりに何が居たの?」
「巨大なアンデッドよ」
東の境の城まで戻ると、橙二尾と紅梓の報告でよろしくないことが判った。
狭い道にアンデッドを誘導したり放り込んでいるという推測は当たって居たが、そこに強力な個体が居たのだ。てっきり沢山のアンデッドが居たと思ったのだが、巨大なアンデッドとはまた面倒な相手である。
「巨大なアンデッドは二種類存在するんだ。巨人がアンデッド化したものと、死体が群がって一つになったもの。どっちか判る?」
「そこまでは気が付かなかったな。そっちはどうだ?」
「ジャイアントの方じゃない? 肉とか残ってるように見えたし普通の相手なら腐ってるわよ」
ジャイアントゾンビとガシャドクロ。このどちらかで対応が異なる。
前者は巨人の強大な生命力と魔力を内包したまま変異したものであり、動きは鈍いが強烈な力を持っている。後者は群生したスケルトンが合一したモノなので、一体一体を砕いても総数を何とかしないと他者を取り込んでしまうのだ。
学術的な立場ではなく倒す側からみると、ゾンビの強靭さを特化した物と、倒してもきりの無い部分を特化したものと言い換えても良かった。
「ジャイアントゾンビかあ。倒せない訳じゃないけど、これまた面倒な相手が居たもんだ」
こんな大物は警備とか巡回する兵の手には余る。
もしかしたら最初は陰謀ではなく、仕方なく隘路に誘導したのかもしれない。誘導した人は決死の覚悟で山を登って逃げたという可能性もあるから……迂闊に『管理人』を暗殺して欲しいとか言わなくて良かった。やはり後ろ暗い事に手を染めてはいけないという神の忠告だろう。
それはそれとしてアンデッドの処分はしなくちゃならないのは同じだ。今回の旅で戦わないにしろ、いずれ来る北上作戦で倒さねばならないのだから。
「ともあれ二人ともありがとう。西側でも似たようなことを頼むから今は休んでてよ。予定通り向こうも見に行くけど、ちょっとばかり此処で人を待つ用事が出来たんだ」
「誰よ?」
「大通連みたいな商人」
第一印象はあまりよろしくはなかった。
身なりは良かったがチャラそうな男で、どこかのボンボンが強引さと金の力でなり上がったという印象を受ける。もちろん才能がなければ大商人にはなれないし、自分ならやれると自負していなければ新参の領主と組んで新しい商売などやろうとは思わないだろうけれど。
とりあえず女に手が早そうだったので今後は双葉に近づけない様にしよう。もし妹君の麗さんと仲良くなれるならば、やはり近づけないようにしておこう。僕自身の嫉妬もあるけれど、気が付いたら情報から権利から何もかも奪われて居そうで怖い。
「頭は良さそうだから馬鹿みたいな事はしないと思うけどね。でも代わりに『自分ならやれる!』と思った時は妙な商談に手を染めてそうな感じはしたよ」
「会う前からどんな奴か想像できそうだわ。あんまり油断しないようにしとこうかしら」
止めなければ勝手に商談を進めそうな人物だが……。
問題なのは真っ直ぐなタイプなのか、斜め上なタイプなのかだ。商品を渡して儲けが出る場所まで戻ってこないとか、帰りの商品を買う原資にする程度ならばまだ良い。問題なのは技術やら独占権まで勝手に決めたりされると困るし、頼んで無い物も売られても困る。幾ら儲ける為とはいえ、タコ足食いで短期的な利益を出されても困るからだ。
そういう訳で見積もりを色々頼んだわけだ。商人目線で調達を変わってもらう代わりに金を要する見積もり、領主目線で節約する見積もり、そして最後に商人から見て使い易い改造案の三つだ。
(もし馬鹿みたいな利益を上乗せしたり、逆に必要以上に差っ引いて受注を狙ったり、使って良いと言ってない技術やら好き勝手に盛り込まれても困るものね。今回必要なのは正直な数字だし、コンクリ製品とか持ち込むとしたら事前に相談してもらわないと)
見積もりを頼んだ時、僕の模範解答を彼は尋ねた。
彼自身も僕と同じで、目の前にある東領との境にあるこの城を不要だと思っているのは確かだ。だからここで緑林洞の見積もりをやり取りした後、不要と知って適当に数値を埋めたり、逆に意欲的に倉庫街みたいなのを作って良いのか尋ねるのはアリである。そんな勝手な判断を先に聞いてからやってくれるならば問題ないと言える。
だが頼んだ三種の見積もりという意味を大幅に超えて、勝手にこの城を無い物という前提で色々と考慮されても困るのである。
(まあ強引な行動と自己紹介を見て、僕の方で勝手に人格とか方針を想像しただけだから、普通に見積もりを立てて来たりする可能性もあるんだけどさ。用心はしとかないとね)
やはり第一印象が大通連の同類というのがいけない。
あの強引さと止めなければ何処までも行ってしまいそうな身勝手感はいけない。それはそれとしてそういう人を嫌いになれないのは、明らかに自分と違うタイプの人間であるからだ。
僕には遠慮しがちな所があるし、できることでもまずは試しながら、人の迷惑にならないように始めてしまう癖がある。だからこそ突き抜けていく弾丸のような人生には興味が湧いてしまうのかもしれない。
(せっかくだし僕もアイデアを考えてみようかな。どこまでOKとか説明し難いし、角つき合わせて議論し合うのも面白いしね)
既存の城を普通に直すプランはあまり興味がない。
南商豪だかキリーだか知らないが彼の事を笑えないくらいには、僕もアイデアの上だけなら好き勝手にしてみたい。もっとも緋家や紅家に尋ねられたら提案するレベルで、されなければ推定費用を見せて大枠だけ直すレベルになるだろうけれども。
とりあえず中央に見せてパクられても困らない程度で、理解できないからと問題視されない程度の案を考察してみる。
(アンデッド湧きの問題もあるし、解決できないことを前提に軽騎兵と軽歩兵の詰め所。厩舎と倉庫街を作っておいて、街道整備の人足の長屋ってとこかな)
目の前にある城は平山城の西洋版である。
南方鎮台が平城の総構えで町ごと囲んでいるのに対し、軍勢を山によって防ぎつつ防衛施設を配置して効率的に守る様になっている。山越えルートを潰す壁は申し訳程度で、平野部に面した壁で山の反対側を守っているという風情だった。
しかしこれからの世の中には大きな城壁など必要はない。アンデッドを食い止める程度の壁を作り、大きな盗賊団が居たとしても困らない程度で良いだろう。そういう意味で、街道を広くしながら巡回部隊が幾つか休憩所にする程度で良いと思われた。
「まあこんな所かな。合流して見積もりを貰ったらそのまま西領との境に行こうか」
おそらくはあちらでも、アンデッド溜まりと言うべき場所が作られているのではないだろうか?
緋家の縁戚に当たる家はまだ無事らしいので、その分だけアンデッドもそう遠い訳ではないだろう。道筋の何処かの山に封じ込め、貴族領に近くはない場所で適当に食い止めていると思われた。
僕らはその様子を確認した後、緋家にレポートを提出してもう一度この地に戻って来るに違いない。その時には大型アンデッド対策を整えるだけではなく、南方鎮台の復旧に関して議論することになるだろう。
とりあえず北上作戦で困るべきポイントを早期発見。
巨大アンデッドの対策を立てつつ、再び湧くであろう周辺のお掃除。
(昔の合戦が起きたシーズンになると、アンデッド湧きが活性化するとか)
その後は城郭を立て直すのにどうするかって話が出て来ただけですね。
ちょっと思いつかなかったので情報を受け取って、簡単な計画を立てて終わりですが……。
アイデアを修正・盛り込み易くするのに、そろそろ毎日更新を止めて
数日に一回更新にするような気がします。