妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】   作:ノイラーテム

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戦後処理

 北上作戦は無事に終わったので、マイナス部分の穴埋めになる。

前世で言えば元寇みたいなものだ。無事にアンデッドを退け浄化したからといって、領地が増えるわけでもない。基本的に金は出るばかり、街道整備などで金が落ちるのはもっと先だろう。あくまで翌年以降のマイナスが生じなくなるだけなのだ。

 

なお僕の領地は特に赤字を出してないが、別口の問題が起きていた。どうやら南群地域の解放時に軍監の前でやり過ぎてしまったらしい。

 

「貸し付けと臨時の市場で息を吐いたと思ったら、今度は加領を『せよ』ですか?」

「ああ。功績抜群につき南領のいずれかで行うべし。統治の権につき何処に与えるかは口を挟まず……とはあるがな。まったく自分の懐は痛まないからと好きに言ってくれる」

 所領のマイナスを埋めるべく、河川組合の帳簿を弄って奔走。

利用料やら献金も底を叩き、これ以上は年度末の利用料支払いに影響が出るところまでを無償で貸し付けた。それで利子付きの借財を返済してもらい、百貨店じみた臨時の合同市場で各領地の物を売り捌き『困るほどではない』『頭を下げて願う程ではない』というところまで持ち直したのだ。

 

そんな段階で中央政府から名指しで功績を称える書状が届いたそうである。

 

「無視はできないのですか?」

「できると思うか? 言っておくが与えたことにして報告のみを送るのも駄目だぞ。懐の痛い連中は不満そうな顔を浮かべていたが、武官連中はみな渋々ながら納得するほどの戦績だからな。……まさか本当に死者無しを成し遂げるとは」

 面倒くさいのは中央からの命令だという事だ。

また信賞必罰の見地から、ナニカを渡さないわけにはいかないのだろう。余っている土地がないわけではないが、そこは未開の地であったり後継ともども家が絶えて継承権が浮いているだけの領地だ。親族でもない僕が持って行ったら文句しかでないだろう。

 

しかし『こう来たか~』というのが素直な気持ちで、むしろ中央のやり口には感心するところだった。完全に文句のつけようがない言い訳を用意したら、完全過ぎるとホメ殺しに来たのだ。こういう所を見ると中央の陰謀の手管は凄いと思う。

 

「どう思う?」

「忠節を割くには良い手です。何より大義名分は揃ってますから。与えぬわけには行かず、かといって素直に与えるわけにもいかず。与えたとして不満が出るのは当然、与えられた方も経営が苦しくなりますから」

「それを判っているなら話し易いか」

 前世では豊臣秀吉が使った手だ。

子飼いの部下が致命的に少なく、名目上は従えただけの大名家が多かったので、引き抜きと同時に仲違いを狙ったのである。大名家の重臣を優遇し、太っ腹な所を見せつつその大名家でのバランスを崩しに掛かった。

 

当面の問題は土地よりも人間関係の方だろう。悌さまも判っているようで、その面に関しては僕もありがたかった。

 

「紅家からイザと成れば海沿いの地を……と声を掛けられたがそうもいかん。両家の仲がこじれかねんしな。侯爵殿がこの国の……。いや、それは不敬だ止めておこう」

「飛び地はダメですか。そこは素直に残念です」

 侯爵家は海に面しているので、イザとなれば未開地を確保できる。

それこそ水棲種族と交渉して、どこかの島を領地として借り受けることもできるだろう。そこで両者の間柄を取り持って、三角貿易でもしてれば利益が出る目算はあった。

 

だが侯爵家とも僕が契約する形になり、両方に宙ぶらりんで仕えることになったら面倒なのだ。それこそ侯爵さんが王さまにでもならないと力関係的に難しいのだろう。

 

「八の村はどうだ? 現時点で代官として統治して居るから無駄は出まい」

「その場合は八大さんの家系から文句が出ませんか?」

 悌さまから最初に提示された土地は代官として管理している八の村だった。

確かにこの面だけを挙げるならば統治に齟齬はないし、新しく大きな出費も無い。だがこの件には幾つか問題があった。

 

緋八大はあくまで隠居だけであり、特に次の領主に関して指定はしないという条件だったこと。先ほどもあった他の貴族が赤字なのに、僕だけ得するという自体は丸で変わってない事など色々ある。

 

「そうでもない。奴の娘に子供を産ませてその家系に継がせれば良い。なんなら息子の方は別の家に入れ、何処かのタイミングで血を合わせても良いしな」

「最初はあくまで隠居だけという条件だったのです。今後の約定を結ぶ時に齟齬が出るような気がします。選ぶとしても、他に方策がない時といたしませぬか?」

 ここまで来ると貴族家の管理としては妥協範囲なのだろう。

確かに妾として八大の娘さんを娶り、その子に子供を産ませてしまうのは手だ。次期領主である息子の方は父親と一緒に騎士として修業を積ませ、今は不在になっているどこかの領主に据えると約束する。確かにこの方法ならば文句は出ないし、次代かその次で婚姻を結べば彼の家は元より大きい勢力を持てるだろう。

 

しかしコレには僕らの事情をサッパリ無視することになる。ハッキリいって今の僕はハーレムを目指したいとは思えない。八大だって騙されたと憤慨するだろう。

 

(多分アレだなー。僕が征服とかやったり、強引に拡大策とか愉しんでたらその一環で嬉々として頷いてたんだろうな)

 八大の娘は特に良くも悪くもない子だし、三人目の奥さんとかそういうのは面倒だ。

文学の上でならハーレムは浪漫かもしれないが、一々機嫌を取って婚家にも配慮するとか面倒でしかない。美人でも同じ顔を見続けたら飽きるからといって、とっかえひっかえ女の子を相手するという奴の気が知れない。まあそれこそ秀吉みたいに天下人なら違うのかもしれないけどね。

 

それはそれとしてこの件は是非断らなければならない。双葉はまた機嫌を悪くするだろうし、家出した先で恋人とか見つけられても困る。

 

「ではどうする?」

「まず滅びた家や当主の絶えた家は除きましょうか。それこそ苦労された他の領主の方も望まれているでしょう」

 領地ごとアンデッドに滅ぼされても親戚は居る。

今回の出兵で領地など得られてないが、功績と出費を勘案して、何人かの領主には領地を増やすべきだろう。中には騎士を格上げして荘園主の上級騎士も出ると思われる。その人たちに既存の領地は取っておくべきなのだ。

 

不要だとは思うのだけど、こうしてみると爵位をくれる方が良かった気もするな。まあそれだとこっちがモメないから選ばなかったんだろうけど。

 

「領地以外でか? 中央も他の家臣も納得させるような方策があるのか?」

「三つありますが、一つ目は加領に匹敵する俸給ですね。今回の一件で各領主は出征に置ける出費の労苦を把握しました。今後のモデルケースとして、利益の出易い俸給による加増を行う。もし領地の方が良い場合は、何時で振り替えると但し書きを付けるのです」

 要するに騎士や官僚が俸給を貰うような感じだが、領地と並行することに意味がある。

今までの領地をその採算で納め続け、領主としての義務を行っていく。そこに対して純資金を加算するので利益はとても出易いし、領地も持ち続けるのでその辺の体面も問題ないのだ。

 

本当を言えば領地管理は寄り親である伯爵家が一元化し、領主たちも上級官僚として全部俸給での管理の方が良いのだろうけどね。今は封建社会なので無理だろう。

 

「なるほど。組合からの上納金と相殺ということか。まあ領地に振り替える事を望めるならば、一応は問題ないのかな。……他にはどんなアイデアがある?」

「二つ目の案は、係争地や不入を条件としている土地を領地とします。もちろん相手方に最大限の配慮を行う事を前提に」

 最初にエルフやドワーフと取引したのと似ているが、同じような例は人間同士でもある。

例えば紅家との境や、僕の所の弐の村と八大の村の中間などだ。どちらが先に入植したのか分からず、相手の土地との区分が不明瞭な部分になる。どちらの領地とも言えず、上手く囲い込んだ方が得をするので睨み合っている場所というのは結構あった。中には緋家が一時召し上げて、抗争を阻んでいる場所も存在する。

 

その何処かを貰って、係争地の両側へ僕が配慮する形で便宜を図るわけである。既に二つの村を領有しているので、領土欲がないから出来る話でも合った。

 

「では三つの目の案を聞かせてもらってから判断するとしよう」

「二つ目によく似ていますが『利益が上がるはずと言われて久しい場所』です。実際には運用が難しかったり、場所自体は良くとも難関の克服ができずに匙を投げた場所になりますね。場合によっては多めに頂いて、利益が出たら一部を返上するというのはいかがでしょうか?」

 最後は要するに開拓地候補でありながら入植できなかった場所になる。

思ったよりも鉱石の取れなかった鉱山であったり、平坦だが湿地帯で開墾し難い場所など。場所自体は有望であるという情報があり、見方を変えれば確かに有望なのだから文句は出ない。周囲の領主も困難を極めて放り出した土地だと知っているので、やっかみなどはあまりないはずだ。

 

しかしそれでは中央が文句を言いそうなので、土地自体は多めに貰っておく。その上で開墾に成功して利益が出たら、その部分は取り上げるという風にも見えるのでやはりやっかみは少ないのである。この辺は僕があまり領地にこだわってないからこそ出来る決断だろうと自画自賛しておこう。

 

「ほう? と言う事はある程度の算段が付いているという事か?」

「むしろ方法を思いついたので、試したいというのが先行して居ますね。今回の件が無ければ困窮している領主や商家を探していたとも思います」

 前世にある技術や文物を実現できても、使えるとは限らない。

むしろ意味がなく、剛盾などに作ってもらったが『何の役に立つのだ?』と首を傾げられることもある。同時に『これは面白い技術だ。しかし近場に使える所が無いな!』というアイデアもあった。そういうのを活かして好奇心を満足させつつ、うちの神様の福音だという事にして広めたいものである。

 

先ほどの鉱山や湿地帯の例だと、鉱山ならばドワーフに『人間が気が付いてない鉱石』『人間では掘るのが難しい鉱脈』の開発を頼めばいい。湿地帯ならば水田にしてみたり、むしろ水路だけ作って建物メインというのもアリだろう。特定の魔法が必要なら、その術が使える人を探すというのも良い。

 

「その三つ……当初の案も含めて四つか。その中から良い物を選ぶとしよう」

 こうして僕は緋家に置ける開拓長官みたいな立場に収まった。

色んなアイデアを試せるのは楽しいが、不要な婚礼策を回避できて万々歳である。




 と言う訳で位打ちというか、引き抜きを兼ねた策略を掛けられました。
貰える領地が無いのに『領地を渡してやれ』という無茶振り。
最初に出てきたのがハーレム案だったので、全力回避した感じですね。

なんというかハーレム展開って、不憫な子が居たり可愛いライバルが居たり
亡国の御姫様だけど気に入ったから助ける……というシチュが楽しいのだと思います。
押し付けられて政略結婚しても面白くないし、幼馴染でも女友達でもない顔見知りと
とりあえず問題解決にハーレムしろや! とか言われても楽しくないですからね。

また先週も書きましたが今週は飛び飛び、または三日に一度になります。
楽しみにしている方が居られましたら申し訳ありません。
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