妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】 作:ノイラーテム
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うちの村である程度の練習を積んでから現地へゴー。
まずは水棲種族たちが谷底に降下し、足場近辺までの道のりを整えてから作業に入る。
大きな板の四方に取っ手を付けた……感じで言えば『井』状になった荷下ろし板を使ってクレーンで色々と降ろしていく。次はコンクリ製の足場を固定しこの上に橋脚用の木材を立てるか、硬い場所まで穴を掘ってから立てるかの差である。今回は穴を掘るのが難しい場所なので、足場を選択した。
「無問題。無問題。……静止静止」
「屹立!」
足場のコンクリ板が固定されると次は橋脚だ。
通常は三本の紐を使うが今回は手抜きで二つ目のクレーンを用意し、一つ目との間にロープを渡す。二つのクレーンを横の滑車で回転させると、ロープが力強く張られて巻きつけた木材が起き上がる仕組みだ。
そしてその木材には様々な穴・切れ込み・取っ手を彫り込んであり、まるで魚の骨の様だ。要するに凸凹を使ってロープを掛け易くしておき、後には軽技が得意な普通の人間が梯子代わりにして降りる為である。
「蝦衛視さん。向こうは順調ですか?」
「はい、銀大人。亀老師たちは上手くやってくれているようです」
鷹目の視力を持つ蝦衛視に尋ねると、下での作業は順調との事だ。
何度か橋脚を立て、そこに橋げたを渡す作業は訓練しているので問題ないようである。真横へ二本目の橋脚を立て、相互に木材をロープで括ったり横木で固定すればある程度は安定し、上で同じような作業が出来るようになるだろう。
なお下で働いているのは亀老師と言う先生役の人と、彼に指導された見た目がマイルドな水棲種族たちである。頭以外は魚類ではないので、被り物をした人間にしかみえない。
「銀大人。二本目の屹立と相互固定が終わりました。上の処理を済ませたら、三本目と四本目に取り掛かります」
「急がなくていいから怪我しないようにね」
紐の上に輪を付けた紐を通し、それを引っ張って柱の近辺まで移動させる。
すると安全帯と呼ばれる落下防止用の仕掛けになるので、柱に刻んだ即席梯子を登っても問題なくなる。後は上でも相互に固定すれば柱とロープだけで立ち続ける橋脚の出来上がりだ。三本目と四本目を丘との中間に立ててしまえば長方形の固定状態。あとは橋脚同士・丘との間に柱を、ロープとロープの間に板を渡して行き来が可能になるのだ。
まだまだ骨組み段階だが、三本目と四本目を立てて横木を渡すだけで全体像が見え始める。もし向こう側に五本目・六本目を立てれば、身の軽い者ならば行き来だけならば可能になるだろう。
「お見事。まさかこんな短期間で橋が出来るとはなあ」
「まだまだだよ。此処は見せつける為と献金収集用だからね。開拓をやり易くさせる為には直接関係ないもの。関税を引き下げる代わりに橋を立ててくれと言われて初めて、意味があるってとこかな」
南商豪が金袋を握り締めて褒めてくれるが、ここは宣伝用に過ぎない。
彼が通行料代わりに献金するように、他所の領地で関税を払って通行するよりも遥かに良くなる場所に作っている。今までは谷を迂回して幾つもの領地を越えて居たわけで、関税やら護衛に払う費用やら、街中では宿代など大変だったろう。それをここを通れば随分と浮かせられるので、多少の金など支払っても損はないのだ。
特に彼は年間通行料で払うので、そういう商人は一回に払う料金を控えめに計算してある。この事は河川協同組合に支払っている者が何となく察しているレベルで、南商豪から助言を受けた者がまとめて払う感じになるだろう。
「関税引き下げねえ。お優しいこった」
「後で恨まれるのは僕だからね。かといって無意味にバラまくようなお金はないし」
別に楽市楽座を狙ってはいない。他の領主が全員納得するは思えないからだ。
しかしここに橋が完成し、開拓地を通る関税込みで橋の通行料を払う方が安いのであれば、みんな南商豪のようにこちらを通るだろう。何時までも関税を取り続けたら、その領地は金が入らないし行商人だってこなくなる。
だが僕に頭を下げて橋を作ったり、関税協定を組んでこの地域全体で融通し合う話し合いが出来たら別だ。ここで徴収するお金も他を通るところもまとめて徴収し、協定に参加する領主で分配という形を整えられるのである。意地を張るよりも手を組んで欲しい所だ。
「しかしよ、全員が頭を下げて来たらどうする気だ? 全部は無理だろ?」
「プライドがあるから断るだろうけど……。その時は安価な吊り橋プランも用意しとくよ。要するに協定を結んで関税を平均的に下げたいだけだからね」
僕は緋家の開拓長官であると同時に、軍師格でもある。
勝手にするのが領主と言えど、放置して大赤字になる未来を放置できない。このままでは遠からず、開拓による交通網の改変で浮き沈みが出るだろう。その時に沈んでいく者を放置できないし、浮き過ぎる者もどうかと思う(主に僕だが)。
またこういうのは集団でこそ意義と力が持てるのだ。大きな集団の協定ならば他も見習うし、発言権やら見返りを期待しての献金額も変わって来るのである。
「吊り橋かあ。そういやそうだな。今まで無理だったといえば、別に本格的な橋を作らなくても良いって事か」
「そういうこと。コンクリを使った頑丈な橋も含めて三つプランを用意しとけば、代価込みで真ん中を選ぶ人が多くなるんじゃないかな」
人間は理由を求めるモノである。
安価なプランがあればそれで済ませる人も居るし、豪華で頑丈なプランを選ぶ人も居る。それはそれとして松竹梅の三つがあれば、真ん中の竹を選ぶ無難な選択肢が多いのも事実であった。
今回の宣伝は開拓地やら橋で好景気を作り出す前提段階なのだ。ゆえに橋が出来上がり、目ざとい一部の商人が嗅ぎつけたというのはまだまだ目的には遠いと言う他はなかった。
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情報と言う物は勝手に知れ渡るものだ。
開拓地に関わる領主の中には自分で宣伝してる者も居るし、気の早い商人の中には一回分の通行料だけ払って、どの程度のショートカットが出来るのかを試した者も居た。
僕はその間に計画の第二段階である、湿地帯の浚渫をしながらやって来る貴族やら商人と面会したり宴会したりしていた。
「思ったよりも土地がシャンとし始めておるのう」
「入り込んでる水を水路に誘導しましたからね。水棲種族の人たちのおかげで、ペースが早く進むのもありますよ五塀さん」
人間だと泥だらけで働くのはノーサンキューだが、水棲種族にとってはそうでもない。
陸上に居続けると乾いて問題だが、泥だらけだったり水の中に居続けで風邪を引いたりなどはしないのだ。もちろん沐浴とかお湯で汚れを落とす順はしているが、彼らにとって水中で作業する時の問題は目に入るくらいである。
そこで思い切ってこの方面に入り込む水を手前で曲げて、片方を水路として分派し、もう片方を元の位置に戻すという方法で水量全体を減らした。護岸工事も同時にやったことでかなりのハイペースで工事が進んだのだ。
「後はこの土地が肥沃であってくれれば良いというあたりかの?」
「そうですね。山の水が入り込み続けていたので、それなりに肥沃だとは思います。とはいえそういう場所ばかりではないので、微妙な所ですが」
土地の干拓も上手く行けば、かなりの利益を見込むことができる。
しかしながらあくまで交通の便を見込み、開墾地としてはそれなりレベルであれば良いだろうと判断したのもある。三圃式農業と大規模農業を組み合わせ、少ない人数でそれなりの土地を一気に開拓するという訳だ。
最終的にそれなりは、それなりに過ぎない。しかし土地の管理と生産調整がし易い事で、緋家に必要な穀物や商品作物を集中的に生産する予定であった。
「では予定通りに労役をさせても良いのじゃな?」
「ええ。困窮した貴族の農民を中心に受け入れて、代価として物資や報酬をお渡しします。さすがに橋の方は順番待ちをしていただかなければなりませんが、安価なつり橋で良ければ何とかしますよ」
緋五塀がやって来たのは、河川協同組合などの面識から仲間に頼まれたそうだ。
五塀老人の町だけならば困らないというか、商人が訪れやすくなることで儲けは見込める。しかし去年までの戦いで青色吐息である領主たちは、来年以降の出費がなくなるだけで困窮してるのは変わりないのだ。理由を付けて一時金を支給し、利子付きの借財は返済させたが、それは一時しのぎでしかない。
今回の開拓地に関して彼らは無関係である。だが彼らの力を借りるという良い訳で、人手を借りて代価やら資金そのものを渡すことは可能なのだ。献金が無ければそんな金はなかったが、幸いにも橋の完成を見てかなりの金が動いたので何とかなったのである。無ければあくまで売れそうな代価を渡すしかなかったろう。
「これで元に戻れるかのう?」
「調子に乗って関税を維持しなければ戻れるかと。まだまだ何かあると理由を付けて、高くなっている関税を下げなければ僕には保証できませんよ」
これまで戦闘状態が続き、青色吐息なのだから関税を引き上げてないわけがない。
あいつが上げるならば俺は下げて商人を呼ぼうなどとは言えない時期だ、自分も便乗してそこそこ……のつもりで緋家全体で怖ろしい程の関税を取っていたと思われる。
そういう訳で商人は新しい道での安価な、常識的な関税の場所を通って儲けようとするだろう。協力を求めて来たところには、交渉して色々な理由を付けて資金を渡し、関税を下げることを約束させてる。ということは関税を上げたまま維持している場所には、行商人は通らなくなるだろう。
「身内には口を酸っぱくして言っておくわい。時流に乗り遅れるなとな」
「そうしておいてください。後は中央が馬鹿なことを言い出さなければ、緋家も南領も安泰なんですけどね。……また出兵しろとか言い出さねば良いのですが」
食糧問題と資金問題が片付けば、一足先に片付けた南領は発展するはずだ。
仮に南方鎮台周辺の土地を貰えなくとも、開拓地やら潰れた貴族の土地を分配するだけでも何とかなるだろう。赤字続きで困っている貴族も、理由を付けて金を握らせれば文句は出なくなるはずだった。
しかしフラグというかなんというか、『厄介が無ければよいなあ』という願望を口にすると、問題の方からやって来るものだ。
「邪神の徒を狩りだしている……ですか?」
中央で流行り始めたバカ騒ぎが伝わるのは、暫く後のことだった。
と言う訳でサクっと橋が立ち、開拓の目途が立った感じです。
それと同時にきな臭い話が広まり始め、主人公の元にも火の粉が飛んできます。