妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】 作:ノイラーテム
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事の顛末を手紙としてしたためる最中、使者が金を持って訪れたのでサインを貰って受け取った。判り易い離間の計だったので、別の部屋で計画を練っていた白南終こと南商豪だった男にも見てもらって水棲種族の元へ向かう公使としての支度金だと言い張って受領のサインを入れておく。
使者が顔を白黒させて驚いている間に、麗さんとか彼女の友人とかも一緒に呼んで食事会をすることにした。要するに僕が貰ったのではなく、役人として資金を貰ったと言う事にしたのだ。
「素直に貰っとけばよかったのに。奴は後で『そんな事は知らん』と言われて詰め腹切らされるな」
「悪い事をしたとは思うけど、放っておくと僕が恨まれるからね。あと掛かった費用とか無視される可能性もあるし仕方ないよ」
離間の計なので中途半端な金額だった。
個人が受け取るには巨額で、公使や監督官が諸費用とするなら明らかに足りない。受け取ったという事実を隠せば南領や心ある中央の諸将から穿った目で見られる。対して受領証を発行し、数枚に分散して方々に保管すればそれは正式な記録になる訳だ。
なお使者の方は『計略の為に渡してこい』と言われているので渡すまでが仕事だ。サインを書いてもらうまでは受け取る気は無いと杓子定規に口にしたら書いていったまさか数枚分用意して、公文証にするとは思わなかっただろう。
「それはともかくこれからどうする気だ?」
「先触れの手紙を何枚か送って来年の準備かな? うちはともかく他の領地に余裕はないし、ここで厚遇されたように見える事の分だけ先に動かなきゃ駄目だろうね」
離間の計で良くありがちだが、待遇を偏重させる事がある。
南領の北上作戦から浄化計画までの間に関して、褒められたのは極少数。その中でも重用されたように見えるのは僕一人だけである。異種族への交渉副使とか監督官という役職に何の意味があるのか分からないのだが。
しかしソレを判断するのは僕ではないし、判って居ても同じ判断をするとは限らない。何も知らない領主は僕だけ出世したと言うかもしれないし、敵対派閥は判って居ても非難する材料にするだろう。
「ピストン輸送に使う島や上陸地点は水棲種族にとって好都合な場所を選ぶとして、他にも色々と提供。その上で彼らの戦力を主に使って第一目標の島を攻略するんだ。それ以外に各所が納得できる方法はないと思う」
「だろうな。まあ俺もお前さんの顰みに倣って沿岸の一部を譲り渡すとするさ。故郷を取り返せないよりマシだ」
他人の褌で相撲を取る以上はかなりの出血を強いられる。
こちらが準備整ってない状態で動くには仕方がないが、その事について彼が覚悟を決めているのは良い材料だ。どうやら僕がエルフやドワーフに係争地にある森やら山を譲ったことを聞いて、ソレを例にしたようなのだが……。
不思議とそこが引掛かった。別に反故にするつもりはないだろうし、公子として自分が受け取る領地を切り売りするなら中央も止めないと思うのだが……。
(僕の場合はどうだったかな。確保できない人材やら技術、そして土地を確実に確保する為に確かにエルフやドワーフに譲りはしたんだけど……)
そもそも僕は領地なんか要らなかったし、増やす気も無かった。
だから拡張路線を捨てることで二つの種族から情報を引き出したのだ。そして色々したかった事を完成させ、その技術と引き替えに……。
そこまで考えてようやく気が付いた。彼の意見には面白みが一つもないのだ。僕は村を和風の城として防御陣地みたいな構成にしつつ、色んな技術を試したりしたのである。これに対し彼の話には、身を切るつもりで妥協しかして居ない。
「ちょっと考え方を変えようよ。このままだと水棲種族にとっても僕らにとっても旨味が少な過ぎる。今ある現状を何とかやり過ごして、嵐が過ぎ去るのを期待する様なもんだからさ」
「言いたいことは判るが、親父たちが掌返したら領地自体イチャモン付けられて奪われかねんぞ?」
要するにこの計画が後ろ向きなのが悪い。
安全な避難先を確保したい水棲種族に恩を売り、居住権と避難権を保障する代わりに出兵してもらう。色々と技術やら現物も提供するとはいえ、それでは上層部の計画と何処が違うのだろうか?
それこそ水棲種族の有力者の中に、反対意見が出たら成立が怪しいくらいの案件だ。実際に大公が失態だと言って、領地を渡すという話を反古にしかねないのだから。
「構図自体は変えないんだよ。変えるべきは計画の発展性と、実際に作り上げる町の構造さ。前に話し合ったじゃない? 南方鎮台を一から自分たちの作りたいように作れたらって馬鹿話」
「まさか……あれをやるってのか!?」
そう、ギリギリ確保して右から左に提供するから面白くないのだ。
それだったら物凄く未来的な港湾都市を作り、水棲種族の一大拠点になるくらいの造りにしてしまっても良い。それを共に作り上げ、必要な技術も土地も提供するのは彼だ。もし取りあげたり反故にされた場合、彼と上層部のどちらを信用するだろうか?
そこまで共生関係を築いて、ようやく水棲種族と明るい未来が築けるのではないだろうか? そしてそこまでするからこそ、本気度や計画性に保証ができるのだ。
「陸のど真ん中と沿岸じゃ必要な物はまるで違うけど、思い切った物を作るならこっちの方が面白いよ。大型船を建造するドックだとか、艀を幾重にも繋いだ連環船だとか、そこを拠点に行き交うタグボート……牽引船とか面白いと思わない?」
「そりゃあそうだが……」
せっかくなので軽く絵に描いてみよう。
下敷きとして木の板にペンで線を入れ、それなりに存在しそうな海岸線を描く。ソレを利用した守り易い土地に対し、以前に見た赤色港以上の港湾都市を想像していく。
大型のクレーンを設置する建造ドックに、荷物積み下ろし専用の小さなクレーンを塔の上に配置。風雨を退ける防波ブロックに防風林と言う感じだ。
「概ねこんな感じの施設を用意して、できれば水棲種族が陸に上がっても漬かれる大きな水槽……プールがあると良いかな。普段は働く水棲種族の人たちが休むために使って、嵐が来たら子供たちにはそこに避難してもらおう」
「それなら陸路側には防風林ならぬ防砂壁が必要だな。ここまで都合の良い場所ってなると、砂漠に面した場所かねえぞ」
前に話し合った時もそうだが、こういう話になると彼も乗って来る。
陸路の側に壁を築き、その向こうに堀を掘って防御力を高める。その上に橋を架けて不要な時は閉ざせるようにしておくそうだ。まあ水棲種族なら堀を掘るのは水に浸かりながらできるしね。
もし砂浜だったら、穴を掘った後でコンクリ製の側溝を埋めても良いかもしれない。ひとまず硬い何かがあれば、砂浜も簡単には埋まらないだろう。
「どう? 僕は十分にアリって思うんだけど」
「アリも大アリだ! 詰まらねえ計画よりもよほど楽しいしな。問題は予算と時間の方だが……」
「そこは未来の計画で良いでしょ。別に上陸地点が二か所あっても良いしね」
今必要なのは中間拠点の島と、確実に守り切れる上陸地点だ。
夢のある計画は無理に同じ場所にする必要はない。上陸地点の近くにあれば話として出し易くはあるけれど。
そしてこの話に必要な物は資金以外は揃っているのである。時間は今である必要はないし、建設する為の技術はある。水棲種族にとって僕ら以上にこの計画に乗り気な為政者などいないのだ。後は戦闘行動に関して、確実かつ安全策を練って居れば問題ないだろう。
こうして新しい計画書を携えた僕は、南領の諸将に大筋のみを書いた手紙を早便で送り、急遽戻るのであった。
と言う訳で南部に戻りつつ、水棲種族を説得する話になります。
戦うのに兵を出してくれ! と頼むのではなく、一緒に面白い街を作ろうぜ!
と誘う感じですね。
なお、明日には一日予定があるので、明日のUOはありません。
前にも言っておりましたが、土日に予定が入ると書き溜めが出来ないので
来週のUPも飛び飛びになるかと思います。
楽しみにしておられる方は、申し訳ありません。