妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】   作:ノイラーテム

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第七章
新年と戦闘準備の幕開け


 新年になったが、それで何かが大きく変わることなんかない。

とはいえそれでは寂しいので、年度末の整理で生じた備蓄食料や油を放出したり新たに届いた魚介類を振舞う事にした。

 

まずは粗削りな濾過器の元に赴き、昨年までの使用済み油を汲み上げた。ガラスの器を使う事で、中身が綺麗な事を判り易く説明して見せる。

 

「古い油を新しい油へ。これを使ってみんなで楽しく食べようか。残り滓は石鹸や肥料に替えちゃうけど、この油は欲しい人たちで分けても良いよ。新しい年に!」

「「おお! 新しい年に!」」

 上澄みだけを使って串揚げを用意する。

判り易い料理である上、備蓄から次の収穫までを引いた残りの食材を放出するので、滅多に無い食べ放題が出来るという訳だ。油自体も貴重品であり、無料で新しい……実際にはリサイクルだけど手に入るならば庶民にはありがたいものである。

 

とはいえこの辺は実験の失敗というか、成功しなかった話でもあるので残念だ。植物油は商品作物になるほど量が採れず、石鹸はこの世界では普通に作られているので売れる程でもない。どちらも植物を改良しなければ、儲けにはならないだろう。

 

「早く早く! こっちでも食べようよ~」

「焦らないの双葉。みんな揃ってからね」

 材料自体は同じだが、僕らの方は料理がもう二種類ある。

水棲種族の亀老師たちも居るので、彼らが食べ慣れない肉類を減らし、代わりに魚介類を多めにしたからだ。ちなみに増えた料理は魚貝シャブシャブとオデン。薄切りにした魚や貝を鍋に潜らせたり、練り物にしてから煮込んでいる。

 

ちなみに全員が揃ってないのは、よりにもよって領主夫人である麗さんが朝から出掛けてまだ戻ってないからだ。出掛けるところまでは僕と一緒だったのだが、そのまま居残ったというか……。

 

「ふう……。お待たせしました、あなた」

「御帰りになったようだね。ご苦労様」

 艶々するほど上気した表情で戻って来る麗さん。

これで胸元とか乱れてたらNTRであるが、幸いなことにむしろ朝よりもピッチリしていた。そういう隙を見せないぞと言う気構えが見える程であり、かといって上位者である悌さまや侯爵さんが訪れていたわけではない。

 

まあウチで最上位の御方が来臨されていたので、そのお世話に行っていたというべきか。

 

「はい。娘々はそのうちにまた訪れるとの事でした。あなたにもよろしくと言伝を預かっております」

「それは良かった。ありがたい祭神さまなので、失礼のないようにね。まあ君に限ってそんな事はないと思うけれど」

 接待していたのは我が神である九天玄女さまである。

年末にご来臨されたので麗さんも連れてご挨拶に赴いたのだが、何をどうしたのか麗さんはあちらに入り浸ってしまった。どうやら高貴な物が好きで上位者に仕えたいという、ある種のブランド欲求があったようだ。そういう意味で御姫様の侍女をしてた時は幸せだったと思われる。

 

そういえば封建制度と言う物が上手く機能するには一部のサディストと絶対多数のマゾヒストが必要だというが、本物の神さまに出逢った事で麗さんのM心が天元突破したのだろう。

 

(旦那よりも神さまを優先するとか宗教法人に嵌ったセレブっぽいけど、まあ愛人見つけてベッタリよりは余程マシかな。上流階級は子供生まれたら、お互いに愛人作るとか普通らしいし)

 相手が九天玄女さまでは怒れないというか、奉仕してくれるのはありがたい気がする。

ついこの間まではツンケンする部分もあったのだが、今では娘々のお言葉もあってすっかりナリを潜めている。即落ちニコマと言う言葉があるが、麗さんはそっち系の人なのだろう。

 

今度、機会があったらMな人が喜びそうなエッチな事を夜の営みで試してみようと思いつつ……今はそんなことを口にする時間帯ではないので、表向きの話をしよう。

 

「今年の作戦の成功を祝って宴会と行こうか。亀老師さん。何か今のところ、判った事はある?」

「……あー。そうですの~。舟の件で、少しあったとかー?」

 水棲種族の元へ蝦衛視を送り返し、ハーピーの事を調べてもらっている。

ついでに舟を建造する為の資材を持って行ってもらい、現地でも問題なく浮かぶか牽引すれば問題ないかをチェックしてもらっていた。開拓地に橋と水路を作って移動し易くしたため、その辺の情報伝達が早くなったのはありがたい。

 

本当はエルフ族の領域を通る方がよほど早いのだが、少なくとも吊り橋を幾つか建設してから交通許可が降りる事になっていた。おそらくは全ての吊り橋を作るころには、通行する部分を秘密にする必要がなくなるからだろう。

 

「うん? あ、連環の計も試してみたのか。……言われてみれば確かに、向こうで縦横に組むなら専用の窪みもあった方が良いよね」

 此処で言う連環の計とは、上陸用の運搬舟と柵用の木材を繋いだ物だ。

簡易的な艀として固めて動かすことが可能で、途中まではガレー船で引っ張るのだが単独よりも安定する。それ以上は引けない重さや波の抵抗になったら増やさない様にすればよいのである。

 

迂闊だったのはこの計略と向こうで組み立てる船・柵を自分で提案しておきながら、組み合わせ易くするための窪みを上陸舟の側に作っておかなかったのである。舟は舟として完成しているので油断してしまったらしい。

 

「せっかくみんな規格化に慣れて来たことだし、とりあえずは次のバージョンから試そうか。そういう意味でも亀老師さんたちが居てくれて助かりました」

「い~えのう。ワシらも不慣れやん大工仕事を、教えてくださり、助かっとりますわ」

 亀老師たちは本来人足であり、大工仕事も覚えて置いた方が楽に橋を建設できる。

そこで少しずつ覚えてもらっていたわけだが、彼らは職人たちの様に前例や師匠の教えを踏襲している訳ではない。最初は規格化にあまり納得が行っていなかった他の町の大工たちも、自分たちが教えたばかりの彼らが徐々に上手くなるコツが、規格化されたサイズであると知って徐々に考えを変えてくれたのであった。

 

最初に領主である僕が口にしても報酬を積んでもあまり良い顔をしなかったのに不思議なものである。自分たちが納得できる前例ができると考えを変えるということだろうか?

 

「蝦衛視はそのままあちらに?」

「そうですじゃ。ほ~かの島にも居らんか、探しちくるーいう話じゃて」

「なるほど。合流されたりしても困りますしね」

 事前調査で頼んでいるのは、島の構造と生活サイクルである。

鳥目で夜に眠るのか、夜間でも全く問題ないのか、風や雨はどうなのかと行った情報を踏まえて相手の生活サイクルを掴めれば攻め易い。その上で島の構図が判明すれば、どこから攻め入ってどのように制圧すればよいか判るのである。

 

逆にやってはマズイことは、適当に追い散らして魔族なり賢いハーピーと合流させてしまう事だ。ここが強いだけの雑軍と思っていたら、賢い同族や魔族に率いられて軍隊化されると非常に困る。そういう意味で、戦う時は殲滅させるつもりで行くべきだろう。

 

(どうせ他の島も落としておきたい所だし、丁度良いかな? これで城ケ崎を陥落させずに済むはずだ。後はあいつが連れて来る西の西の連中がどう出てくるか、かな?)

 ピストン輸送作戦は何とかなるように思われてきた。

危険な要塞なんか無視して幾つかの島に分散して待機し、ガレー船で一気に牽引すれば良い。上陸して陣地を築き、迎撃するところまでは何とかなるだろう。近代戦で上陸戦で最も危険な部分は何とか出来そうなのだが、問題はこれが近代ではない中世レベルのファンタジーだということである。

 

魔族の精鋭が待ち構えていたら、上陸だけ何とかなってもダメだろう。食料の手配はしておくにしても、精鋭相手では勝手が違うのである。僅か千・二千と侮って、強力な魔物の集団だったらこちらが半壊しかねないのだから。

 

そういう意味で南商豪……キリー・グラントの連れて来る西領よりも西の連中の話が聞きたい所である。




 と言う訳で新章です。
西領を奪還する作戦の始まりと言う感じですね。
あとは去年までの成果で、大工・エルフ・水棲種族との仲が少し良くなってます。
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