妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】 作:ノイラーテム
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各地における新年から春にかけての収穫に関する報告を聞くと、予想通りの結果だった。
良くも悪くも予定通りで、当然のことながら開拓地に関しては鳴かず飛ばす。あくまで通過地点の宿場町でしかない。本格的に収穫が見込めるのは秋以降だろう。
とはいえ現地で確認するとしないとでは大違いであり、今年の秋の本収穫が楽しみだ。そして僕はもう一つの収穫に関して聞くことになる。
「これがあいつらに関する報告よ。お礼はタップリしてくれるんでしょうね?」
「助かりました、紅梓さん。領地に戻ったら新作のケーキを出しますよ。蝦衛視もありがとう」
「いえ。こちらの用事でもありますので」
西領のハーピー他に関する情報が出そろった。
占領予定の島とその周辺、そして島と西領そのものの上陸予定地点から見た光景など、思いつく限りの情報を頼んでいた。
これに海流と風向きを合わせた高炉の情報を組み合わせると、おおよその作戦日程が組めるだろう。
「洞窟が幾つかと、大きな樹を中心にした森か……」
「先に言っておくけど色んな意味で、樹を燃やしたり切り倒すのは無しにした方が良いわね。エルフだから言うんじゃないけど」
久しぶりに見た紅梓さんはフードを深くかぶっていた。
日差しがキツイのもあるが、島々に潜入中はハーピーの出す汚物のせいで習慣になってしまったそうだ。あちこちの樹からフンが落ちて来るのが日常だったらしい。
ともあれ汚物があるから問題と言って居る訳ではないだろう。
「もしかして西領から判ります?」
「はい。強襲するだけならまだしも、燃やしたり切り倒してしまうと判ってしまうでしょう」
どうやら距離感の問題らしい。
当たり前と言えば当たり前だが、上陸の為に場所を確保する予定なのだ。ハーピーが居る島を選んだのは、水棲種族を狙う事もあるから利害が一致する事。そして上陸作戦中に操られて襲われては難儀するからである。
その辺りを考えれば異常を見掛ける可能性は高いと判断するべきだろう。魔物の住む島なので常に監視しているわけではないだろうが……。
「では作戦決行日は雨天を突いた方がよさそうですね。風雨の進軍は注意が必要ですが、メリットも大きいですし少数ならば体調のコントロ-ルも可能ですから」
「ウゲ、面倒くさ」
「我らは雨天を難儀しませんので、お任せください」
雨天で攻め入ると、鳥類に近いハーピーは雨宿りをしているだろう。
視界も悪く音も聞き難いし、臭いも広がらず飛ぶだけでも難儀する。もちろんこちらも風邪に掛かり易くなるとか足を滑らせ易くなるのもあるが、同レベルの問題ならば西領側から見えないというのが大きなポイントだった。仮に水棲種族が見張りに立ってくれるならば、かなりの可能性で隠匿してしまう事が可能だろう。
ついでに言うと魔物を狙うならば巣を叩き潰すというのが鉄則だ。相手にイニシアティブを渡すとロクな事がないのだが、巣を狙う場合は可能な限り守ろうとしてくれる。
「というわけで作戦決行は姿や流血が海岸にまで達するなど、目撃を避けるために雨が続くと判っている時期に決行。できるだけ早い時期にしかけて途中で魔族が気が付いても、人間が目障りだから傭兵を送り込んだと思わせられる期間を空けます」
時間を空ければ空ける程にスケジュ-ルがタイトになっていく。
発見されると防備を固められて面倒なので、可能な限り雨で血を流せる時が良いだろう。ハーピーのみならず発見されるのが第一の問題だ。それに比べたら戦闘力とかは二の次だと言っても良い。
そして島の地図を眺めながら、おおよその作戦を組み立てて説明していく。
「第一陣はお任せします。こちらの少数精鋭を巣の中心部まで送り込むための前衛……と思っていただければ幸いです」
危険な巣への進軍は僕らが担当するが、上陸戦は水棲種族に任せる。
人間同士の戦いなら水際が一番危険なのだが、水の中に住む天然の水兵たる彼らならば安心だ。精鋭の海兵ともいうべき兵を投入して作戦初動を支えてくれるだろう。
「銀大人の仰せの通りに。どのみち、我らの女子供を狙う敵です。お気になさらず」
「そう言ってもらえば助かります。島は作戦終了と共に、貴方たち向けに改良いたしましょう。港湾計画の一端としてね」
今回、水棲種族の全面的な協力を得られたのはこの点だった。
ハーピーは空を飛んで目の良さを活かしながら獲物を狙う。その意味でまだ地上に慣れない子供や、油断している女たちの作業中に狙って来るとか。人間だったら考えられない距離であろうとも、風にのって飛べるのでつい油断することも多いそうだ。
そして上陸作戦に使った後は、駐留に使った島々をそのまま彼ら向きの島として施設を建築し、再利用するということで話が付いていたのだ。それこそ遊牧民に売り渡す保存食などは、その島で造ってしまった方が便利だろう。
「それはそれとして『ボーラー』の習熟度合いはいかがですか?」
「流石に紅小姐の弓には及びませんが、使える者は多くなりました。各隊に最低一人を配して今は徐々に増やしているところです」
「それで構いません。戦いは数ですので」
ハーピー戦の切り札は普通にボーラーで攻めるというものだ。
この武器は二つの錘を紐で繋いで振り回し、手足に絡めるという武器である。相手は翼もあるし数も居るので、何人かで投げつければどれかが当たるだろう。もちろんそれで倒せはしないし、減る数も少数だ。
しかし水棲種族たちが一斉に投げつければかなりの数が落ちるし、ボーラーは再利用できるのが大きい。投網の方が命中率は良くとも、再利用し難いのと対照的であった。
「後は強力な個体が居るかどうかだけど……紅梓さん、何か判った?」
「流石に探しきれないわよ。せいぜいが隠れながら島の外縁で歩き回っただけだもの。ボートをひっくり返して潜り込んだり、森の色をした上着とかは役に立ったけどね」
普通の人間ならば潜入すら無理だが、熟練のレンジャーである紅梓は入り込めたようだ。
だが残念ながら島の中心部には移動できず、潜水具代わりのアイデアとか迷彩服代わりのマントが役に立ったに過ぎない。
とはいえこの時点で理解出来る事がある。
「そうでもないよ。何日も見張って見かけられないって事は、居たとしても島の中心部から出てこないんだ。蟻や蜂の女王が動かないようにね。もしグリフォンとかを手懐かせていたら、何処かで見かけたと思うよ。だから危険があれば僕らのチームで対処すれば良いはずさ」
「それはまあ……そうなんだけどね」
島の構造とこれらの情報を組み合わせればおおよその事が判った。
空を飛ぶから兵の配置みたいなことは判らないけれど、空を飛んでる数を何割り増しかすれば予想はつく。もし大幅に多かったとしても、目撃数の二倍というところだろう。
こうして基本計画を組み、計画書をかき上げて緋家や紅家に書状を送った。春にでも精鋭を率いて出撃し、外国経由の大回りで西領近くの島へ移動することになるだろう。
「それにしても……遠回りだというのに物凄く早いんですね。さすがに水棲種族の方が味方に居ると違います」
「今回は少数の兵を送り届けるだけというのも大きいかと。大船ですと目立ちますし、乗り継ぐと速力の利を活かせませぬ」
此処で重要になるのが海流と風力による加速だった。
大回りして遥か南にある外国の方まで行くのだが、それでもそれほどの時間が掛からない。大航海時代前後の船を扱ったゲームをしたことがある人には判ると思うが、海流と風の両方に乗れると大違いなのである。
そしてこのコースを取る場合の注意点は嵐や急な浸水であったり、間違って風のない凪に掴まって海流の弱い場所に取り残される危険性があるが、水棲種族が居れば幾らでもリカバリーが効くのが非常に大きかったと言えるだろう。イザとなれば脱出用のボートを引っ張ってもらえば、近くの島に上陸して難を逃れる事が可能という点で安心だった。
何が言いたいかと言うと、紅家の三男坊こと紅包さまが今回の出征では協力してくれるのである。
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いしますね。
と言う訳で計画が立ち上がり、精鋭部隊を構成して一路敵地へ。
次回くらいには上陸して戦闘になるんじゃないかと思います。