双子系Vtuber、はじめました。 作:えびんす
もっとこう……双子の強みというものを活かしたい……。
リスナーからの質問に答えていき、ふと時計をみると、予定していた時間を少し過ぎていた。まあこのぐらいなら許容範囲だろう。遥香に合図を出して次の予定に移る。
『んじゃあ次はましまろ返していこっかー! 皆投稿ありがとねー!』
『早くも沢山のましまろが投げられました。皆さんありがとうございます』
『いないとは思うけどくそまろ投げたりしてないよねー?』
:ギクッ
:いやいやまさかそんなハハハ
:よもやよもや
:そんなことしてナイアルヨ?
:どっちだよ
『おやぁ~? 怪しい奴がいっぱいいるなぁ~?』
『別にくそまろも面白かったら返していくけど、あんまりにもあんまりなのは弾いてるからな』
くそまろとは文字通り、AIに引っ掛からない程度の変な書き込みをしたましまろのことである。余談だが一期生にも一人くそまろを送り付けられまくる人がいるのだが、あの人は捌き方が上手いので、そのリアクションを期待されてまたくそまろを送り付けられる悪循環に陥っている。
『ちなみにくそまろ担当は里奈だからな』
『ちょっとお兄さま? 妹ちゃん何も聞いていませんことよ?』
『おう、今初めて言ったからな』
『え、何? 優斗なんでそんなことするん? 妹をそんな地獄に叩きつけて楽しいん?』
『端から見て面白そうだと思った』
『なんなん? 兄上あたしのこと実は嫌いなん?』
『嫌いだったらこうしてお前とVtuberなんかやってねぇよ』
『『うへへへへへwwwww』』
:流れるような某芸人で草
:仲良しかよ
:そら兄妹でライバーになるぐらいだから仲は良いでしょ
:うちの妹に同じことしたら無言でビンタが飛ぶ
:女だけどうちの兄貴こんな話しかけてこない……
:それが普通よ
言いながら配信画面にましまろのページを表示できるよう準備する。操作ミスに気を付けながら、なるべく会話が途切れないように注意しながら。
『はい、優斗がせっせこ準備してくれたので早速返していくよー!』
『たまには変わってくれていいんだぞ妹よ』
『やだ。優斗のPCだから壊したりしちゃったら後が怖いし』
『漫画の機械音痴じゃないんだからそうそう壊れるかよ……まあいいや、というわけでさっそく一つ目のましまろ、はいこちら』
【双子って趣味嗜好が被るとよく聞きますがお二人はどうですか?】
『えー、どうだろ? あたしたちそんな被ってることあるかな』
『意識したことねえなあ……好きな食べ物なんだっけ? 俺麻婆茄子』
『同じく。飲み物は? あたしコーヒー』
『俺もコーヒー。ちなみにブラック派』
『あたしも』
『好きな動物は?』
『『犬』』
『好きな花は?』
『『マーガレット』』
『……好きな映画のジャンルは?』
『『のんびりしたラブコメ』』
『…………把握してる相手の癖は?』
『『嘘つくとき目が左に泳ぐ』』
『『気持ち悪ぃ!?』』
:ファーwwwwwww
:いやそんなことある?
:被りすぎてて草
:さすがに台本とか打ち合わせとかでしょ(震え声)
:いくら双子でもそれはウソでしょ
:パーフェクトシンクロ
:ロッ○マンエ○ゼかな?
:ごめんちょっと引いた
いや俺らもビビった。普段全然意識してないだけでそんなに趣味嗜好が被ってるとは思わなかった。なるほどこれがシンクロ芸ですか。
『えぇ~、なんかここまで来るとちょっと怖いわ……優斗明日から好きな食べ物ハギスとかにしてよ』
『ふざけんな誰が好き好んで血の腸詰めなんぞ好物に指定するか! 里奈こそセンブリ茶とかでいいだろ!』
『なんでよりによってクッソ渋苦い苦行茶なんだよ! あんま変なこと言ったらしまいにはムカデ人間見さすぞ!!』
『とっくに見たよ』
『ウソでしょ!?』
『ウソに決まってるだろ』
『ンッギィィィィイイイイ!!』
:もはや芸術のような煽り
:乙女が出しちゃいけない声出してる……
:どこから出してるんだよwww
:クッソ汚い声で草
:お労しや妹上……
『あーもうムカつくから次いこう次!』
『ごめんて。はいというわけで次のましまろ出します、はい』
【配信見た感じしょっちゅう喧嘩してるっぽいですけど、普段喧嘩とかしますか?】
『いや、普段はそんなでもないかな』
『むしろ静かなもんだ。子供の頃はまあちょいちょいあったけど、流石に良い年だしな』
『というか子供の頃って何で喧嘩したんだっけ? すっごい下らない理由だった気がするけど』
『里奈が何でもかんでも俺とお揃いの服にしてどんどんボーイッシュになっていったから、可愛い服着せたかった母さんが落ち込んでたことを注意して喧嘩になったな』
『あー…………そんなことあったね。全部優斗と一緒じゃないと嫌だった時期だ』
『今は年相応の服装してるからお兄ちゃん安心ですよ』
『まあこの年になって兄妹でペアルックは流石にね』
:子供の頃の兄妹見てみたい
:絶対見分けつかなさそう
:親でもどっちがどっちか分からない時ありそう
:双子の双子コーデはもはや分身なんよ
『あー確かに。最近アルバム見返したら、服も髪型もお揃いでマジでどっちが自分だったか分かんなかった写真あったなあ』
『あれホントにどっちがどっちだったっけ……自分でも分かんないんだよね』
『でも何故か母さんも親父も区別付いてたんだよなぁ……何回かイタズラでからかおうとしたけど全部一発で見抜かれたし』
『「そりゃあ親ですもの、分かるわよ」って言われたけど、今考えても本気で謎だよね。親ってすごい』
:親ってすごい(小並感)
:偉大だよな
:何だかんだ俺も親には感謝してる
:机の上にエロ本並べるのだけはやめろ嫌がらせか
:親になるとエスパーになる説
『そういや小学校の頃の同級生が、中学になって里奈の制服見て「お前女子だったの!?」って叫んでたことあったよな』
『あーあったあった! 逆に「今まで男だと思ってたのかよ!!」ってキレちゃったけど今思うとちょっと理不尽だったよね』
『俺も口に出さなかったけど、無茶言うなとは思ったよ。ずっと俺と一緒だったから必然的に男子と遊んでばっかりだったし』
そもそも子供の時の遥香が女子と遊んでるところ数えるぐらいしか見たことないわ。高校だとちゃんと同性の友達と遊びに行ってたけど。
『いやでもさぁ、さすがに声とかで気付かないかな?』
『中三まで声変わりもせず身長もほぼ一緒だったからしゃーない、ほら謝って』
『同級生君あの時はマジでスンマセンしたぁ!!』
:そら(顔も髪も服も同じじゃ)そう(思っても仕方ない)よ
:同級生君かわいそ
:いや双子とはいえ男女で顔そっくりってそうそうなくね?
:子供の頃ならまあ可能性はある
:今は見分け付くんか?
『まあ今は身長も違うし、顔付きも違ってきたから一目で分かるぞ』
『体つきも全然違うしね。あたしスタイル良いし』
『ちなみに里奈の中の人は身長171cmです』
『優斗の中の人は182cmです』
:でっけえ!
:180とか男でもでかい方だろ
:いや里奈も結構背高い
:モデルかな?
高校入ってから一気に身長伸びたからなあ。中三の時は160cm後半だったのに、高校入学から一年で15cm伸びたときはビビった。
まあ母さんの親族が外国人ってのもあるけど、親戚皆でかかった。女性でも170後半とかザラだったし、男で180越えてないと人権ないような錯覚起きるよ。
『ちょっと話逸れてきたから次いってみよ~』
『あいよー、はい次はこちら』
【付き合った人とか……いらっしゃらないんですか?】
『『戦争がお望みか?』』
:即答は草
:腹抱えて笑った
:その喧嘩俺も買った
:拙者明らかに恋人いない歴=年齢の相手に確信をもって聞いてくる奴大嫌い侍、義によって助太刀致す
:拙者も同心致す
:処す? 処す?
:野郎ぶっころがしてやる!
『このましまろ送った奴には毎食何かしらの食べ物が歯に挟まって中々取れなくなる呪いをかけるから覚悟しろ』
『あたしもコイツが海外のアングラでMAD素材になる呪いかけとく』
:地味に嫌な奴
:自分がMAD素材になるとか嫌すぎる
:なんて恐ろしい呪いなんだ……
『はいというわけで次』
『あいよハイどん』
【三井……お前がこんなことしてたなんて知らなかったよ……】
『三井が誰だか知りませんが人違いですね』
『こういう中の人のリアル知人が送ったみたいなましまろやめなさいよ生々しいから』
『全国の三井さん兄妹にあらぬ疑いがかけられるでしょうね』
『三井さん本当にごめんなさい、はい次』
【この間貸した三十円返して】
『借りた覚えが全くねーでごぜーますよ』
『てか三十円て』
『完全に自販機で細かいの足りないから借りた奴じゃん、なんならその日のうちに崩して返せる奴じゃん』
『延滞するような金額じゃねぇよなこれ』
『くそまろ多いなぁ……』
:くそまろ捌き配信になってきた
:毎回思うけどこういうくそまろってセンスある奴とない奴別れるよな
:センスある奴なに食ったらこんなの思い付くんやってくそまろばっかやからな
:段々塩対応になってくる兄妹草
:心なしか顔が虚無に……
『次いこうか』
『次はまともな奴だな、はいこちら』
【魔道学院に通っているとのことですが、もしかして魔法が使えるんですか?】
『もちろん使えるよー、ほらあたしらの髪見て、メッシュ入ってるっしょ?』
『皆に分かりやすいように、俺達が得意な属性魔法をメッシュに入れてるぞ。里奈は想像付きやすいよな』
:確かに気になってた
:里奈ちゃんは火と水か
:優斗くんは風と雷?
:土かもしれん
『そうそう、あたしは火と水ね! 優斗が風と雷なんだよー』
『まあ魔法使えるって言ってもド派手な攻撃魔法とかは禁止されてるんだよな。せいぜい生活に便利なぐらい』
『今の時代に攻撃魔法使ったら普通に犯罪だしね』
:それはそうやな
:しゃーなし
:世知辛いな
:でも魔法ってだけでロマンあるよな
:どういう風に使ってんの?
『そんなに大したことはないぞ。風操って洗濯物乾かしたり部屋の換気したり』
『あたしはキャンプとかバーベキューに便利なぐらいかなー、火起こしの必要ないし、水もすぐ用意できるし』
『雷魔法なんて電気要らねーじゃん! ってなると思うだろ? 変圧器通してないから電圧高すぎて家電が全部駄目になります』
『子供のときケータイ充電しようとして爆発して大騒ぎになったよ』
:ヒェッ
:ケータイ爆発はヤバいな
:意外と魔法もそこまで便利でもないんやな
:高度に発達した科学は魔法と区別が云々
:科学は良いぞおじさん「科学は良いぞ」
言うまでもないがこの話は勿論作り話。遥香とあらかじめ魔法に関する質問などはこう答える、というチャートを組んであるのだ。
なのでリアリティのある、あたかも本当に体験したかのような話にはいくらでも出来る。ボロが出ないように気を付けないといけないが。
それからもいくつかのましまろを消化し、もう一度雑談に戻ってしばらくしたところで配信を終える。
「ふう…………」
「はへえ……」
初回に比べれば少し慣れてきたが、やはりまだまだ緊張してしまう。会話も途切れ途切れになっていた部分が何度かあったし、用意した答えも度忘れする始末。
「難しい……配信って難しいよ……」
「何だかんだまだ二回しか配信してないからな……ド素人なのは変わりねぇ」
「なんか配信のコツとか誰かに聞けたらなー」
「誰かって誰だよ……」
「…………三期生のみんな?」
「あの人らもそう大して変わらねえだろ、みんな素人だって言ってたし」
なんか鮎川聖こと美咲さんだけすでに5回も配信してたけど。あの人ジムインストラクターだけあって体力有り余ってるのかな。
内容はまあうん……ひたすらリスナーを奴隷に仕立て上げてたよ。キャラ変わりすぎて怖いよ。普段めっちゃ気さくなのに。
「…………あ、そういや明日」
「うん……丹生さんのとこ行く日だね」
緊張すると大事なこと頭から抜ける現象なんなんだろうな。
この前約束していたギルバルト五世こと丹生俊輔さんが切り盛りする喫茶店に行く日。小鳥遊セレナこと棗凛花さん、鮎川聖こと金生美咲さん、そして我らが玉緒さんも集まる、実質三期生オフコラボ。
なんかSNSでも三人ともそのこと呟いてるし。
小鳥遊セレナ
『明日三期生で集まって遊びに行くぞー、アンナコトコンナコトは期待すんなー? 御簾納の二人とも初めて会うから楽しみだぞ!』
鮎川聖
『三期生のみんなと遊びに行ってきます。優斗くん、里奈さんと初めてお会いしますので、報告を震えながら待っていて下さいね、豚共』
ギルバルト五世
『余の城に三期生が遊びに来てくれるぞぉ~! 御簾納兄妹とも初顔合わせだから緊張してしまうなぁ! ワクワクして夜しか眠れん!』
思い思いに呟いてるけど、みんな俺たちのことを一番楽しみにしてくれているらしい。やめて変な期待しないて面白いことなんにも出来ないから。
「…………俺達も呟いとこう」
「なんて?」
「コミュ障なのは伝えてるんだ、存分にネタにしよう」
「ネタに出来ないぐらい重症ですけどね……」
言うな妹よ、悲しくなるから。そんなことを心のなかで呟きながら、SNSに文章を入力していった。
御簾納優斗
『明日三期生のみんなに会いに行ってきます。コミュ障にはあまりにもキツいハードルです…………』
御簾納里奈
『他人と顔合わせるの恐怖でしかない。緊張して吐いちゃったらごめんなさい……』
俺達のお知らせを見たフォロワー達からは『うーんこのコミュ障』『御簾納さあ……』『しゃーない、気楽に行け』『骨は拾ってやるよ』などなど生暖かい応援メッセージを頂いたのだった。
他人との会話ってどうすれば続くんでしょう(素朴な疑問)