双子系Vtuber、はじめました。   作:えびんす

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前話投稿して寝ておきたら一気にしおりお気に入り増えててビビりました。
二度見して顔洗ったあとメガネ拭いてもう一回見ました。
夢じゃなくてビビりました。
拙作にお付き合いくださりありがとうございます。


#09~喫茶店行くときでもないと食べないよね、ピザトースト(前)~

「ええーと……この先を左に曲がって……?」

 

「あ、遥斗この道じゃない?」

 

「これか? 大通りから外れるけど……」

 

「まあ行ってみれば分かるよ。隠れ家的って言ってたし」

 

 

 日曜日。先日のwishcord打ち上げ会で決まった、『ギルバルト五世こと丹生(にぶ)さんが営む喫茶店へ、マネージャーの玉緒さんを含めた三期生で集まってワイワイしよう会』の当日である。

 

 セレナこと(なつめ)さんはレポートの為に図書館へ寄ってから、聖こと金生(かのう)さんは家の用事、玉緒さんは仕事の打ち合わせがあり、各自現地集合という形になった。

 

 丹生さんのお店は原宿の少し分かりづらい場所にあるとのことで、事前に住所を教えて貰い、スマホのナビ機能で街を歩いていく。

 

 あとから聞いた話だが、本来日曜日は定休日らしい。それを丹生さんの好意でわざわざ貸し切りで開けてくれるというのだ。あの人心が広すぎる。お土産に菓子折り持ってきて正解かもしれない。

 

 余談だが飲食店なのに日曜日が定休日なのは珍しいですね、と丹生さんに言ったら「会社員時代から憧れだったんです……休日に休めることが」と生気のない声で呟いていた。しばらく無言になって気まずかったです。

 

 

「どんなお店だろうねー」

 

「まあ丹生さんから聞いた限りだと小ぢんまりした純喫茶じゃないか? 奥さんと二人で切り盛りしてるみたいだし」

 

「なんか良いよね、奥さんと二人でって」

 

「夫婦で喫茶店、良いよな。柄も言われないエモを感じる」

 

「…………ダジャレ?」

 

「いやたまたま……っと、ここを右か」

 

 

 そんなしょーもない会話を交わしながら、スマホのナビに従って進んでいく。いやはやしかし手元で道案内をしてくれるとは、便利な世の中だ。特に人に道を聞かなくても目的地に辿り着けるというのがコミュ障的にポイント激高。

 

 

「あ、これじゃね?」

 

 

 とかなんとかやってるうちに目的の店にたどり着いた訳なのだが。

 

 

「…………普通の家だよな?」

 

「うん…………?」

 

 

 そこには店舗といえる建物はなく、周りと比べてもデザインが新しく大きめなぐらいで、ごくごく普通の民家が建っていた。え、本当にここ?

 

 

「住所は間違ってないよね?」

 

「ああ、何度も確認した」

 

 

 表札にも『丹生』と書かれているから間違ってはいないはずなのだが、喫茶店という雰囲気ではない。どういうことだろう。

 

 

「…………えーと」

 

「ちょっとウィシュコでメッセ飛ばすか」

 

 

 スマホを操作し、アプリとして落としておいたwishcordで丹生さんに確認を取る。

 

 

【送って貰った住所に来たんですけど、民家しか見当たらないんです……】

 

 

 少し待つと、返信が来た。

 

 

【そこはおそらく正面玄関ですね。ぐるっと裏に回ってみてください】

 

 

「「裏?」」

 

 

 書かれていた通りに丹生さん家の塀伝いにぐるっと回り込む。にしてもこの家大きいから地味に距離あるな。

 

 と、裏手に回った俺達の目に飛び込んできたのは……。

 

 

 

「……あ、これだ!」

 

「おお……ちゃんとしたお店だ」

 

 

 そこには民家と離れて建てられた、シックな雰囲気の立派な建物があった。確かに民家と比べれば小さいし、隠れ家的といえばそうなのか?

 

 

「雰囲気良いね」

 

「だな…………入るか」

 

「あ、ちょっと待って心の準備が」

 

「今さら何言ってんだ、行くぞ愚妹」

 

「ああー待って待って引っ張らないで」

 

 

 遥香のペースで付き合ってたら日が暮れそうなので半ば強引に引っ張り、落ち着いた色合いの扉を引く。

 

 チリンチリン、とドアに取り付けられた鈴が鳴り、中にいた者達へ来客を知らせた。

 

 

「こんちはー……」

 

「いらっしゃいませ」

 

 

 俺達を出迎えてくれたのは、すらりとした体躯の男性だった。

 

 少し白髪が交じり始めた長めの茶髪を後ろで束ね、細目の銀縁メガネを掛け、顎髭をたくわえた男性は、柔和な笑みを浮かべてカウンターの中でカップを拭いていた。

 

 

「柳瀬遥斗君と遥香さん……だね?」

 

「は、はい。初めまして」

 

「こうして顔を会わせるのは初めてだからね。改めまして、丹生俊輔と申します」

 

 

 そう言って丹生さんは丁寧にお辞儀をしてくれた。慌てて俺と遥香も頭を下げる。

 

 薄々そうなんじゃないかなーとは思ってたけど、思ってた以上にイケおじだったよ丹生さん。やだカッコいい。

 

 

「玉緒さん以外はもう奥のテーブルにいるよ。僕はコーヒーを淹れてくるから、挨拶しておいで」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「軽食も気軽に注文してね」

 

 

 そう言うと丹生さんはコーヒー豆を選び始めた。ブレンドコーヒーを作るのかな。

 

 

「奥のテーブルか……行こう、遥香」

 

「うん」

 

 

 この位置からだと丁度パーティションがあって見えないが、その向こうに棗さんと金生さんが居るらしい。言われてみれば少し小さいながらも女性の声が聞こえてくる。

 

 自分でも自覚するほど、いやにゆっくりとした足取りで奥へと歩いていく。ヤバい、また緊張してきた。そろそろ慣れろ、俺。

 

 

「…………っ」

 

 

 ……後ろで俺の服の裾を握りしめっぱなしの遥香よりはマシか。やめろ遥香シワになる。

 

 

「…………こ、こんちはー」

 

 

 覚悟を決めてパーティションから顔を出す。

 

 

「それでぇ~……ふえ?」

 

「あははっ……ん?」

 

 

 そこに座っていたのは、当たり前だが二人の女性だった。

 

 一人は全体的にゆったりとした……なんだろう、森ガールというのだろうか? ああいったふわりとした服装で、長い栗色の髪をゆるく三つ編みにした女性。

 

 もう一人はなんとジャージのファスナーを全開にさせ、肌着であろうタンクトップを惜しげもなく晒し、下は短パンにスニーカーといういかにもスポーティーな女性。

 

 

「は、初めまして……柳瀬遥斗です」

 

「柳瀬、遥香です……」

 

「おお~! 君たちが噂の遥斗くん遥香ちゃんなんだぁ~! 改めましてぇ、棗凛花です~」

 

「玉緒さんの言ってた通りめっちゃくちゃ顔がいいなあ! あ、改めて金生美咲だよ!」

 

 

 なるほど、声と見た目が見事にマッチしていてこちらも分かりやすい。ゆるふわさんは見た目もゆるふわさんだったし、インストラクターさんも結構ステレオタイプな体育会系女子だった。

 

 

「こっち座って座ってぇ~。わぁ~、二人ともスタイル抜群~」

 

「遥斗くんマジででっかいなー、180台だっけ?」

 

「あ、はい。妹は170台で」

 

「愛想のないデカ女っすスンマセン……」

 

「そんなことないって! うっわ足なっが! 腰ほっそ! え、内臓足りてるこれ?」

 

「二人ともまつ毛バシバシだねぇ~、美人さんだあ~」

 

「い、や、あの、えと…………」

 

「そ、そんなことないっ、す……ハイ、マジで」

 

 

 と、座るやいなや怒涛の質問攻め。褒め言葉のサービスエース、姦しさマシマシ。

 

 い、いかん、これが陽キャ特有のバグった距離感というやつなのか? オフでは初だというのに初っ端からめちゃくちゃグイグイ来られるんですが!? 出会った瞬間いきなりトップギアですか!? 相手にペース握られっぱなしで上手く言葉が返せん!

 

 というか初対面の人間の容姿を出会って早々ガンガン褒めちぎるとかなんなの!? 陽キャ特有の陽キャにしか許されない陽キャムーヴなんなの!? 陰キャというかコミュ障にそれ食らわせたら一撃で蒸発しますことよ!?

 

 

「んー、でも遥斗くんちょーっと筋肉量足りないかなー? 普段全然運動してないでしょ」

 

「わ、分かりますか?」

 

「一目で分かるよ! どこもかしこも細くてビックリした! 遥斗くん位ならマッチョとは言わないけどさ、身体引き締めたらマジでスタイル良くなるって! 今度うちのジム紹介するからおいでよ、指導したげるからさ! ほら例えばこの辺とかこっちの筋肉をね?」

 

「ぅえッ、あ、えとあの、その……か、考えておきます……」

 

 

 あの、金生さん? そちらに下心というかそんなつもりは微塵もないんでしょうし、多分善意で言ってくれてるのは分かりますけど、そんなナチュラルに腕とか腹とかガッツリ触らないで頂けると僕の精神衛生上大変助かるのですが? 

 

 なんなの? 女子って皆こうなの? なんで異性の身体をなんの躊躇もなく撫で繰り回せるの? それともこの人が特別気にしてないだけ? もう僕女の子の心理とか分かんない。

 

 

「わ~、遥香ちゃんお肌すべすべだぁ~! え、化粧品なに使ってるのお~?」

 

「え、っと、特に意識してない、ッス……乳液とかで……まあほどほどに……?」

 

「ええ~っ!? それでこんなにもっちもちになるのぉ~? 私敏感肌だから羨ましいよお~」

 

「あ、アハハ……ありぁっス……へへ」

 

 

 ヤバい、俺もだけどそれ以上に遥香がヤバい。コミュ障炸裂してる。陽キャというかウェイ系のバイト敬語みたいになってる。今まで聞いたことねえよ妹のあんな言葉遣い。

 

 てか、俺もコミュ障じゃなかった時、多分このぐらいの距離感で人と接してたんだよな。しかも当時クラスにいた今の俺ぐらいの陰キャボーイに、こーいう感じで話し掛けてた記憶あるわ。あの時はそんなに怖がんなくても、みたいに思ってたけど今なら気持ちが解る。あの時こんな気持ちだったんだね。ごめんな山下君。もし同窓会とかで会ったら謝る。

 

 

「ほらほらお二人とも。遥斗君達が困ってますよ」

 

 

対応に困っていると、横からトレーにコーヒーを五つ乗せた丹生さんが、苦笑しながら二人を宥めに来てくれた。

 

 

「あ、ごめん……もやしっ子見ると鍛えたくなってつい」

 

「私もごめんね~、ぷるぷるお肌羨ましくてぇ~」

 

「いや、大丈夫……き、気にしてないですから……」

 

「怖ぇ……陽キャ怖ぇよ……あたし死ぬかもしれん……」

 

 

 あかん、会って間もないのにドッと疲れた。これが陽キャか……。

 

 おのれ、ただでは転ばんぞ。ボヤイターでネタにしてやる。

 

 

御簾納優斗

『三期生集合したんですけどセレナと聖の距離が近いたすけて』

 

 

 うわ、速攻で*1リコンプが来た。なになに?

 

 

『は?』

『ふざけんな』

『けしからんもっとやれ』

『羨ましすぎるんだが?』

『そこ代われ』

『いい匂いしそう』

『これは御簾納君炎上ですねえ……』

『優斗くんさあ……』

 

 

  あるぇー、おかしいな味方が誰一人としていないぞ? お前ら今の俺と代わって同じこと言えるのか? この状況コミュ障でなかったとしても男だったらかなりキツいんだが?

 

 うわ、『#御簾納優斗#爆発しろ』って。なんだよこのハッシュタグ。俺だって好きでこんな状況になった訳じゃないんですけど!?

 

 

「まあみんな、コーヒーをどうぞ」

 

「わ~、丹生さんありがと~」

 

「美味しそうだなー」

 

「ありがとうございます」

 

「いただきます!」

 

 

 丹生さんが目の前にコーヒーを置いてくれる。湯気と共に立ち上る豆の芳醇な匂いが鼻をくすぐった。

 

 ああ、落ち着く。この匂いで幾分か気持ちがフラットになるのがいい。しかも普段俺が淹れる物とは全く違い、豊かで奥深い薫り。これがプロの淹れるコーヒーか。

 

 まずは一口、口に含む。最初に来るのは香ばしさ。次いで苦味と、少しの酸味。それらが舌の上で踊り、すぐに喉の奥へ消えていく。後に残るのは、鼻から抜けていく残り香。

 

 ああ。

 

 

「「美味しい……」」

 

 

 思わず遥香とシンクロしてしまうほど。丹生さんが淹れたコーヒーは、今まで飲んだコーヒーで一、二を争うほど美味かった。

 

 

「あははっ、ホントにシンクロした!」

 

「やっぱり双子さんだねえ~」

 

「ああいや、アハハ……」

 

「でも丹生さん、本当に美味しいです!」

 

「そう言って貰えると嬉しいね。僕も店を開いた甲斐があるというものだ」

 

 

 丹生さんは目を細め、人の良さそうな笑みを浮かべた。

 

 

「自分、普段飲まないけど、コーヒーってこんなに美味しいんだ……」

 

「ふわあ~~……!」

 

 

 棗さんも金生さんも各々感想が口から漏れ出る。

 

 

「玉緒さんももうすぐ来るみたいだから、のんびりくつろいで。注文があれば聞くよ」

 

「あ、自分ドリアで!」

 

「私はワッフルを~」

 

「あたしは……パンケーキで」

 

「俺はそうだな……ピザトーストください」

 

「はい、かしこまりました」

 

 

 丹生さんは伝票に走り書きすると、ニコニコとキッチンへ戻っていった。この仕事が好きなんだなと感じる。

 

 ……問題は軽食が来るまでの間、どうやって場を繋ぐかなんですが。

 

 

「遥香ちゃんの目って青いけどカラコン?」

 

「あ、これは天然なんです……ママが外国人なので」

 

「え~っ、じゃあハーフなんだ~!」

 

「まあママもヨーロッパのあちこちの混血なんで、ハーフとも言いにくいですけど……」

 

「じゃあ、外国語も話せる?」

 

「日常会話なら、主要言語はある程度」

 

「スゲー、マルチリンガルってやつか」

 

「親戚グローバルだったんで……話せないと困るんス……」

 

 

 いつの間にか遥香が馴染み始め、女三人寄れば姦しい状態になりつつあった。

 

 あれ、もしかして今遥香より俺の方が馴染めてない?

 

 

(い、いや落ち着け? 女子の会話にむやみに男が突っ込んでいっても空気読めない奴って思われるし……話題振られたら答えるぐらいが丁度いいし……)

 

 

 そう自分に言い聞かせるも、内心焦りまくり。背中にも嫌な汗が出てきてなんとも落ち着かない。

 

 丹生さんが帰ってくるのが待ち遠しくなるとは思わなかった。お願い早く帰ってきて丹生さん、男同士仲良くしましょ。このままだと俺、妹にも出し抜かれて真のぼっちになっちまうよ。

 

 心の中で必死に願うも、叶うはずなく。仕方なくボヤイターでネタにする。

 

 

御簾納優斗

『いつの間にか妹がセレナと聖に馴染み始めてお兄ちゃん微妙に疎外感』

 

『ファーwwwwwww』

『草』

『お兄ちゃんェ……』

『妹よりもコミュ力低いとか恥ずかしくないの?』

『ねえどんな気持ち? 同期どころか妹にもハブにされて今どんな気持ち?』

 

 

 ネットの向こうにも味方はいなかった。泣きそう。

 

 

御簾納優斗

『今ギルバルトに優しくされたら惚れるかもしれない』

 

 

『は?』

『草』

『お前ホモかよぉ!?』

『なんだそれは、たまげたなぁ……』

『どういうことなの……』

 

 

 さらにリコンプが加速した。泣きそう。

 

 

 

*1
complain(コンプレイン)。ぼやき。リツイート的意味合い




こいついつも意図せず前後編に分けてんな。

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