双子系Vtuber、はじめました。   作:えびんす

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大変お待たせ致しました後編です。
ガーディアンテイルズに夢中になって投稿遅れましたごめんなさい。
操作下手すぎてすぐ死んでジェム無くなります。


#09~喫茶店行くときでもないと食べないよね、ピザトースト(後)~

「ドリアうっま! あれドリアってこんな美味かったっけ!?」

 

「んふ~、ワッフルサクふわ~! ベリーソースもおいしぃ~!」

 

「パンケーキふわっふわだぁ……ほっぺ落ちてないよね?」

 

「んっま、ピザトーストんっま」

 

 

 しばらくして各々の料理が運ばれてきて、それぞれ一口味わい、思い思いに感想を口に出す。それを隣のテーブルに座り、頬杖をついてニコニコと笑いながら眺めている丹生さん。

 

 そして、

 

 

 

(んほっほほおぉぉおぉお~~~~! アーイイ! すごく良い! 遥かによいですッ!! なんだこのてぇてぇ空間はッ!? ダンディーな喫茶店のマスターが作った料理に少年少女が舌鼓を打ちッ! それを見たマスターが嬉しそうに微笑んでいるッ!! ありそうでなかったとある休日の日常を切り取ったこの瞬間は、まさしく私の生み出した光景ッ!! これが私の生み出した三期生ッ!! おほほほっ! たまらんッ!!)

 

 

 少し時間が経ってからやってきた玉緒さん。今は丹生さんの向かいに座ってコーヒーを味わっている。きっと今もお仕事のこと考えてるんだろうなぁ。

 

 

 俺はといえば、女子三人のテーブルになぜか交ざる異物のような気持ちで、ピザトーストを頬張っている。正直言って女子の会話に交ざれる気がしないべさ。

 

 なにがアレかって、俺と同じくコミュ障であるはずの遥香が、いつの間にやら棗さん金生さんと完全に打ち解けていることである。

 

 

「うわ、美咲さん筋肉すごいっすね」

 

「腹筋もうっすら割れてるんだよぉ~。前に見せてもらったけどぉ、スタイルもよかったし~、美人さんだしモデルみたいだったよお~!」

 

「自慢の腹筋だからね! まあおかげであんまり出会いとかないんだけど……」

 

「なんでだろうね~? 男の人って見る目ないよねぇ~!」

 

「ホントっすよね……あたしは下手な男子よりタッパあるだけで……」

 

「一番スタイル良い子がなに言ってんだ」

 

「チビの私に対する嫌味かな~?」

 

「ヒエッ」

 

 

 さっきまで俺以上に緊張していたはずなのに、今はまさしく「女三人寄れば姦しい」という言葉通り、キャイキャイと楽しそうにおしゃべりに夢中。口調がまだおかしいけどしっかり溶け込んでいる始末。

 

 やっぱりアレなの? 女子はスイーツで繋がるの? 甘いもので通じあうの? 心と心がコネクトするの? 一人がっつりドリア食ってるけど。

 

 

「…………」

 

 

 交ざれる筈もなく、ボヤイターで実況する。

 

 

御簾納優斗

『向かいに妹、隣に聖、斜め向かいにセレナ。妹は完全に馴染んでおしゃべり中。お前ら俺の立場だったとして会話に交ざれる自信ある?』

 

『いやーキツいっす』

『無理無理かたつむり』

『場違い感すごい』

『優斗すげえよ。俺だったら速攻で隣のテーブルに移ってる』

『お前ならやれる、突っ込め。骨は拾ってやる』

『ド畜生がいて草』

 

 

 先程よりは優しいというか同情が文章に見える。まあ現状を打開出来るようなリコンプは来てないんですけどね! お前ら女子耐性なさすぎだろ! 俺が言えた口じゃないけど!

 

 

 ちら、と丹生さんに助けを求めるつもりで視線を合わせる。うわすげえいい笑顔でサムズアップされた。助ける気は毛頭ないと。この人意外と面白がってド畜生になるタイプでござるな? おい玉緒さんなに笑ってんだ面白がりやがって。

 

 

「アハハハッ…………ん、遥斗くん?」

 

「えっ……あ、はい、なんでしょう金生さん」

 

 

 なにを思ったのか突然金生さんに話し掛けられた。ちょっと声が上擦ってしまって恥ずかしい。

 

 

「えっと、なんかあんまり楽しくなさそうだなって……スマホいじってるぐらいで」

 

「あーなんというかその……単純に会話に交ざれる気がしないというか……」

 

「あ、ごめん! 夢中になって仲間はずれみたいにしてたな!」

 

「いやいやそんなことないですよ!? そもそも男子が女子の会話に交ざること自体難易度高いんですし!」

 

「あ~、確かにそうだよねえ~。異性との会話って難しいよねぇ~」

 

 

 棗さんも会話に入ってくる。いや、普通に輪に入ってる貴女はすごいと思いますけど? 俺同性でも盛り上がってる輪に入っていこうとか思えない。

 

 

「いや、それでもだよ! 自分年上だしその辺気を配った方がいいよなって思ってたのにさ……」

 

「遥香と打ち解けてくれただけで十分ですよ。こいつ俺以上のコミュ障なんで」

 

「そのコミュ障の妹にすらハブられてどんな気持ち?」

 

「二度と口きかん」

 

「それだけはやめて!?」

 

「遥香ちゃんって無意識に余計なこと言うタイプっぽいねぇ~」

 

 

 さっきまで俺の後ろに隠れてた奴が何を偉そうな口をきいておるか。今日の晩飯こいつの嫌いな大根でフルコース作ってやる。

 

 

「まあ、俺達揃いも揃ってこんな感じなんで、配信も色々悩んでるんですよね」

 

「そうなんだぁ~……」

 

「その点美咲さん、めっちゃ配信頻度高いっすよね。話題も尽きなくて途切れないし」

 

「ああ、あれ? 別にそんな難しいことじゃないよ?」

 

 

 金生さんはあっけらかんとそう言った。いやそれが難しく感じるんですけども……。

 

 

「あれね、よく配信のアーカイブ見てみなよ。話題の八割は「コメントから拾って繋げてる」だけなんだ」

 

「コメントから拾って……」

 

「繋げる……」

 

 

 思わず遥香と顔を見合わせる。コメントで話題を作る、なるほど。

 

 

「別に自分達で話題を全部用意する必要はないんだ。雑談配信なら、ほぼ間違いなく話題を広げられるコメントが出てくる。こっちはそれを拾って会話を繋げる。そしたらまたコメントが盛り上がって、他の話題が出てくる。難しく考えなくて良いんだ」

 

「な、なるほど……」

 

「遥斗くん達もさ、今までの配信でも無意識にそういうことをやってるはずなんだ」

 

 

 金生さんの言う通り。思い返してみると、配信中に話題に困って、コメントから拾って話し始めたことがある。無意識のうちだったから自覚がなかったのか?

 

 

「だから、配信の時でも自分の話題は多くて3つぐらいかな。あとはコメ拾って喋る。そんだけだよ」

 

「……でも金生さん、それって失敗するリスクとかありませんか? コメント拾って滑ったり……」

 

「そんなこと怖がってたら配信なんて出来ないでしょーが。恐れるな、失敗したらしたで美味しいんだ。そもそも自分達は配信者としてはずぶの素人なんだから、失敗して当たり前なんだよ」

 

「う…………」

 

 

 金生さんの言葉は尤もだった。最初から失敗を怖がっていたらなにも始まらない。

 

 俺は、俺達は、そういうところを克服したくて配信者になったんじゃないのか。

 

 俺達の事情を話していないはずなのに、金生さんの言葉は、俺の心の奥底に突き刺さったような思いだった。

 

 

「あと、名前!」

 

「へっ?」

 

「美咲でいいよ! 金生さんなんて距離あるし、呼ばれ慣れてないから!」

 

「え、いや、でも」

 

「あ~、それなら私も凛花でいいよぉ~」

 

「ええっ!?」

 

 

 棗さんにも名前で呼べって言われたんだけど。なんだこれどういう状況だ?

 

 

「名字で呼ばれるとなんだか他人行儀な気がするんだぁ~。遥香ちゃんはもう名前呼びだしぃ、いいかなって~」

 

「自分も凛花も遥斗くんのこと名前で呼んでるしな。君も遠慮なく呼んでいいぞ!」

 

 

 ええ、と? 本当によろしいので?

 

 思わず丹生さんを見る。ん? 何だろう、自分を指差して……あ、自分も名前で呼べと? 皆気軽に名前呼び許可しすぎだろ。玉緒さんも名前だしなんだこの空間陽キャしかいねえ。

 

 

「え、えっとじゃあ……改めてよろしく。美咲さん、凛花さん」

 

「さん付けもいいのに……まあ追々慣れてくれればいいか」

 

「んふふ~。遥斗くんよろしくねぇ~」

 

 

 すごく気恥ずかしい。丹生さんが「僕は? ねえ僕は?」と言いたげに自身を指差しているが、それは無視する。さっき助け船出してくれなかった仕返しだ。

 

 あらら、しょげた顔しちゃった。玉緒さんが口を覆って腹抱えてプルプルしてるけどまあ放っておいて害はないでしょ。

 

 

「まあ色々言ったけどさ。要は今のうちに色々試しなさいってことだよ。失敗を恐れてちゃ出来ることも出来なくなるよ」

 

「『習うより慣れろ』ってことだねぇ~」

 

「ありがとう、美咲さん」

 

「青春だねぇ。おじさんには眩しいよ」

 

「あ、丹生さんコーヒーおかわり」

 

「やっぱり僕は名前で読んでくれないんだね?」

 

 

 しょぼしょぼと肩を落としながらキッチンへ向かう丹生さん。あの人意外と打たれ弱いな。あとでちゃんと名前で呼んであげよう。

 

 

(むほほほっ! 丹生さん可愛いッ!! ダンディーなのにお茶目で可愛いおじさまとか私の大好物ですわッ! アーイイ! 尊みで心臓きゅってなるッ! ここで死んでも後悔はねぇッ!!)

 

 

 そんで玉緒さんはやっぱり腹抱えて笑ってる。あの人意外とゲラだな。

 

 

 

 

 

 

『…………っていう感じでね? いやーオフで会ってみて色々と同期の印象が変わった一日だったよ』

 

 

:良かった……同期にハブられるコミュ障は居なかったんだね

:やさしいせかい

:三期生あったけぇ

:迷える子羊を導くシスターの鑑

:下々にも寛大に接してくださるとはお優しい聖様

:ギルベルトどんどんすきになる

:セレナは流石によそ行きだったか

:TPO弁えないとPTAが五月蝿いので……

:弁えるべきは倫理観なんだよなあ……

:マネージャーがしょんぼり魔王様に延々とツボってた話で白米三杯いける

 

 

 その日の夜の雑談配信にて、オフ会であった出来事をリスナーに掻い摘まんで報告した。当然中の人の職業等、プライバシーに関わるものは伏せて。

 

 結果としてかなり端折った話になってしまったのだが、それでも割かし内容としては濃かったようで、視聴者も楽しんでくれたようだ。

 

 

『名前で呼んでくれとも言われたしな』

 

『あの時の優斗ってホント両手に花だったよね』

 

『PTAに全力で喧嘩売ってる教師と腹黒ドSシスターは花って言えるのか?』

 

『花でしょ。高嶺の』

 

『聖様はともかくセレナは高嶺か?』

 

『あー確かに。高嶺って言うかバカねって感じかなあ』

 

『バカが人のことをバカと言っちゃいけませんよ』

 

『誰がバカじゃい!?』

 

『お前じゃい』

 

『即答すんな!?』

 

 

:隙あらば妹ディス

:いつもの

:草

:兄妹喧嘩たすかる

:まあセレナは高嶺の対義語なのは事実だし……

:セレナだって清楚だルルォ!?

:お前の持ってる国語辞典おかしくね?

:清楚の意味を調べ直してこい

 

 

 まあ素の二人は下ネタオープンでも腹黒ドSでもないし、凛花さんに至っては普通に本来の意味で清楚っぽかったけどな。なんであんな個性で殴りかかるようなキャラクターにしたのか未だに理解できん。

 

 

 ……そんなことより、だ。

 

 

『なあ、皆に一つ聞いて欲しいことがあるんだけどさ』

 

 

 俺は視聴者にそう呼び掛け、一つ深呼吸する。遥香も何かを察してくれたのか黙ってこちらを見た。

 

 

『あの聖のアドバイス、俺の中で刺さりまくってさ。確かに自分でも無意識のうちに、保身に走ってたというか、攻めの姿勢じゃなかった』

 

 

 足りなかった。俺にはVtuberとしての、配信者としての。

 

 何よりも企業から給与を貰って配信(しごと)をする、社会人であるという自覚が全く足りていなかった。

 

 分かっていた。分かったつもりでいた。だけどそれは所詮「分かったつもり」だっただけで、実際は何も分かっちゃいなかった。

 

 

『優斗……?』

 

『喝を入れられた気分だった。お前はそれでもプロなのかって。配信で食っていくつもりはあるのかって言われた気がして』

 

 

 美咲さんには感謝しかない。彼女のおかげで、覚悟が出来たんだ。

 

 

『だから、さ』

 

 

 俺は、もう。

 

 

『次の配信、楽しみにしてほしい。皆をあっと言わせて見せるから』

 

 

 プロの配信者なんだ。

 

 

 




配信を見ていた美咲「自分そんな深い意味で言った訳じゃないんだけどぉ!?」

さて、遥斗くんは一体何をやらかすつもりなのでしょう。僕も知りたいです。
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