双子系Vtuber、はじめました。 作:えびんす
今回は新キャラが出ます。
俺と遥香がVtuberとしてデビューしてから、早いもので二ヶ月が経とうとしていた。
デビュー当初は同期で一番チャンネル登録者数が少なく、切り抜き動画もほぼなし。SNSで話題に上ることも稀だったので、とにかく影が薄いと言われていた俺達御簾納兄妹。
今現在、同期にも登録者数が追い付きはじめ、ボヤイターでちらほらと俺達の名前を見かけることも増えた。何より先のホラー実況配信と、その切り抜き動画で一気に火が点いたことが大きく、ようやく話題の波に乗ってきたとも言える。
なにせ同期が同期だ。デビューの際もキャラクター性がニンニクアブラマシマシカラメブタダブルみたいな奴らが立て続けに三人も現れて、ようやく最後にあっさりめの漬け物みたいな立ち位置の俺達である。話題がかっさらわれるのも、影が薄いと言われるのも当然だろう。
一番の要因は自分達がコミュ障を遺憾なく発揮した結果だろうが。何を隠そう、自分の同期以外の先輩Vtuberとは入ってすぐの最低限の挨拶以降、全くといっていいほど絡んでいないのだ。
セレナはそのトチ狂った下ネタキャラで、ライブラフのみならず外部の男性、特に中年のおじさんとか人外の男という、所謂年上の男性受けが著しい。男性でも躊躇するようなネタで突っ込んでいく様は、まるで命知らずの突撃兵である。
聖は聖でやはり内外問わず、被虐趣味の自覚あるなしに下僕を増やしているようで。特に女性Vtuber同士でのSMプロレス───いわゆる茶番───が人気で、中の人のバイタリティーも合わさって積極的にコラボを行っているようだ。
ギルバルトは自営業ということもあり、リアルでの都合は比較的付けやすい。加えて相手の緊張も抜けてしまうようなゆるいキャラでありながら、己の人生経験から来るのだろう包容力が人気で、リスナー、Vtuberにもコアなファンが多いらしい。
翻って俺達ときたら、常日頃からコミュ障コミュ障言っているせいなのかは分からないが、絡みづらそうだと判断されたのだろう。そういったお誘いは特になく。
かといって、自分達の方からコラボのお誘いなど出来る筈もなく。
結果、チャンネル登録者数が劇的に増えた今でも、ライブラフ内で「友達いない系Vtuber」みたいな扱いを受けているのであった。
いや居ますよ? 友達。セレナと聖とギルバルトいるよ? 全然いない訳じゃないよ?
みたいな感じのぼやきをボヤイターに投げたところ。
『いやー少ないでしょ』
『他の同期はいっぱいコラボしてるのに君らときたら』
『片手どころか両手で数えられるうちは少ないぞ』
『普通友達って数えきれんぐらいおるもんやで(適当)』
『今すぐ外に出ろ、話はそれからだ』
『誰でもいいからコラボしたいって言いに行け』
などなど大変ありがたい辛辣な言葉の数々。ぼくなきそう。
『ちげーし!今は準備期間なだけだし!そのうち友達100人出来るし!』
と追加でぼやくも、
『そのうちとか言ってるから今そんな事になってるんでしょうが』
というお言葉で撃沈。兄妹揃って枕を濡らした。
そういうわけで我々御簾納兄妹の現在の目標は、「誰でもいいからコラボ配信を行う」。いい加減外に出て友達の一人や二人作ってこい、との具合だ。
人見知りする子供か、というツッコミは正しくない。子供特有の勇猛さなどとっくの昔に落ち着いた我々は、人見知りよりもさらにたちの悪いコミュ障である。
『限定的でいいから会話の選択肢ウィンドウが目の前に出てこないかしら』などという妄想をほぼ毎日やるような、会話の仕方を忘れた哀れな獣。忘れちまったよそんな高等技術。
「…………実際問題、どうする? というか誰にする?」
「俺達がコラボに誘うどころか相手を選ぶなんて畏れ多いよな」
「でも遥斗、リスナーに煽られて『コラボぐらい出来らぁ!』って言っちゃったんでしょ? ボヤイターで」
「うん」
「男ってほんと莫迦」
「頭の出来は一緒だよ」
「なんだと」
はい、リスナーに『どうしたベネット怖いのか』と売り言葉、『野郎ぶっコラボしてやらあああ!!』と買い言葉で言質取られてしまいました。てへ。
さて、目下問題なのは、誰を誘った場合でも俺達のパッシブスキルが発動してしまう点である。それを考慮して同期の誰かとコラボするのが一番安牌なのだが、
「遥香が『まさか同期とやるなんてチキン戦法はとらないっすよねぇ?』って煽られて『やってやろうじゃねえかこの野郎!!』って同期コラボ案潰したしな」
「それは謝ったじゃん」
「妹ってほんとアレ」
「せめて莫迦で返してよ」
はい、これは事前にリスナーと遥香によって封殺されてしまっていました。言ったじゃん頭の出来は一緒だって。
というわけで選択肢はライブラフの先輩かそれ以外の企業Vtuber、もしくは個人勢ということになるのだが……。
ここに至っても我らがコミュ障スキルが悪い意味で発揮されてしまう。
先輩方とは挨拶以外、ほぼ最低限の社内連絡ぐらいでしか絡んだことがない。しかも声でなくチャット。
外の企業Vとか個人勢に至っては、そもそもほとんど把握していない。別に接触が禁じられているとかじゃなくて、単純にライブラフ内で精一杯なだけ。うちの中ででもアップアップしてるのに外のことまで手が回るか。
なので必然的に、選択肢はうちの先輩方の誰か、ということになる。
「つってもなー…………」
「皆とぜんぜん絡んでないしなー……」
一期生4人、二期生3人。俺達がライバーをやるきっかけになった神輿羅世良先輩は一期生の一人だ。
だが例に漏れず、世良先輩とでさえ、最初のデビュー配信で交わしたチャット以外、全くと言っていい程絡みがない。他の先輩方は言わずもがな。
第一こんな挨拶以外チャットで絡んでこない愛想のない後輩と、コラボなんざ打診しても受けてくれるのか? ほとんど接点ないような遠い親戚から「急で悪いんだけど金貸して」って言われているようなものでは?
結論。
「こっちから誘うとか無理だな、うん」
「今は準備期間だから……そのうちやるから……」
俺達は逃げを決め込んだ。
しょうがないじゃない、コミュ障なんだもの。言い訳がましいのは重々承知の上だ。
……無論このままで良いわけがないのも自覚しているが、さてどうしたものやら……。
「…………ん? ウィシュコにメッセージきたな」
「どちら様ー?」
「…………ルキヤ先輩」
「えっ、あのパリピの?」
小比類巻ルキヤ。ライブラフ二期生で、とにかく陽気で突き抜けた明るさが特徴のギャルの先輩。
その底抜けのパリピ具合で、男女問わず友達が多いらしい。今の俺達とは対極にいる眩しすぎる存在。
そんな人が俺達にわざわざメッセージを飛ばすなんて、一体なんだろうか?
「…………『優斗くん里奈ちゃんこんばー! メッセで言おうと思ったけど、やっぱり口で言いたいから通話しよ!』……えぇ…………」
「すげえ……常識に囚われないな陽キャ……」
「遥斗どうする?」
「どうするったって……するしかないだろ、通話」
「マジかよ……」
マジかよって言ったって無視するわけにもいくまいよ。急いでマイクを繋いで通話の準備を整え、遥香に覚悟はいいか聞いて、ルキヤ先輩にコールを送った。
『こんばーっ! 小比類巻ルキヤでーす!』
『あっ、ど、どうも……御簾納優斗です……』
『御簾納里奈です……』
1コールも鳴り止まないうちに爆速で通話に応じ、開口一番ハイテンションで挨拶してくるルキヤ先輩。いやもうこの時点でキャラが強いわ。ガチもんの陽の者やんけ。
『優斗くん里奈ちゃんこないだのホラゲ実況見たよー! 二人とも本当に怖いもの苦手なんだね! もう常に笑いっぱなしだったから今でも腹筋痛いんだけど!』
『あ、あはは……それは、どうも』
『いやウチもさ? ホラー系そんなに得意じゃないんだけどさ? 二人には完敗したよー、あんな綺麗なリアクションとれるとかもうプロだよねプロ! ゲーム作った側もあんだけ怖がってくれたら今頃ニッコニコだと思うよ! どうやったらあんなに綺麗に要所要所で嵌まれるのか教えてほしいわ! マジ弟子入り希望!』
『お、おおぅ…………』
やべえこの人、のっけから口が止まらないんだけど。ノンストップなんだけど! マシンガンどころかガトリングトークなんだけど!?
すげえ、陽キャって極めたらこんな口回るのか。しかもめちゃくちゃ聞き取りやすい。陰キャ特有の早口なのにボソボソで聞き取りにくい喋り方とは根本から違う。
でも、ルキヤ先輩はなんで、わざわざ俺達のような陰キャ共と話したいなんて思ったんだ?
『あの、ルキヤ先輩……今日はどういったご用件で……?』
『ふえっ? あ、そーだそーだ! あんねー、二人にちょっと相談っていうかお願いがあってねー!』
『お願い……?』
『ウチとコラボ配信しよー!』
『『はい?』』
『ッウェーーーーーイ!! みんなばんこー!! ライブラフ二期生のパリピライバー小比類巻ルキヤでーーーーすっ!! 今回も爆アゲでやっちゃうぜウェイウェーーーイFOOOOOO!!!!』
『テンション高っけぇw…………あ、皆さんこんついん、三期生の陰キャな双子の兄の方、御簾納優斗ですうぇーい』
『妹の方御簾納里奈でーすうぇいうぇーい』
:うおおおおおお!!
:ウェーイ!!
:双子の初コラボきちゃ!!
:まさかのルキやんと!?
:今日三割増しぐらいでテンション高いなw
:何がどうしてこんなコラボに?
数日後、俺は遥香とルキヤ先輩の三人で配信画面の前にいた。
ライブラフのスタジオで。
なしてや。
こいついっつも難産してんな(呆れ)