双子系Vtuber、はじめました。 作:えびんす
コウシンスルナライマノウチ
前回までのあらすじ。
パリピすげぇ。
以上。
というのは冗談だが、ルキヤ先輩がすげぇのはマジな話なんだ。
なにがすごいかってとにかくその行動力。俺達がコラボを了承するや否や、オフコラボでも大丈夫か、スタジオで配信しようと思うがいいか、都合のいい日はいつか、など簡単な質問を俺達から聞いたと思ったら、
『土曜の昼から夕方いっぱいまでオッケーだって!』
『アッハイ』
と、あっという間に会社のスタジオを借りる段取りをつけ、
『せっかくだから一緒にお昼食べよー! ウチお弁当持っていくからおかず交換しようぜ!』
『アッハイ』
そのまま流れるように昼食も一緒に食べる計画を立ててしまう。
これが……陽キャ……! これが、パリピ……!
「ルキヤ先輩やべえ」
「マジパネェ」
「アレが本物の陽の者か」
「あたしたち元々あんな感じだったんだよね?」
「俺の記憶が正しければそう」
「今じゃみる影もなしだぜ」
「言うな妹よ哀しくなる」
それに比べて見ろよ俺たちのこのザマ。人と目を合わせるのが怖くて挙動不審、会話のテンポもガタガタ、おまけにハッキリ意思を伝えようとしないから常に生返事、そのせいでさらに印象が悪くなるという悪循環。コミュ障役満大三元ここに極まれり。
あの水準とは言わないが、せめて初対面の人でも自然体で話せるようになりたい俺達には、彼女は手本にするべきではないだろうか。いやでもあんな底抜けの明るさは彼女が元々持ってるものであって、俺らが真似できるようなものじゃない気がする。
「…………で、お弁当どっちが作る?」
「二人で作りゃ良いだろ」
「ええ~遥斗の方が上手いんだから遥斗作ってよ」
「レアチキンステーキでいいか?」
「腹壊すわ」
結局当日は遥香と二人で弁当を作ることにし、ちょくちょく作って保存した常備菜など駆使して手早く作りましょうね。
「……なんか渋くない?」
「こんなもんじゃないか?」
冷凍の唐揚げ、さっき作っただし巻きとほうれん草のおひたし、常備菜の炒め高菜とたくあん。それにごま塩振ったおにぎり。まあまあ彩りや栄養バランスが取れているんじゃないだろうか。
そりゃあチョイスが渋いと言われればそうなんだけど、弁当なんてこんなもんでしょ。女子力とかカラフルさとかはお母さんに頼め。俺らはいねーけど。
「ルキヤ先輩ってどんな人かな」
「凛花さん達みたいにギャップがあったら面白いよな」
「実は超真面目な清楚系とか」
「あり得るな」
調理の合間にそんな世間話を挟みながら、まだ見ぬ先輩とのコラボ配信のため、ライブラフの事務所へと向かった。
「うぇーいはっじめましてー! ライブラフ二期生のパリピライバー、小比類巻ルキヤやってる
ギャップなんてなかった。
ルキヤこと久瀬先輩だが、実際に会ってみるとかなりの美少女であることが分かった。
染めているのだろうセミロングの銀髪をポニーテールで纏めており、それが健康的な小麦色の肌によく映える。
服装もノースリーブでへそ出しのシャツにショートデニムと、シンプルだが露出度高め。暑くなってきたとはいえ若干目のやり場に困るな。
なにより胸がでかい。ここ重要。
薄手の服を押し上げるそれに、否応なしに目線が吸い込まれてしまい、慌てて目をそらす。そらした目線の先で遥香がショック受けていたのが面白くて、噴き出しそうになるのを堪えるのが大変だった。
「どうも、御簾納優斗やってます、柳瀬遥斗です」
「御簾納里奈やってる柳瀬遥香です、初めまして」
「遥斗くん遥香ちゃんね! 二人ともよろよろー! ていうか二人ともリアルでも顔がいいじゃん!? 背もバチ高っけーしモデルじゃんかもはや! 芸能人でもそうそういないよこんな美人!!」
「あはは、どうも……」
「え、え、ちなみに二人今いくつ?」
「えっと、二十歳ですけど」
「マジで!? ウチの方が後輩じゃーん! ウチ今17なんだけど!」
「17!? えっ、高校生!?」
「うんにゃ中卒! バイトしてたらバイト仲間にVtuberのこと教えられてさ、試しにやってみたらこれがすげー性に合っててマジ楽しいんよ!」
ルキヤ先輩とVtuberがどうしても結び付かなかったけど、なるほどそんなきっかけが。
小比類巻ルキヤの強みと言えば、その太陽のような天真爛漫さの他に、一度回り出したら止まらないマシンガントークも武器だ。
とにかくしゃべる。これでもかとしゃべる。黙ると死ぬのかってぐらい延々としゃべる。だけど不思議とそれが心地いいのだ。
つまり陰キャの俺らとは全くの真逆……!
「いやーこの会社でライバー始めたんだけど、今冗談抜きで人生一番充実しとるかもしれん! スパチャ解禁されてから生活にもだいぶ余裕出てきてさー! 生活費にあんまり悩まなくて良いのがこんなに快適とか知らんかったし!」
「えっ? あの、仕送りとかは」
「ないないない! ウチ施設育ちだし施設もバチクソボンビーだったもん! お金稼がないとガチで食えんくて死んじゃうからめっちゃ必死だった!」
「…………その稼いだお金って」
「半分は施設に送って返してる! チビども……あ、ウチより年下の施設にいる子ね? そいつらにもうめーもん食わしたいし! 何よりお世話んなったセンセー達に楽させたいし、まー恩返しって言ったらアレだけどさ? でもこんぐらいせんと恩知らずのヤベー奴になるじゃんそんなのあり得んくね!? 人として当たりめーっしょ!!」
泣いた。
えっ、なにこの子、俺らよりめちゃくちゃ苦労してるじゃん。そんでめっちゃ良い子じゃん。
俺らも親居ないけど親の残した金と家でそこまで苦労してないし。むしろ今コミュ障でマトモな職に就けないとかいうクソみたいな理由で食い潰してるし。
久瀬先輩の方がよっぽど波瀾万丈な人生送ってるじゃん。俺らみたいなクソガキが不幸とかコミュ障とか言ってるのって久瀬先輩に失礼なのでは?
「……あの、ちなみにですけど、ご両親は」
「顔も名前も知らない! ウチ捨て子だったし! センセー達がウチにとって本物のとーちゃんかーちゃんよ! あ、そう思ったらウチめっちゃ大家族じゃん!? チビどもいっぱいいるしなおさらウチがねーちゃんしてやんねーとじゃん!! 今度ケーキ買い占めて施設帰っか!!」
「金に苦労したことない俺らごときが不幸とか言ってごめんなさい…………」
「ボンボンの分際で調子くれてました本当にスンマセン許してください…………」
「うえっ!? ちょいちょいちょいなんで二人が謝ってんの!? てかなんで二人とも泣いてんの!!? は!? 待って一瞬で理解出来んのだが!? ちょっ、とりあえず二人とも泣き止めし!!」
「そっかー、そゆことか……めっちゃ寂しいねそれ」
数分後、年下の女の子に宥められたでっかいガキ二人こと俺と遥香。「なんかあった? ウチでいーなら話してみ?」とのお言葉をいただき、気が付けば自分達の身の上話からライバーになったきっかけ、目標まで全部話してしまった。
「いやでも、久瀬先輩に比べたら俺らなんか……」
「真綾でいーよ、先輩も要らない。ウチ年下だしね」
そのわりに生意気だと思うけど許してね、と笑う久瀬先輩もとい真綾ちゃん。17歳とは思えない慈愛に溢れた笑みは、彼女がそれだけ豊富な人生経験を積み上げてきたことの証左に思えた。
「ってか遥斗くん遥香ちゃんだってめっちゃ不幸じゃん!! パパもママも死んじゃってさ!? もうガチつらみざわのぴえんぴえんまるなのにさ!? 親戚みんな金のことしか頭にねーってなんなんそれ!? 控えめに言ってクズじゃん!! あんま人ん家のこと悪く言いたかねーけどそんなん庇えねーわ!! 人間性下下下の鬼畜太郎じゃんお前が妖怪じゃバーカ!!!」
「ふはっ、なに下下下の鬼畜太郎ってw」
「パワーワード過ぎるw」
「だってだって親戚の子でしょ!? ウチみたいな感じじゃなくてさ、ちゃんと血が繋がってんだよ!? それなのにまず出てくんのが遺産相続って!! 目の前の両親居なくなった子供が見えてねーんかソイツら!? マジその大人ども片っ端から張っ倒してえわ!!」
今日初めて面と向かって会ったばかりの俺たちのことで、まるで自分のことのように怒ってくれる真綾ちゃん。それだけで、少しだけ救われたような気がした。
「ゆし決めた! 遥斗くんも遥香ちゃんも今からウチの家族ね!!」
「「えっ?」」
「いやさ、ウチ実は前々からねーちゃんかにーちゃん欲しいなーって思ってたんよね! だから二人はウチのにーちゃんねーちゃん! 二人よりも三人! そんなら寂しさも三等分っしょ?」
「「いい子おおおお!!」」
「わー!! ちょ、二人とも抱き付かんで! く、くすぐった、アハハハハハ!!」
親父、母さん。突然ギャルでパリピな妹が出来ました。しっかりした妹です。
そして配信時間に戻るわけだが。
『でさーでさー、二人ってさー、なんかコミュ障なんだって?』
『『ごふっ』』
:草
:火の玉ストレートで草
:やめたげてよぉ!!
:双子にクリティカルヒットやん
:無邪気って怖いな……
:コミュ障だって心があるんですよ!!
:まあ事実だし……
:追い討ちをかけるな
:ド畜生で草
出来た妹分に無邪気に致命傷を与えられるのはご褒美に該当しても良いものだろうか。
『あの、ルキヤ先輩もうちょっとこうオブラートというか……』
『おぶらーと? ってなに?』
『…………オブラートを知らない?』
『ビブラートなら知ってっけど。歌うときにさ、あ~~~~~~って声揺らす奴でしょ? え、それの親戚かなんか?』
『うわあいやだあ』
『ジェネレーションギャップだあぁ』
『ねえねえおぶらーとってなに?』
『あのー、粉薬があってね、そのままだと飲みにくいからそれで包んでね?』
『粉薬ってなに? 錠剤じゃなくて?』
『うわあああやめろおおおお!!』
『ジェネレーションギャップに殺されるううう!!』
『え? え??』
:やめろおお!!
:ジェネレーションギャップって急に来るから心臓に悪いんじゃ!!
:オブラート知らないとかウソだろ……
:いや待って粉薬を知らないってなに
:流石にそれは知ってないとおかしいでしょ
:ルキやんがただ無知なだけだよなそうだよな
:止めてくれよ(絶望)
:俺がおっさんだなんてまだ信じないぞ
いやじゃいやじゃ! 俺はまだ20代なんだぞ! なんでたった3歳下の女の子からこんなジェネギャを食らわねばならんのじゃ!! 実は自分がすでにおっさんだったなどと認めとうない!!
『……ちなみに人生で初めて遊んだゲームのハードは?』
『なんで地雷原に突っ込んだ里奈!?』
『んぇーと、なんだっけ? Xii U*1だったかな? んで一番古いやつが3GS*2』
『『ひいいいいいいいい!?』』
『あ、ゴメン嘘言った! 世良ちん家でゲームボックス*3やったわ! それがいっちゃん古いやつ!!』
『『ぐわあああああぁぁぁぁぁぁッ!?』』
『ンハハハハッ! 二人ともリアクションおもろ!』
:アバーッ!?
:嘘だろ……
:オタクも陽キャも86*4で青春を送るんじゃないんですか!?
:ウソだウソだウソだ
:誰かこの地獄から解放してくれ
:なんでこんなことするんですか里奈ちゃんのバカ!
:ゲームボックスが20年以上前の代物ってマジ……?
なんということだ、ルキヤ先輩とここまでゲーム歴に差があるなんて思わなかった……いやウチがゲーム揃いすぎなんか? 母さんがガチよりのゲーマーだったし。それにしたって話題に出来る幅が狭まりすぎなんだが!?
ちなみにリスナーから「御簾納兄妹の初ゲームは?」と聞かれたので「アルプスクライマー*5を実機でプレイして理奈とリアルファイトしたことがある」と言ったら「お前らはお前らでなんで持ってんだよ」「中身やっぱおっさんおばさんか?」とノンデリツッコミを頂いたのでママンの影響だと釈明した。お前らの大部分よりは年下のはずだぞ。
『あーゲームで喧嘩とかあるあるすぎて笑うわー! 二人ともめっちゃ仲良いけどやっぱ喧嘩もすんだね!』
『まああの頃はガキだったしなぁ』
『年も同じだから忖度とかなしでバチバチやってたねぇ』
まあわりと今でもそうなんですがね! いくつになっても頭の作り一緒で大人になれないからまあまあの頻度でリアルファイトしてるんですよねこれが!!
まあいい歳して殴り合いの喧嘩はしませんけども。専らほっぺのつねりあいです。いい歳した兄妹がゲームで喧嘩してほっぺつねりあうのも痛々しいと言われればそうなのですが。
『そんでリアルファイトかー、そこらへん男女とかカンケーなかった感じ? パパママは止めんかったん?』
『今はともかく子供の頃は力も体格もほぼ互角だったし、親も存分にやれって煽る側だったしなぁ』
『流石に流血とか青アザが残るような喧嘩はしなかったよー。そうでなかったらいくらなんでも止められてるしね…………え、待って流石に止めてくれたよね?』
『…………スマンちょっと断言できない自分がいる』
『ウチも大概だけど二人の両親まあまあぶっ飛んでんね?』
そうかな……そうかも……。
大変間が空きまして誠に申し訳ありませぬ……ちょっとリアルがドチャクソ忙しくて、はい……。