もう一振りの天羽々斬   作:とんこつラーメン

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おやおや~?

なんか急にクリスが弦十郎さんを逆転しましたよ~?

どうしてこうにゃってるのかしらん?






大人の責任 子供の役目

 無事にノイズを撃破し、その後に行われたやり取りは全て二課の本部にてモニタリングされていた。

 最初こそは翼の暴走にどよめき、弦十郎が飛び出しそうになったりもしたが、途中から疾風の説得により彼女の動きが止まり、遂には彼女の胸で泣きじゃくった。

 それは、今まで二課の誰もが見た事も無い…一人の少女としての翼の姿だった。

 

「一時はどうなるかと思いましたけど……」

「矢張り…疾風くんを同行させて正解だったようだな……」

「なんて言ってるわりには、すっごく心配そうにしてたのは、どこの誰だったかしらね~?」

「うぐ……」

 

 了子に指摘されて恥ずかしそうに目を逸らす弦十郎。

 もしも疾風が動かなければ、今頃はモニターの向こうには弦十郎もいた事だろう。

 

「それにしても…疾風さんの言葉は身に沁みますね……」

「『無いものは無い。無くなったものばかりを数えるな』…か」

「疾風ちゃんがそれを言うと…説得力が半端じゃないわね……」

 

 響と疾風を二課に迎え入れる際に、彼らは二人の事を徹底的に調査した。

 響の方は、コンサートの一件を除けば、家庭などは何の変哲もない一般人だった。

 だが…疾風の方は全く違った。

 波乱万丈と言う言葉は、まるで彼女の為にあるのではないか。

 そう思ってしまいそうになる程に、疾風のこれまで歩んできた人生、その家庭環境、共に波乱に満ちていた。

 年端もいかない少女が、どうしてこのような目に遭わないといけないのか。

 全てを知った時、弦十郎はその拳に力を込め過ぎて血を出していた。

 

「本当ならば、我々がしなくてはいけない役目を疾風くんに押し付けてしまっているな……」

「そうですね…。これは、本当に給料に色を付けないといけませんね?」

「まだ二課に入って一週間も経過してないにも関わらず、もうこちらの想定以上の活躍をしてくれたからな。その頑張りには答えないといけないだろうさ」

 

 モニターに映っている三人の中で最も多くの物を失っているにも拘らず、最も精神的に成熟している。

 それは、これまでの人生経験が故のことなのだろう。

 悲しい事ではあるが、それが翼の心を救ったのもまた事実だった。

 

「あと、ちゃんと響ちゃんにもお説教をしないとね。疾風ちゃんが先にしてくれたけど」

「それもあったな……」

 

 決して悪意が無いのが質が悪いが、それでも二人の助けになりたいという純粋な気持ちで動いたのも確かだった。

 

「結局…疾風くんだけが貧乏くじを引いたことになるのか……」

「胃薬…用意してあげましょうか?」

「それが良いかもしれませんね……」

 

 あの歳で胃痛に苦しむのは流石に不憫すぎる。

 管理職として、今の疾風の気持ちは非常によく理解出来た。

 

「もうそろそろ戻ってくるように言うか。頼んだ」

「了解です」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 二課の本部に戻って早々、響は弦十郎から説教(そこまで強い言い方はしていない)を受け、同時に了子からもやんわりと注意を受けた。

 

「はぁ…体力はそこまで消費してないのに、精神的にドッと疲れた気がする…」

「ホントにゴメンね……」

「もういいよ……」

 

 疾風と響は、休憩所にあるソファに座って休んでいた。

 響はさっきからずっと申し訳なさそうにしていて、疾風はぐったりとして背凭れに体を預けている。

 

「翼さん…大丈夫かな……」

「心配ないよ。泣き疲れて寝てるだけさ」

 

 本部に戻って来てから、翼は疾風に一言謝ってから仮眠室に直行し、そのまま籠ってしまっている。

 響はその様子を見て非常に心配しているが、疾風はそんな事は無かった。

 抱き着かれていた彼女は翼のスッキリとした顔を一番近くで見ていたから。

 思い切り泣いてスッキリした後は、自分の気持ちを整理する時間が必要だ。

 だからこそ、敢えて様子を見に行かずに休憩所にて静かに待っている。

 

「ところでさ…響」

「なに?」

「お前…あのまま翼に話していたら、とんでもない事(・・・・・・・)を言ってただろ」

「とんでもない事って?」

「『これから頑張って、奏さんの代わりになってみせます』…とかをだよ」

「それは………」

 

 声が徐々に小さくなっていく。

 それを見ただけで、自分の想像が当たっていたと確信する。

 

「もしもそれを言ってたら、お前はあの場で翼に殺されていても文句は言えないし、私も擁護なんてしない。っていうか、翼よりも先に私がお前の事を本気でぶん殴ってたよ」

「なんでぇっ!?」

「分かんないのか? 仕方ねぇな……」

 

 同い年でも、響と疾風では人生経験が余りにも違い過ぎる。

 故に、疾風の言いたい事が理解出来ないのだ。

 

「お前には確か友人がいるって言ってたな」

「うん。未来って言うの」

「未来…ね。これはあくまで例え話だが…お前の親友が何らかの形で死んだとする」

「未来が…死ぬ…?」

「例え話だって言ってるだろ。真に受けるな」

「そ…そっか。ごめん」

「続けるぞ? その未来が死んで、お前は食事も喉が通らない程に意気消沈して、それをずっと引きずり続けてたとする」

「う…うん」

「そんな時、悲しんでいるお前の事を可哀想と思った、お前と少しだけ仲のいいクラスメイトがいきなりやって来て、こんな事を言った」

 

『響ちゃんがこれ以上悲しまないように、これからは私が未来ちゃんの代わりに頑張るよ』

 

「あ……」

「それを言われて…お前はどう思った?」

「嫌だけど……なんだか腹が立った…かもしれない……」

「だろ?」

「未来はこの世界に一人だけしかいなくて…その代りなんてどこにもいないのに……」

「一歩間違えば、お前は翼にそんな気持ちをさせてたんだよ。良かったな。ギリギリのところで踏み止まって」

「そうだね……私…後で翼さんに謝らないと……」

「二課の皆にもな」

「ソウデスネ……」

 

 立花響。

 バイト生活初日から、早くも盛大なミスを犯して謝りまくる。

 

「あと…私の事も労え。お前のせいで余計な仕事が増えて凄く疲れた」

「私に出来る事なら何でもするけど…何をすればいいの?」

「金渡すから、そこの自販機でジュース買え。ほれ」

「わわっ…って、お金多くない?」

 

 片腕で器用にポケットから財布を出し、脚で挟みつつ中を開き金を出してから響に投げ渡した…が、彼女に手の中には明らかに一人分以上の金があった。

 

「お前も好きなもんを買えよ。奢ってやる」

「いいのっ!?」

「あぁ。お前も疲れただろ? それに、金はお前よりも持ってるんでな」

「そうなんだ…なんで?」

「援助交際で稼いでたから」

「そうなんだ~…って援助交際っ!? またまた~…冗談でしょ? 疾風ちゃんも冗談とか言うんだな~」

「いや、これはマジだぞ?」

「…………え?」

 

 マジトーンで言われ、思わずキョトンとなってしまう。

 援助交際なんて、響には最も縁遠い言葉の一つだからだ。

 

「あ、私はお茶系を頼むわ」

「う…うん」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 疾風は緑茶。響はアイスココアを飲みながら、ゆっくりと体を休めていると、そこに弦十郎がやって来た。

 

「疾風くん。響くん」

「よぉ…どうしたんだい?」

「司令として、君の事を労おうと思ってな」

「そっか」

 

 ポケットから小瓶を取り出して、備え付けのテーブルの上に置く。

 最初はなんだか意味不明だったが、瓶に着いているシールを見てすぐに察した。

 

「胃薬って……いたいけな十五歳の少女に渡すもんかよ?」

「必要ないか?」

「いや…貰っとくわ。なんか…これから先、凄く必要になりそうな気がするし…なんか妙に胃が痛いような気がする」

 

 太腿に瓶を挟んでから蓋を開け、中身をテーブルの上に出してから一摘みし、口に入れてからお茶と一緒に飲み込んだ。

 

「ふぅ…少しだけ楽になった気がする」

「それはよかった」

 

 まさか、この歳で胃薬のお世話になるなんて。

 何とも言えない微妙な悲しみに包まれた疾風だった。

 

「…で、翼はどうだった? 様子…見てきたんだろ?」

「あぁ。もう随分と落ち着いている。疾風くんと響くんには悪い事をしてしまったと反省していた」

「そこまで気に病む必要はないんだけどな…」

 

 やるべきだからと思ったからやった。

 あの時の疾風にはそれ以外の理由は無かった。

 

「だが…まだ響くんが戦場に出る事にはまだ納得できてないようだった」

「そればっかりは仕方がないだろうな。あいつはノイズの戦闘に関するプロみたいなもんだ。意気込みだけで素人に出てこられたって、そう簡単には受け入れられないだろ」

「どうすれば…いいのかな……」

 

 疾風や翼と肩を並べて戦いたい。

 少しでもいいから二人の助けになりたい。

 だが、具体的にどうすればいいのかが全く分らなかった。

 

「そんなの、強くなるしかないだろ」

「へ? それだけ?」

「うん。この短い間で分かった事なんだが…翼ってああ見えて意外と脳筋な所があるだろ。だから、アイツを最短で認めさせるには、響が強くなればいい。お前の意気込みとか決意とかは、その後にでも教えてやればいい。だから、まずは強くなれ。それが先決…っていうか、最優先事項だろ。じゃなきゃ、戦場に立つ資格すらない」

 

 言っている事は実にシンプルだが、それ以上に納得できた。

 まだ弱いままなのに、何も知らないままなのに戦場に出てきてしまった自分に対して翼は怒っていた。

 ならばまずは、自分の腕を磨く事から始めなくては。

 自分の進むべき道を決めた時、立花響という少女の行動は早かった。

 

「確かに、今の響くんはお世辞にも強いとは言い難い。ギアの性能を引き出せてもいないしな。『誰かを助けたい』という思いは立派だが、それに実力が伴っていない感じだな」

「何事を成すにも、まずは強くならなくちゃ始まらない。これぐらいは分かるだろ?」

「うん」

 

 急に響の瞳にやる気が宿る。

 疾風と弦十郎の言葉で、彼女の心に火が点いたようだ。

 

「それじゃあ…疾風ちゃん! 私を鍛えてください!!」

「悪いけど無理」

「えぇ~っ!? 同じバイト仲間じゃ~んっ!?」

「別に嫌だから無理って言ってる訳じゃない。普通に、私の戦闘スタイルと響がやるべき事がマッチしてないってだけの話」

「マッチしてないって?」

 

 残っている茶を飲みながら、天井を眺めつつポツポツと語り始める。

 

「これはあくまで私の私見だが…響は武器を使った戦いとかよりは、ステゴロ…拳や蹴りを使った戦いの方が向いてるんじゃないのか?」

「格闘技…ってこと?」

「そーゆーこと。考えるのが苦手なお前にはお似合いだろ。ゴチャゴチャ考える暇があったら、まずは一発パンチをぶちかます…的な?」

「そっかー…格闘技かー……」

 

 割と馬鹿にした感じで言ったのだが、なんでか響には通用しなかったようで、普通に納得されてしまった。

 ここまで純粋だと、逆にこっちの方が悪く思ってしまう。

 

「弦十郎さんとかに師事すればいいんじゃないのか?」

「お…俺にか?」

「少なくとも、二課にいる人間の中では一番の適任者だろ? 暇な時だけでいいから教えてやればいいさ。戦力の増加にも繋がるし、翼と響の仲を取り持つことにも繋がる。少なくとも、弦十郎さんのプライベートな時間が少し減るって事以外にはデメリットは無い筈だぞ?」

「う…うむ……」

 

 そう言われれば、弦十郎にはNOとは言えない。

 それ以前に、疾風と腹芸をして勝てるとは思っていない。

 彼女と真っ向からの口論で勝てるのは了子ぐらいだろう。

 

「はい決定。てなわけで響、これからは弦十郎さんに色々と教わんな」

「うん! よろしくお願いします司令…いや、師匠!」

「し…師匠…師匠か…悪くは無いな」

「意外と乗り気かよ」

 

 生真面目そうに見えて、意外とノリが良いのが弦十郎と言う男。

 だからこそ響を託したのだが、これはこれでいい相乗効果が期待できそうだった。

 

(まぁ…ただでさえ、翼の事で精一杯なのに、これ以上の苦労は出来る限りは背負いたくはないんだよね……)

 

 本心だけは心の中に仕舞いこみつつ、今はとにかく休みたくて仕方がない疾風なのだった。

 その心の言葉が盛大なフラグになるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱり響の師匠は弦十郎さんだけ。

だからといってフラグが消えたわけじゃないんですけどね。

疾風の苦労人フラグがここでデカデカと立ちました。



主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?

  • クリス
  • 未来
  • マリア
  • 切歌
  • 調
  • まさかの弦十郎
  • まさかまさかの慎次
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