もう一振りの天羽々斬   作:とんこつラーメン

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今回は夢の中のお話。

そして、とある方から使用許可を貰ったキャラを初登場させる回でもあります。

まだ明確な名前は出しませんが、徐々に明らかにしていく予定です。







予兆

 ノイズとの本格的な初戦闘に加え、その後に感情が暴走しかける翼と、勝手に現場までやって来た響の尻拭い。

 今までの人生の中でトップ10に入るぐらいに疲れてしまった疾風は、夕食後に風呂に入り、髪を乾かした直後にベッドへと直行。

 そのまま泥のように眠りに入ってしまった。

 

 深い眠りにつくと人間は夢を見ない…なんてよく言われているが、今回の疾風に限ってはそうではなかった。

 瞼を閉じる直前の本人でさえ『あ…これは間違いなく熟睡するわ』と確信したにも関わらず、バッチリと夢を見ていた。

 

「…成る程。夢の中だと分っている夢…これが俗に言う『覚醒夢』ってやつか。初めての体験だ」

 

 常人ならば大なり小なり何らかのリアクションをするところだが、この少女に我々の常識を当てはめてはいけない。

 疾風を本気で驚かせたければ、それこそ彼女の想像を越えるレベルの事をしなくては。

 

「周囲全体が真っ暗な闇の世界…。だが、私は普通に立っている。いや、これは夢なんだから現実的なことを持ちこんじゃいけないか」

 

 余りにも非常識な事態だというに『夢だから』で納得してしまう。

 それが疾風と言う少女なのだ。

 

「……………」

 

 今の自分の格好は、寝ている時にパジャマ代わりに着ている紺色のジャージ。

 勿論、右袖の部分は空洞になっている。

 鼻から息を出しながら、その場に胡坐を掻いて座り込む。

 視線だけは前だけを見つめつつ、さっきからずっと背後に感じている『気配』に話しかけた。

 

「…私になんか用か?」

『お前さんに礼を言いたいと思ってね』

「礼…だと?」

 

 聞いたことのある声。顔も知っている。だが、直接的に話したことは無い。

 何故なら、『彼女』の事を実際に見たのはライブ会場で遠くからだけだったから。

 

『翼の奴の暴走をギリギリのところで食い止めてくれてありがとう。アンタの言葉は確実に翼の心に響いたと思う』

「別に礼を言われるような事はしていない。私はただ、必要だと思ったからやったに過ぎない」

『ふーん?』

「あのまま行けば、確実に翼は潰れる一歩手前ぐらいにまで追い込まれていた。実際、アイツの精神はもう限界寸前になっていたしな。私を『お前』の代わりにしようとしていたのがいい証拠だ」

『そうだな……それだけが、あたしにとっての唯一の心残りだった……』

「だった?」

 

 どうしてそこで過去形になる?

 怪訝な顔をしながら視線だけ少し後ろに向けた。

 

『もう心配はしてないよ。あたしの後輩もいるし、なにより…アンタがいるしね』

「私が?」

『そうさ。アンタの言葉はその一つ一つが妙な説得力を秘めている。だからこそ、翼もアンタに心を開いたんだろうしね』

「あれは『心を開く』と言うよりは『懐かれた』と呼ぶべきじゃないのか?」

『あはははははっ! 別にどっちでもいいじゃないか! 実際、今のアンタと翼はアタシから見てもいいコンビに見えるぜ? 同じ天羽々斬同士、息もピッタリだったじゃないか』

「即席のコンビだけどな」

『即席であれだけ連携が取れていれば上等さ。アタシだって、翼と合わせるのにどれだけ苦労した事か……』

 

 いつの間にか、数年来の友人のように話し込んでいた。

 疾風も、不思議と『彼女』に対して怪しい感じも不快感も感じていない。

 相手の正体が分かっているから。その相手が信用出来ると分かっているから。

 

『頼む…これからも、アイツ等の事を支えてやってくれ』

「支える…ね。これでも一応、翼よりも三歳も年下なんだが……」

『マジでッ!? 凄く大人びてたから、てっきりアタシと同い年ぐらいだと思ってた……』

「そんだけ老けて見られてるんだよ私は……」

 

 どれだけ世の中を斜めに見ていても、疾風だって立派な女の子。

 三歳以上も上に見られて少なからずショックを受けていた。

 

『まぁ…それはそれとして』

「しれっと流すな」

『あはは…。最後にもう一言、礼を言わせてくれ』

「なんだ?」

『…翼の事を恨まないでくれてありがとな』

 

 皆までは言わない。それが何を意味しているのか分かっているから。

 

『疾風…あたしは、お前の事を心から尊敬してる。そんな体になっても生きる事を選んでいるばかりか、翼の事を恨まないどころか一緒にいてくれようとしている。本当に凄いよ…本当に』

「終わった事に対してウジウジ言うつもりが無いだけさ」

『その割り切りが凄いんだよ。それじゃ…アタシはもう行く。出来る事なら、お前とは生きている間に会って、色んな事を話したかったな……』

「私もだよ…天羽奏。それじゃあな」

『あぁ…またな』

 

 最後から気配が消えた。

 これで夢から覚めるのかと思いきや、いつまで経ってもその気配が無い。

 

「………?」

 

 周囲の闇に目を凝らす。

 微かではあるが、確かに自分以外の気配がした…ような気がした。

 

『フッ…どうやら、無事に話をする事が出来たようだな』

『そやな~。ほんまによかったで~』

「今度は誰だ……」

 

 何も無い空間から突如として聞こえてきた二つの声。

 どっちも声の質から女だという事は分かるが、まるで正反対のような性格を感じた。

 片方は男勝りで喧嘩っ早い感じを、もう片方はのんびりとしながらも芯はしっかりているような感じを。

 共通して分かっている事と言えば、疾風の知り合いにはこんな声を持つ人間達は一人もいないという事だ。

 

『オレ達の事に関してはどうでもいいんだよ。いずれ必ず会う事になるんだからな』

「会う事になる…だと?」

『そやで~。なんたって、ウチらは同じ『チーム』なんやさかいな~』

「チーム? また意味不明な事を……」

『その意味もいずれ分かる。それよりも、今は別の事について話をしなくてはいけない』

 

 急に声のトーンが変わり真剣みを帯びる。

 疾風もまた、それに合わせて目を細めた。

 

『ギアを纏った時、お前のアームドギアから緑色の光が出現しなかったか?』

「あぁ…確かにあった。だが、それがどうかしたのか? あれもまたシンフォギアの機能の一つだろう?」

『悪いけど、それはちゃうで~。シンフォギアにあんなんを出す機能はあらへんで~』

「なに…?」

 

 シンフォギアの機能ではない? それは一体どういう事だ?

 確かに、あの了子でさえもアレについては『今はまだ分からない』という回答を出している。

 単純に自分のシンフォギアが特殊な形で覚醒したせいだと思い込んでいたが、この二人の口ぶりから察するに、どうやら別の理由があるようだ。

 

『あの光はギアから出ているんじゃない。お前の体…もっと言えば魂から出現している物だ』

「魂からだと? おいおい…冗談を言うなら、もっとマシな事を言うんだな。言うに事欠いて『魂』だと? 未だに科学の力を持ってしても、その存在の証明が出来ていない代物から謎の光が出ているだと? ふざけているのか…?」

 

 怒気を込めながら虚空に向かって睨み付ける。

 こんな事をしても無意味だと理解はしているが、それでもしなければいけないと思った。

 

『ふざけてなどいない。あれこそが大いなる『進化の光』…『ゲッター』の光なんだ』

「ゲッター…?」

 

 聞いたことのない単語が飛び出し、思わず眉をひそめる。

 単語としての意味ならば疾風だって知っているが、まず間違いなくソレとは違う意味で言っているのだろう。

 

『本来ならば、お前のいる世界には存在しないエネルギーだが、それを別の並行世界からお前の体…いや、魂を依代にして現出している』

「意味が分からん…」

『今は無理して理解しようとしなくていい。だが、これだけは覚えておけ』

 

 一息の後、声は大きくハッキリとした口調でこう言った。

 

『他の者達はいざ知らず、お前…神疾風によってのシンフォギアとは単なる『装置』に過ぎない。そう…『ゲッター線』を引き出す装置なのだと』

『せやから、疾風やんのアームドギアはドリルになってるんやで~』

「私のアームドギアがあんな形状をしているのは必然だったというのか…?」

『そうだ。あのドリルこそがお前の持つ宿命を具現化した存在。オレ達と同じように…な』

「お前達も…だと? それはどういう意味だ」

 

 まるで、疾風と自分達が同じような立場であると言っているかのよう。

 この時初めて、彼女はある事に気が付いた。

 

(そう言えば…どうしてさっきから私は、こんな怪しい声と普通に話している? 幾ら夢とはいえ、私はこんなにも警戒心の薄い人間だったか…?)

 

 普段の自分からは信じられない事。

 さっきまでならばいざ知らず、今回は本当に知らない相手なのだから。

 そう…知らない筈の相手なのだ。知らない筈…それなのに……。

 

(なんでだ…私の中にある『ナニか』が言っている。こいつらは敵ではないと。知っている相手(・・・・・・・)であると!)

 

 まるで、長年一緒に戦ってきた掛け替えのない仲間のような安心感!

 こいつらと一緒なら、煮えたぎる地獄の窯の底に突き落とされても構わないと思わせる結束!

 これは理屈ではない。疾風の中の本能がそう叫んでいた!

 

『これは夢であって夢ではない。だからこそ、オレ達はお前に『接続』出来た』

『ホンマ、『皇帝サマ』には感謝やな~』

「皇帝…? 誰だそれは?」

『遥か遠い未来にオレ達を待っている存在…お前もいずれ必ず会う存在だ。オレ達と一緒にな』

『かなり長い年月が掛かるかもしれへんけどな~』

『仕方ないさ。どんな世界においても、オレは『運命に抗って前へと進み』、お前は『一足先に行って我々の事を待っていて』、こいつは『運命を受け入れてから来たるべき時を待つ』んだからな』

『にゃはは…こればっかしはしゃーないわな~。なんたって『魂』に刻まれとることやからな~』

「待て…何を言っている。お前達は何を話しているっ!?」

 

 思わず立ち上がってから上を見つめながら叫ぶ。

 まるで、そこに彼女達がいるかのように。

 

『神疾風…お前は『待つ者』であり『残される者』でもある。だが、それを悲観する必要はねぇ。何故なら……』

『疾風やんには『使命』があって、だからこそ残されるんやからな~』

「私の…使命…?」

『そやで~。疾風やんにしか出来ひんこと…託せへんことがあるんやからな~』

「私だからこそ…託せる事……」

 

 自分にしか出来ない事。

 それを聞かされ、不思議とそれが何なのかが理解出来た。

 今の自分の置かれた立場…そして、周囲の環境。

 そして……。

 

『最後に一つだけ忠告をしておく』

「なんだ?」

『…櫻井了子には気を付けろ。お前には無意味な忠告かもしれないがな』

「いや…有り難く受取っておく。私もあの女には妙な違和感を感じていたんでな」

『流石は疾風やんやな~。IQ300は伊達やないわ~。野球と柔道しか能のないウチとは大違いやで~』

 

 この関西弁の女の事が分からなくなってきた。

 自分と同じ立場と称しながらも、野球と柔道しか能が無いとはこれいかに?

 

『そろそろ接続が切れそうだ。それじゃあな疾風。実際に会える日を楽しみに待ってるぜ』

『その時こそ『最後のゲッターチーム』の誕生やな~。ほなな~疾風や~ん。ウチも、あんさんに会える日を楽しみにしてるで~』

「あぁ…もしも本当に会えるというのならば…私も楽しみに待っている事にしよう。その時こそ『ゲッター』とやらの事を教えて貰おうか」

『オレ達と会う前に、お前ならきっと『ゲッター』の本質を理解するさ。それじゃあ…あばよ、ダチ公』

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

 バッっとベットから起き上がり、枕元にある目覚ましを確認する。

 時間はまだ深夜の4時を回った辺り。

 誰も彼もが静かに寝ている時間帯だ。

 

「夢…だったのか…それにしては妙にリアルすぎる…!」

 

 通常、夢の中での出来事は起きた瞬間に全て忘れると言われているのだが、今回に限っては何故か夢の中での会話の内容を一字一句残さず全て記憶していた。

 疾風は記憶力もいい方であると自負しているが、それでも夢の内容を此処まで詳細に記憶していた経験は一度も無い。

 『今の体』になった時の夢であっても、起床した時には部分的にしか記憶していない。

 

「ゲッター……ゲッター線……。なんだそれは……。あいつ等は誰なんだ…私とどんな関係があるというんだ……」

 

 何もかもが分らないことだらけ。こんなのは生まれて初めてだった。

 だからこそ知りたいと思った。なんとしても。

 

「私の力……ゲッターの力…か。いいだろう…意味不明ではあるが、利用できるものは何でも利用してやる。私が生きる為に…あいつらを死なせない為に…!」

 

 決意を新たに残された左手を握りしめる。

 その目には今までの疾風には無い『炎』が確かに宿っていた。

 

 因みに、寝汗を掻いてベトベトしていたのでシャワーを浴び、スッキリしてから再度寝る事に。

 二度目となると流石に深くは眠れなかったようで、なんでか弦十郎と一緒にどこかに遊びに行く夢を見て、朝になってから顔を真っ赤にしていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっとゲッターらしい話を書けました。

これでいいのかは別として。

因みに、関西弁のキャラは完全なオリジナルで、一応は『三人目』に該当しています。


主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?

  • クリス
  • 未来
  • マリア
  • 切歌
  • 調
  • まさかの弦十郎
  • まさかまさかの慎次
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