もう一振りの天羽々斬   作:とんこつラーメン

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なんか寄り道してしまいましたが、やっと話が進みます。

思い付きとはいえ、安易に寄り道なんてするもんじゃないですね…。













ネフシュタンの鎧

 二課本部内に設けられた櫻井了子の研究室。

 ここは基本的には彼女専用の部屋なのだが、それとは別に装者たちのメンタルチェックなども行われている部屋でもある。

 

 そこに今、部屋の主である了子の他に、疾風が一緒にいた。

 そんな疾風はと言うと、了子が特別に見せてくれているシンフォギアの資料をタブレットにてジッと見ている。

 

「ネフシュタンの鎧?」

「嘗て、この二課にあった第4号聖遺物。だけど、響ちゃんのガングニールや翼ちゃんや疾風ちゃんの天羽々斬とは違って、経年劣化や外的要因による破損が一切見られない『完全聖遺物』と呼ばれる存在なの」

「当時の姿、そのままの状態で発見されたって訳か…普通に凄いな」

 

 通常、どんなに保存状態が良かったとしても、必ず何らかの形で細かい傷跡や汚れなどが有る筈だ。

 それなのに、それらが一切無い状態で発見されるだなんて奇跡に近い事だ。

 

「完全聖遺物自体は他にもあるんだけど、ネフシュタンが完全な状態で発見されたのには明確な理由があるの」

「それは?」

「ネフシュタンには強力な再生能力が備わっている。だから、どれだけ長い年月が経過したとしても……」

「破損や錆びなどは一瞬で再生してしまう…か。もう普通にチートだな」

 

 常識的な感性を持っているならば『凄い』の一言で終わりそうだが、研究者視点からすれば、これ以上に有り難い事は無い。

 余計な手間暇を掛けなくても、常に最高の状態を維持してくれるというのは、それだけ研究をする時間が増えると言う事だからだ。

 

「けど、なんでいきなりそんな話をする? しかも私だけに」

「それが本題なのよね。疾風ちゃんなら、響ちゃんとは違ってきちんと聞いてくれそうだし」

「響…哀れな奴」

 

 遠まわしに『落ち着きが無い』と言われてしまった響。

 本人がここにいれば、泣きながら疾風の体に抱き着いていただろう。

 

「そういえば、その響ちゃんは今何をしてるの?」

「弦十郎さんと一緒にトレーニングルームにて、いつもの特訓」

「あの二人も張り切ってるわよね~…」

 

 ここでチラっと疾風の方を見て反応を確かめるが、彼女は至って普通の表情。

 ガッカリしながら溜息を吐いた。

 

「なんだよ」

「別にぃ~? ただ、疾風ちゃんももっと青春をした方がいいと思っただけ」

「青春ねぇ~…」

 

 自分とは最も縁遠い言葉の一つ…だと疾風は思っている。

 今までも、これからも、自分の青春時代なんて碌なもんじゃないと確信しているからだ。

 

「それよりもネフシュタンの事を教えろ」

「そうだったわね。…ネフシュタンは嘗て、ガングニールや今はもうないイチイバルと一緒に第二次世界大戦中にドイツから日本にもたらされた聖遺物の一つで、少し前まではこの二課の本部の地下深くに封印処理をして厳重に保管をされていたの」

「されていた…過去形か。ということは、もうここには無いって事なのか」

「その通り。ネフシュタンは失われた…いえ、正確には奪われたと表現するべきかしらね」

「奪われた? どうやって? 厳重に保管されていたんじゃないのか?」

「ネフシュタンが奪われたのは、地下から出した時なのよ」

「なんだって?」

 

 これまで保管をしていた聖遺物を外に出す。

 余程の事が無ければ、そんな事は決してしない筈だ。

 

「ネフシュタンの鎧が奪われたのは、今から二年前になるわ」

「二年前だと? まさか……」

「そう…疾風ちゃんの予想通り。二年前のツヴァイウィングのコンサートは、本当はネフシュタンの起動実験だったの」

「…実験は成功したのか?」

「あら。てっきり恨み言の一つでも吐かれるかと思ってたけど」

「前にも言った筈だ。過ぎた事に対して何かを言うつもりはないと。それよりも質問に答えろ」

 

 言葉だけを聞けば何にも感じてないように聞こえるが、実際には疾風の眉間には皺が寄っていて、左手を強く握りしめていた。

 まるで、怒りによって震える手を押さえ込むかのように。

 

「実験自体は成功したわ。ちゃんとネフシュタンは起動した。けど……」

「それだけじゃ終わらなかった…か?」

「えぇ。ネフシュタンの放つエネルギーは私達の想像を遥かに超えていて、制御が出来なかった」

「…もしかしてとは思うが。その暴走が原因でコンサート会場にノイズが溢れたのか?」

「それは違うと思うわ。これまでの研究でノイズが高エネルギーに惹かれて出現する、まるで昆虫みたいな特徴を持っているなんて報告は出てないし。あの時のノイズの大量発生に関しては本当に偶然だったとしか考えられない。少なくとも現段階では、それ以上の答えは導き出せないわ」

「…了子さんがそこまで言うんなら、それが正しいんだろうな…」

 

 夢の中で聞いた声に従う形で了子の事を警戒している疾風ではあるが、それとは別に一人の研究員としては信用出来るとは思っていた。

 少なくとも、自分の専門分野に関しては嘘を言わないだろうと、不思議な確信があったから。

 

「ところで、そのシンフォギアの資料はどう?」

「面白いよ。凄く面白い。前に大まかな説明を受けた時から興味はあったが、これを見てから増々面白いと感じた。資料を見ているだけでも全く飽きないな。何時間でも眺めていられる」

「疾風ちゃんだけよ…そんな事を言ってくれるのは」

 

 二課において研究者なのは了子だけ。

 逆を言えば、彼女の専門用語だらけの話を全て理解出来る人間も了子自身だけなのだ。

 なので、今までは専門家でも分かり易いように掻い摘んだ説明をしていたのだが、そこに自分の言いたい事を完全完璧に理解してくれる天才少女がやって来た。

 それにより、了子のストレスが密かに大幅に軽減された。

 

「私もシンフォギアシステムについて勉強してみようかな……」

「実際にしてみる? 暇な時なら教えてあげるわよ?」

「ホントか? ちょっと本気で頑張ってみるか…?」

 

 久し振りに興味深い存在に出会い、疾風の目にやる気が漲る。

 まるで弟子が出来たみたいで、了子は地味に嬉しくなった。

 

 室内の空気が変わり、ほんわかとなり始めた時…本部内にノイズ出現のアラートが鳴り響く。

 

「どうやら、お仕事の時間みたいだ」

「みたいね。司令室に急ぎましょう」

「そうだな」

 

 互いに頷き、二人は急いで司令室まで走っていくことに。

 その際、疾風の足の速さに了子は何回か置いてきぼりになった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「待たせた」

「只今到着よ!」

「疾風くんに了子くんか!」

 

 二人が司令室に入ると、そこには既に弦十郎たちだけではなく、翼と響も揃っていた。

 

「了子さんと一緒に来るなんて珍しいね。二人で何をやってたの?」

「世間話と、ちょっとした勉強」

「文武両道か。素晴らしい心掛けだ」

 

 別に疾風はそんな事を考えてやっている訳ではないのだが、それでも翼の評価が更に上がったらしい。

 なんかもう、何をやっても翼から褒められそうな気がするのは疾風だけだろうか。

 

「それで、ノイズの出現場所は特定できたのか?」

「うむ。朔也!」

「はい! すぐにモニターに出します!」

 

 二課のオペレーターの一人である藤尭朔也が機器を操作して、正面大型モニターに簡易的な地図を出し、ノイズの出現場所を赤い丸で示した。

 

「またリディアン…というか、二課の近くか。これで何度目だ?」

「疾風の初出撃からこっち、これまでとは比較にならない程にノイズが出現しているな……」

「しかも、その殆どが二課の周辺になっている。ここまであからさま過ぎると、逆に怪しく感じてしまうぞ」

「えっと…どういうこと?」

 

 疾風と翼がこのおかしな状況について話し合っていると、響が小首を傾げながら話に入ってくる。

 何が怪しいのか、それが全く分からないが、それでも装者として会話には入らないといけないと思ったのだ。

 

「つまり、ノイズ達はどう考えても二課を狙ってるって事だ」

「で…でも、ノイズには明確な自意識は無いってテレビでも言ってたよ?」

「別に連中が自分達の意志でこっちを狙ってるっとは限らないだろ」

「矢張り、疾風君もそう思うか?」

「あぁ…俄かには信じがたいが、ここまで出現場所が重なってると、もう偶然とかじゃ有り得ないだろ。十中八九間違いないだろうさ」

 

 全身の視線が疾風に集中する中、一息置いてからハッキリと言った。

 

「あのノイズ達は、明らかに何者かによって操られている」

 

 ノイズを操る。

 普通ならばまず考えないような事だが、疾風がこんな時の冗談を言うような性格をしていないのは、もう皆が分かっていた。

 それ以上に、彼女の聡明さ故にその言葉には不思議な説得力があった。

 

「ノイズを操る…だと? そんな事が……」

「私だって確証があって言ってる訳じゃない。ただ、現状では最も可能性が高いってだけの話だ。どっちにしろ、奴らを倒す事には変わりないんだからな。それよりも弦十郎さん」

「分かっている。響くんの事だな」

「もう大丈夫なのか?」

 

 今日までずっと出撃をせず、弦十郎と実戦に向けたトレーニングをしてきた響。

 その成果は確実に現れてはいるが、それを決めるのはあくまでも師匠であり司令官でもある弦十郎だった。

 

「まだ粗削りではあるが、現場に出しても問題は無いと判断している。勿論、疾風くんや翼のフォローがある事が大前提だが」

「それぐらいは分かっている。なら、今回から響も一緒に出撃って事でいいんだな?」

「そうなるな。響くん!」

「はい!」

 

 弦十郎から名前を呼ばれ、ビシっと背筋を伸ばす響。

 その顔は真剣そのものだ。

 

「絶対に無理だけはするな! 現場では疾風くんの言葉に従うんだ! いいな!」

「分かりました!」

「よし! それでは……」

「急いで出撃する! 翼! 響! 行くぞ!」

「承知!」

「うん!」

 

 疾風を中心にし、三人の少女達は司令室を後にし現場へと急行する。

 もうすっかり、三人の関係性が完成していた。

 

「なんというか…完全に疾風ちゃんがシンフォギアチームのリーダーみたいになってるわね」

「実際に疾風くんにはリーダーシップがあるからな。彼女に押し付けているようで申し訳ないとは思っているが……」

「そういうことは本人の前で言ってあげなさいな。きっとあの子、喜ぶわよ?」

「うむ……」

 

 なまじ関係が長すぎると、何を言えばいいのかが逆に分からなくなってくる。

 弦十郎も丁度、そんな感じになっていた。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 本部を出た三人は、すぐにノイズの集団を視界に捉える。

 

「どうやら、今回もまた団体客のようだな。最近の二課は千客万来ってか?」

「ノイズの客なんて、こっちからお断りだがな!」

「そうですね! 他のお客さんの迷惑だから、とっとと帰って貰いましょう!」

 

 眼前には見渡す限りのノイズで溢れているが、三人は全く動揺したりはしていない。

 疾風に至っては不敵な笑みを浮かべている程だった。

 

「毎度のように、市民たちはとっくに非難を完了してるか。なら…遠慮なく戦えるな。二人とも、準備は良いな?」

「ふっ…言うまでもない!」

「いつでも行けるよ!」

「上等だ!」

 

 翼は胸のペンダントを握りしめ、疾風と響は自分の胸に手を当てた。

 そして、それぞれに聖詠を唱えた。

 

 

Penetrate amenohabakiri tron

Imyteusu amenohabakiri tron

Balwisyall Nescell gungnir tron

 

 

 こうして、三人揃っての本当の意味での初陣が幕を開けたのだった。

 それを影から密かに見ている者の存在に気が付かないまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、やっと『彼女』が登場。

でも、原作のようにいくかな…?




主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?

  • クリス
  • 未来
  • マリア
  • 切歌
  • 調
  • まさかの弦十郎
  • まさかまさかの慎次
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