もう一振りの天羽々斬   作:とんこつラーメン

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主人公である疾風は、基本的なスペックは隼人とほぼ同じだと思っていてください。
つまり、身体能力が超高校生級で、IQ300ってことです。
大臣暗殺を企てているかは流石に不明。
あと、校舎に子分と一緒にたむろもしてません。
学校に行ってませんから。









お節介な大人

 ホテルから出ると、外はすっかり暗くなっていた。

 道行くのは会社帰りのサラリーマンか、もしくは疾風(はやて)のような不良な連中だけだ。

 さっきまで援助交際をしていた男性はつい先程別れていて、今は彼女一人だけ。

 さっきの『仕事』で十分な収入は得られたので、今日はもう完全に行きつけとなっている漫画喫茶にでも行って休もうかと思う。

 

「その前に一服一服…っと」

 

 指が少ない左手で器用にポケットから煙草の箱を取り出し、一本だけ出してから口に咥えてから箱を仕舞う。

 その後、同じポケットからライターを取り出そうとすると、いきなり横から伸びてきた太い腕に咥えていた煙草を取られてしまった。

 

「あ……」

「まだ、こんなものを吸っているのか……」

「はぁ…またアンタか。弦十郎さんよ」

 

 赤みがかった髪に、同じように赤い服を着た筋骨隆々な男が渋い顔をしながら、さっきまで咥えていた煙草を握り潰した。

 

「また援助交際をやっていたのか…疾風くん」

「悪いか? 別に今に始まった事じゃない。昔からずっとやって来たことだ。この体になってから客を選ばなくちゃいけなくはなったがな」

「………」

 

 三本しか指が無い左手を掲げながら皮肉ると、弦十郎は拳を震わせながら俯く。

 その顔は悔しさを滲ませており、何が彼にこんな顔をさせるのか、今の疾風には全く分らなかった。

 

「…すまない」

「それ、私と会う度に言ってるが、なんで謝るんだ?」

「今の俺にはそれしか出来ないからだ…」

「答えになってねぇよ。ま…アンタの隠し事なんて今更か」

 

 弦十郎と出会ったのは、あの事件の後の直後だった。

 いつの間にか運び込まれた病院にて目を覚ますと、一番最初に見たのが彼だった。

 どうやら、出血多量で瀕死状態だった疾風を見つけたのが彼だったらしく、彼女の状態を見た時には歯を食い縛りながら拳から血を滲ませていた。

 それから退院までずっと見舞いに来て、その後もズルズルと腐れ縁が続いている。

 

「取り敢えず、説教だけは勘弁してくれ。援助交際(あれ)は今の私にとって唯一無二の収入源なんだ。とっとと金を溜めて、アンタへの借りを返したい」

「入院費や治療費の事ならば気にするなと言っているだろう」

「そっちが気にしなくても、私は気にするんだよ。どんな理由があろうとも、借りを作りっぱなしってのは性に合わないんだ。だから、どれだけ時間が掛かっても必ず返す」

「君も頑固だな……」

 

 幼少期から殆どの時間を一人で過ごしてきた疾風は、何事も自分一人だけで出来るように努力を重ねてきた。

 大人にも他人にも頼らず、一人だけで生きていけるように。

 その想いは右腕と左手の指を失った今も変わっていない。

 

「…ところで、疾風くんはもう夕食は食べたのか?」

「まだ。適当にコンビニで買ってから、漫画喫茶で食べようかと思ってた」

「そうか…よかったら、どこかで一緒に食べないか?」

「どこかって…ファミレスとか?」

「今の時間帯ならそうなるな。本当は定食屋などがいいのだろうが……」

「流石に今はねぇ……」

 

 店によっては開いているかもしれないが、少なくとも夜に開いている定食屋を疾風は知らない。

 なので、必然的に外食の選択肢はファミレスなどに限定される。

 

「別にいいよ。その代り、割り勘だけどな」

「分かっている」

 

 話は決まり、二人は並んで歩道を進んでいく。

 ファミレスに付くまでの間、二人の間に会話らしい会話は一切無かった。

 

 

 

 

 

・・・・・

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・・・

・・

 

 

 

 

 

 ファミレスに付くと、弦十郎はカツ丼&小うどんセットを注文し、疾風はビーフカレーを注文した。

 指の不足により箸が握れない疾風は、こういったスプーンやフォークで食べられるものしか注文できないのだ。

 疾風の姿を見た時、店員が大きく目を見開いていたが、当の本人は全く気にしていなかった。

 奇異の目で見られるのには完全に慣れてしまっているから。

 

「疾風くんは、いつまで今のような生活を続けるつもりなんだ?」

「死ぬまでじゃない? 昔から私の居場所なんてどこにも無かったし、それは今も変わらない。最悪の場合、どこかの公園で適当にホームレス生活でもするさ。こう見えても、野宿の心得はそれなりにあるんでね」

 

 カツ丼を食べながらさりげなく弦十郎が訪ねてみるも、疾風は無表情のまま普通に答えた。

 たった三本しかない指で頑張ってスプーンを使いカレーを食べている姿は、見ている身としてはかなり堪える。

 

「…疾風くん。前にも話したが、学校などに行く気は……」

「無い。それに関しては何度尋ねられても答えはNOだ」

「そうか……」

 

 弦十郎としては、なんとかして疾風に普通の生活をさせてやりたいと考えている。

 それが自分勝手な善意であると本人も承知はしているが、だからと言ってこのまま黙って傍観などは出来ない。 特に、彼のような性格の男は。

 

「この近辺には、私のような人間専門の学校なんてないし、仮にあったとしても金が掛かる。県外に行くにも移動費が掛かるし、学費だって馬鹿にはならない。健常者の行く学校なんて以ての外だ。まず間違いなく門前払いされるに決まってるし、奇跡的に入学できたとしても、お互いに気まずくなるだけだ。それ以前の問題として、生きていくだけで精一杯の状態の私に学校に行く余裕なんて微塵も無いんだがな」

 

 学費の問題などは自分がなんとかする。

 本当はそう言いたいが、疾風の性格がそれを許してくれない。

 他人に借りを作る事を極端に嫌う彼女が、学費の肩代わりなんてことをしたらどんな反応をするか…それが分からない弦十郎ではない。

 

「俺は…君に何もしてやれないのか……」

「そんな事は無いよ」

「なに?」

 

 疾風の意外過ぎる反応に、思わず弦十郎の口から変な声が出た。

 

「こうして話し相手になってくれるだけでも結構違うもんだよ。私が知ってる大人ってのは、うちのクソッタレな両親も含めて全員が碌でもない奴等ばっかりだったけど、アンタだけは数少ない例外だし。そっちだって色々と忙しいだろうに、それなのに時間を作って会いに来てくれるのは普通に嬉しい」

「そうか…そうか…!」

 

 正直な話、弦十郎は不安だった。

 自分は疾風の事を苦しめているのではないかと思っていた。

 だが、そんな事は無かった。

 少しずつと確実ではあるが、彼女の心の扉を開いてはいたのだ。

 

「…なんとかして、この指でも箸が持てるようにならないかな…」

「義肢などを付ければいいとは思うが…」

「無理。あれって軽く数十万ぐらいするんでしょ? しかも、その為にはリハビリとかの為にまた入院もしなくちゃいけないし…金が幾らあっても足りないッつーの」

「そうだな……現実的であり、最も厳しい案ではあるな……」

 

 疾風自身も、本当は義肢のような物があれば一番だと思っている。

 だがしかし、それが出来れば誰も苦労はしないのだ。

 

「別に私を待たなくてもいいよ。一人でも平気だし」

「そう言うな。それに、食後の一杯ぐらいは味あわせてくれ」

 

 話しながらも、ちゃんとカツ丼とうどんを食べ終えていた弦十郎は、ドリンクバーを取りに席から離れていった。

 和食を食べた直後なので、恐らくは緑茶の類を取りに行ったのだろう。

 

「…私も後でジュースとか飲もう」

 

 このカレー…思ったよりも辛かった。

 別に辛いのが苦手という訳ではないが、それとは別に冷たい飲み物が恋しくなった。

 手元にあるお冷はとっくに空っぽになっているから。

 

「…まずは食べるか」

 

 残りはあと少し。頑張って完食を目指す疾風なのだった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 次の日。疾風は筆記道具一式とノートなどを持って図書館に来ていた。

 目的は勉強をする為。

 幾ら学校に行っていないとはいえ、勉学を疎かにするほど愚かではない。

 寧ろ、今のような状態になってから、これまで以上に色んな事を勉強するようになった。

 自分は他の人間達以上に大きなハンデを背負っている。

 ならば、そんなハンデなんてものともしないぐらいに自分が頑張ればいいだけ。

 単純だが確実な方法で疾風は今を生きようとしていた。

 

「ふぅ……この辺ももう終わりか。次は何にするかな……」

 

 因みに、疾風が今勉強しているのは数学なのだが、その内容が普通ではなかった。

 歳的には高校生の解くような問題をするのが当然なのだが、疾風がしているのは明らかに高校生のレベルを遥かに超え、世界最高峰の大学などで学ぶような内容の勉強をしていた。

 

(左手だけで物書きが出来るように頑張った甲斐があった。物凄く苦労はしたが、結果はちゃんと出ている。後は、もっとスピーディーに書けるようになれば文句なしなんだが……)

 

 文字自体は問題無く書けているし、筆跡も十分に綺麗だ。

 書く速さ自体は、利き手ではない方で書いているのだから仕方がない部分はある。

 ちゃんと出来ているだけでも十分に称賛に値するのだが、それで満足しないのが疾風という少女なのだ。

 

「…もうこんな時間か」

 

 机の上に置いてあるスマホに目をやると、もうすぐ12時になろうとしていた。

 道理でお腹が空き始めるはずだ。

 

「昼飯にするか…」

 

 まだ少し早いが、片付ける時間を考慮すれば丁度いい時間だ。

 鞄を机の上に置き、一つ一つ荷物を中に入れていく。

 

「よし。それじゃ…行くか」

 

 左肩に鞄を下げると、その足で図書館を後にする。

 街中を歩きながら、どこで昼食を食べようか思案していると、急に疾風は道の真ん中で立ち止まった。

 

「なんだ…?」

 

 突然、胸にある傷跡が疼き始める。

 ここには二年前に受けた傷があり、体の中に謎の破片が入り込んでしまっていた。

 かなり深く入っているようで、現代の医術では摘出は不可能だと言われた。

 破片は心臓の近くにあるようで、下手に取り出そうとすれば心臓を傷つけてしまう可能性が高いとの事。

 その代り、何もしなければ問題は無く、日常生活にも支障はないらしい。

 

「そういや…今までにも何回か似たような事はあったけど…ここまで酷くは無かったぞ……」

 

 どこか適当な場所で休憩でもするか?

 そう思った瞬間、街全体にけたたましい警報が鳴り響く。

 それは、これまでにも何度も聞き慣れた音だった。

 

「ノイズ出現の警報か…」

 

 これまでにもノイズが出現する事はあったが、二年前の事件を境に出現率が大幅に増加し始めた。

 今までは一ヶ月に一回出ればいい方だったのだが、最近では一週間の間に何度も出現している。

 明らかにこれはおかしい。

 少なくとも、疾風はそう考えていた。

 

「取り敢えず、私もとっとと避難するか……なっ!?」

 

 付近にあるシェルターへと向かおうとした矢先、いきなり目の前に複数のノイズが出現し、彼女に向かって歩いてきた。

 

「くっ……冗談きついぜ!」

 

 このままシェルターに行けばノイズも連れて行くことになってしまう。

 それだけは絶対に避けなければいけない。

 仕方なく、疾風はこの場から移動する事で少しでもノイズをここから離す事にした。

 対抗手段がない以上、今はこうするしかないのだ。

 

「自衛隊のおっさんたちよ…とっとと来てくれよな……!」

 

 彼らにノイズが倒せるかと言えば、そうではない。

 通常の重火器が通用しない以上、どれだけ鍛えていても無力なのだ。

 それでも、避難誘導ぐらいは出来るので、今はそれに賭けるしかない。

 

 ノイズに追いかけられている最中も、疾風の胸の傷の疼きは収まろうとしない。

 それどころか、徐々に強くなっていく。

 

 この日、疾風は自分の運命と対峙することになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




恐らく、次回辺りに覚醒するかと。

どんなギアになるかは、お楽しみって事で。




主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?

  • クリス
  • 未来
  • マリア
  • 切歌
  • 調
  • まさかの弦十郎
  • まさかまさかの慎次
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