もう一振りの天羽々斬   作:とんこつラーメン

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遂に現れた『彼女』ですが、その強気な態度もいつまで続くのやら。

原作ならばいざ知らず、ここではどうなるのでしょうか?







心に念じる見えない刃

 ノイズとの戦闘中に突如として現れた、二年前に奪われてから行方が分からなくなっていた『ネフシュタンの鎧』を纏った謎の少女。

 疾風がいち早く気付く事で奇襲だけは免れたが、彼女が放った挑発によって怒り心頭状態となっていた。

 

「ネフシュタンの鎧…どうして貴様などがそれを!」

「さぁ…なんでだと思う?」

 

 翼の当然の疑問に対し、少女は普通に受け流す。

 明らかに『お前なんか眼中にない』と言った感じだった。

 

「お…女の子…?」

 

 一方の響は、いきなり出てきた『人間の敵』に対し、さっきまでの気迫が完全に吹き飛んでいた。

 彼女がこれまで武術を学んできたのは、あくまでノイズを倒す為であって、人間に対して拳を向ける為ではないからだ。

 

「ふーん…あれが例の『ネフシュタンの鎧』か。思ったよりもシンプルな感じなんだな。意外だよ」

「は…疾風はネフシュタンの事を知っているのかっ!?」

「一応な。出撃する少し前に了子さんから教えられた。私なら大丈夫だろうって事で」

「櫻井女史から……」

 

 最近の疾風は、よく了子の研究室にいる事が多く、今では半ば彼女の助手のような立場となっていた。

 了子の専門的な話を理解出来るのが疾風だけと言うのもあるが。

 

「アレがお前や二課の皆にとって因縁深い存在だってのは知ってる。だが、今は落ち着け」

「しかし…! あれは…ネフシュタンだけは!」

「感情的になれば、それこそ相手の思う壺だ。お前だって分かってるだろ? 感情に飲まれたら、勝てる勝負も勝てないってことぐらいは」

「ぐっ……!」

 

 疾風の言っている事は正論だ。それは翼だってよく分かっている。

 だとしても、許容できる事と出来ない事がある。

 

「大丈夫だ。お前の無念は私が晴らしてやる」

「疾風が…?」

「あぁ。どうやら奴さん、さっきの挑発で私にヘイトを向けてるみたいだしな。好都合だ」

 

 また疾風に背負わなくてもいい物を背負わせようとしている。

 それが何よりも悔しい。

 落ち着きは取り戻せても、これでは奏がいた頃と全く成長していないではないか。

 奏の役割を疾風が代わりにしているだけに過ぎない。

 

「それに、お前とアレとじゃ相性が悪い。なんたって剣と鞭だしな。射程距離が違い過ぎる」

「疾風なら大丈夫…なのか?」

「当然。遠距離攻撃手段もあるし、いざとなったらスピードで攪乱できる。幾らでも対処のしようはあるさ」

 

 疾風に言われるまでも無く、自分の得意な距離と相手の得意な距離が違うのは分かっていた。

 翼にも遠距離攻撃手段が決してないと言う訳ではないが、疾風と比べたら手数に乏しい。

 今の精神状態ならば、その不利は更に悪い方に働いてしまうだろう。

 

「アイツの事は私に任せて、お前と響はまだ残っているノイズの処理を頼むよ。な?」

「……分かった。頼む…私と奏…二課の皆の無念を晴らしてくれ…!」

「任せときな…相棒」

 

 悔しさを滲ませながらも、翼は疾風に全てを託すことにした。

 少し前までの彼女からでは絶対に考えられない事だ。

 それだけ疾風を信用し、実力を認めているという証拠だった。

 

「は…疾風ちゃん本気ッ!? 相手は人間だよッ!? 女の子なんだよッ!? ノイズじゃないんだよッ!?」

「それぐらい分かってるッつーの。でも、あいつはやる気満々だぞ?」

「え?」

 

 疾風に言われて少女の方を見ると、全身から怒気を漂わせ、それを表すかのように鎧から伸びた鞭を振り回している。

 流石の響でも分かってしまう。今の彼女はこちらの話を聞く気はないと。

 

「人間相手に拳は出せない…お前の気持ちも理解出来るよ。人間同士だしな。話し合いで解決できればそれが一番さ」

「だったら……」

「けど、それは相手もその気だった場合だ。少なくとも、今は戦う以外の選択肢は無い。なんせ、あの女は交渉のテーブルに付く気すらないみたいだしな。そうだろ?」

 

 響に分からせる為に、ワザと少女に対して話を振る。

 目の前に敵がいる状況だと言うのに余裕の顔をしている疾風の事が気に食わない彼女は、その挑発に見事に乗ってくれた。

 

「当たり前だ!! そもそも…こっちの目的は、そこの黄色い女とお前…ドリル女のどちらかを連れて行くことなんだからな! 話し合いなんて出来る訳ねぇだろうがッ!!」

「だとさ」

「そんな……」

 

 もうどうしようもないのか。

 そんな響の心情を察したのか、疾風は彼女を少しでも安心させるためにそっと語りかけた。

 

「心配するな。なんでも、あのネフシュタンってのには驚異的なまでの自己再生能力があるらしい。ってことは、少なくともこっちの攻撃で死ぬことは無いって事だ。流石に、向こうの攻撃をこっちが受けたらヤバいけどな」

「疾風ちゃん……」

 

 疾風なりに自分の事を考えてくれているのが嫌と言うほどに分かった。

 相手の注意を己の方に向けて、自分達の心を護ろうとしてくれている。

 その不器用な優しさに、響の胸は苦しくなる。

 

「…誰かと戦う事が罪だと言うのなら…お前達の分も私が全部背負ってやる。きっと、それが私の…私にしか出来ない役目だと思うから」

 

 もう戻れない。ゴングは鳴らされた。

 己の背中を仲間に託し、疾風は敵対者と対峙する。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「お前一人であたしを倒すってか…? 本気かよ? こちとら完全聖遺物なんだぞ? 中途半端なお前のギアとは訳が違うんだよっ!!」

 

 何度も撓らせた後に鞭を放ち、それが真っ直ぐに疾風へと向かってくる!

 常人ならば回避は困難! しかし、疾風は『常人』ではない!

 

「遅いと言っている」

 

 今度は全身を使って避けるのではなく、ドリルを使っての迎撃。

 熟練者ならば巻きつけて動きを封じたりするところだが、ドリルの形状故に巻きつけるのは難しい。

 しかも、その一撃で疾風はある事に気が付いてみせた。

 

「なんだよ…チートなのは防御性能だけか。攻撃の方はてんで素人だな」

「んだとっ!?」

「お前さ…鞭なんて今まで一度も使った事が無いだろ? だから、単純な攻撃しか出来ない」

 

 一発で見破られた。

 そもそもの話、現代において鞭なんて特殊な武器を扱うような機会なんて滅多に無い。

 鞭自体が一般には出回らない代物なのだから当然だ。

 練習なんて一度もしたことが無いのだろう。

 

「私の知り合いにも一人、凄腕の鞭使いがいるけど…その人は鞭を使って瓶のふたを開けたりとか、素早く動き回るゴキブリを仕留めたりとか出来るよ。それに比べれば、お前の鞭捌きは素人以下だ。しかも……」

 

 瞬きの間に疾風の姿が掻き消える。

 またもや高速移動にてこちらを攪乱する気かと思い急いで周囲を見渡すが、疾風の姿はどこにも見当たらない。

 

「ど…どこに行きやがったッ!?」

「ここだよ」

「はっ!?」

 

 背後から聞こえてきた声に反応し、咄嗟に振り向き鞭を放つ!

 だが、そこには誰の姿も無く空振りに終わった。

 

「い…いないだとっ!?」

 

 意味が分からずに軽い混乱状態に陥っていると、いきなり背中に衝撃が走る。

 ネフシュタンの再生能力によって結果的な損傷は無いに等しいが、それでも確かな衝撃はあった。

 

「だから言っただろ? ここだって」

「テメェ…! 一瞬でアタシの背後に…!」

 

 全く疾風の動きが捉えきれない。

 どれだけネフシュタンの防御性能が優れていても、相手に全く攻撃を当てられなければ意味が無い。

 それがまた彼女の苛立ちを加速させていく。

 

「あぁ~…! ムカつくッ!! イラつくッ!! 何なんだよテメェはっ!!」

「どこにでもいる普通の女の子様だよ。無駄にイライラしやがって…発情期ですかコノヤロー」

 

 少し距離を開けてから、いきなり棒立ちになる。

 少しでも冷静だったならば、その状態が明らかにおかしいと分かる所だが、完全に頭に血が上っている今の彼女にその判断は難しい。

 寧ろ、それをチャンスだと思ってしまった。

 

「ほれ…とっとと攻撃してきな。お姉さんはここですよー」

「テメェは…どこまでアタシをイラつかせれば気が済むんだよクソがッ!!」

 

 我武者羅に鞭を放ち、その鋭い先端が疾風に迫る!

 いかにシンフォギアを纏っているとしても、完全聖遺物の一撃を喰らえばタダでは済まない!

 …彼女に対して、その心配は杞憂だったが。

 

「フッ……」

「なっ!?」

 

 あろうことか、疾風は少し体を横にずらすだけで鞭での一撃を避けたのだ。

 ムキになり次々と鞭での攻撃を繰り返すが、その全てを最低限の動きだけで回避していく。

 しかも、それだけでは留まらず、徐々にではあるが少女の方に接近して行っていた。

 攻撃することに夢中になっている彼女は、その事に全く気が付いていなかったが。

 

「クソッ! クソッ!! クソォォォッ!! なんで…なんで一発も当たらねぇンだよっ!! なんでっ!!」

「同じことを何度も言わせるな」

 

 遂には至近距離まで近づき、グイッと息が掛かる程に顔を近づけた。

 その時、初めてちゃんとした形でお互いの顔を見る事になる。

 

「素人の鞭で私を倒すなんて絶対に不可能なんだよ」

 

 次の瞬間、少女は腹部を蹴られて大きく吹き飛ぶ。

 街路樹を薙ぎ倒しながら道路に倒れ込んだ。

 

「へ…へへ…! テメェがどれだけ強くても、アタシがネフシュタンを纏っている限りは倒せねぇんだよっ! 完全聖遺物とお前らのギアとじゃ格が違うんだっ!」

「そうらしいな。もっとも、その中身であるお前は雑魚みたいだけど」

「……なに?」

 

 雑魚。

 その単語にピクリと少女の眉間が反応する。

 

「ネフシュタンと言う『メッキ』で体を覆っているだけのお前は雑魚だって言ってるんだよ。体術は素人以下。鞭捌きもまた同じ。圧倒的な防御力に物を言わせたガキのような戦法…ふざけてるのはどっちだ?」

 

 初めて疾風が『殺気』を纏って立ちはだかる。

 全身にゲッターエネルギーを纏い、その顔を初めとした全身の肌に回路のような緑色の線が走り、その髪と眉が真紅に燃え上がった。

 

「どれだけ怪我が回復してもな、内部に残ったダメージは蓄積し続けるんだ。外傷さえなければ大丈夫なんて考えてる時点で、お前は雑魚なんだよ」

「このヤロウ…言わせておけばベラベラとっ!!」

 

 怒りのままに立ち上がり、少女は自分の頭上で鞭を回転させてエネルギーを蓄積させる。

 それは円盤状に広がり、彼女の体を覆い尽くすほどにまでなった。

 

「こいつを受けても同じことが言えるかっ!!」

 

 膨大なエネルギーが解き放たれ、一直線に疾風へと向かっていく!

 だというのに、疾風は全く動く気配が無い。

 彼女は知っているのだ。その必要がない事を。

 

「ば…馬鹿な……!?」

 

 エネルギーは疾風の体に当たる前に雲散霧消し、完全に消滅した。

 全身に溢れるゲッターエネルギーのバリアによって阻まれたからだ。

 

「何かしたか?」

「あ…あぁぁ……!」

 

 強い。強すぎる。なんだコイツは。

 自分の攻撃がことごとく通用しない。

 完全聖遺物を纏っているということ以外は、全てが相手の方が上回っていた。

 

「なぁ…知ってるか? どれだけ鎧を纏っていても、心の弱さは守れないんだよ」

「アタシが弱いって言いたいのか…!」

「少なくとも、今のお前は弱い。『自分の力』で戦おうとしないお前はな」

 

 これまでの戦闘で疾風は分かってしまった。

 彼女の最も得意な戦い方はこれではないと。

 敵の接近を許してしまった途端に動きがおろそかになるという事はつまり、そこは『彼女の距離』ではないという事。

 苦手な武器と苦手な距離で戦う。

 それだけ完全聖遺物のスペックが桁違いでも、所詮は道具。

 使い手次第で幾らでも強くも弱くもなる。

 

「自分に嘘を付くような奴に…私は絶対に負けない。翼も…響もな」

「あたしは……あたしは…!」

 

 少女から戦闘意欲が段々と消えていく。

 頭では戦わないといけないと思っているが、本能が理解してしまったのだ。

 目の前の少女に勝つ事は出来ないと。

 

「それとお前さ…今までに誰かに対して生身で暴力とか振るったこと無いだろ?」

「なんでそう言い切れんだよ」

「さっき、お前はこう言ったな? 私か響を連れて行くことが目的だと。その際、生き死にの指定が無かった。ってことは、生死を問わずに連れて行くつもりだって事だ。なのに、お前はただの一度も人体の急所を狙ってこなかった。まぁ…そこはお前が鞭の扱いに慣れていないってのもあるんだろうが。それでも明らかにおかしかった。そこから分かる事は、お前は暴力は愚か、殴り合いの喧嘩すらしたことが無いって事だ。もしもそんな経験があれば、自然と人体の急所も分かっているだろうし、無意識のうちにそこを狙おうとする筈だ。なのに、いざ蓋を開けてみれば一度もそんな事は無かった。全く以てお笑い草だ。敵を殺す覚悟も無い癖にノコノコと一人でやって来るんだからな」

 

 ドリルの切っ先を少女の喉元に突き付け、最後通告をする。

 ここまではお遊び。もう遠慮はしない。

 

「私なら、目を潰して、耳を千切って、鼻を抉るぐらいの事をするけどな。ホント…お前は誘拐犯には向かないよ。優しすぎる」

「うる…せぇ…!」

「もうお前に勝ち目はない。大人しくお縄に付くんだな。今ならカツ丼ぐらいは食わせてくれるかもしれないぞ」

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 

 激高の叫びと共に、少女は今までずっと腰に付けていた黄金に輝く杖のような物を取り出して天に掲げた。

 瞬間、疾風の周囲に大量のノイズが出現した。

 

「ノイズが…? まさか、その杖の力か?」

「何も知らねぇ癖に…分かったような口叩くんじゃねぇっ!! こんな所じゃ終われねぇ…負けられねぇンだよっ!!」

 

 ノイズ達に疾風が阻まれている僅かな隙に、少女は逃げ去って行ってしまった。

 追跡しようと思えば出来たが、敢えて疾風は彼女を追う事をしなかった。

 

「あの様子からすると、またやって来るだろうしな…。ネフシュタンを取り戻すのはその時でもいいか。けど……」

 

 周囲にいるノイズが自分を狙っているにも拘らず、疾風はいきなり思案にふけ始める。

 

(どうして私と響を連れて行こうとした? 私達にある共通点は…シンフォギアの…聖遺物の欠片が体に埋まっている事か? だが、それがどうして私達を連行しようとすることに繋がる? …推理するにはまだ材料が足りないな)

 

 痺れを切らしたかのように大量のノイズが襲い掛かってくるが、それらはドリルの一振りによって放たれたゲッターエネルギーによって消え去った。

 

「邪魔だ」

 

 周りからノイズが消えると同時に、ふと翼と響たちの事を見ると、彼女達も無事に残りのノイズの殲滅に成功したようだった。

 

「終わりか……」

 

 戦闘の終了が確認できたと同時に、溢れ出るゲッターエネルギーはピタッと止まり、疾風も元の状態へと戻る。

 その直後、全力疾走で現場までやって来た弦十郎と合流することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クリスちゃんフルボッコ。

今回ばかりは色んな意味で相手が悪かったですね。




主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?

  • クリス
  • 未来
  • マリア
  • 切歌
  • 調
  • まさかの弦十郎
  • まさかまさかの慎次
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