もう一振りの天羽々斬   作:とんこつラーメン

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今回は、原作で言うところの響が未来と流れ星を見る約束をして、それが守れなくなってしまいそうになって暴走し掛ける話です。

だけど、この世界線には疾風がいる訳で……。







星に願いを

「天体観測ぅ?」

 

 それは、二課の食堂にて疾風と響が一緒にいる時の会話が発端だった。

 テーブルにノートを広げて何かを書いている疾風の隣で、響がジュースを飲みながら話しかけている。

 傍から見ていると、どこにでもいる普通の少女達の仲睦まじい光景だ。

 

「そこまで大袈裟なものじゃないんだけど、今夜辺りに流星群が見えるんだって。未来が言ってたんだ」

「未来って…お前の幼馴染の事か?」

「うん。それでね、折角だから一緒に見に行こうって話になったの」

「ふーん……」

 

 流れ星なんて今までに一度も見た事が無い。

 それどころか、星空自体まともに見た事が無いかもしれない。

 ずっと都会の喧騒の裏側で生きてきて、夜になればネオンとビル街の灯りで星の光なんて簡単に遮られてしまうから。

 

「で、よかったら疾風ちゃんも一緒に行かない?」

「私も? なんで?」

「疾風ちゃんと一緒に見たいってのもあるんだけど、未来が疾風ちゃんに会いたがってたんだよね」

「はぁ?」

 

 名前しか知らない相手に会いたがれるとはこれいかに?

 一体、響は彼女になんて話したのだろうか?

 

「そんな話は、私よりもまずは翼にするべきなんじゃないのか?」

「一応、翼さんも誘ってみたんだけどね……」

「ダメだったのか?」

「うん。別に嫌がってたとか、そんな事じゃないんだけど…今日はスケジュールの都合で難しいって」

「あぁ~…そればっかりは仕方がないな。こうして普段から会うようになってると忘れがちになるが、シンフォギア装者であると同時に、翼はアーティストでもあるからな。仕事で忙しいのだけはどうしようもない」

「だよね~…。申し訳なさそうにしながら、緒川さんと一緒にお仕事に行っちゃった」

 

 プライベートでもシンフォギア装者同士で交流が出来れば一番なのだが、肝心の翼が多忙過ぎる為にそれが中々叶わないのが現状なのだ。

 

「ところで、さっきから疾風ちゃんは何をしてるの?」

「勉強」

「べ…勉強?」

「そ。了子さんから『櫻井理論』…要は、シンフォギアの技術の事を色々と教わっててさ。こうして教えて貰った事をノートに書いて復習してるんだよ」

 

 自分から勉強をするなんて、勉強が苦手な響からしたら信じられない事だった。

 ただでさえ、宿題をする時やテストの時期になると未来や他の友達に助けて貰っているのぐらいなのに、まさか目の前で自主的に勉強をしている友人がいるとは。

 しかも、内容は数学や古文と言ったものではなく、それよりも遥かに難しいと思われる事。

 

「改めて学んでいくと、思っている以上に面白いよ。どれもこれもが本当に興味深い事ばかりだ」

「……少しだけ見せて貰ってもいい?」

「別にいいけど…大丈夫か?」

「見るだけだから」

 

 恐る恐る疾風からノートを受けとり、ページをぺらぺらと捲っていく。

 そこには非常に丁寧で綺麗な字で、見た事も聞いたことも無い単語が数多く羅列してあった。

 

「…………」

「お…おい?」

 

 僅か五秒で目がグルグルし始める。

 

「ぷしゅ~…」

「まさかのオーバーヒート?」

 

 そして、十秒後には知恵熱で頭から煙を出す。

 分かっていた事ではあったが、矢張り響には難しすぎたようだった。

 

「す…凄いね…疾風ちゃん…。こんなのを勉強してるんだ……」

「私が好きでやってる事だけどな」

「猶の事、凄いよ……」

 

 本当に疾風が自分と同い年なのか疑わしくなってくる。

 運動能力、知識量、全てが圧倒的過ぎた。

 だからといって別に変な目で見る訳ではないのだが。

 純粋に凄すぎて眩しいのだ。

 

「そういえば、師匠から聞いたんだけど…疾風ちゃんってギアを最初に纏った時も図書館にいたんだよね? どうして?」

「勉強する為に決まってるだろ?」

「え?」

 

 響にとって、図書館とは純粋に本を読む場所でしかない。

 確かに勉強をしている人達もいたりはするが、彼女がその中に混ざる事は決してない。

 夏休みの宿題を皆でする時を除いて。

 

「私が学校に行ってないのはお前も知ってるだろ?」

「うん。それも師匠から聞いた」

「けど、だからと言ってそれは勉強をしない理由にはならない。寧ろ、学校に行ってないからこそ、行ってる奴と同じぐらい…いや、それ以上に勉強しなきゃいけないと思ってる」

「おぉ~……」

 

 疾風が右腕や左手の指がない事を理由に学校に行っていないのは知ってはいたが、それを悲観することなく努力を続けている姿勢に、響はとても凄いと感じた。

 

「私の場合、休みの日はずっと家でゴロゴロしてたり、後は友達と一緒に遊び回ってたりしてるだけだな~」

「家でゴロゴロはともかく、友達と一緒に遊ぶのは重要だろ。仲を深めて損する事は無い」

「それは私も分かってるんだけど……そのツケがテストに帰って来るんだよね…」

 

 友情と勉学のバランスが上手く取れない。

 何とも不器用な女子高生の響なのだった。

 

「…もしも分からない所が有ったら私に聞きに来な。私なりのやり方で勉強を教えてやるよ」

「いいのっ!?」

「当たり前。その代り、かなりのスパルタになるがな」

「うぐ……!」

 

 今からその光景を想像してしまったのか、響の顔が一瞬で青く染まる。

 勉強を教えてくれるのは嬉しいが、スパルタなのは勘弁願いたい。

 

「で…出来ればお手柔らかに……」

「それはお前の成績次第だな。悪かったら厳しくいく」

「勘弁してぇ~っ!?」

 

 もう完全に疾風に主導権を握られている響。

 装者たちのパワーバランスが発覚した瞬間だった。

 

「「!?」」

 

 そんな和やかな空気をぶち壊すように、本部内にノイズ発生のアラームが。

 二人は顔を見合わせてからすぐに立ち上がり、素早く片付けてから司令室へと急いだ。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 司令室に到着した二人は、すぐに弦十郎に現在の状況を尋ねる事に。

 

「今回のノイズは地下鉄内に発生した。密閉空間という事もあり、外の時よりは避難が素早く行われたようだ」

「そうなんですか? なんか、そう言った場所の方が逆にパニックになって避難が遅れそうですけど……」

 

 そう言いながら響が思い出すのは、自分の運命を変える事件となったコンサート会場での事件。

 あの時は室内であるにも拘らず、避難状況は最悪に近かった。

 その結果、大勢の被害者が出てしまったのだから。

 

「地下鉄内には専用のシェルターがあるからな。それに加え、駅員たちの避難誘導が的確だったのが幸いしたようだ」

「ということは、ノイズによる人的被害は出てないんだな?」

「今のところはな」

 

 これからの報告次第で状況はいかようにも変わる。

 例え気休めでも、被害が出ていないと分ると精神的に助かるものだ。

 

「翼は? あいつもこっちに現場には急行するんだろ?」

「無論だ。翼は現在、慎次が運転する車にて現場に直行して貰っている」

「なら、私達は向こうで合流すればいいってことか」

「そうなる。疾風くん、地下鉄のような場所では君のスピードは活かし難い。気を付けてくれ」

「案外、そうでもないかもしれないぜ?」

「なに?」

 

 地下鉄というフィールド。

 それを聞いた時から、疾風の頭の中では既にシュミレーションは完了していた。

 

「了子さんはいないんだな」

「彼女ならば、今は別件で席を外している」

「…そっか」

 

 どこで何をしているかは非常に気になるが、今はそれどころではない。

 

「よし。なら、私達もとっとと現場に向かうか。響?」

「…あ? う…うん! 急がないとね!」

 

 なんだか上の空だった響。

 いつもの彼女らしくない態度を見て、すぐにその原因を察した。

 

(大丈夫だ。ちゃんと流れ星には間に合わせてやる)

(疾風ちゃん……)

(お前は一人じゃない。私もいるし、翼だっている。三人で力を合わせれば楽勝だって)

(うん……ありがと…)

 

 小声で響を励ましてから、二人は司令室を後にする。

 他の者達は気が付いていなかったが、弦十郎だけは少女達の会話をバッチリと聞いていた。

 

「流れ星…か。疾風くんが頑張ろうとしているのならば、俺も何かせねばな」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 現場である地下鉄に急ぐと、そこでは既に翼がシンフォギアを纏って戦闘を始めていた。

 

「翼!」

「翼さん!」

「疾風に立花! 来たか!」

 

 すぐに視線を巡らせてノイズの数を数えていく。

 絶え間ななく蠢くノイズを数えるのは難しそうだが、疾風に掛かれば簡単だった。

 

「ざっと数えて60体ぐらいか。ってことは、一人辺り20体の計算だな。この狭い場所なら逃げられることも無いだろうし、なんとかなるだろう」

「疾風ちゃん!」

「分かってる。いくぞ!」

 

 正面は翼に任せて、響は右側を、疾風は左側に向かって走り出し、飛び込みながら聖詠を口ずさむ。

 

 

 Penetrate amenohabakiri tron

 

 Balwisyall Nescell gungnir tron

 

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

 響の拳と疾風のドリルがぞれぞれにノイズの胴体へと突き刺さる。

 そこから、二人の無双が始まった。

 

「肘打ち! 裏拳! 正拳! うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 いつも以上に鋭い拳が、次々とノイズを粉砕する。

 本当だったら焦ったり、イラついたりしていたかもしれないが、仲間の存在が響の心を安定させていた。

 

(そうだ…! 私は一人じゃないんだ! 未来がいる! 翼さんがいる! 疾風ちゃんもいる! だから私は!!)

「戦えるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 自分よりも一回り大きいノイズに対しても果敢に立ち向かい、一瞬で懐に潜り込んでからのアッパーカット。

 その拳にはもう迷いはない。

 

「狭い空間ならば私の動きを制限できると思ったか? 残念。この私が、こんな状況下での戦闘を想定していない訳がないだろうが!!」

 

 ブースターを使っていつものように高速移動を開始すると、すぐに天井にぶつかりそうになる…が、疾風は器用に体勢を変えてから静かに足を付き、見事な方向転換。

 その勢いを利用して、再びノイズの群れに向かって突撃する。

 

「まるで跳弾みたいだろ? マッハスペシャルの応用だよ!! よく覚えてから消し炭になりやがれ!!」

 

 疾風の速度は徐々に増していき、次第に白い線へと変化していく。

 肉眼ではもう捉えきれずに、細くなっているように見えるのだ。

 

「疾風も立花も、今日はやけに張り切っているな…。先達として、私も負けられんな!」

 

 ここで翼も気合を入れ直し、目の前にいるノイズに刃を突き立てる。

 

 結果として、約60体ほどいたノイズは僅かな時間にて殲滅されたのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「終わったか…」

 

 辺り一面にはノイズの成れの果てである灰が落ちている。

 ここからは掃除婦さん達の出番だろう。

 

「響、翼。そっちにはもうノイズはいないか?」

「こっちにはいないよ」

「こちらもだ」

「そっか。でも、念の為に本部に連絡しておくか。弦十郎さん」

 

 通信気を使って本部に連絡を取ろうとすると、意外な相手が通信に出てきた。

 

『こちら本部。司令なら、少し前に出て行ったよ』

「この声…朔也さんか? それに、弦十郎さんが出て行っただ? どこに?」

『さぁ? ただ、『疾風くん達の青春の手助けをしてくる』と言ってたけど…』

「地獄耳め……」

 

 司令室での小声のやり取りを完全に聞かれていた。

 どうやら、弦十郎はその身体能力だけでなく、聴力も人並み外れているようだ。

 

「もうノイズの増援は無いか?」

『大丈夫だよ。その気配はない』

「なら、この間のネフシュタン野郎は?」

『そっちもいない感じかな。完全聖遺物が近くにいれば、すぐに分かるから』

「確かにそうだな。じゃ、今回のは自然発生のノイズって事なのか…」

『恐らくね。とにかく、今日はご苦労様。いつでも帰還して来てもいいよ』

「了解だ。通信終了」

 

 通信を切ってからホッと一息。

 それを見てから、二人は本当に戦闘終了だと判断した。

 

「増援も、この間の奴もいないってさ。つまり、これで終わり」

「良かった……」

「だな。時間は大丈夫か?」

「多分」

「なら、急いだ方がいいな。ダチ公とは向こうで合流することになってるんだろ?」

「うん! けど、ここからどうやって行こう?」

「移動手段なら大丈夫だと思うぞ?」

「???」

 

 なんのこっちゃと言わんばかりに小首を傾げる。

 翼に至っては、二人が何を話しているのかすら分かっていない。

 

「翼は、このまま仕事に戻るんだろ?」

「そのつもりだ。途中で抜け出してきてしまったしな。外にある車で緒川さんが待ってくれている」

「なら、とっとと行ってやれ。頑張って来いよ」

「あぁ。ところで、二人はさっきから何の話をしているんだ?」

「実は……」

 

 ここでやっと、疾風は今日の響の予定の事を話す。

 昔の翼ならば一発で怒られそうだが、最近の彼女は疾風のお蔭か、かなり物腰が柔らかくなっているので問題は無いだろう。

 

「成る程…そう言う事だったのか。仕事に出る前に私も立花から聞かされたが、仕事が入ってしまってな……」

「そればっかりはしゃーないって。それよりも、早く行けよ。慎次さんを待たせるなよ」

「それもそうだな。では、行ってくる!」

「おう」

 

 すぐにギアを解除してから、翼は駅構内を後にする。

 残されたのは響と疾風の二人だけ。

 彼女達もギアを解除してから地下鉄を出ようとした…ところで、疾風のスマホに電話が掛かってくる。

 

「なんだ…って、弦十郎さん?」

 

 掛けてきた相手は、まさかの弦十郎。

 もしや、もう駅前に到着したのか?

 

「…もしもし?」

『おぉ、疾風くんか。話は聞かせて貰ったぞ。流れ星を見に行くのだろう?』

「行くのは私じゃなくて、響とそのダチ公なんですけど」

『疾風くんは行かないのか?』

「あのな…そんな無粋な真似、出来る訳が……」

 

 その時、自分に向けられている響の期待の眼差しを感じた。

 この少女は、どうしても疾風に来てほしいようだ。

 

「…分かったよ。私も一緒に行けばいいんだろ?」

「やった~! 疾風ちゃん大好き~!」

「はいはい。はぁ……」

 

 喜びの余り、疾風に抱き着く響。

 手のかかる子供を持つ親の気持ちがなんとなく理解出来たような気がした疾風だった。

 

『そうと決まれば、急いで駅の外まで来るといい! 俺が車で連れて行ってやろう!』

「だと思ったよ……」

「えっ!? 師匠が連れて行ってくれるの!?」

 

 こうして、疾風も一緒に流れ星を見に行くことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作では約束を守れずに響と未来、それぞれの心の傷になっていましたが、ここではちゃんと約束を守れました。

しかも、疾風のおまけ付きで。

疾風と未来をどこで会わせようかと模索していたのですが、まさかのここになりました。

自分でもかなり意外だと思います。




主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?

  • クリス
  • 未来
  • マリア
  • 切歌
  • 調
  • まさかの弦十郎
  • まさかまさかの慎次
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