出来るだけ早めに、どこかで疾風と未来を会わせたいと考えていたのですが、話の流れでここになってしまいました。
ちょっと強引だったかな……?
まだ駅周辺の避難が解除されていないせいか、駅前は非常にガランとしていて、なんだかゴーストタウンを彷彿とさせた。
その事をふと呟くと、響が『なにそれ』的な顔を向けてきたので、律儀に教えてやることに。
「簡単に言えば、誰もいない町って事だ。ほら、よくホラー映画とかに出てくる町って誰もいなかったりするだろ?」
「確かに…そう言われてみると、なんだか今の光景ってホラー映画っぽく見えるよね」
「某超有名ホラーゲームなら、物陰とかからゾンビが襲い掛かってくるシチュエーションだな」
「そ…そんなこと言わないでよ~…。なんだか想像しちゃうからぁ~…」
「意外とホラー耐性無いんだな…」
大抵の恐怖体験は『へいきへっちゃら』で乗り越えそうなイメージがあったが、意外とそうでもないらしい。
「「ん?」」
いきなりクラクションが鳴ったので、その方へと視線を向けると、そこには二課の車に乗っている弦十郎の姿が。
仮にも司令が部隊の車両をそんな風に使っていいのか疑問に思ったが、彼に対してそんな事を考えるのは余り意味が無いと判断し、すぐに疾風は考えるのを止めた。
「待たせたな」
「俺なら別にいいさ。それよりも響くん。君の方は時間は大丈夫か?」
「はい! さっき時間を確かめましたけど、まだ一時間ぐらいの余裕はありました!」
「そうか! ならば安心だな!」
三人が頑張ったお蔭か、どうやら予想以上に戦闘が早く終了していたようだ。
これならば、余裕を持って待ち合わせ場所へと行くことが出来る。
「ところで、一体どこで流れ星を見ることになってるんだ?」
「町外れの丘にある天文台。あそこで直接、待ち合わせをすることになってるんだ」
「あの場所か。確かに、あそこならば天体観測をするのにうってつけだな。ノイズの出現場所からもかなり離れているから問題も無い」
「天文台……この町にそんな施設があったんだな……」
星々などに詳しくない訳ではないが、まさか自分の暮らしている町に天文台なんてものが存在しているとは思わなかった。
基本的に町中にいる事が多い疾風は、余り土地勘が良い方ではない。
地図を見れば、一発で覚えることぐらいは出来るが。
「あそこならば俺もよく知っているから問題は無い。とはいえ、ここからではそれなりに距離があるからな…。急ぐに越したことはないだろう。さぁ、二人とも乗ってくれ」
「「はーい」」
弦十郎に促され、疾風は助手席に、響は後部座席に乗って待ち合わせ場所である町外れの天文台へと向かう事に。
そういえば、こうして弦十郎が運転する車に乗るのは初めてだなと思いながら、人気の少なくなった街中を疾走する。
他の車が少ないせいか、かなりスムーズに進む事が出来たのは行幸だった。
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「二人とも、到着したぞ」
「ありがとうございます! あ…もう未来が来てる!」
「ん…? もう着いたのか…?」
車が止まると、響はすぐに降りてから丘の上にある天文台へと走っていき、半分眠りかけていた疾風は、瞼を擦りながらゆっくりと降りてから歩いて行く。
「…そういや、弦十郎さんはどうするんだ?」
「俺はここで二人を待っていよう。今日ぐらいは、同年代の少女同士で楽しんでくるといい」
「私って別に、そんなキャッキャウフフするようなキャラじゃないと思うんだけどな……」
響に押されてしまったとはいえ、どうしてここまで来てしまったんだろう。
そんな事を考えながら、トボトボと進んでいった。
(今までずっと年頃の少女らしい日常から遠ざかってきたんだ。こんな時ぐらいは、疾風くんも歳相応の時間を過ごしてもいい筈だ…)
二年前からずっと、疾風の事を見守り続けてきた弦十郎としては、そう願わずにはいられなかった。
それが、彼なりのせめてもの贖罪になるから。
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丘の上ではもう響が待ち合わせ相手と合流をして、楽しそうに何かを話している。
どうやら、相手の少女がよく響が話している『未来』とやらのようだ。
「お前さ…さっきあれだけ動いたのに、どうしてそんなにも元気が有り余ってるんだよ……」
「あっ! 疾風ちゃん! もぉ~…遅いよ~!」
「そっちが早すぎるんだよ。ったく……」
呆れつつ溜息を吐いてはいるが、その顔は微笑を浮かべていた。
その後、彼女の隣にいる黒髪の少女の方を見た。
「…で、アンタが響の良く話してる『ミク』か?」
「それじゃ…貴女が響がバイト先でよくお世話になってるっていう『疾風』ちゃん…?」
「世話になってる…か。間違っちゃいないな」
ノイズとの戦闘はついてこられるようにはなったが、それ以外の面はまだまだなので、よく同年代の疾風と一緒にいる事が多い。
それを見て翼が頬を膨らませるまでがワンセットである。
「神疾風だ。初めまして」
「こ…小日向未来です。こちらこそ、初めまして」
いつものように左手を差し出すと、慌てて未来もその手を握りしめる。
そこで初めて気が付いた。疾風の服の右袖が空洞になっている事を。
自分が握手をしている左手の指が三本しかない事を。
「ん? この『右腕』と『指』が気になるか?」
「あ…ごめんなさい。私……」
「気にしなくてもいいよ。そんな風な反応をされるのには慣れてる」
あぁ…成る程。響が頼りにするのも頷ける。
自分の今の状態を悲観なんてせずに、前向きに生きようとしている。
性格などは違うかもしれないが、根っこの部分は響ととてもよく似ている。
長い間、響の幼馴染をしていた未来には、すぐにそれが分かった。
「響も最初は似たような反応をしてたしな」
「あの時の事は忘れてよ~!」
「悪いな。私は記憶力が良いんだ。一度覚えた事は、そう簡単には忘れられないのさ」
「疾風ちゃんのイジワル~!」
「ははは……」
あの響が自分以外の相手と仲良く話をしている。
ちょっとだけ複雑な気持ちになったが、笑っている疾風を見てすぐに考えを変える。
(クールそうに見えたけど…実はそうじゃないのかも?)
響から聞かされていた疾風の印象は『頭が良くて、運動神経が抜群で、とってもたよりになる美人な女の子』だった。
まだ出会って数分なので、何もかもが分かった訳ではないが、一つだけ確信したことがある。
この神疾風という少女は、友達を大切にする優しい少女なのだと。
「そう言えば、二人はどうやってここまで来たの?」
「あそこ」
疾風が左手の親指で丘の下を指すと、そこには一台の車が。
傍には一人の大柄な男性が立っていた。
「バイト先の主任的な人が、私と響のコソコソ話を地獄耳で聞き取ってたみたいでな。頼んでもいないのに、こっちの仕事終わりに合わせて車を出してくれたのさ」
「そ…そうなんだ…」
想像の斜め上を行く答えで、思わず顔が引きつる未来。
当人たちも最初は驚いたのだから無理も無い。
「それで、肝心の流れ星とやらはまだなのか?」
「多分、もうそろそろだとは思うんだけど……」
未来がスマホで確認をしている中、疾風は天文台の傍に隣接している自販機を見つける。
徐々に暖かくなってきているとはいえ、まだまだ夜は冷える。
思わずホットドリンクが恋しくなるのも仕方がないことだ。
「まだ時間があるなら、なんかあそこで買わないか? このままじゃ、流れ星を見る前にこっちが凍えちまう」
「さんせ~! 疾風ちゃんは何にする?」
「温かいのなら何でもいいが…ホットココアとかあったらいいな。なかったらコーヒーでもいいけど」
「未来は?」
「私も、ココアがあったらココアがいいな。無かったらお茶とかでいいけど」
「というか、まさかお前が買いに行く気か?」
「勿論! 疾風ちゃんは未来と話しててよ!」
「お前って奴は……」
どうやら、流れ星というのは建前で、本当は疾風と未来を会わせることが本命だったようだ。
ここに至ってようやくその事に気が付いた疾風は、してやられたと思いつつも、今となっては後の祭りだと諦めてから大人しく財布から響にドリンク代を手渡した。
「あ…私も出すよ」
「お前の分ぐらいは私が奢るよ」
「い…いいの?」
「あぁ。初めて出逢った記念ってヤツだ」
「私は~?」
「お前の分もちゃんとあるよ」
「やった~! それじゃ、買ってきま~す!」
疾風に奢って貰えると分かり、響は意気揚々と自販機へと走っていく。
まるで年上の女性と話しているような感覚。
本当に疾風が自分達と同じ15歳なのか疑わしくなる。
大学生なんて言われても違和感が無いかもしれない。
「あの…聞いてもいいかな?」
「何をだ?」
「その…『腕』とかのこと」
「別にいいぞ。もう二年も前の話だしな」
「二年前って…まさか……」
「そのまさか。私も、あのコンサートに行ってた…って言えば分かるか?」
「……ごめんなさい」
未来にとっても、二年前のコンサート事件は忘れたくても忘れられない事だった。
もしも、あの時に自分が傍にいたら。
今でもそう思わずにはいられない。
どれだけ後悔しても意味が無いと分かっていても。
「…辛くは無いの?」
「そりゃ…な。辛くは無いって言えば嘘になるな。普段の生活は不便だし、この体を見る奴全員が腫れ物扱いしてくるか、こっちが弱ったと勝手に勘違いをして昔の借りを返そうとしてくるし」
「む…昔の借り?」
「ま、全員揃って返り討ちにしてやったけどな」
なんだか、別の意味で聞いてはいけない事を聞いてしまったような気がする。
「辛くはあるが…嘆いたことは無い。これは別の奴にも言ったんだがな、失った物ばかりを数えたって意味ないだろ? 無いものは無いんだ。そんな事をしている暇があるんなら、今ある物で最大限に頑張るしかないだろ。それに…」
「それに?」
「こんな体になったからこそ、得られたものもあるしな」
「得られたものって…例えば?」
「…新しい仲間。友人。少なくとも、この体になったからこそ私は響たちと出会う事が出来た。それは…掛け替えのない事だと思うよ」
…なんて強いんだろう。
疾風の意志の強さは筋金入りだ。
腕を丸々一本失っているにも拘らず、そんなにも前向きでいられるとは。
少なくとも、常人ではまず不可能だ。
どんな人生を送っていれば、こんなにも強くいられるのだろうか。
「こうして、お前に出会えたのも今の体になったからだしな。そう思えば、大抵の事は頑張れたりするもんさ」
「…強いんだね」
「強くなんてないさ。人類総ては須らく弱者だ。私もお前も弱者なんだ。弱者だからこそ、人類は『協力』する事を覚えたんだからな」
「そう…かもしれないね」
一つ一つの言葉が重く、そして説得力に溢れている。
気が付けば、未来は夜空を見上げる疾風の横顔を見つめていた。
「ねぇ…疾風って呼んでもいいかな?」
「なら、私は未来って呼ばせて貰う」
「…うん。改めてよろしくね。疾風」
「こっちこそ。よろしく頼むよ、未来」
そう言って見つめ合う二人は、いつの間にか寄り添うように近づいていた。
初めての出会いにも拘らず、疾風と未来の中には強い絆が生まれたようだ。
「お待たせ~! って、あれ? なんか疾風ちゃんも未来も楽しそう?」
「まぁな。新しい友人が出来れば、そりゃ楽しいだろうさ」
「そうだね」
「ふ~ん…?」
小首を傾げながら、頼まれた品を二人に手渡す響。
因みに、響自身はホットのカフェオレを買っていた。
「あっ! 見て、疾風! 響!」
未来が大声を出してから夜空を指差すと、そこには無数の流れ星が。
滅多に見られない光景に、思わず疾風も目を見開く。
「これは…流星群か。始めて見た…」
「私も…って、未来が疾風ちゃんの事を呼び捨てにしてるっ!?」
自分が自販機に行っている間に、二人の仲が急接近している事に驚きを隠せない様子。
一体何があったのか気になって、流星群どころではなかった。
そんな彼女達の様子を遠くから見て、弦十郎は満足そうに頷きつつ流星群を眺めていた。
未だにカップリングアンケートではクリスが独走ですが、まだまだ最終結果は分かりませんからね~。
次回は、意外過ぎる人物達が登場するかも?
主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?
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響
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翼
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クリス
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未来
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マリア
-
切歌
-
調
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まさかの弦十郎
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まさかまさかの慎次