今年中に取り敢えず一本は更新しておこうと思います。
「…で、これがその時に撮った流星群の写真」
「ほぉ……」
二課の食堂にて、疾風が自分のスマホの画面を翼に見せていた。
そこには、夜空に輝く無数の流星が見事に映し出されている。
「あの夜は私もスタジオの窓から試しに見てみたんだが…矢張り、街中だと他の灯りなどが邪魔をして余り見えなかった」
「大都会の弊害の一つだな」
二人が話している横で、響も嬉しそうにしながらそのやり取りを眺めていた。
「そういえば、これを見に行った日は確か疾風と立花だけじゃなく、他にももう一人いたのだろう?」
「あぁ。小日向未来といって、響の友人だ。ほれ、こいつ」
画面をスワイプしてから別の写真を見せると、疾風が未来と一緒に寄り添い合いながら流星群を眺めている光景が。
因みに、これを撮影したのは響である。
「今時…本当に珍しい奴だったよ。私の腕を見ても嫌な顔一つせずに受け入れてくれた。響には勿体無い」
「え~っ!?」
「ふっ…冗談だ」
「…疾風は友人を作るのが上手なのだな」
「そうでもないさ。少なくとも、自分から『友達になってくれ』なんて歯の浮いたセリフは絶対に吐けない」
自分でも、そんな事を言っている姿は想像がつかない。
これまで一人孤独に生きてきた疾風にとって、他人とはどこまでも利用するだけの存在であったからだ。
変われば変わるもんだ…と、疾風は己に呆れていた。
「だが…あの夜のノイズには、今までのような違和感が無かったな」
「恐らく、あの時の奴等は自然発生したものなのだろう。櫻井女史もそう言っていた」
「…あの了子さんが言うなら間違いはない…か」
その了子はというと、あの日の晩辺りから仕事で外に出ていて不在となっている。
二課専属の科学者という風になってはいるが、優れた科学者である彼女は色んな場所で必要とされているのだ。
必然的に、二課にいる時間も限定されてきてしまう。
「天才ってのも考えようだな」
「了子さんって本当に忙しそうにしてるよね~。私、あの人がゆっくりとしている姿って見た事が無いかも」
「そうだな。櫻井女史は二課の頭脳と言っても過言ではない。あの人がいなければ、我々だってシンフォギアを十全に扱えないのだからな」
実は、疾風が最も懸念している事がそれだった。
シンフォギア関係の事を一手に担っている了子に万が一の事が起きた場合。
そこまでいかなくとも、体調不良で動けなくなったり、今回のように別の仕事で不在になったりした時、疾風達シンフォギア装者は全力で戦えなくなってしまう。
(やっぱり…いざって時に備えて、私もシンフォギアについて本格的に勉強した方がいいかもしれない……)
今からやっても所詮は付け焼刃…と思われるかもしれないが、疾風は了子すらも驚愕させるほどの天才児。
その気になれば、シンフォギアの軽い整備ぐらいは出来るようになっても不思議ではない。
「疾風さん! いますかっ!?」
「「緒川さん?」」
「血相変えてどうしたんだよ? いつも冷静なアンタらしくない」
三人がガールズトークに花を咲かせている所に、いきなり食堂へと入ってきた慎次。
普段の彼からは想像出来ないような焦った顔に、思わず三人は顔を見合わせながら驚いた。
「響さんと翼さんも一緒だったんですね。丁度良かった。今すぐに司令室まで来て下さい」
「司令室に…? まさかまたノイズが…って、それなら警報が鳴る筈だしな…」
第一種戦闘配備をする訳でもないにも拘らず司令室に呼び出される。
その目的がサッパリ分からない疾風はずっと小首を傾げていた。
「一体どうしたんだよ? ここでは言えないような事が起きたのか?」
「いえ…そうじゃありませんが…」
「じゃあ、なんなんだよ?」
「…そうですね。司令室に行けば嫌でも分かりますから、ここで教えても問題は無いですよね…」
今まで渋っていた慎次ではあったが、決意を固めたのか、疾風の顔を真っ直ぐと見てから静かに告げた。
「…つい先程、とある情報がこちらに伝えられたんです」
「それは?」
「…防衛大臣の神大造氏が何者かに襲撃を受けた…と」
「……なんだと?」
急に疾風の顔が険しくなる。
その名には聞き覚えがあったからだ。
「緒川さん…その神大造と言う人物は、まさか……」
「えぇ。神防衛大臣は、疾風さんと血の繋がった祖父にあたる人物なんです」
「疾風ちゃんの…お爺ちゃん…?」
まさか、疾風の祖父が大臣をやっていたとは思わなかった翼と響は驚きの余り口を開けっ放しにしていた。
「その『何者か』ってのは、まさか……」
「こちらもまだ『襲撃を受けた』とう情報しか掴んでいないんです。ですが、その事を良く知っている人物から通信が来ていて、それで疾風さんを呼びに来たんです」
「そう言う事だったのか…」
スマホをポケットに戻してから静かに立ち上がる。
本人は冷静なつもりなのだろうが、他の者達には一発で分かった。
疾風は今、明らかに焦っていると。
(顔も見た事が無い…少し前まで名前すらも知らなかった相手なのに…なんなんだ…この気持ちは……)
『家族を心配する』。
今まで一度もそんな事をしたことが無い疾風にとって、今の自分の感情の正体がどれだけ考えても分からなかった。
こればかりは、どれだけ優れた頭脳を以てしてもどうしようもなかった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
司令室に到着すると、正面モニターに見覚えのある人物の顔が映し出されていた。
「来たか…疾風くん。それに翼と響君も」
「あぁ。それよりも……」
モニターを見上げると、画面の人物を目が合った。
「…久し振りだな。八紘さん」
『まさか、こんな形で再び顔を合わせることになるとは思わなかったがな』
風鳴八紘。
翼の父にして政府を裏から支える内閣情報官。
疾風にとって数少ない信用できる大人の一人でもあった。
「ど…どうしてお父様が…?」
「えぇっ!? つ…翼さんのお父さんっ!? は…初めまして! えっと…」
『久しいな翼。お前の活躍は弦や慎次から聞かされている。そして、君がもう一人のガングニールの装者の立花響くんか』
流石は情報官。
こっちから何も言わなくても、既に諸々の情報は掴んでいるようだ。
『申し訳ないが、今は悠長に挨拶をしている暇はない。疾風君、もう話は聞いているか?』
「一応な。私の顔も知らない爺様が誰かに襲撃されたって。何者なんだ? まさかとは思うが…」
『残念だが、君が想像している相手ではない。彼を襲ってきたのは現政権に不満を持っている革命テログループの一派だ』
「…まだそんな連中がいやがったのか」
一昔前までは、そんな連中が町中をゴロゴロとしていたが、ノイズ被害が激増するようになってからは彼らもそんな活動が危険だと判断したのか表立っての行動は一切しなくなった。
だが、そんな者達が急に動き出した。
疾風じゃなくてもおかしいと思うのは自然だった。
『そして…神大臣は大した怪我も無く無事だ』
「……そっか」
「よかったね、疾風ちゃん!」
響は我がことのように喜んでいるが、疾風からしたら複雑な心境だった。
だが、少なからず安堵だけはしているようにも感じた。
『詳しい事は本人から直接聞いてくれ』
「そこにいるのか?」
『どうしても自分の口から言わなくてはいけない事があるらしくてな。では、どうぞ』
八紘が画面から消え、それと入れ替わるようにして白髪交じりの初老の男性が画面に映った。
彼は疾風の顔を見た途端、眉間に皺を寄せながら何かに耐えるようにしながら目尻に涙を貯めた。
「…アンタが私のじーさまか。初めまして…って言うべきかな?」
『あぁ…私が防衛大臣の神大造…お前の祖父だ…疾風』
初めて会った孫娘と祖父。
流石に誰も二人の間に割り込もうとせず、静かに見守っていた。
『まさか…画面越しとはいえ、こうしてお前と話が出来る日が来るとは思わなかった…』
「…そんな事よりも本題を…と言いたいが、その前に一つだけ聞かせてくれ」
『なんだ…?』
「あんたは…私の事を認知していたのか?」
『勿論だ。だが…私は全てを知っていながらお前を救えなかった…謝って許されるような事ではないのは分かっているが…一言だけ言わせてくれ…本当に…済まなかった…!』
疾風だって、いつまでも子供ではない。
寧ろ、普通の子供よりも遥かに大変な経験をしてきているせいで精神的には並の大人よりも成熟しているとも言える。
だからこそ彼女は理解していた。祖父の言葉に嘘偽りがない事を。
彼は本気で申し訳ないと思っているし、あの涙も嘘じゃない。
「…私は過ぎたことは気にしない質なんだよ。だから…もういいよ」
『疾風…?』
「大切なのは『今まで』じゃなくて『これから』…だろ? おじいちゃん」
『私を…祖父と呼んでくれるのか…?』
「当たり前だろ。それ以外に何て呼ぶんだよ? 防衛大臣サマか?」
『孫からそんな風に呼ばれるのは、流石に堪えるな…』
「だろ? 私達の間に過去の因縁があれば難しかったかもしれないが、そうじゃない。私達は今日初めて会って話をしてるんだ。なら、そこからスタートすればいいじゃないか」
『あぁ…そうだな。まさか、孫からそんな事を教えられるとはな…』
「伊達に今まで一人で生きてきちゃいないってことさ」
孫娘は自分の想像以上に強くなった。
そんな彼女だからこそ、胸の中にある国守の剣も力を貸しているのかもしれない。
「そろそろ本題に入ろうや。テログループの襲撃を受けたって話だったが…」
『そうだな。今から話す事は機密事項だ。決して口外などはしないでくれ。それと…シンフォギア装者。特に疾風は心して聞いてくれ』
「…分かった」
先程とは一転して真剣な表情になる大造。
これこそが彼の本来の姿なのだろう。
『あれは昨晩の事だった。街中にいきなりノイズが出現したという知らせを受けた私は、急いで部下たちを引き連れて官邸へと戻ろうと車を走らせていた』
「あの地下鉄での一件の時か」
『そうだ。あれは疾風達が撃退したと聞いた。よくやったな』
「装者として当然のことをしただけだ」
いつものようにぶっきらぼうに答えた疾風であったが、その顔はほんの少しだけ嬉しそうに見えた。
『…その時だった。突如としてロケットランチャーのような物が飛来して来て、車の近くに着弾、爆発した』
「テログループの仕業か」
『あぁ。護衛の者達が急いで車から出て迎撃しようとしたが…戦力差は圧倒的だった。一体どこから調達をしたのか、相手は見事なまでの重武装。大してこちらは拳銃のみ。幾らSPが優れていると言っても、数の不利まではそう簡単には覆せない』
「だろうな」
『もうこれまでか。そう諦めかけた…その時だった。突如として謎の緑色の光と共に二人の少女が私達の前に姿を現したんだ』
「二人の…」
「少女…だと…?」
疾風と弦十郎は合わせたかのように画面に近づく。
『彼女達は見た事も無いような『赤い軽装甲』と『黄色い軽装甲』を身に纏っていた』
「おい…それってまさか…!」
『そのまさかだ。彼女達はシンフォギア装者だった』
「なんだとぉっ!?」
全員の心情を弦十郎が代弁してくれた。
たった一人、疾風だけが驚きの表情を出していなかったが。
『君達と同じように歌を口ずさみながら圧倒的な力で連中を制圧していった。しかも、誰一人として死人を出さずに』
「…そいつらに関して何か情報は無いのか? 何かを言っていた…とか、特徴的なことは」
『そうだな…赤い少女の方は長い柄を持つ両刃の斧を多用して、腹部からビームのような物を撃っていた』
「斧にビーム…」
『更には、まるで物理法則を無視したかのような動きをしていたな。急加速からの急停止、そこからまた急加速といった具合に』
どうしてだろう。
初めて聞く特徴の筈なのに、物凄くよく知っているような気がする。
『黄色い少女の方は、圧倒的なミサイルの弾幕を張っていて、柔道の投げ技のような物を使用していたな』
「柔道の技?」
『そうだ。確か…『直伝・大雪山おろし』と叫んでいたか…?』
「大雪山おろし…」
それもまた聞き覚えがある。
どんな技なのかも何故か容易に想像が出来た。
『二人して共通していたのは、圧倒的なパワーを有していたという事か。まるでテロリスト共が子供扱いだった』
「シンフォギア装者なら、それぐらいは出来て当然だろうが……」
それでも多くの謎は残る。
彼女達は何者なのか。どうして大造を助けてくれたのか。
考えれば考えるほどに疑問は尽きない。
『全てを片付けた後、彼女達は真っ先に私の身を案じてくれた。どうやら、私の事を知っていたようだ』
「そっか…無事で良かったじゃないか」
『全くだ。その後、彼女達から疾風に対して伝言を頼まれた』
「成る程…それでようやく納得した。あんたほどの人物がこうして直に通信に出たのは、その『伝言』を言う為だな?」
『その通りだ。彼女達が言った言葉をそのまま伝えるから、よく聞いてくれ』
「うん」
今はまだ会えないが、いつの日か必ず会える日がやって来るだろう。
その時を楽しみに待っている。
同じ運命を分かつ仲間として一緒に戦える日を。
『…とのことだ。何か分かるか?』
「いや…サッパリだ」
『そうか…。それならば仕方あるまい』
大臣としての顔から、また祖父としての顔に戻る。
公私の使い分けがちゃんと出来るタイプのようだ。
それだけでも、この祖父と孫が血族だという事が分かる。
『…出来れば、今度は画面越しではなく、直にお前と会いたいものだな…』
「それは、そっちのスケジュール次第だろうさ。私はいつでも大丈夫だからな」
『…確かにな。では…弦十郎くん。装者たち。そして二課の諸君。私の大切な孫娘の事を頼んだぞ。では…また会おう』
「あぁ…またな」
名残惜しさを感じつつも、疾風は微笑みながら左手を添えながら首を回す。
それは、二課の者達が始めて見る少女としての疾風の素顔だった。
また無駄に長くなったし…。
次回は来年になりますね。
気長にお待ちください。
私個人の今年の活動自体はまだまだ終わりません。
ギリギリまで頑張るつもりです。
主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?
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響
-
翼
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クリス
-
未来
-
マリア
-
切歌
-
調
-
まさかの弦十郎
-
まさかまさかの慎次