もう一振りの天羽々斬   作:とんこつラーメン

27 / 33
本当にお待たせしてしまってすみませんでした。

これからは、こっちもボチボチと書いていこうと思います。








運命はまだ動かない

 それは、神大造防衛大臣襲撃事件の次の日に起こった。

 仕事から戻ってきた了子がとある任務を持ってきたのだ。

 

 神大臣を襲撃してしてきた反政府グループの者達ではあったが、その後の調査によって背後に黒幕らしきものの影があることが判明。

 その黒幕が、最近になって異常な頻度で発生しているノイズ被害やネフシュタンの少女と何らかの関係性がある事を前提に政府は調査を進めて行った。

 

 調査の結果、日本政府は今回の事件を二課の本部に密かに保管をされているとされる完全聖遺物『デュランダル』を狙って行われた犯行であると断定。

 実際に襲われた神大臣などは『その結論は早計過ぎる』と苦言を呈したが、全く聞く耳を持たれなかった。

 二課本部周辺で立て続けに怒っているノイズ被害を考えた結果、このまま二課に預けたままにしておくのは危険と判断した政府は、その移送と移送部隊の護衛を二課に対して命じてきた。

 

 そして現在、司令室のモニター越しに大造や八紘と話をしながら、今回の作戦について話し合っている最中だった。

 

「…ここにそんな代物が保管されていた事も初耳だが、それは一先ずは置いておく。それよりも、お爺ちゃんに八紘さん…一つだけ言っていいか?」

『なんだ?』

「それ…どう考えても、敵さんが裏で手を引いて、デュランダルを意図的にここから出そうと画策した結果だろ。めっちゃ思惑通りになってるじゃないか」

『私もそう思い、何度も総理に相談したのだが……』

「聞いて貰えなかった…か?」

『あぁ…総理は目の前の危険しか見えていない。無理もない事かもしれないが、それでも……』

「二人の気苦労が分かるような気がするよ…」

 

 苦笑いを浮かべながら肩をすくませる疾風。

 どうやら、苦労をしているのは祖父も同じだったようだ。

 

「なんとも言えないな。敵の掌で踊らされているって分かっているのに、思惑通りに動くしかないってのは」

「俺も悔しくは思っているが、総理の命令である以上はこちらも逆らえないしな……」

 

 誰かの命令をされるのを余り好まない疾風に協力をして貰うのを心苦しく思っている弦十郎ではあったが、そんな彼の心情を読み取ったのか、彼女は微笑を浮かべながら彼の背中を労うように軽く叩いた。

 

「気にするなって。二課に協力すると言った時から覚悟していた事さ。それに、政府側にも味方がいるって分かってるだけもマシだと思うよ」

「疾風ちゃんの、その割り切りの良さはどこから来るのかしらね?」

「人生経験じゃないのか? 知らないけど」

 

 話せば話すほど、疾風という少女が分からなくなってくる。

 頭脳の明晰さもさることながら、超人的なまでの身体能力に加え、まるで最初から全てを悟っているかのような態度。

 年齢的には響と同じ15歳の筈なのだが、並んでいると全く同い年には見えない。

 

「疾風ちゃんって…大人だなぁ~…」

「うむ…前々から私も思っていたが、疾風は精神年齢が私達よりも高いのかもしれんな」

「そこ、聞こえてるぞ」

 

 まるで自分が老けているような言い方をされては、流石の疾風も黙ってはいられない。

 彼女だって立派な未成年の少女であるのだから、その辺は割と気にする項目なのだ。

 

「…で? どんな作戦にする気なんだ? 司令さんよ」

「やること自体は至って単純だ」

 

 弦十郎が了子に目配せをすると、彼女が機器を操作して別のモニターにとある市街地図を表示させた。

 

「まず、神大臣暗殺未遂事件の犯人検挙という名目で各所に検問を張る。その後、人気の無くなった市街地をデュランダル移送の目的地である『記憶の遺跡』を目指して真っ直ぐに駆け抜ける。以上だ」

 

 響でも分かるほどのシンプルな作戦。

 装者達は目を丸くして映像を見ていた。

 

「これはまた…弦十郎さんらしいマッスルな作戦ですこと」

「そ…そうか?」

「あぁ。だが…私は悪くないと思う。今回の相手はテロリスト連中を使って間接的に目的を果たそうとする用意周到さがある。そんな相手に複雑な作戦は却って付け入る隙を与えることになりかねない。だったら、これぐらいストレートな作戦の方が成功確率も上がるってもんだ」

 

 弦十郎の立てた作戦に全面的に賛成をする疾風。

 本当にそれは全体的に物事を俯瞰した結果、そう思ったのか。

 それとは別の個人的な思惑があるのか。

 

「名付けて『天下の往来を独り占め』作戦よ♡」

「…もっといいネーミングは無かったのか」

「あはは……」

 

 疾風すらも呆れる了子のネーミングセンス。

 響はもう笑うしかなかった。

 

「これまでの敵の動向から考えて、まず間違いなく作戦決行時には敵による妨害工作があるだろう。当然だが、それにノイズが使用される可能性は非常に高い」

「そうなった時は……」

「私達の出番…という訳ですね!」

「ある意味、今回の作戦で最も重要な役どころかもしれないな」

 

 ノイズの襲撃があった場合、通常戦力では全く対抗が出来ない。

 シンフォギアの存在だけが頼りになって来るのだ。

 

「弦十郎さん。配置はどうするんだ?」

「まず、響君は了子くんが運転する車に一緒に乗り、車に乗せたデュランダルの護衛を頼みたい」

「は…はい! 分かりました!」

「恐らく、最も危険な役回りになるかもしれないが…今の君ならばきっと出来ると信じている」

 

 説明を聞き、響は緊張とやる気を混ぜたような表情をするが、それとは別に疾風には猛烈に気になっている事があった。

 

「あー…弦十郎さん? 幾つか聞きたい事があるんだが…」

「どうした?」

「まず、一般車両を使ってデュランダルを移送する気なのか?」

「あぁ。ダミーとして大型のトラックも一緒に走るが、そんな『いかにも』な物を使うよりは、少しでも敵の狙いを逸らせたらと思ってな。小型車ならばいざという時も小回りが利くしな」

「そっか…まぁ、それは分かった。けど、それ以上に気になってるのは…」

 

 ジト目になりながら了子を指差す。

 

「…了子さん、運転免許を持ってたのか?」

「持ってるわよ? ほら」

 

 証明するように白衣のポケットから運転免許証を取り出す。

 それを見せられてもまだ疾風は心配のようで、ジト目のままになっている。

 

「了子さんってさ…ハンドル握ったら性格変わるような人間…じゃないよな?」

「んなわけないじゃない」

「いや…科学者って割とストレスが溜まる職業だからさ、乗り物に運転する時に溜まっていたものが一気に…ってパターンがあるかもと思って」

「ストレスが溜まるのは否定しないけど、ちゃんと別の所で発散はしてるわよ?」

「そっか…ならいい」

 

 不確定要素…というよりは、純粋に気になっただけ。

 普段からインドア派な人間ほど、外に出た時の豹変ぶりが凄い事を疾風は何故か知っていたから。

 

「話を戻すが…翼は俺と一緒にヘリで上空から追跡と監視を行う。万が一の時に備えた遊撃戦力として待機をしておいてくれ」

「了解しました」

 

 響が護衛。翼が遊撃。

 となると、残り一名の役目が気になった。

 

「私は?」

「疾風君はダミーのトラックのうちの一台に乗ってくれ」

「あ~…分かった。私は囮だな?」

「…そうだ。俺としても凄く心苦しいとは思っているが、装者達の中でもズバ抜けた身体能力を持ち、優れた判断能力も兼ね備えている疾風君にしか任せられない事なんだ」

「そんな顔をするなよ。了解だ。任せてくれ」

 

 三人の中で最も機動力に優れている疾風ならば、いざという時に響たちの応援に行くことが出来るし、疾風一人ならば多少の妨害工作はものともしない。

 そう判断して、苦渋の決断の末に疾風をダミー役にする事にしたのだ。

 

「作戦決行日は明日の早朝6:00。それまでに俺達は関係各所への根回しなどをしなくてはいけない」

『それに関しては我々も手伝おう』

「ありがとうございます」

『なに…今の私が疾風に出来る事なんて、これぐらいしかないのでな…』

 

 戦場の赴こうとする孫娘の傍にいてやることすら出来ない。

 そんな自分の無力さを歯がゆく思いながらも、それでも自分出来ることをしようとする。

 この二人もまた似た者同士の祖父と孫だった。

 

「装者の三人は作戦開始時刻まで待機をしておいてくれ。響君は一旦、部屋に帰っても構わない」

「え? いいんですか?」

「勿論だ。ちゃんと君の親友にも『表向きの事情』を説明しないといけないだろう?」

「そう…ですね。分かりました」

 

 名目上はバイトとなっている以上、何も言わずに朝から出かける訳にはいかない。

 因みに、言い訳は疾風の方で既に考えてあるので問題は無い。

 

「『明日の朝に急にシフトが入ったから』…でいいんだよね?」

「そうだ。普通のバイトでも朝から急に仕事が入ることがあるらしいから、違和感はないだろ」

「そうなんだ…疾風ちゃんは物知りだねー」

「知り合いから聞いただけさ」

 

 どんな知り合いなのかは…聞くだけ野暮である。

 少なくとも、響と翼は聞いた途端に顔を真っ赤にする事だろう。

 

「では、俺達はこれから明日の朝までに作戦の準備をする事にする。三人は作戦に備えて身体を休めて置くように」

「「「了解!」」」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 作戦説明の後に、装者三人は揃って食堂で寛いでいた。

 最初はトレーニングルームで体を動かそうとも思ったが、疾風に『休む事も立派な訓練』と言われて踏み止まった。

 

「そういえば、さっきは聞きそびれてたけど…『デュランダル』って何?」

「お前…知らないで話を聞いていたのかよ…」

「あの空気じゃ聞きたくても聞けなくて……」

 

 響の気持ちが理解出来ない訳ではないが、彼らの場合は少し笑った後に普通に教えてくれそうな気がするのは疾風だけではない筈だ。

 

「私も詳しい事はよく知らないな。流石に名前ぐらいは知っているが……」

「翼もか…。じゃあ、暇だしデュランダルについて予習でもするか」

「疾風ちゃんは知ってるの?」

「当たり前だ。かなり有名な剣だぞ?」

「剣だったんだ…」

「そこからか」

 

 響の性格上、歴史や神話などに興味が薄そうなのは分かっていたが、ここまでだったとは。

 もしかしたら、自分のギアの元になっている『ガングニール』の事もちゃんと分かっていないかもしれない。

 

「詳しく話せば、話が長くなって響の頭から知恵熱が出そうだから簡単に説明してやる」

「ひ…ひどい…って言いたいけど、否定できない……」

 

 難しい話をされたら頭が痛くなるのは響の持病に近かった。

 それで未来を何度、困らせてきたことか。

 

「デュランダルは、フランク王国って国の王である『シャルルマーニュ』が天使から授かった剣と言われていて、そのシャルルマーニュは自分の腹心であり十二勇士の筆頭でもある最強の聖騎士『ローラン』に剣を与えたらしい」

「天使から授かった剣…」

 

 そのフレーズだけでもう既に凄い事が良く分かる。

 一気に響は疾風の話に聞き入った。

 

「もっと時代を遡れば、古代トロイアの王子であり、騎士道精神を体現した最高の英傑たちである『世界九偉人』の一人にも名を連ねている大英雄『ヘクトール』が所持していたとされる伝説の聖剣の一本だ」

「騎士道の体現者である者が持っていたほどの聖剣…!」

 

 剣士である翼の琴線に触れたのか、彼女もまた興味深そうに話に聞き入り始める。

 完全に疾風主催の勉強会と化していた。

 

「剣自体は典型的な西洋剣である両刃の片手剣なんだが、その強度と切れ味が尋常じゃなかった」

「どれ程だったんだ?」

「そこら辺にある岩なら簡単に切り裂けるほど…らしい。なんせ、ローランが戦いで致命傷を負った時、デュランダルを敵の手に渡すぐらいならここで壊した方がマシだと判断して、近くにあった岩にデュランダルを叩きつけて壊そうとしたら、逆に岩の方が真っ二つになって、デュランダルの方は刃毀れすらもしなかったという話だしな」

「とてつもない強度なのだな…」

 

 岩を斬っても刃毀れすらしない。

 剣士からしたら最高の武器と言えるかもしれない。

 

「柄は黄金で出来ていて、その中には『聖ペテロの歯』『聖バジールの血』『聖ドニの遺髪』『聖母マリアの布』といった四つの聖遺物が収められていた。その時点でデュランダルが普通の完全聖遺物じゃないって理解出来るだろ?」

「そうだな…一つでも強大な力を秘めている聖遺物を四つも柄に収めているとは……」

 

 完全聖遺物というだけでなく、世界的に見ても貴重な遺産でもある。

 絶対に守り抜かなくていけないという使命感が強くなる。

 

「最終的には、ローランの死後に彼の仕える主君でもあるシャルルマーニュの元にデュランダルは戻ってきたらしい。そして、最後の瞬間まで聖剣を守り抜こうとしたローランは天使たちによって導かれて天国に旅立っていきましたとさ」

「「おぉ~…」」

 

 最後は昔話風になってしまったが、見事な説明に思わず響と翼は揃って小さく拍手をしてしまった。

 

「ま、こんな所だな。デュランダルがどんな存在かって知ってるだけでも、やる気は違ってくるだろ?」

「そうだね。いつも以上に頑張らないとって思った」

「お前らしい答えだな。今はそれでいいさ。さて…話をして喉が渇いちまったな…」

「私が取ってこよう。何がいい?」

「アイスコーヒーでよろ」

「私はオレンジジュースが良いです!」

「ならば、私はカフェオレにでもするか。少し待っててくれ」

 

 こうして、戦いの前の少女達の時間が過ぎていくのだった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 緑色の培養液で充たされたシリンダーに何かが入っている。

 それは『人』だった。

 

「フィーネの目を盗みながら進めていたが故に時間が掛かってしまったが…」

「や…やっと、ここまで来たね。コーウェン君」

 

 それを見ているのはスティンガーとコーウェン。

 満足そうに中身を眺めていると、いきなり『人』の目がゆっくりと開かれた。

 

「ど…どうやらお目覚めみたいだよ。コーウェン君」

「そのようだね、スティンガー君」

 

 シリンダーの中にいるソレは、目を動かして二人を見る。

 

「こ…こは…? お前達は…一体…?」

「もう既に自我があるのか。素晴らしい事だ」

「の…残された僅かな細胞からクローニングした結果なのかな?」

 

 怪しく笑った二人は、その人物に対して丁寧に挨拶をした。

 今までの苦労を水の泡にしない為に。

 

「私はコーウェン」

「ぼ…僕はスティンガー」

「「よくぞ目覚めた! 我等の新しい同志よ!」」

「新しい…同…志…?」

「「そうだとも!!」」

 

 新たな生命の、仲間の誕生に二人は打ち震え、彼を歓迎するかのように高々と両手を上げて叫びだす。

 

「この奇跡的な運命に!」

「この運命的な邂逅に!」

「「我等は心から感謝する!!」」

「何を…言って……」

「「さぁ…今こそ、我ら共に行こう!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「安倍清明!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




コーウェンとスティンガーだけでなく、彼らの手によって蘇った『新ゲッター』からの刺客『安部清明』も参戦です。

そして、デュランダルの移送は…?









主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?

  • クリス
  • 未来
  • マリア
  • 切歌
  • 調
  • まさかの弦十郎
  • まさかまさかの慎次
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。