もう一振りの天羽々斬   作:とんこつラーメン

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デュランダルをどういう風にするかは、実はもう決まっています。

勿論ですが、原作の通りにはいきません。

今はまだ『彼ら』の掌の上ですから。







作戦開始

 作戦決行の日となる次の日の早朝。

 二課本部の前に数多くの護衛車兼ダミーの大型トラックと、デュランダルが乗っている了子の個人所有の車が停車していて、その周りには弦十郎や了子を初めとする二課に所属する殆どのスタッフ、そして三人の装者が揃っていた。

 

「作戦自体は昨日説明した通りだ。響くんは了子君の車に同乗してデュランダルの護衛」

「はい!」

「翼は俺と一緒にヘリに乗ってから周囲の監視と、いざという時の遊撃」

「了解!」

「そして、疾風君はトラックの一号車に乗ってからの囮役」

「うん」

 

 改めて自分達の役目を説明され、三人の少女達は力強く返事をしながら頷く。

 

「それと…疾風くんには実はもう一つ、頼みたい事がある」

「なんだ急に?」

「昨日、準備をしている時に皆と話し合ったのだが…疾風くんにはトラック部隊の全体の指揮を任せたいと思う」

「私が?」

 

 幾ら優れているとはいえ、まだ二課に所属して半年も経過していないような新人に部隊の指揮を一任する。

 普通では決して考えられないような事ではある…が、この二課にてそのような常識は通用しないと疾風もこの短い間で学習していた。

 

「なんでまたそんな事になった?」

「これまでの戦いで、君は装者たちのリーダー的な存在となり見事な指揮を行ってきた。それを俺達は非常に高く評価し、君に任せても問題無いと判断した。無論、これは命令ではない。断ってくれても構わない」

「…………」

 

 自分の能力を評価して役目を与えてくれるのは嬉しいし、悪い気はしない。

 それ以前に、そんな言い方をされては断り辛いというものだ。

 

「…分かったよ。こんな小娘で良ければ、トラック部隊の全体指揮…喜んでやらせて貰おうじゃないか」

「疾風くんならばそう言ってくれると信じていた。頼んだぞ」

「はいよ。任せてくれ」

 

 苦笑いを浮かべながら息を吐く疾風ではあるが、その顔には若干の喜びが読み取れる。

 今までの人生で誰かに自分の能力を認められた経験などが殆ど無い疾風にとって、地味に嬉しい事でもあった。

 

「疾風ちゃん…凄い…!」

「ふっ…流石だな」

 

 同じ装者として、仲間の能力が認められるのは嬉しい。

 響は純粋に感心し、翼はまるで自分の事のように胸を張っていた。

 

「では、各員出発の準備をしろ!」

 

 弦十郎の命令が走り、隊員達がそれぞれに割り当てられた車両へと乗り込んでいく。

 そんな中、三人の少女達は互いに顔を見合わせながら作戦開始最後の会話をしていた。

 

「それじゃあ、私達も乗り込むか」

「そうだね」

「必ず成功させよう」

 

 作戦が始まれば、もうこんな風に会話をする暇は無い。

 話すとしても、それは『会話』ではなく『連絡』になる。

 

「響…翼…」

「なんだ?」

「どうしたの?」

「『恥を掻くなよ』」

「「え?」」

 

 最後にそう言い残してから、疾風はトラックの一号車の助手席へと乗った。

 彼女の言った意味がよく分からず、二人は小首を傾げていたが。

 

「疾風くん…いつの間にあんな言葉を覚えたんだ?」

「叔父様は疾風が言った言葉の意味が分かるのですか?」

「あぁ。『恥を掻くな』…あれは二課所属の実行部隊のみが使う隠語でな、意味は『絶対に死ぬなよ』だ」

「絶対に…」

「死ぬな…」

 

 自分達にそんな言葉を投げかけてくれる。

 それだけ彼女が二人の事を信用し、仲間として認めているという証拠。

 ストレートに言わないのは単純に照れくさいからかもしれないが。

 

「では、我々も乗り込むぞ」

「「はい!」」

 

 こうして、デュランダル移送作戦。

 別名『天下の往来を独り占め』作戦が開始された。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 交通規制は見事になされていて、普段は早朝とはいえ多くの人々で賑わっている街中は見事に疑似的なゴーストタウンと化していた。

 

「こうも人がいないと、却って不気味だな…」

 

 トラックの助手席で窓から外を見つめてている疾風が静かに呟く。

 いつもは自分が足で歩いている場所が、まるで違う風景に見えてしまう。

 

「おや? 疾風ちゃんもそんな風な事を思ったりするんだね」

「当たり前だろ? 私だって立派な未成年女子なんだぞ?」

(見た目だけは…なんだよな…)

 

 確かに、疾風は容姿だけで見れば見目麗しい少女ではあるが、その中身が並の大人達以上に成熟しきっている。

 普通に話をしていると、相手が自分達よりもずっと年下の少女であることを忘れてしまいそうになる程に。

 

「ん…?」

 

 このままのんびりと目的地までドライブ…とはいかないようで、疾風はシンフォギアのペンダントを通じて何かを確かに感じ取っていた。

 

(何かが潜んでいるようなこの感覚は…まさかっ!?)

 

 その時、運転席に積んであった通信機にいきなりスタッフの中でオペレーターとして本部に残った朔也から緊急通信が入ってきた。

 

『こちら本部! 街中にノイズの反応を多数確認! 警戒してください!!』

「ノイズの反応? だが、どこにもそんなのは見当たらないぞ?」

 

 運転手が周囲を見渡して確認をするが、それらしい姿はどこにも見当たらない。

 かといって、本部のシステムが誤作動をするとも考えにくい。

 疾風は急いで頭をフル回転させ、どうしてこんな事になっているのかを考える。

 

「ノイズはいるのに姿は見えない…ここは都市部…隠れる場所ならばどこにでもあるが……ん?」

 

 ここで疾風はある事に気が付く。

 今、自分達が走っている道路はやたらとマンホールが多い事に。

 

(ここは確か…下水道が集中している地域……あっ!?)

 

 敵の企みに気が付いて疾風は冷や汗を掻く。

 同時に、まさかこんな巧妙な事を考えたことに感心もした。

 

「運転手さん!! 次の十字路を右に曲がってくれ!!」

「右だな!? 了解だ!!」

「他の車両も一号車に続け!! 了子さんも遅れるなよ!!」

『任せといて~!』

 

 通信機からいつもと同じトーンで返事をしてきた了子の声を聞きつつ、いつでもシンフォギアを展開できるようにペンダントを唯一残された左手で握りしめる。

 

 そうしている間にトラック群は十字路に到達。

 そこを右に曲がった瞬間…目の前にあったマンホールの蓋が大きく跳び上がって、中から大量のノイズが出現してきた。

 

「うぉっ!? マジでノイズがいやがったっ!?」

「やっぱりな…!」

『疾風くん! どういう事だっ!?』

 

 一体何が『やっぱりな』なのかがよく分からない弦十郎が通信を送ってきたので、疾風は不敵な笑みを浮かべながらそれに応えた。

 

「簡単な話さ。敵さんがご丁寧に下水道にノイズを待機させてやがったのさ」

『なんだとぉっ!?』

「こんな大都会だ。それこそ下水道なんて地面の下には迷路のように張り巡らされている。こっちの位置を把握して、その上でタイミングさえ合っていれば簡単に奇襲が仕掛けられるって寸法だ」

『何と言う事だ…!』

 

 まさか地下から襲撃を受けるとは思わなかった。

 もしも疾風が気が付かなければ、早くも被害が出ていた事だろう。

 

「こんな事もあろうかと、昨日の間に街の地図を頭の中に叩き込んでおいて正解だった。まったく…何事も念には念を入れておくもんだな!」

『まさか…疾風ちゃんには相手の動きが分かるのッ!?』

「ンなわけないだろ。けど、マンホールが少ない場所、全く無い場所なら全て把握している! 各車、私の指示通りに動け!! 了子さんも頼むぞ!!」

『了解よ!』

「よし…今度の道は真っ直ぐだ!」

 

 言われた通りに十字路を曲がらずに真っ直ぐ進んでいくと、左右にあるマンホールからノイズが飛び出してきた。

 だが、速度制限なしのトラックに追いつける筈も無く、そのまま何も出来ずに見送る形となってしまった。

 

「後であいつ等は私達で処理しないといけないが…今は考えないようにする!」

「すげぇ…ノイズの襲撃を受けないで突破できてる…!」

 

 この少女にトラック部隊の指揮を任せて大正解だった。

 噂自体は聞いてはいたが、まさかここまでの能力を持っているとは誰も思わない。

 

「ノイズとの交戦は可能な限り避ける。今の私達の任務はあくまで『デュランダルの移送』だからな。奴らの掃除は後でゆっくりと私達三人でやるさ。だろ、翼」

『その通りだ。我々は防人ではあるが、だからと言って優先事項を見誤ってはいけない』

 

 嘗ての翼ならば、ここで疾風に反論していたかもしれないが、今の彼女には精神的余裕があるのか、それを受け入れて納得している。

 

「よし…今度は左に曲がってくれ!」

「おっし! 任せてくれリーダー!」

「リーダーって…」

 

 なんか勢いに任せて変な事を言われてしまった。

 いずれは『神司令』とか言われそうな気がしてくる。

 

『疾風くん! このまま行けば先には……』

「分かってる! 製薬会社の工場があるって言うんだろッ!? それでいいんだ!」

『どういうことっ!? もしも、そこで爆発でも起きたらデュランダルは…』

「心配するなって! 了子さんだってデュランダルの言い伝えぐらいは知ってるだろッ!? 工場の爆発程度で壊れるなら、完全聖遺物になんてなってない!」

『確かに…そうだけど…』

「それに…私の予想が正しければ、敵さんはその工場に隠れ潜んでいる」

 

 疾風の確信めいた発言に全員が耳を傾ける。

 作戦が始まってから僅か十数分の間に、他の隊員達から不動の信頼を獲得する事に成功している疾風に対して誰も割り込んでくる者はいなかった。

 

「この道の先にある製薬工場は、今回の目的地である『記憶の遺跡』の近くに存在している。人間ってのは『最後まで油断をせずに』なんて考えていても、知らず知らずのうちにゴールが近くなると精神的に油断をしてしまうもんなのさ。だからこそ、そこに戦力を集中させて待ち構える。もしも私が敵の立場ならば絶対にそうする。誰だってそうする」

『敵がいると思われる場所に敢えて突っ込んでいくのかッ!?』

「普通ならば考えられないが…今回はそれでいいんだよ。工場さえ抜ければ目的地は目と鼻の先だし、逆に言えばそこでどうにかして敵を抑え込めれば、後はなんとかなる。無論、私達三人がその場に留まって殿をするのが大前提だがな」

 

 ノイズが出現した時点で戦闘は避けられない。

 ならば、可能な限り無駄な戦闘を避けて、ゴール近くになって自分達を殿にする事で任務を確実に遂行する。

 これは当初の作戦には無かった内容ではあるが、時には臨機応変な動きも必要とされる。

 疾風の出した提案に異を唱える者は誰一人としていなかった。

 

『…いいだろう。責任は俺が取る! 全員、疾風君の指示に従え!!』

『『『『『了解!!』』』』』

 

 こうして作戦に若干の変更がなされた。

 話をしている間にも正面に話していた製薬工場が見えてくる。

 

 ここで疾風は、自分の運命の一部と邂逅する。

 

 

 

 

 

 

 




次回はクリスちゃんとの第2ラウンド。

まぁ…重要なのはそれじゃないんですけど。

主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?

  • クリス
  • 未来
  • マリア
  • 切歌
  • 調
  • まさかの弦十郎
  • まさかまさかの慎次
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