そこにゲッター要素を絡めて…って感じですね。
疾風が指示するように進んでいくと、全員の視界に徐々にではあるが工場地帯が見えてきた。
そこに近づくにつれノイズの数が増えていくが、それに構っている暇も余裕も今の二課には無い。
只管に真っ直ぐに突き進んでいくしかないのだ。
「そろそろか……」
そう呟くと、助手席の窓を開いてからシートベルトを外し始める。
走行中にシートベルトを外すなんて自殺行為以外のなにものでもない事を粋成し始めたことに運転手をしていた隊員は驚きの声を上げる。
「ちょ…いきなり何やってんだよ疾風ちゃん!?」
「ちょっとな。それよりも、アンタはこのまま止まらずに工場地帯を突っ切って目的地まで行ってくれ! 頼んだぞ!」
「それは分かってるけどよ…ってっ!?」
あろうことか、開いた窓から体を乗り出してから、そのまま曲芸のような身軽さでトラックの天井へと移動。
風を身に浴びながら胸に手を当てて聖詠を口ずさむ。
「Penetrate amenohabakiri tron」
瞬間、眩い光と共に疾風の体にギアが纏われる。
それとほぼ同時にトラック部隊は工場地帯へと到着した。
「案の定…か。ここまで予想通りだと却って気持ちが良いもんだ!」
工場地帯の至る所にノイズの群れが。
そこはもう人間がいられる場所ではなくなっていた。
「それじゃあ…頼んだぞ!!」
「くそっ…了解だっ!!」
トラックの天井から飛び降りながら最後の指示を出す。
無力な自分の事を歯痒く思いながらも、隊員はアクセル全開で飛ばしていき、後方のトラックたちもそれに続いて行った。
「全く…本当に無茶をする奴だな! 私の相棒は!」
「フッ…お前にだけは言われたくないぜ。翼」
彼女がギアを展開したことを確認して上空のヘリから降下し、その途中でギアを纏ったと思われる翼が疾風の隣に着地をして背中合わせに剣を構える。
「了子さん! あんたもそのまま突っ切ってくれ! 出来るかッ!?」
『もちのロンよ! こーゆーの…なんかアクション映画の世界に入り込んだみたいで興奮するわよねー!』
こんな状況でも相変わらずな了子の精神力に感心するべきか、呆れるべきか。
少なくとも、頼もしい事には違いが無かった。
「そんで響! 車の中でギアを展開して、そのまま走行中に飛び降りる事って出来るか!?」
『ええぇぇぇぇぇぇぇっ!? ギアはともかく、そんなハリウッド映画みたいなこと出来ないよー!』
「まぁ…普通はそうだよな…」
そんな芸当が出来るのは、少なくとも幼少期から鍛えている翼か、最初から超人的な身体能力を持っている疾風ぐらいだ。
常人にはまず色んな意味で不可能だろう。
「仕方ない…了子さん」
『はいはーい』
渋々と言った感じで疾風達の目の前で車が停車し、そこからギアを纏った響が降りてきた。
「お待たせ!」
「おう。了子さんはさっき言った通りに」
「任せて頂戴。皆も気を付けて…って、あら?」
「ちっ!」
呑気に話している間にノイズに囲まれる。
だが、数は決して多くはないし、ノイズの動き自体は緩慢だ。
この場に装者が三人もいる事を考慮しても、この場を突破すること自体はそこまで苦ではない。
「翼! 響! こいつらを蹴散らして私達で道を作るぞ!!」
「「了解!!」」
「了子さんは、隙が出来るまでジッとしておいてくれ! いつでも発進できるようにアクセルに足を掛けといてくれよ!」
響は右側を、翼は左側を、そして疾風は正面のノイズに向かって飛び掛かっていく!
「余り時間は掛けられん…一気に蹴散らす!!」
手数を増やす為に剣の数を増やして二刀流となり、流麗な動きで次々とノイズを切り裂いていく。
そこに無駄な動きは一切無く、本当に流れるような動きをしていた。
「私達は急いで先に行かなくちゃいけないんだ! そこをどけぇぇぇぇぇっ!!」
弦十郎譲りの格闘術を駆使し、拳や蹴りでノイズを倒していく響。
もう戦いに怯えていた少女はどこにもいない。
ここにいるのは人々を守る為に戦う一人の戦士だった。
「正面突破は私の十八番だ! お前らには勿体無いが…本気で行かせて貰うぞ!!」
疾風が気合を入れると、またもや彼女の全身から緑のオーラ…ゲッターエネルギーが溢れ出す!
それと同時に疾風の髪や眉が燃えるような赤に染まった!
「そんな動きでは、この私に触れる事すらも出来ないぞ!! 受けろっ!!」
超スピードの高速移動によって疾風の姿が分身し、それが縦横無尽に暴れ回り触れたノイズを片っ端から粉々にしていく!
これこそが疾風の最大の攻撃!! その名も……
真・
(なんて動き…あれが本当に若干15歳の少女から繰り出される攻撃なのッ!?)
目の前で見ている了子も、その光景に目を疑った。
モニター越しに見ていたのとは訳が違う。
もう既に現時点で、疾風は確実に翼の実力を超えていると確信できた。
(やっぱり…あの緑のオーラと何か関係が……)
疾風の尋常ではない戦闘能力に関して頭の中で考察していると、いきなり車のトランクにアタッシュケースに入れる形で置いてあるデュランダルが震え始めた。
「な…何っ!? どうしてデュランダルがいきなりっ!?」
今までデュランダルがこんな反応をしたことは一度も無かった。
幾ら完全聖遺物だからと言って、ここまで過剰な反応をする理由が思いつかない。
シンフォギアが目の前で稼働しているからか?
それならば今ではなく、さっき反応をしていた筈だ。
さっきではなく今反応した理由…さっきは無くて今存在しているもの、それは一つしか該当しない。
(まさか…疾風ちゃんの身体から溢れ出ている、あの『緑のエネルギー』に反応しているとでも言うのっ!?)
そうしている間も三人の装者は車の周囲にいるノイズを倒していき、戦いの激化に合わせるようにデュランダルの反応も強くなっていく。
「このままでは…デュランダルの封印が解ける!? 疾風ちゃん!!」
「どうしたっ!?」
「大変よ! デュランダルが…きゃあっ!?」
了子が急いで疾風に声を掛けた瞬間、車のトランク部分が吹き飛び、そこにあったアタッシュケースが内部から破裂、中から虹色に光る一本の両手剣が宙に浮かび上がる。
「な…なんだっ!?」
「了子さんっ!?」
「まさか…あれがそうなのか…!?」
「えぇ…そうよ…! あれこそが私達が運んでいた完全聖遺物……」
剣は見上げる程に高い場所に滞空したまま動きを止めた。
その周囲は空間が歪み、誰が見ても異常であることが分かる。
「…デュランダルよ」
どうしてデュランダルがいきなり起動したのか。
それは専門家である了子にもサッパリ分からない。
分かっている事は、今が完全にイレギュラーな事態であるという事だ。
「…どうしてデュランダルが動き出したのかは分からないが、それは後でゆっくりと考える!! 今はアレを確保することが先決だ!! 翼! 響!」
「承知している!!」
「ここは私達に任せて、疾風ちゃんはデュランダルを!!」
この中で最も素早い疾風に全てを託し、彼女は翼と響に背中を預ける。
即席ですぐにこの考えに至る時点で、彼女達の絆がこの短期間でかなり強固になっているという証拠になる。
だが、そこで予想していた通信が本部から入ってきた。
『疾風ちゃん気を付けて!! 貴女の予想通り、その地帯から強力な反応を検知したわ! これは間違いなく……』
「ネフシュタンか! あいつめ…デュランダルを手に入れるチャンスをずっと伺ってやがったな!」
疾風が背中のブースターを吹かしてデュランダルに向かって飛び上がると、それと同時に物陰から見た事のある蛇腹状の鞭が飛び出してきた。
どっちが先にデュランダルに触れるのか。
だが、疾風は速度を上げてデュランダルを追い越し、鞭の方をドリルで迎撃した!
「やらせるかっ!!」
「しまっ…!」
ドリルの一振りで鞭は粉々になり、それに伴ってネフシュタンの少女…クリスが姿を現した。
「やっぱりココにいたか…ネフシュタン!」
「ドリル女……邪魔するんじゃねぇっ!!」
「それはこっちの台詞だ。どうしてデュランダルを狙っているから知らないが、こっちの仕事の邪魔をしないで貰おうか」
「うるせぇっ!! そっちこそ、こっちの邪魔をしてんじゃねぇっ!!」
すぐに再生した鞭を再び放つが、それもまた疾風のドリルに砕かれる。
もう彼女に鞭での攻撃は通用しない。
「おい…悪い事は言わない。ここは大人しく引け」
「あぁ? ふざけてんのか? アタシとお前達は敵同士で、ここは戦場だ。で、互いの目的のブツはそこにある。退く理由なんざ何処にもねぇだろうが!!」
「お前は…状況が分からないのかっ!?」
余りの分からず屋加減に流石の疾風もブチ切れたのか、全速力でクリスに向かって突撃していき、彼女が迎撃行動をする暇も与えずにドリルを顔の真横に突き刺し、そのままの勢いで押し倒した。
「馬鹿なお前にも分かり易く説明してやるからよーく聞け。原因は不明だが、今のデュランダルは稼働状態に入っている。専門家じゃないお前にも分かるだろう…あの剣から放たれている桁違いの力を。そんな状態の時に同じ完全聖遺物が触れたりしたら一体どんな事が起きるのか全く見当がつかないんだよ。下手したら完全聖遺物同士の共鳴現象でこの一帯が跡形も無く消滅する可能性だってある。幾らお前がネフシュタンを纏っていてもタダじゃ済まない。いや…ある意味、お前が最も被害を受ける可能性だってある。最悪、お前とネフシュタンが融合してノイズよりも醜い異形の化け物になるかもしれない。それでもデュランダルを狙うのか? 私達と戦うのか? 未来永劫、死ねない体の異形の怪物になってまで私達と戦いたいというのなら…仕方がない。私はここでお前を殺す。それは決してお前が憎いからじゃない。響はお前と話し合いたいと思っているし、私だって本意じゃない。これは死ねなくなる前に殺してやろうという私なりの慈悲だ。さぁ…今すぐに選べ。デュランダルを手に入れる為に人間を辞めて不死身の化け物になるか。大人しく引くか。それとも私にここで殺されるか」
クリスに反論させないために疾風は一息でこの長文を言い放った。
この少女、どうやら肺活量もまた超高校生級だったようだ。
「あ…あたしは……」
殆ど脅すように言い放たれてクリスは完全に気圧されていた。
確かに今のデュランダルが危険であることは理解出来るし、疾風の言葉が嘘とも思えない。
彼女は本気でクリスの身を案じている。
だが、クリスにだってそう簡単に引けない理由があるのだ。
自分に課された命令と、疾風の言葉との間に葛藤していると、いきなり背後から叫び声が聞こえてきた。
「は…疾風ちゃんっ!! 危ない!!」
「後ろだっ!! 避けろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「なに…?」
響と翼の必死の叫びを聞き、急いで後ろを振り向くと、そこには先端を疾風に向かって飛んできたデュランダルがあった。
どうしてこっちに飛んできたのか。
同じ完全聖遺物であるネフシュタンを狙ったのか?
ここで避けること自体は簡単だ。だが、そうすればクリスに突き刺さることになってしまう。
もし仮にクリスを抱えて避けても、デュランダルがそれだけで終わるとは思えない。
恐らく、標的に突き刺さるまでずっと追い続けるに違いない。
完全聖遺物同士の接触は絶対に避けなければいけない事。
とすれば、この状況でするべき事は一つだった。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
自分からデュランダルへと向かっていき、左手のクローアームで掴もうと試みるが、まるで意志があるかのようにすり抜けしまい…そのまま……。
「な…んだ…と……!?」
デュランダルの刀身がギアを貫通し、深々と疾風の体に突き刺さった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
デュランダルを巡る攻防戦。
それを工場の屋上から見下ろしている三つの姿があった。
コーウェンとスティンガー。
そして、黒いスーツにコートという現代の服に身を包んだ安部清明だった。
「あれが…そうなのか?」
「そうだ。君とも因縁がある者達の成れの果て…」
「ふっ…面白い…」
清明が疾風の姿を見ながら狡猾な笑みを浮かべる。
「元々、デュランダルはかの王『シャルルマーニュ』が天使から授かった剣とされている」
「て…天使とは即ち神の使い。神の代弁者。そんな連中から授かった剣には当然のように『神』の意志が僅かながら宿っている」
「遥か神話の時代より幾多の神が存在したが…」
「そ…そのいずれもが『人類の繁栄』は許しても『人類の進化』は決して認めようとしなかった」
「その最たる例が『ギリシア神話』の主神『ゼウス』。あの神は人類に『火』という力を与えた『プロメテウス』を決して許さなかった」
「さ…寒さに震え無知という暗闇にいた人間達に『火』という力を与えて文明の光へと導いたまでは良かったが…」
「人間は『火』を得る事で夜を照らし、食を調理する事を覚え、鍛冶場で武器を生み出し戦いを覚えた。人間は文明と技術を生み出すことに成功した」
「け…けど、ゼウスはそれを許さなかった。『火』を持つ事で人間が神に近づくほどの進化をすると危惧をしたゼウスは、人間に『火』を与えたプロメテウスの身体をコーカサス山の山頂の岩に鎖で繋ぎ、そこに巣食う鷹に生きたまま腸を啄ばまれるという苦痛が永遠に続く。神は死を知らない存在…不死身だからね」
両博士の話を聞き、清明はある神々を思い出す。
「そう…それ故に『四天王』もゲッターの存在を排除しようとした」
「ゲッターは古今東西、あらゆる神々の怨敵。その意志が宿ったデュランダルが真っ先にゲッターの申し子である神疾風を排除しようとすることは当然のこと」
「け…けど、これで終わりではない。あれは『切っ掛け』に過ぎない」
「ゲッターとデュランダル…この邂逅でお前は何を見る…?」
「き…希望か…それとも絶望か…」
「どちらにしても、あの娘は自覚せざる負えなくなるであろうよ。己の運命を」
本来ならば感知されても不思議ではない状況なのに、三人はまるでその場に存在していないかのように誰にも見つかることなく、相反する力のぶつかりを見つめていた。
次回……疾風ちゃんが『皇帝陛下』と御対面する…かも?
分からないけど。
主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?
-
響
-
翼
-
クリス
-
未来
-
マリア
-
切歌
-
調
-
まさかの弦十郎
-
まさかまさかの慎次