疾風と響は同時刻の別々の場所にいるので、描写をしても余り意味が無いのです。
突如として出現したノイズ数体に追われながら逃亡を図る疾風。
幸いなことに、ノイズ達の進む速度自体はそこまで速くはないので逃げること自体は容易だが、行く先々で他のノイズが次々を出現して行く手を阻もうとしてくるので意味が無かった。
「ちぃっ!」
必死に走る町中にはもう人影は殆ど無く、避難用のシェルターに逃げ込んでいるようだ。
本当なら彼女もそこに行きたいところだが、今となってはもう自分の入る余裕なんてないだろうし、それ以前にもうどこのシェルターも閉じているだろう。
「こんな時に!」
道路のど真ん中に真横になっている車が二台。
恐らく、逃げる事に夢中で適当に乗り捨てたのだろう。
「邪魔なんだよ!!」
左手で車のボンネット部分に手を付き、その勢いで飛び越える。
車が遮蔽物となって少しは時間稼ぎが出来ると思いきや、奴らはそんな事なんてお構いなしに突き進んでくる。
「おいおい…冗談キツいぜ…!」
体力と脚力にはそれなりに自身があるので問題は無いが、このままだと完全にジリ貧だ。
どこかで解決策を見つけなくては。
「つってもな……」
大都会の中心部という事もあって道は入り組んでいるし、未だに自衛隊がやって来る気配も無い。
自分以外にも逃げ遅れた人間がいて、彼らの救助に向かっているのだと信じたいが、癖でどうしても最悪の展開を想像してしまう。
「そんな事は無いと信じたいけどな……」
チラッと背後を振り返ると、そこにはもう見るのも嫌になる程の数のノイズが蠢いていた。
あれにほんの少しでも触れた瞬間に自分が死ぬと思うと、何とも言えない気持ちになる。
それは恐怖ではない。これは憤り。
こんな理不尽が許される世界への怒り。
「せめて…右腕があれば……」
無い物ねだりをしても意味が無いのは分かっているが、それでも呟かずにはいられなかった。
「兎に角、今は逃げるしかない…!」
どんなに身体能力が優れていても、ノイズに対しては意味が無い。
触れた瞬間に死が確定するのだから。
「ここを曲がれば……なっ…!?」
先が見えない曲がり角には何があるのか。
そこには非情な現実があった。
「は…ははは……なんだよコレ……」
曲がり角の先は行き止まりとなっていた。
同じ行き止まりでも、多少の壁ならば余裕で飛び越えてみせるところだが、目の前に立ちはだかっているのはパッと見ただけでも5メートルはあるコンクリートの壁。
助走があれば飛び越えられるかもしれないが、今の状況で少しでも戻るのは完全な自殺行為だ。
「……っ!?」
ハッとして振り向くと、そこには自分に向かって押し寄せる大量のノイズが。
目の前には絶対無敵の化け物が、後ろには巨大な壁が。
絶体絶命とはまさにこの事か。
「ふざけんな…ふざけんじゃねぇぞ…! こんな体になって、それでも必死に生きようと頑張って…それなのに…こんな所で終わりなのかよ…クソが…!」
三本しかない指で左手を握りしめ、眼前に迫る『死』に対して体を震わせる。
人生で二回目となる本能的な恐怖。
だが、今の疾風はあの時とは何かが違っていた。
「へ…へへへ…! 誰にも知られないままに灰となって終わる…か。私らしい末路じゃねぇか……だったら!」
震える体がピタリと止まり、何かを決意したかのような目でノイズ達を睨み付ける。
「どっちみち死ぬのならば、せめて前のめりに死んでやる! 死なば諸共だ!! クソッタレが!!!」
足に力を入れ、ノイズに向かって駆け出そうとする。
その間も胸の疼きは留まる事をせず、更に激しくなっていく。
明確な形となって襲い掛かる死に向かって一歩足を踏み出した瞬間……。
「な…なんだっ…!?」
突如として、頭の中に『何か』が流れ込んでくる。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
『努力など、才能が無い奴がする事さ』
『ただよ…ツイてなかっただけさ……』
『■■■、出来る事なら俺がお前の代わりにあの世に行きたかったぜ……』
『私は■……■■■! これから先、貴様に地獄を見せる男だ!』
『この程度の事で死ぬのなら、今死なせてやった方が幸せだ』
『ふふ…お前という後継者が出来たから俺が逝くんだ』
『バカな! また俺を生き残らせるつもりかー!!』
『ふふ…役者は揃ったって訳か……』
『そうだ…この未来永劫の時の狭間で戦う為に……』
『その答えを…俺はずっと探している…』
『フッ…遂に三人揃ったぞ。見ていてくれたか…■■…』
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「な…なんだこれは…!」
急に頭を押さえ、その場に蹲る疾風。
先程前の決死の表情が消え、完全に困惑していた。
「私は知らない…
知らない記憶が頭の中を駆け巡る。
同時に、胸の疼きが最高潮に達しようとしていた。
「む…胸が…! これは一体……!」
顔全体に冷や汗を掻き、もう一歩も動けない。
その時、急にクリアになった疾風の頭の中にあるフレーズが浮かんできた。
「歌…だと…? 私が歌うってのか…!?」
こんな状況で何を考えているのか。
歌なんか歌っても何の解決にもならない。
なのに、意味なんかないと理解しているのに、なんでか歌わなくてはいけないという衝動に駆られる。
ここで歌わなければ死ぬと。自分に未来は無いと。
自分じゃない自分が叫んでいるようだった。
「いいだろう…ここで突撃しても、歌っても結果は同じなんだ。それならせめて、女らしく華々しく散ってやろうじゃないか」
スッと立ち上がり、完全に冷や汗が引いた顔で静かに目の前のノイズ達を見据え、澄んだ声で旋律を奏でる。
「Penetrate amenohabakiri tron」
刹那、疾風の体が眩い光に覆われ、その身が『純白』の装甲に覆われていく。
真っ白なインナーに変わり、失われた筈の右腕に堅牢な装甲で構成された『義手』が装着される。
それは普通の義手ではなく、本来有る筈の『手』が存在していなかった。
あったのは鋭く光る巨大な黄金の『ドリル』。
左手は白銀に光るクローアームに覆われている。
「んっ…!」
左腕上腕部にも軽装甲が取り付けられ、両脚部は細くて舐めらかな装甲にて守られる。
そして、背部には高速移動用と思わしき巨大なブースターが二基。
胸部の装甲が装着され、最後に頭部に三角帽子のような白いヘッドギアが被せられる。
「これは…なんだ…!?」
まるで変身ヒロインのように格好が変わってしまい、流石の疾風も驚きを隠せない。
特に、異形と化した自分の失われた右腕にはどう反応していいのか困る。
「この腕…動くぞ…! 私の意志で動く…!」
実際に肩から動かしたり、肘を曲げたりする事で、今の自分の身体を確かめる。
特に、右腕のドリルを当たり前のように動かせたことには戸惑いしかない。
「……っ!? そう言えば、この格好ってどこかで見た事があるような気が……」
そこで思い出すのは、二年前のコンサートでの事件。
疾風が今の体になった切っ掛けとなる事件でもあり、その時にツヴァイウィングの二人がしていた格好によく似ていた。
「ということは…まさか……!?」
確信を得られないまま考えている疾風であったが、そんな彼女の事情なんてノイズ達は知る由も無い。
ノイズ達の一体が彼女に向かって触手を伸ばして襲い掛かる!
「し…しまっ……た?」
思わず左腕を上げて防御をして触手が絡まるのだが、全く炭化する様子が無い。
それどころか、このまま引っ張れば普通に奴等を押し倒せそうなぐらいだ。
「ま…まさか…本当にノイズと渡り合えるのか…?」
ドクン…ドクン…。
疾風の心臓が激しく鼓動する。
脳内に大量のアドレナリンが分泌され、うっすらと笑みを浮かべた。
「きひ…きひひ…! そっか…そうなのか…! そうなんだな!」
右腕のドリルを駆使して触手を切り刻み、高速で回転させて火花を散らす。
「これさえあれば! もう貴様等に怯える事は無いんだな!! そう考えていいんだな!?」
ブースターが点火し、いつでも駆け出せるように腰を低くする。
ぎらついた目でノイズの群れを見据える。
今の疾風には、ノイズ達がまるで怯えているように見えた。
「ならば…この力を試させて貰う!!」
凄まじい勢いで回転するドリルを前に出しながら駆け出し、そこにブースターのパワーも加えて突撃する!!
「くらえ化け物!!」
緑色の光に覆われながら、ドリルから紫電を迸らせながら直線状にいたノイズを全て粉々にしていく!
その様はまさしくハリケーン!
余波だけで直撃してないノイズすらも破壊していった!
「想像以上だ…! これならなんとかなる!」
その時の疾風は気が付いていなかった。
攻撃をしながら、自分が無意識のうちに歌を歌っていた事を。
その歌によって自身の能力が増大している事に。
♪HEATS♪
かなり短いですが、キリが良いので今回はここまで。
次回は原作キャラ達に驚いて貰いましょう。
主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?
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響
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翼
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クリス
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未来
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マリア
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切歌
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調
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まさかの弦十郎
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まさかまさかの慎次