その事を最初から予期していたような素振りを見せた強面博士たち。
果たして、ここからどうなってしまうのか?
「が…はぁ…っ!」
突如として突撃してきたデュランダルに体を貫かれた疾風。
翼と響は涙を流し絶叫しながら駆け寄ろうとし、すぐ後ろにいたクリスは目の前で起きた出来事に体を震わせながら恐怖し、自分が纏っているネフシュタンに疾風の血が付着したことで何かを思い出したのか、顔を歪ませて涙を流した。
「疾風ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「疾風ちゃんっ!!!」
「あ…ああぁぁ…!」
まるで糸が切れた人形のように地面に落下し、辛うじて残されている気力で膝を付いて耐えた。
疾風自身も、どうしてこんな事になっているのかよく分からないでいた。
分かっている事は、自分の命が風前の灯になっているという事だけだ。
一方、その光景を見ていた了子もまた、想像すらしていなかった事態に驚きを隠せずにいた。
(こ…これは一体どういう事…!? どうしてデュランダルが勝手に起動をして、しかも疾風ちゃんを殺すような真似を…? 彼女には私達には分からない『何か』が隠されているというの…?)
冷静に考えようと試みてはいるが、混乱した頭では上手く回らない。
しかも、そこに上空のヘリに乗っている弦十郎から通信まで来た。
『了子くん! 一体どうしたっ!? 疾風君に何があったッ!?』
「…弦十郎くん…心して聞いて頂戴…。デュランダルが突如として起動をして、疾風ちゃんの体を貫いたわ……」
『な…なんだとぉっ!!?』
どうして、そんな事態になっているのか。
移送していた筈のデュランダルが何故に疾風を攻撃するのか。
悔しさと怒りで頭が沸騰しそうな弦十郎には冷静な考えが出来なかった。
『どうして…疾風くんばかりがそんな目に遭うんだっ!! ふざけるなっ!!!』
「弦十郎くん……』
色々と思惑こそ有れど、了子自身も少なからず疾風の事を弟子のように思っていたのも事実。
本当ならば今すぐにでも駆け寄りたいが、まだ周囲にはノイズが残っている。
彼女の立場上、下手にこの場を動く訳にはいかない。
「翼…響…!」
「は…疾風ッ!? しっかりしろ!!」
「疾風ちゃんっ!!」
腹部を思い切り貫かれているのに、まだ意識はしっかりしているようで、口の端から血を流し、腹からは夥しい程の出血で彼女の周囲が血で真っ赤に染まっているにも関わらず、強がってニヒルな笑みを浮かべていた。
「フッ…私としたことが油断をしちまったみたいだ……」
「こんな時まで強がるなっ! い…急いで応急処置を……」
「で…でも翼さん! デュランダルを抜いたらもっと血が出ちゃうんじゃ…」
「そうだったっ! ではどうすれば……」
「はは……」
なんだか意識が朦朧としてくる。
こんな体験をするのは人生で二度目だ。
最初は例のコンサートで右腕と左手の指二本を失った時。
そして、今回が二回目だ。
「お願い…死なないで疾風…! もう二度と私は…相棒を失いたくないんだ…!」
「無茶…言うな…よ……っ!?」
その時、消えようとする意識の中で確かに何かを感じた。
自分の中に流れる『何か』とデュランダルから流れてくる『何か』が反発し、ぶつかり合うような感覚。
強大な二つの力が何度も激しく激突し、それが今にも爆発しそうな…そんな予感。
「つ…翼っ! 響っ! 今すぐに私の傍から離れろ! 急げっ!!」
「何を言ってるんだ疾風! そんな事、出来るわけがないだろう!!」
「そうだよ疾風ちゃんっ!」
「優しいな…お前達は…。だからこそ私はっ!」
最後の力を振り絞り、疾風は右手のドリルを使って翼と響を突き飛ばす。
普段の彼女ならば数メートルは余裕で飛ばしているが、今の弱った状態では1メートルぐらいが精々で、ダメージ自体も殆ど無かった。
「きゃあぁっ!? は…疾風何をッ!?」
「疾風ちゃんッ!?」
二人が離れた瞬間、疾風の全身に緑色の線が走り、それがデュランダルにまで伝わっていく。
完全に疾風の身体とデュランダルが緑の線で繋がった瞬間…それは起きた。
「ぐ…がぁあ……がぁぁぁぁああああぁああぁあぁぁぁああぁっ!!!!!」
突如として、疾風の身体とデュランダルが虹色の光の柱に包まれ、それが天へと向かって高々と昇っていく。
疾風の絶叫に呼応するかのように光の柱は激しさを増し、発せられる衝撃波は周囲にいる者達を総て吹き飛ばす。
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」
翼と響は揃って派手に吹き飛び……
「こ…こいつはっ!? わぁぁあぁああぁぁあああぁぁっ!?」
クリスもまた壁に叩きつけられるように飛ばされた。
「くっ…! これはまさか…暴走ッ!?」
そして了子は車にしがみつきながらも、目だけはしっかりと開いて疾風の様子を刻み付けている。
周囲には蔓延っていたノイズ達は衝撃波によって全て一掃され、皮肉なことに疾風がデュランダルに刺されたことで結果的に工場地帯の安全が確保される事となった。
「疾風ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
翼の叫びが衝撃波に掻き消される中、疾風の意識は何処か遠い所へと行こうとしていた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「……はっ!?」
気が付くと、そこは真っ黒な空間だった。
まさか、ここが俗に言う『あの世』なのか?
そんな呑気な事を考えてしまう。
「私は…死んだのか…?」
シンフォギアは解除されて私服へと戻っている。
辺りを見回しても何もない。どこまでも漆黒の空間だけが広がっている。
「ここは一体…?」
自分は確か、デュランダルの移送任務中にノイズに襲撃を受け、工場地帯で仲間達と一緒に迎撃し、その時に何故かデュランダルが起動、そして……。
「そして…私は……」
咄嗟に自分の腹部を見てみるが、そこには何も突き刺さってなどいない。
服を捲って確認しても、刺された後は愚か怪我一つしていない。
(あの時…確かに私はデュランダルに刺された。それは間違いない。まだ刺された感覚が残ってるぐらいだしな。だとしたら……)
これは瀕死になった自分が見ている夢なのか。
それとも走馬灯の類なのか。
訳が分からずに必死に頭をフル回転させていると、いきなり背後の気配が出現した。
「ようやく来たか。随分と遅かったじゃないか」
「え?」
余りにも突然すぎて、普段ならば絶対に言わないような間抜けな声が出る。
後ろを取られたのに全く嫌な感じがしない。
それどころか、なんだか懐かしい感じすらする。
ゆっくりと背後を振り向くと、そこには白衣を着た一人の男が立っていた。
長い髪は白髪交じりで、顎には髭が生えている。
見ただけで中年だと分る男だった。
「お…お前は一体……」
「待ちかねたぞ。神疾風」
「なっ!?」
またもや背後から声が聞こえ振り向くと、今度は先程見た男が若くなったような感じの男が黒いスーツ姿で立っていた。
髪が黒くなっているので、恐らくは20~30代ぐらいか。
「皮肉なもんだな。最も早い筈の俺達が、一番遅く辿り着くなんて」
「仕方あるまい。俺達は常に『残される側』だったのだからな」
疾風の周囲に次々と現れる、同じ顔をした男達。
その年齢は様々で、明らかに10代の学生と思われる者もいれば、顔に傷を負っている者、まるでテロでもしてきたかのような恐々しい顔をした者もいる。
だが、疾風には何故か分かった。
この男達は年齢や服装こそ違うが、全員が同一人物であることを。
「誰だ…お前達は…ここはどこだ! 私はどうなったんだっ!?」
「気持ちは分かるが、今は落ち着け。順に説明をしてやる」
白衣を着た男が代表して疾風を宥めて、一歩だけ前に出る。
「まずは自己紹介からだ。私は…いや、『俺達』は『神隼人』」
「神…隼人…? 私と同じ苗字…?」
「そうだ。そしてここは一種の無意識の領域。分かり易く言えば『夢の世界』というやつだ」
「夢の…世界…」
残された左手で頭を抱え思い出す。
以前にも一度だけ同じような事があったことを。
「ほぅ…? てっきり無様に狼狽えるか、否定でもするかと思ったが……」
「前に一度だけ、似たような経験があるんでね……」
「…そうだったな」
まるで、あの時の事を全て知っているかのような口振り。
ここで下手に追及しても話が進まないような気がしたので、今は敢えて黙っている事にした。
「お前は呼ばれたんだ。意識だけの状態となってな」
「意識だけって事は…私の身体は?」
「まだ現実世界にある。ゲッターエネルギーとデュランダルのエネルギーの反発によって半ば暴走に近い状態にあるがな」
「ゲッター…エネルギー…」
前の夢でも聞いた単語。
初めて聞く筈の単語なのに、何故か凄く知っているような気がする言葉。
「ゲッターとはなんだ……誰が私を此処に呼んだんだ? あんた達か?」
「ゲッターとはなんだ…か。その質問は野暮ってもんだろう」
「なに?」
「お前はもう既に、その答えを知っている。今はただ忘れているだけだ」
意味が分からない。聡明すぎるが故に、聞けば聞くほど頭が混乱していく。
「そして、お前を呼んだのは……『アレ』だ」
「あれ…? な…っ!?」
隼人が遠くを指差すと、そこには先程まで影も形も存在していなかった超巨大な物体があった。
赤と白と黄の鮮やかな三色の恐ろしく大きな顔を持つ戦艦。
よく見てみると、その三つの戦艦の傍には同じぐらいのサイズの青く光る巨大な球体がある。
「な…なんなんだ…あの巨大すぎる戦艦は…!? しかも、あそこにあるのは地球…? まさかあれらは全て…地球と同じサイズだというのかっ!?」
「そうだ。あれこそがゲッターの行きつく先であり、究極なる姿…」
徐々に三つの戦艦が疾風達に迫り、その超絶的過ぎる迫力に腰を抜かしそうになる。
「ゲッターエンペラー」
「エンペラー……皇帝……」
確かにそれは『皇帝』と呼ばれても不思議じゃない姿だった。
全てを圧倒し、全てを滅する。
姿形からして、それだけの力を有していると思わせる何かがあったから。
「今回、お前は半ば事故でここに呼ばれたようなものだ」
「本来ならば、お前がここに来るのはもっと先の事になる筈だった」
「だが、デュランダルとの接触によってお前の意識が肉体から離れかけている所に目を付けたエンペラーが…」
「フライング気味にお前を此処へと呼び出したというわけだ」
怒っていいのか、呆れていいのか。
事態が急転直下し過ぎて、頭の中がごちゃごちゃしてきた。
「これもまたゲッターの気紛れ…というやつなのかもしれんが…」
「それでも、お前はこうしてここに来た。経緯はどうあれ、これもまた一つの運命なのだろう」
「運命…だと…?」
疾風は運命論者が嫌いだった。
まるで最初から全てが決められているような物言いには反吐が出る。
奏が死んだのも、あのコンサートで大勢の人間達が死んだのも、翼がその事で苦しんだのも、響が傷ついたのも、自分の身体が欠損してしまった事も、全て『運命』の一言で片付けようというのか。ふざけるな。
自分の運命は自分で決めるし、自分の手で切り開く。
今までだってそうしてきたつもりだし、今後だってそれは変わらない。
「お前の『仲間』達は、もう既にここに辿り着いている」
「仲間…?」
疾風にとっての仲間と言えば、すぐに思い出すのは翼と響、それから二課の面々だ。
だが、隼人が言っているのは彼ら、彼女らの事ではないだろう。
「まさか…あの時の『声』の主たちか…?」
「察しが良いな。その通りだ」
やっぱりか。
そう思いながら、疾風は隼人の話に耳を傾ける。
「お前と共に運命を分かつ者達。近い内、必ず出会う事になるだろう。あいつ等もそれを望んでいる」
「そうかい」
何をどう言われても、そう簡単には受け入れないだろう。
現状、二課の皆と翼や響、未来達以上に大切な者達なんて他にはないから。
「じきにお前も『全て』を思い出すことになるだろうさ」
「その時、初めてお前も『ゲッター』の意味を知ることになる」
「ここで教えてくれないのか?」
「他者から教えて貰っても意味が無い。『自覚』する事にこそ意味がある」
「ワケが分からん…」
「フッ…今はそれでいい。最初は俺もそうだったしな」
「うきゅ……」
優しく微笑みながら疾風の頭を乱暴に撫でる隼人。
普段ならばすぐに手を払うところだが、何故か嫌な気がしなかった。
「もうそろそろ戻れ。お前の仲間達も心配している」
「翼たちが……」
自分が皆を心配させている。
それを考えるだけで胸が苦しくなった。
「神々の意志は人類の進化を認めず、ゲッターの存在そのものを否定するだろう」
「だが、『ゲッターに選ばれた申し子』の一人であるならば、必ずや神の意志すらも屈服させると信じている」
「簡単に言うなよな…」
だが、そうしなくては現実に戻っても死ぬだけだ。
ならば、無茶だろうがなんだろうがやるしかない。
「それと、最後にもう一つだけ」
「なんだ…」
「近い内、エンペラーから派遣された俺の『教え子』がそっちの世界へと行き、お前に会いに来るやもしれん」
「アンタの教え子…だって?」
「そうだ。その時こそ、お前の運命が本当の意味で動き出す時だ」
急に意識が朦朧とし始め、眠たくなってくる。
「そして…これだけは忘れるな! シンフォギアもゲッターもデュランダルも、所詮は道具に過ぎない! 使う者次第で簡単に善にも悪にもなる! 持っている力をどう使うのか…それを決めるのはお前だ! 神疾風っ!!」
「決めるのは…私……」
「気を付けろよ…。もう既に『虚空からの破壊者』がお前の世界に潜り込んでいる…」
目を瞑り、後ろに倒れるような浮遊感に襲われる。
意識が消える瞬間に聞いたのは、隼人のまるで父から娘に捧げるかのようなセリフだった。
「頼んだぞ……『神隼人の魂の継承者』よ…」
もっと話を伸ばそうかと思いましたが、意外とどうにかなった感じ。
隼人が言っていた『派遣される教え子』とは誰なのか?
主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?
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響
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翼
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クリス
-
未来
-
マリア
-
切歌
-
調
-
まさかの弦十郎
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まさかまさかの慎次