本当はもっと早くに出したかったのですが、安易に出してしまってはいけないような気がしたので。
無意識空間から戻ってくると、自分の身体が謎の光の柱に閉じ込められていた。
内部には凄まじい程のエネルギーの奔流があり、全身は愚か腕一つすら動かせない。
そして、腹部にはまだデュランダルが突き刺さったままになっている。
「ぐ…おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
体の芯にまで届くような圧迫感により、本当に全ての臓器が掻き回されているような感覚に陥る。
こんな状況でなければ、確実に嘔吐していいた事だろう。
(みん…な…は……!?)
目だけを動かして仲間達の様子を確かめたかったが、光の柱によって視界は全て奪われていて何も見えない。
ならば、今の自分に出来る事…やるべき事はたった一つしかない。
「こ…んのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
左手のクローアームをだけを解除して左手を使えるようにし、それを必死に動かしてから腹に刺さっているデュランダルの柄を握りしめる。
「はぁ…はぁ…はぁ…! 思うように力が入らない…だが…それ…でもぉぉっ!」
全身が怠く、気を抜けばすぐに意識が飛びそうになっているが、それでも諦めずに必死にデュランダルを引き抜こうと試みる。
しかし、かなり深々と刺さっているのか、全く以てビクともしない。
(恐らく…私の周囲を覆い尽くしているのは『ゲッターエネルギー』と『デュランダル』から発せられているエネルギーが融合と反発を繰り返す事で発生しているものだろう…。今はまだシンフォギアを纏っているから辛うじてなんとかなっているが…私の意識が途切れてギアが解除されたら…その瞬間にお陀仏確定だ…! そうなる前に…なんとしても…こいつを…!)
残された時間…というよりは、残された体力はもう少ない。
ここで踏ん張らないと全てが終わりだ。
(万事休す…か…)
瞼が重くなり、閉じられようとした…その時だった。
『なに諦めようとしてんだよ。らしくねぇぞ』
『そやでー。最後まで希望を捨てたらあかんよー』
それは幻影か。幻か。
赤いギアと黄色いギアを纏った二人の少女が目の前に現れた。
彼女達の身体は半透明になっていて、なんとか輪郭が分かる程度で顔はハッキリとは見えない。
だが、二人の声を聞き、姿を見た途端に諦めかけていた疾風の心に再び生気が戻り、不思議と闇に沈みそうになっていた意識も戻ってきた。
『俺達も力を貸す。だから!』
『絶対に助けるで! 疾風やん!』
「あぁ……頼む…!」
どうしてだろう。
姿を見るのは本当にこれが初めてなのに、懐かしくて懐かしくて仕方がない。
涙が溢れそうで、視界が滲んでよく見えない。
『こんの鈍ら野郎が…! 勝手に人のダチ公の腹にブッ刺さってんじゃねぇっ!!』
『神の意志かなんか知らへんけど…ウチらの大切な友達を傷つけるなんて生意気なんじゃゴラァッ!!』
二人も一緒にデュランダルの柄を持ち、一緒に引き抜こうと試みる。
一人よりも二人。二人よりも三人。
まるで嘗ての戦国武将『毛利元就』が言っていた『三本の矢』の如く、三人の少女達は力を合わせて神の意志宿る剣を引く抜く!
「『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!』』」
パキン
ゆっくりと、だが確実に虹色の刀身が疾風の身体から離れていく。
血飛沫が出て壮絶な痛みが走るが、そんな事なんて気にならなくなる程の喜びと悲しみがあった。
『へへ…やったな!』
『ウチらが力を合わせれば、こんなもんや!』
「あぁ…そうだな…」
力無く微笑を浮かべる疾風。
目の前から消えゆく二人に向かって、自然と腕を伸ばしていた。
『近い内…また必ず会える! その時までじゃあなっ!』
『ほななー! ちゃーんと養生するんやでー!』
叫びそうになる衝動を抑えるように歯を食いしばり、無意識のうちに知らない筈の彼女達の名前を口ずさんでいた。
「竜……シルビィ……私は……!」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
突如として光の柱が消え、その中から疾風の姿が現れる。
突き刺さっていた筈のデュランダルはいつの間にか抜かれていて、当然のようにギアは強制解除されており、刺さっていた場所である腹部からは夥しい程の出血があった。
「疾風くん!!!」
その場に倒れそうになった疾風の身体をいち早く支えたのは、翼でもなく響でもなく了子でもなく…上空にいるヘリから飛び降りてきた弦十郎だった。
「弦…十郎…さん…?」
「あぁ…俺だ! しっかりするんだ疾風くん!!」
体を抱えられながら目を動かしデュランダルの所在を確認する。
ちゃんと体から抜かれていたのを見ると、ホッと安心したように笑みを浮かべた。
「デュランダル…汚してしまった…な…」
「そんな事は今はどうでもいい! それよりも、すぐに病院へと連れて行く!」
「あぁ…頼む…よ…。まだ…こんな所…で死ぬつもり…は無い…からな…。それに……」
何かに安堵したかのように、疾風は静かに目を閉じた。
「…少しでも気を抜こうとすると…すぐに意識が無くなりそうになる…」
「疾風くん!!」
「疾風っ!!」
「疾風ちゃんっ!! 目を開けてっ!!」
弦十郎だけでなく、翼や響からも叫ばれて疲れた顔でほんの少しだけ目を開ける。
その顔は蒼白となっていて、誰が見てもヤバい状態なのは一目瞭然だ。
「そんなに耳元で大声を出すなよ…眠れないじゃないか……」
「今だけは眠ってはダメだ! 寝たら終わるぞ!!」
「はは…私は雪山の遭難者かよ……翼……」
唇を噛み締めながら立ち上がり、弦十郎は素早く指示を出す。
「…了子くんは目的通り、デュランダルを届けてくれ…」
「了解よ…」
「翼と響くんは了子くんの護衛を頼む」
「叔父様は…」
「俺は疾風くんを病院へを運ぶ。事は一刻を争う」
本当は翼と響も、弦十郎と一緒に病院についていきたかった。
だが、そんな事は疾風は望まない。
彼女ならば、自分の事よりも任務を優先するはずだから。
今の自分達に出来る事は、彼女の分までしっかりと任務をこなすことだった。
「司令!!」
弦十郎が両足に力を込めてからの全力ダッシュをしようとした時、二課の車がドリフトをしながら突っ込んできた。
こんな芸当が出来るのは弦十郎が知る限りでは一人しかいない。
「慎次かっ!?」
「はい! モニターで見ていて急いで駆け付けました! 司令、早く乗ってください! 一番近い病院まで飛ばします!!」
「頼むぞ!!」
自分の服が血塗れになる事も構わず、優しく疾風の身体を抱きかかえながら後部座席へと滑り込む。
二人が乗った事を確認してから、慎次は未だに交通規制が成されているのをいい事にアクセル全開で発進した。
「…疾風ちゃんの事は二人に任せて、私達も急ぎましょう」
「「…はい」」
疾風の血に染まったデュランダルを持ち上げながら、ふと了子はある事に気が付く。
先程までいたネフシュタンの少女の姿が消えていた。
今の彼女に知っては些末事なので、今は気付かない振りをして任務を継続することに。
そんな彼女も、手に持っているデュランダルの非常に小さな変化には気が付かなかったようだが。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
一部始終を目撃していたコーウェンとスティンガー、安部清明の三人は満足したように揃って不気味な笑みを浮かべていた。
「まさか、デュランダルがああも直接的な方法でゲッターを葬りに来るとは」
「け…剣は所詮、剣でしかなかったってことだね。そうでしょ、コーウェン君」
「そうなるな。しかもまだ神疾風は死んでいない。否…『皇帝』がそれを許さない。例え、因果律を歪める結果になったとしても必ずや彼女の命を救おうとするだろう」
二人の会話を聞きながら、清明は無言で運ばれていく疾風の事を見ていた。
その表情からは、彼が何を考えているのか窺い知れない。
「面白い…」
「ほぅ?」
「あの小娘が『智将』の魂を継承する者か。成る程な…あれは真正面からだけでなく、搦め手を使っても容易に看破してくるタイプだ。余り敵に回したくはない奴だな」
「そ…そうだね。でも、こっちだって負けてはないよ。どうでしょ、コーウェンくん」
「その通りだ。我等は既に幾つもの『種子』を蒔いている。後は『萌芽』の時を待つだけ。そして……」
二課のメンバーがいる場所とは別の方向を見つめ、コーウェンとスティンガーが並んで歩きだした。
「近くで『ゲッター線』を浴びた事で、種子の一つが芽吹こうとしている」
「た…楽しみだね! 楽しみだね!」
「我々の計画は完璧だ。『早乙女』とは違う」
去りゆく二人とは別に、清明は未だに二課のメンバー…というよりは了子の事を見つめていた。
「…哀れな女狐よな」
・・・・・
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・・・
・・
・
全員が疾風へと意識が向いている隙に、クリスは体を引きづりながら物陰へと倒れるように隠れた。
別に体にダメージを受けた訳じゃない。それなのに、全身が怠くて仕方がない。
「なんなんだよ……なんなんだよチクショウ…!」
纏っているネフシュタンに付着している疾風の返り血。
自分は守られた。命を守られた。
敵である少女に、あろうことか『命の借り』が出来てしまった。
「うっ…!」
疾風がデュランダルに刺された瞬間の事がフラッシュバックする。
目と鼻の先で疾風の身体から血飛沫が上がり、それでもまだクリスの事を守ろうとした。
鼻をつんざくような血の匂いと、強烈なまでの罪悪感によって胃の中の物が込み上げてきそうになる。
「なんで…どうしてだよ…くそ…!」
吐き気と一緒に腹痛までもが襲ってきた。
これは普通の腹痛じゃない。
まるで腹の中を別の生き物に掻き回されているかのような激痛。
やがて、クリスは痛みと気持ち悪さで歩けなくなって倒れてしまった。
「うぅ……げぇぇ~…!」
遂に我慢出来ずに吐いてしまった。
だが、彼女の胃の中から出てきたのは吐瀉物ではなく、真っ黒な液体だった。
「はぁ…はぁ…はぁ…! な…なんだよこれ……ひぃっ!?」
真っ黒な液体がボコボコとなったかと思ったら、幾つもの目が出現してクリスの事を見た。
その光景に、思わず彼女は顔を引き攣らせながら尻餅をつく。
「おやおや…大丈夫かい? クリスくん」
「き…気分が悪そうだね」
「コ…コーウェン博士にスティンガー博士…どうしてここに…? いや、それよりも!」
この二人なら何か知っているかもしれない。
そんな藁にも縋るような気持ちで二人のズボンにしがみついた。
「体が変なんだよぉ…。気持ち悪いし…変な物を吐き出すし…腹が痛いし…」
「そうかそうか」
「し…心配はいらないよ、クリスくん」
「え……?」
彼女と視線を合わせるように膝を付き、そっとその頭を撫でる。
「至近距離でゲッター線を浴びた事で、君の胎内へと埋め込んだ『種子』が活性化して芽吹いただけだから」
「種子…? 埋め込んだって…まさか、アンタ等の仕業なのかよッ!?」
「「グフフフ…」」
ここでようやく気が付く。
これこそが彼らの本性なのだと。
「ゲッター線ってなんだよ! アタシに何をしたんだよッ!?」
「それは……」
「すぐに分かる」
二人とは別の気配が背後からしたので振り返ると、そこには合流した清明が立っていた。
クリスにとっては完全に見知らぬ相手なので、その存在を警戒するのは当然だった。
「お前が身に纏っている『完全聖遺物』とやらのお蔭で、辛うじてまだ人間としての意識は保っているようだな」
「だ…誰だよお前…何を言ってんだ…」
もう本当に訳が分からない。
クリスにはもう、何を信じたらいいのかさえ分からなくなっている。
「だが、それもまた『想定』の内だ」
「そ…そうでなくては『贄』にはならないからね」
「心配しなくても大丈夫だよ、クリスくん。今は痛くて苦しいかもしれないが、時期に気持ち良くなるから」
「チクショウ…チクショウ…! どいつもこいつも…やっぱり…!」
必死に意識を保って毒づくが、腹痛が更に激しくなって地面の上をのた打ち回る。
常人ならばすでに気絶をしていてもおかしくないが、生命の言った通り『ネフシュタンの鎧』がクリスの身体を半端に護っているせいで気絶する事すらも許されない。
「ががああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
ジタバタと苦しみもがく少女の姿を、三人は黙って見つめていた。
クリス、本気でヤバいことに。
果たしてどうなるのでしょうか。
主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?
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響
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翼
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クリス
-
未来
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マリア
-
切歌
-
調
-
まさかの弦十郎
-
まさかまさかの慎次