もう一振りの天羽々斬   作:とんこつラーメン

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来週から本格的に梅雨突入の予感。

雨の日は自然と気分が落ちるからイヤですねー。







歪み

 デュランダル移送作戦において、そのデュランダル自体によって負傷してしまうと言う誰もが想像すらしていなかったことが起きてしまった疾風。

 彼女はすぐに政府直轄の病院へと搬送され、すぐに緊急入院をする事になった。

 

 それから数日後…。

 

「疾風ちゃん…大丈夫かなぁ…」

「あの時も辛うじて意識はあった。それに、疾風は普段から鍛えている。それこそ、あの規格外の強さを誇る叔父様と互角に戦えるぐらいに。だから、きっと大丈夫だ」

 

 病院の廊下を一緒に歩く響と翼。

 彼女達はお互いに時間を作って疾風の見舞いに訪れていた。

 病室の場所は予め、慎次から聞かされていたので問題は無い。

 彼女達の他にも、弦十郎を初めとした二課の者達も同じように見舞いに訪れているらしい。

 それだけ、彼女の存在がこの短期間の間に二課という組織にとって大きくなっている証拠だった。

 

「そうですよね。疾風ちゃんならきっと大丈夫ですよね。あ、ここかな?」

「らしいわね。緒川さんから聞いた病室の番号と一緒だし」

 

 ドアの前の札には『神疾風』と書かれてあった。

 一人分の名前しかないということは、恐らくは個人用の病室なのだろう。

 彼女が装者であることが理由に違いない。

 

 ちゃんとノックをしてから少しだけ待つと、室内から返事が聞こえてきた。

 

「どうぞー」

「「お邪魔します」」

 

 ドアを開けて中にはいると、そこには病院服を着ていつもと同じ冷静な顔をしている疾風がベットで寝ている…と言っても、半身を起こしてはいるが。

 

「今日はお前達か」

「今日って事は、昨日も誰か来たの?」

「あぁ。昨日は弦十郎さんと了子さんが一緒に来たよ。弦十郎さんはともかく、了子さんにもメチャクチャ心配された。意外な一面を見た気がする」

「あの二人も…」

 

 両者とも、普段からとても忙しい者達なのだが、それでも見舞いに来てくれたと言うだけで疾風がどれだけ大切にされているかよく分かる。

 本人は全く自覚が無いようだが。

 

「私が入院した日にはおじいちゃんが血相変えて飛び込んできたぐらいだ。モニター越しには偉そうな空気を出してたのに、実際に会ったらどこにでもいる普通のお爺ちゃんだったわ。皮肉なもんだ…こんな形で直に会う事になるなんてさ」

「あの神防衛大臣が…。あの作戦の直後ともなれば相当に忙しい筈だろうに…」

「疾風ちゃんは大切な孫娘だもん。そんなの関係無しにやって来ちゃったんだろうね」

 

 お互いにとって血の繋がった最後の家族。

 その孫娘が腹部を刺されて倒れたと聞かされれば、大臣としての職務なんて迷わず放棄してやって来るのが神大造という男だった。

 

「…かもな。全く…私には勿体無いぐらいに孫想いなお爺ちゃんだよ。いつか、見舞いに来てくれた皆にこの礼をしなくちゃな」

「そんな事なんて気にせずに、今はとにかく体を休める事だけを考えろ。唯でさえ疾風は普段から頑張り過ぎなんだ。休める時にちゃんと休んだ方が良い」

「その台詞、そのままお返しするよ翼」

 

 二課では殆ど参謀のような立ち位置になりつつある疾風は、実質的になナンバー2のような扱いになっていた。

 実際、弦十郎が別件で不在の時は疾風に一時的な指揮権が与えられることがあるぐらいだ

 

「ところで疾風ちゃん…」

「ん? なんだ?」

「「それ…なに?」」

 

 響たちと話をしながらも、彼女の目線は二人と目の前の本とを行き来していた。

 入院中とはいえ、読書ぐらいは別に構わないのだが、問題は本の表紙に書かれてある文字だった。

 

「えっと…なんて書いてあるの?」

「簡単に言えば、過去に了子さんが出版した聖遺物に関する参考書だよ」

「えっ!? 了子さんって本とか出してたのッ!?」

「立花…櫻井女史はあれでも立派に博士号を持っている人物だぞ? 本ぐらいはこれまでに何冊も出している」

「知らなかった……」

「お前、漫画とかしか読まなさそうだもんな」

「う……」

「図星かよ…。せめて『ラノベも読んでる』ぐらいは言って欲しかった」

「文字が多い本は読んでるだけで眠たくなっちゃって…あはは…」

「「…………」」

 

 これで本当に学業は大丈夫なんだろうか。

 よくリディアンに入学出来たなと別の意味で感心してしまった。

 未来の普段の苦労が良く分かるような気持ちになった。

 

「…了子さんが『暇そうにしてそうだから』って言って持って来てくれたんだよ。実際、いい暇潰しになってる」

「疾風ちゃんは本当に凄いんだねー…」

「いや…立花……」

 

 その意見には同感ではあるが、お前の場合は勉強のしなさすぎもある。

 そんな風に言いたかった翼ではあったが、それは人として言ってはいけない事だったので、そのまま飲み込んだという。

 

「そういえば、作戦のこと聞いたよ。ちゃんと成功したみたいだな」

「あぁ。疾風の指揮と、身を挺した行動のお蔭で無事にデュランダルの移送が出来た」

「それはなにより。…あの女はどうした?」

「ネフシュタンの少女だな」

「気が付いた時には、もうどこにもいなかったんだ…」

「そっか……」

 

 経緯はどうあれ、守るような形になってしまったのは事実。

 だからなのか、不思議と気になってしまった。

 

「あー…早く退院して美味い飯が食いたいなー」

「病院食じゃダメなの?」

「別に不味くは無いんだが…栄養主体なだけあって味が薄いんだよ。あれじゃあ全く食った気になんてなれねぇよ」

 

 響もかつて、例のコンサート事件の後に少しだけ入院をしたことはあったが、あの時は数日で退院したので病院食なんて食べてはいなかった。

 なので、疾風の愚痴にはイマイチ共感がし難い。

 

「粉物が食いたい。たこ焼きとか、お好み焼きとか」

「お好み焼き? それだったら、私や未来がよく通ってるお店があるよ!」

「マジで? お前ら、常連の店とかあったんだ…」

 

 今時の女子高生だから常連の店の一つや二つぐらいあっても不思議じゃないが、それがまさかのお好み焼き。

 響らしいといえば響らしかった。

 

「『ふらわー』ってお店なんだ。退院したら一緒に行こうよ! 未来も誘って!」

「そうだな…退院祝いがお好み焼きってのも悪くないかもな…」

「翼さんも一緒に行きませんか?」

「わ…私も?」

 

 まさか、自分に話が降られると思わなかった翼は、思わぬ不意打ちに変な声を出してしまった。

 

「そ…そうだな。流星群の時はスケジュールの都合で一緒に行けなかったしな…。疾風の退院祝いとなれば私も行かない訳にはいくまい」

「じゃあ……」

「まずは緒川さんと相談してみる。出来るだけ時間を設けて貰えるように」

「やったぁっ!」

 

 こうして、まだ完治もしていないにも拘らず退院後の予定が決まってしまった。

 彼女達と一緒にいると、ゆっくりする暇すらない。

 だが…最近は『だからこそ良い』のだと思うようになった疾風であった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 とある山奥にある湖の近くにある西洋風の屋敷。

 その大広間にて、白衣姿のフィーネが『彼ら』と向かい合っていた。

 

「あなた達…クリスに一体何をしたの?」

「何…とは?」

「とぼけるな!!」

 

 白衣のポケットから拳銃を取り出してから、躊躇なく引き金を引く。

 それはずっと不気味な笑みを浮かべているコーウェンの顔の真横を通り過ぎるが、彼は全く表情を変えない。

 

「どうやら、彼女は何か誤解をしているようだよスティンガー君」

「そ…そうみたいだねコーウェン君。別に僕達はフィーネに不利益が出るような事は何一つとしてしていないのにね」

「全くだ。寧ろ、我々がしたことが君の『最終目的』に多大な貢献をしていると思うのだがね。君もそう思わないかい?」

 

 コーウェンが顔を横に向けると、その視線の先にあるドアから安部清明とクリスが一緒に出てきた。

 清明は無表情だが、クリスの方は今までの仏頂面が嘘のように、暗い笑みを浮かべている。

 

「その通りだよコーウェン。どうやら、この女狐は理解していないらしい。『目的』を成す為に『手段』を選んでいては意味が無いということが」

「そうだ…その男もそうだ! 貴様は何者だ!!」

「おっと。まだ自己紹介をしていなかったか」

 

 コーウェンとスティンガーの前に立ち、まるで彼らを庇うかのようにしながら静かに己の事を語り出す。

 

お初にお目にかかる(・・・・・・・・・)。私の名は『安部清明』。彼らと志を同じくする同志…と思ってくれていい。無論、君にも協力しよう…フィーネとやら」

「安部清明…だと…? まさか、あの伝説的な陰陽師を現代に復活させたとでも言うつもり…?」

「さぁ…どうだろうな?」

「くっ…!」

 

 コーウェン達とは別の意味で全く腹の底が読めない。

 清明はフィーネが苦手とするタイプだった。

 

「フィーネェ……博士たちを疑うのはよしてくれよぉ……」

「クリス…あなた一体どうしたの…?」

「キヒヒ……」

 

 少し前まで『世界平和』を餌にして忠実な操り人形としていた少女ではない。

 全身からコーウェン達と全く同じような怪しい雰囲気を醸し出している。

 まるで、彼らの魂の欠片が憑依でもしてしまったかのように。

 

「コーウェン博士ぇ…スティンガー博士ぇ…本当にありがとなぁ…。お蔭で今はぁ…最っ高の気分だぁ…!」

「ク…クリス…?」

 

 嘗ては見捨てられた子犬のように怯えていたその目には、もう何も映ってはいない。

 あるのは異常なまでの狂気だけ。

 フィーネには一瞬で分かった。

 もう彼女は、昨日までのクリスではないと。

 完全に『別の存在』と化していると。

 

「私さぁ…全然知らなかったよ……」

「な…何を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『進化(・・)がこんなにも気持ちが良い(・・・・・・・・・・・・)ことだったなんてさぁっ(・・・・・・・・・・・)!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!??」

 

 突如として両手を真上に付き上げながら叫びだすクリス。

 明らかに異常とも言える行動に、流石のフィーネも驚きを隠せなかった。

 

「はぁぁ…この気持ち良さをフィーネにも知って欲しいよ…。分かるか? 他人の遺伝子が自分の体に逆流してくるんだぜ? こんなにも気持ちがいいことないよ…あぁ…何でもっと早く『目覚め』なかったんだろう…」

 

 もうクリスは人間じゃない。

 人間の形をした別の『ナニか』に変貌してしまった。

 確実にコーウェンとスティンガーの仕業だろうが、彼らが一体何をしたかまでは分からない。

 改造手術を受けたような痕跡はないし、催眠術や洗脳の類でもないような気がする。

 もっと悍ましく醜悪な『何か』をされてしまった。

 そうとしか考えられない。

 

「言っておくが、今更『やめよう』だなんて言いださないでおくれよ?」

「こ…これは元はと言えば、君が始めた事なんだからね?」

「我々は、それを手助けをしたに過ぎない。余りにも君の行動が遅すぎるのを心配してな」

「…余計なお世話よ」

 

 この程度の『イレギュラー』で止まる訳にはいかない。

 とっくの昔に、自分は止まれない所まで来ている。

 ここまで来たらもう、何があってもとことんまで突き進むしかない。

 

「私の『悲願』は…『決意』は…この程度の事態では揺るぎはしない…!」

「それでいい」

「そ…それでこそフィーネ君だよ。クリス君もそう思うよね?」

「あぁ…そうだなぁ…。イヒヒ……」

 

 歪な笑い声を上げるクリスを見ながら、フィーネは自分達のイニシアチブが完全に彼らに奪われたことを実感した。

 今はまだ『準備』が整っていないので下手な動きは出来ないが、それらが完了したらすぐにでもコーウェン達を始末すると心に誓う。

 

 その悠長な考えが、どれだけ致命的な事なのかも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クリスちゃん完堕ち。

でも、まだゲッターがいる!

希望はある!!

主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?

  • クリス
  • 未来
  • マリア
  • 切歌
  • 調
  • まさかの弦十郎
  • まさかまさかの慎次
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