主人公と他の装者達との百合百合な日常をお送りしたいのですが、どうなることやら……。
疾風の体の検査が終了し、了子と二人である場所へと向かう事に。
「飯を奢るって言ってたから何処かと思えば…食堂かよ」
「いいじゃないの。ここの食事もなかなかのもんよ?」
「みたいだな。流石は政府の組織。食事一つにも無駄に力を入れていらっしゃる」
二人がいる場所は、二課の本部内にある食堂。
二課に所属している者たち全員が食事をする場所とあって、かなりの広さを誇っている。
メニューもかなり豊富で、和洋中問わずに見事に揃えられていた。
因みに、疾風が食べているのはミートスパゲッティーで、了子はその隣でグラタンを頬張っていた。
「…器用なのね。左手…しかも、たった三本の指でそこまでフォークを使いこなすなんて」
「練習したんだよ。流石に箸は無理だけど、他のだったらなんとかなるしな」
「疾風ちゃんって左利き?」
「いや、右利き。だから、必死に練習した。かなり苦労はしたけど、一年ぐらいでなんとかなるようにはなった」
「普通…たった一年足らずでどうにかなるような事じゃないんだけどね」
そう呟くが、了子には分かっていた。
どうにかなる…ではなくて、どうにかしなくてはいけなかった。
欠損した身体でも生きていくために。
そんな話をしている横で、ある少女が申し訳なさそうにそっと手を上げる。
「あのぉ~…本当に私も御馳走になって良かったんですか?」
「いいのいいの。どうせ、ここの食事は基本的に二課の職員なら皆揃ってタダなんだから」
「そ…そうなんですか?」
「そうなのよ。だから、遠慮する必要なんてないわ」
「分かりました!」
萎縮した表情から一変して元気になったのは、ついさっき知り合ったばかりの立花響。
元気ハツラツを体現したような少女で、良くも悪くも疾風とは対照的な存在だった。
そんな彼女は、年頃の少女らしく少なめの食事を…なんてことは無く、ふわとろ卵の親子丼を元気に食べていた。
(……まるで弦十郎さんみたいだな)
前にファミレスで一緒に食事をした際に見た、カツ丼を食べる弦十郎と姿が被る。
どうも、彼女の周囲には丼ものを好む人物が多いような気がする。
「ところでさ、響はどうしてここに連れてこられたんだ? さっきは他の話を優先る余り、其処ら辺を余り聞けてなかったからさ」
「そこは私が説明をしてあげるわ。きっと、響ちゃんもまだ正確には現状を把握しきれてないと思うし」
「ま…いいけど」
そこから始まる了子の説明タイム。
疾風がノイズに襲われていた時と同時刻に、別の場所で響もノイズに襲われていた。
しかも、その時の彼女の傍には小さな女の子も一緒だった。
彼女を守る為に必死にノイズから逃げ惑っている最中に、いきなり響が聖詠を謳ってからシンフォギアが展開。
その反応を見てから翼が何かに駆られるかのように勝手に出撃し、そのまま響きを守るようにノイズと交戦、撃破した。
それから、少女を二課の隊員に預けた後に響だけはここに手錠を掛けられてから連行される羽目になった。
「成る程ね…そりゃまた随分と難儀な体験をしたもんだ」
「うん…あの時は本当に無我夢中だったんだ。翼さんが来てくれなかったら、どうなっていたか分らないよ……」
「素人の嬢ちゃんにいきなり戦えって言う方が酷ってもんか。そればっかりはしゃーないな」
口に着いたソースをナプキンで拭き、水を飲みながら疾風がしみじみと呟く。
同情する訳でもなく、かといって慰める訳でもない。
どこまでもノーマルな反応だった。
「それが普通なのよ。なのに、疾風ちゃんったら初めてのギア発動後にも拘らず、いきなりアームドギアは展開するわ、群がるノイズを片っ端から倒していくわ…どう考えてもおかしすぎるわよ?」
「私の場合は、単純に喧嘩慣れしてただけだよ」
「どう考えても、それだけじゃ片付けられないんだけど……」
幾ら喧嘩慣れをしていたとしても、運動神経や反射神経が明らかに常人のソレを軽く凌駕していた。
更に、実際に彼女の体を検査してから了子はある事を確信していた。
神疾風は、間違いなく弦十郎や慎次と同種の人間であると。
「疾風ちゃんはどうして連れてこられたの? 司令さんの背中でぐっすりと寝てたけど……」
「私も似たようなもんだよ。さっきも説明したけど、図書館で勉強をしていて、休憩がてらに昼食でも食べようと外に出たらノイズに襲われて、必死に逃げていたら行き止まりに追い詰められてな…どうせ死ぬならと思って少しだけ自棄になって前に出ようとしたら、無意識のうちに私も聖詠を口ずさんでいて、ギアを身に纏ってた」
「そこからが凄かったのよね~。次々と襲い掛かるノイズをバッタバッタと薙ぎ倒していくんだから。あれってどう考えても素人の動きじゃなかったわ」
「響じゃないが、あの時は私も興奮してたからなぁ…。本能的に体を動かしてとしか言いようがないんだよな」
フォークをクルクルと回しながら、あの時の事を冷静に思い出す。
ドリルという初めて扱う武器を、まるで己の手足のように扱って見せた。
あの感覚は一体何だったのだろうか?
自分自身でも理解が出来ない程に、ドリルの扱いが熟達していた。
どんな攻撃が出来るのか。どう扱えば最大の効力を発揮出来るのか。
あの時の疾風は、その全てを完璧に把握していた。
誰かから教えられたのではなく、幾多の死闘の末に体で覚えていったかのように。
「…なぁ…響。今から、かなりヘビーな話をするが…いいか?」
「ヘビーな話? 別にいいよ?」
一体何を聞くのだろう? それが分からない響は何も考えず呑気に答えた。
「もしかしてとは思うが……響もあの時…二年前のツヴァイウィングのコンサート会場にいたのか?」
「えっ!?」
まさかの話に、思わず響の動きが止まり、大きく目を見開いた状態で疾風の事を見た。
彼女の顔も、今までの余裕のある感じから一変し、苦しそうな顔になっていた。
「た…確かに…あの時、私はあそこにいたけど…まさか疾風ちゃんも…?」
「あぁ…あそこにいた。で、あの時の事件で…私は右腕と左手の指二本を失ったんだ」
「そう…なんだ……」
響にとって、あの時の事は辛い記憶しかない。
生まれて初めての生き地獄というものを経験し、一体何度自殺をしようと思ったから分からない。
だが、その度に命の恩人である奏の遺言を思い出して頑張ってきた。
「…詳しく話さなくていい。当時の話については私もよく知ってるからな」
「そっか……」
「もっとも、私の場合は入院している間に事態は収束していったけどな」
「弦十郎君から聞いた話だと、リハビリ期間も含めて一年近く入院してたのよね?」
「まぁな。余りに慣れない環境だったから、日に日に体が鈍っていくようだったぜ。もう二度と入院なんてしたくはないな」
二人の話に了子も割り込んでくる。
なんだか話が暗くなり始めたので、了子なりに気を使ったのだ。
「私と響…あの時、あのコンサートに来ていた二人が揃って突発的にシンフォギアに覚醒した。これは決して偶然じゃないだろう。私と響にはそれとは別の共通点があるんじゃないのか?」
「私と疾風ちゃんの共通点?」
「例えば……体の中に砕けたシンフォギアの破片が突き刺さって埋まっている…とかな」
「それって…まさか疾風ちゃんも…?」
「ってことは、やっぱり響もか」
「うん…あの時、奏さんの持ってた槍みたいのが砕けて、それで私の胸に……」
「刺さった…か。しかも胸って…場所まで一緒なのかよ」
いつの間に食べ終えたのか、空になった皿の上にフォークを置き、口を拭いてから自分の胸に手を置いた。
「私の身体…正確には胸の所に謎の破片が深く埋まっているらしい。手術でも取り出すのは無理なんだとさ。恐らく、私に突き刺さっているのは風鳴翼のギアの破片なんだろうな。うろ覚えではあるが、あの時の位置や角度を考えると、それが一番妥当な答えだからな」
軽く服の首元を広げると、胸の中央部分には癒える気配のない深い傷跡が残っていた。
それを見た響は、一気に表情を暗くしてしまう。
「私のと…同じだ」
「そうか。ったく…お揃いの傷跡とか洒落になってないな」
「うーん…私は疾風ちゃんとお揃いの傷跡って素敵な気がするけどな~」
「イヤイヤイヤ…素敵な傷跡って何だ。おい了子さんよ。私にも分かるように説明してくれ」
「そこで私に振るのっ!?」
まさかの不意打ちにビクつく了子。
彼女にしては珍しい反応だ。
「この後は普通に帰ってもいいのか?」
「そうね。流石に今日からいきなりってのは酷だと思うし、取り敢えずの所は帰宅しても構わないと思うわ」
「それを聞いて安心したよ。さっき思い切り寝させて貰ったとはいえ、それでもまだ疲労は残ってるからな。今日は早く寝て休みたい」
コップに残った水を飲み干しながら、疾風は安堵の表情を浮かべる。
が、ここで了子はある事が気になったので彼女に尋ねてみた。
「ところで、疾風ちゃんはどこで寝泊まりしているの? アナタは確か……」
「心配しなくても、流石に路上で寝たりはしてないさ。基本的には漫画喫茶やカプセルホテルなんかで寝てるな。特に最近の漫画喫茶は色々と充実してるから安心して寝てられる」
漫画喫茶にカプセルホテル。
どっちも響には余り関わりの少ない店だ。
それを聞き、純粋な疑問を口にしてしまった。
「疾風ちゃんは家には帰らないの?」
「あ~…家ね。それが実家って意味なら、帰らない…っていうか、正確には帰れない…が正しいかな」
「帰れない…?」
「うん。私の住んでた家は…もうどこにも無いから」
「どこにも無い…?」
「そ。仮にまだ残ってたとしても、絶対に戻りたくはないけどな」
家の話をした途端、急に疾風が感情を露わにした。
それを見てから響は後悔する。
実家や家族に関する話は、きっと疾風にとってタブーだったのだと。
「…ごめんなさい」
「気にするな。誰にだって触れられたくない話の一つや二つはある。深く追求してこないだけ、お前さんはまだマシだよ」
疾風の言いたい事は響も凄くよく理解出来た。
何故なら、彼女にも決して誰にも触れられたくない話があるからだ。
「…それはそれとして、年頃の女の子がいつまでも不安定な生活をしているのは余り感心しないわね」
「と言ってもな……今までずっと、こんな生活をしてきたし……」
「なら、この二課の本部で寝泊まりすれば?」
「ここで? 冗談だろ?」
了子から出された、まさかの提案に疾風は思わず変な声を出してしまう。
流石に、この本部に泊まるという選択肢は考え付かなかった。
「ここって、この食堂以外にも色々と施設が充実しててね。中には高級ホテルクラスの部屋もあったりするのよ? 実際、ここで寝泊まりしてる職員もいるぐらいだし」
「マジか…。広い施設だとは思ってたが、まさかそこまでとはな…」
仮にもここは学校の地下にある施設だ。
だというのに、そこには想像以上の広大な空間が広がっていた。
司令室を見た時から普通ではないと思ってはいたが、完全にSFの世界に迷い込んだような気分だった。
「弦十郎くん辺りに頼めば一発だと思うけど?」
「だろうな……」
弦十郎のお人好しっぷりはよく知っている。
特に、疾風には特に気を使っているようで、彼女が『ここで寝泊まりをさせて欲しい』と言えば間髪入れずにOKサインを出すだろう。
「どう? かなり魅力的な提案だとは思うけど?」
「そうだな…確かに悪くはない」
世の中には、泊まり込みのバイトというのも無いわけではない。
ここもそうだと思えば、疾風としては問題は無い。
「だけど、今すぐはちょっと無理だ」
「どうして?」
「荷物を取ってこなくちゃいけないからだよ。着の身着のままの状態で来る訳にもいかないだろ?」
「荷物って…どこに置いてあるの?」
「駅の構内にあるロッカーの中。あそこは基本的に、私みたいな生活をしている人間達の私物入れみたいになってるしな」
「知らなかった…」
駅自体、響はそこまで頻繁に使用する機会が無い。
当然だが、構内にあるロッカーの事情なんて知る由も無かった。
「だから、今日までは今まで通りにどこかに泊まって、明日から世話になるよ」
「ってことは、ここで寝泊まりするって事でいいのね?」
「あぁ。私だって、今みたいな生活が決していいとは思ってないからな。それに、近くにいた方がいざって時に素早く動けるしな」
「ちゃんと分かってるじゃない。それじゃ、後で私から弦十郎くんに伝えておくわね」
「頼むわ」
「疾風ちゃん…ここに住むんだ……」
逆に言えば、本部にさえ来ればいつでも疾風に会えるという事だ。
もう既に疾風の事を大切な友達だと思っている響にとって、それはとても喜ばしい事だった。
こうして、疾風の波乱に満ちた新生活が始まったのだった。
早く翼と本格的に絡めたい…。
けど、なんか上手くいかない…。
話さえ進めば、なんとかなるかもしれないけど…。
主人公の疾風とのカップリングは誰が良い?
-
響
-
翼
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クリス
-
未来
-
マリア
-
切歌
-
調
-
まさかの弦十郎
-
まさかまさかの慎次