トラファルガー・ロー(偽物)が地獄に落ちるまでの呪術師をするだけの人生。

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最近英語のサブタイトルつけるのにハマってる


You are Leader

1991年の10月6日。俺はこの世に生を受けた。

フレバンスという西ヨーロッパにある小国に生まれ、医者である父と看護師である母、そして二つ下の妹であるラミに囲まれて幸せに暮らしていた。

 

フレバンスは西ヨーロッパという比較的先進国が多い地域の中でも特に経済レベルが高く、医療技術と珀鉛のような高価な地下資源の採掘などで国家が成り立っている。

だから基本的に裕福な家が多く、経済水準が高い。かくいう俺の家も両親が医者であることもあり、大きな庭やプール付きの家に使用人もいて、更に国外に本邸と同じくらいのサイズの別荘を持っているくらいには裕福な暮らしをしていた。

 

幸せだった。

 

 

 

2001年12月24日、フレバンスは滅びた。

文字通りの滅亡。その日、フレバンスの国民が目にも映らない正体不明のナニカによって襲われた。

 

俺は死に際に目覚めた超能力のような力のお陰で生き永らえたが、その力でみんなを助けようとした時にはすべてが終わっていた。加えて国境を越えて逃げようとした国民は国境封鎖をした近隣諸国によって殺され、国境付近にはフレバンスの国民によって形成された死体の山が積み重なっていた。

当時、俺が国を出るには死体の山に隠れて移動するしかなかった。

 

「大丈夫かい、少年?」

「あ゛……あんだは……?」

 

そんな俺を救ってくれたのはとある女子高生。隣国のスラムで死にかけていた俺を見つけて、拾ってくれたのが彼女だった。

どうやら彼女はフレバンスを襲った正体不明のナニカを調査するために日本という東洋の島国から遠路はるばるやってきたらしい。

俺が今までの経緯を話すと、少し黙りこくった彼女は閃いたように指を弾く。

 

「正直この事件はきな臭い。なにせヨーロッパの先進国が一夜にして滅びたというのに報道が少なすぎる。しかも世界規模で、だ。私が直接調査に出向いたのも流れてくる情報が無さ過ぎたからでね。間違いなく政府や国際連合、EU(欧州連合)辺りから圧力がかかっていたに違いない。その上、滅びた原因は不明。まあ、私のような()()()()()()()()()からしたら答えは分かりきっていたのだけどね」

 

──この一連の事件の原因は呪霊と呼ばれる化け物さ

 

彼女はさらりと何でもないように言う。

彼女曰く、呪霊とは恨みや後悔、恥辱など、人間の身体から流れた負の感情が具現し意思をもった異形の怪物のことらしい。

つまりはフレバンス内で渦巻く負の感情のループがその摩訶不思議な怨霊怪異を生み出したに至ったというわけだろう。

 

だが、それにしてはおかしい点がある。

フレバンスは内戦どころか貧富の差すらほとんどなく、そういった負の感情には無縁な国だ。少なくとも国が滅びるほどの呪霊が生まれることはないということだ。

俺がそう言うと彼女は「呑み込みが早いね、流石は医者の子だ」と俺の頭を撫でて言葉を続ける。

 

「まあ原因は呪霊であれども元凶が呪霊じゃないってことなんだろうね。フレバンスは確か珀鉛という鉛の原産地として有名な国だったよね?」

「ああ、珀鉛が取れるようになったことで一気に国が豊かになったと聞いたことがある、ます」

「ふふ、じゃあそれだ。君は知らないだろうが、珀鉛は呪具を作るのに便利ということで呪術界だと特別な素材として扱われている。何故ならば珀鉛は人に宿ることのない特殊な呪力を帯びているから」

 

微笑を浮かべた彼女は俺にも分かりやすいように呪具やら呪力の説明を挟みつつ一転、笑みを消して神妙な面持ちで言葉を選ぶように解説を続ける。

 

「珀鉛の持つ呪力は呪霊をおびき寄せるという特殊な性質を持っている。だから呪具の素材にすることで戦闘時に有利な盤面を作りやすい」

「特殊な呪力で呪霊を混乱させるってことか?」

「そう、呪霊は知性を持たず本能で動くことが(ほとん)どだから珀鉛の持つ呪力と相性が悪いんだよね」

「言いたいことは分かった。……だけど、じゃあどうしてあの日に限って呪霊が……今までは呪霊に襲われる兆候すらなかったのに……」

「珀鉛のもつ呪力量自体はそこまで多くないから今までは呪霊が寄ってくることすらなかったんだよ、今までは。それに加えてヨーロッパには呪霊がほとんどいないからね。現に君は私に会うまで呪霊の存在を全く知らなかっただろう? 君が呪霊から逃げる際に“術式”を発現させたなら呪霊を見れるようになっているはずなのに」

「ぁ」

 

確かに、俺は呪霊を見たことがない。が、そういえばこの不思議な力を使えるようになってからフレバンスの方に呪霊らしき影をみたかもしれない。あの時は国境を渡るので必死になっていたけど。

 

今まで呪霊に襲われなかった理由に見当はついた。じゃあなんであの日、呪霊はフレバンスを滅ぼすという行動を起こしたんだ? そもそもその呪霊はどこから生まれた? 珀鉛が関係ないならなぜその話を出した?

 

そう思い、ふと彼女の伏せた顔を覗き込むと「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」と苦笑いを浮かべた彼女が俺に言う。

 

「……正直に言おう。これはあくまで私の推測に過ぎないし、その上部外者の私からしてもかなりショッキングな内容だ。当事者なら(なお)のことだろう。君みたいな子供には今回の事件をさっぱり忘れて新たな人生を送ってほしいのだけど……」

「教えてくれ! ……頼む、もう全部壊れたんだ……家族も、日常も、未来も」

「……はあ、聞いて後悔しても知らないからね」

 

そして、彼女は語る。

 

「フレバンスは1919年、第一次世界大戦の終結から生まれた国であり、その頃から細々と珀鉛の発掘をしてきた。第二次世界大戦中は珀鉛を輸出することで貧困を免れ、終戦後は主に珀鉛の輸出で経済成長を果たしていた。そんなフレバンスにとってまさに珀鉛こそが国の頼みの綱だったんだ」

 

医術の根幹にも珀鉛の存在があった。珀鉛ありきの幸せで、珀鉛が無かったら俺は生まれていなかったのかもしれない。

 

「だが、一つの資源だけで国の財政を賄えるなんて、そんなうまい話はないものだ。上手い話には必ず裏がある。今回の事件──いや、事故もその類だった」

 

運が悪い事故だったが、いつ起きてもおかしくない事件だったと彼女は言う。

 

「フレバンスが何十年とかけて珀鉛を採掘してきたことで珀鉛がもつ特殊な呪力が人に移り、子に移り、更にそのまた子に移りと人間の繁殖と共に呪力が広く深く国内の人間に浸透したことでフレバンスという国は呪霊にとっての生きのいい生餌になった」

「……ぇ」

 

よく考えればわかることだった。近隣諸国がわざわざ国境封鎖してでもフレバンス国民を自国にいれなかった理由が。まるでフレバンス国民が菌であるかのように扱われた理由が。

 

「フレバンス国民の呪力を感じた呪霊がアフリカ辺りから一晩で移動してきたんだろうね。それが原因で今回、呪霊が国を滅ぼすという事件が起こった、というのが私の見解だよ」

 

──つまり俺たちは珀鉛のお陰で生まれ暮らし、珀鉛のせいで死んだのだ。

 

彼女の見解を聞いた俺は少しの間地面を見つめながら唖然としていた。

 

な……にを言えばいいのかも思いつかない。俺たちは生まれながらにして呪霊を引き寄せる体質を持っていて、いやそもそも珀鉛が、呪力が、呪霊が……。自分たちの幸せのためにやっていたことが自分たちの首を絞めていたということになる……んだよな?

 

俺たちが裕福な暮らしをしていたのは自分の命を削っていたからで、豪邸も別荘も自慢(自虐)の限りで、それはただの飾りで、地獄の沙汰も金次第なんて言っても命が無ければ何もできない。そんな事を知らずに国民はその前日まで幸せを謳歌していて、その翌日にかつての自分に殺された。

 

「俺はなんで生きてるんだ」

 

思わずポツリと言葉が漏れる。

 

「死にたくなったかい?」

「……ああ。もし珀鉛で幸せを謳歌していたバチが当たって国が滅びたなら俺だけが生きながらえていい訳がない。多くの人を救った父さんと母さん(医者)が死んで、守るべき妹が死んで、なんで俺は生きてるんだろうな」

「死ぬことに理由はあっても、生きることに理由はないよ。だから人間は死に様に意味を求めるのさ」

「死に様、か」

 

生き様ではなく死に様。考えたことも無かった。なにせ死なんてものがこんなに身近なものだとは思ってもいなかったから。今まで医者として幾度となく死に触れてきた両親は考えたこととかあったんだろうか。

 

「あんたは呪術師だって言ったよな。あの呪霊を倒すのか?」

「そうだね、私は明日フレバンスに向かってフレバンスを滅ぼした推定特級呪霊を祓う。全く、一級術師の私に特級呪霊と戦わせるなんて上層部も露骨なんだから。絶対死んであげないけど」

「……俺が戦ったら死ぬよな」

「うん、間違いなく」

 

そして数瞬の反芻の後に思う。

 

あぁ……地獄行きか。しかし遅かれ早かれだ。

 

「私は九十九由紀、君は?」

「俺は……トラファルガー・ロー」

「うん、いい名前だ」

 

 

これは、俺ことトラファルガー・ローが地獄に落ちるまでの呪術師をするだけの人生。

 

 

・裏話

 

「いやあ、ローにこのことを言わなくてよかったな」

彼女は眠りについた少年を傍目に小さく独り言ちる。

 

フレバンス政府やEU(欧州連合)は珀鉛の性質を知っていた。特に呪いや呪霊の存在を知っていた奴らはこの惨劇を予想していた上で珀鉛の採掘を黙認していた。その上で珀鉛が生み出す巨万の富に目が眩み事実を隠蔽していた。呪霊が人を殺すように、呪霊を生み出した人もまた人を殺す醜さを持っている。なにせ、子は親に似るというのだから。

 

「この推測があってたにしろ、間違ってるにしろ伝えたら百害あっても一利なしだしね」

 

 

 

 




毎回毎回最後の方駆け足になるのどうにかしたい。最後の流れは捉え方が人それぞれだと思うので自分の信じる道を行け。


死んでも(おそらく)地獄行き、呪術師になったら呪術界という地獄行き、このままその日暮らしをしてたら過去の後悔で生き地獄という遅かれ早かれ地獄に行く主人公。

地獄書くの苦手だから地獄かける人マジ尊敬する。

Twitterでオタクしてるので同士いたら話しかけてくれ。本誌ネタバレはしないようにするから。
→@meumeu8739

続けるつもりはないけどなんとなく考えがちなヒロインアンケ

  • 地獄の沙汰も金次第・冥冥
  • 医学生コンビ・家入硝子
  • 多分5~6歳くらい年上の師匠
  • 身長と尻が大きい女がタイプな弟弟子
  • その他


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