ウマ娘の頭悪いサイド   作:にゃんこぱん

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戦いですわ!

 

 夏だ! 海だ! 全治5ヶ月だーー!

 

「……マジでごめんって言ってるじゃん」

 

「せんせーってば、そろそろ引っ張りすぎですよ〜。楽しい楽しい夏合宿なんですから〜、楽しんでいきましょ?」

 

 いいだろ。タイシンをからかう材料はいくらあっても足りないからな。

 

「……もう2ヶ月ぐらい増やしてやってもいいんだけど?」

 

 ふむ。普通に死ぬからやめてくれ。

 

 関節に傷を追うと後がキツい。おれの体もうボロボロだからね。昨日ぐらいにやっと退院できたんだ。なんだかんだ1ヶ月ぐらい入院してたからな。

 

「退院早くない?」

 

 頑丈なのが取り柄だ。天才の体は凡百とは違うからな。

 

「……本当に、この男を病院から出して良かったのかしら」

 

 まあおれ天才だし医者だし。自分の体の治療ぐらい朝飯前だ。それにハードロック大権蔵にも言われたよ。夏合宿場にも医療部は必要ですからさっさと退院してくださいって。あの人ほんと人の心ないって。いっそおれ可哀想じゃない?

 

「だっ、大丈夫ですトレーナーさん! あたしがついてますよっ!」

 

 ありがたくて涙が出るぜ。今年の夏は包帯グルグル巻きゾンビスタイルだ。こんな暑さじゃお化け役も必要なことだろう。夜になったらお楽しみだ。

 

 夏になると昔のことを思い出す。

 

 あのバカみたいに暑かった夏のことを。

 

「何をぼぅっとしているの。早く行きましょう」

 

 ……はい。すんません。

 

 

 

 

 

 -

 

 

 

 

 

「よう先生、やっと退院したんだってな」

 

 昼飯を食ってると沖野さんが来た。久しぶりだ。

 

「いや、先生も災難だったな。蹴っ飛ばされたんだって?」

 

 聞いてくれ沖野さん。おれのケガ、労災降りたよ。笑い話だと思うか?

 

「いや、なかなか笑えないな……。ともかく元気そうで何よりだ」

 

 ふむ、元気そうに見えるか。これが……。

 

「……悪い。言葉の綾だ」

 

 上から下まで包帯グルグルだ。松葉杖と三角巾がなきゃ痛くて動けん。車椅子でもいいぐらいだが、格好がつかないので我慢している。

 

 まあ幸い右手の方は動くようになったんでな。ある程度の仕事はできるってわけよ。音声入力とかもあるしな。

 

「大丈夫なのか? 正直、まだ入院しててもいいように見えるが……」

 

 アルファードはもうただの保健室じゃない、チームだ。その大黒柱が呑気に入院はできん。沖野さんならわかるだろ?

 

「……こう言っちゃ悪いが、先生にも責任感とかあったんだな」

 

 おれだって、前みたいな気楽な立場の方が楽だったんだけどなぁ……。今からでも戻りたいくらいだ。やれやれ、沖野さんよ。こりゃ恨むぜ。

 

「まぁ、悪かったとは思っちゃいる。だが……正直、遅かれ早かれこうなってたと思うぞ? たづなさんは先生のことを結構評価しているからな」

 

 うっそだぁ。ロック御仁、おれのことナメクジかなんかだと思ってんだぜ?

 

「先生の立場は唯一無二だからな。トレーナーの経歴ってのも案外色々あるもんだけど、医療方面から移ってきたのは先生だけだ。当時未成年だろ? トレーナー間じゃ噂になってたよ。天才少年がやってくるってな」

 

 天才少年ね。まあ未成年なら妥当だろうが、おれを表すには幼い表現だな。

 

「同感だ。まともにトレーナーを目指すなら、何年も養成校で勉強しなきゃいけないんだがな。トレーナー試験の対策、どれぐらいやったんだっけ?」

 

 半年ないぐらいだったな。結構急いでやったんだが、ペーパーテストなんざちょろいもんよ。

 

「大したもんだ、全く。そういや聞いたことがなかったんだが……先生は、どうしてトレーナーになろうと思ったんだ?」

 

 よく聞かれる。その度におれはこう答えるのだ。

 

 暇になったから、とな。

 

 

 

 

 

 ぴっぴー! そこ、手を抜くなー! 

 

「はーい! せんせー、あと何セットー!?」

 

 あと3千回ー。

 

「あ、ウソ吐くの禁止で」

 

 あと3セットだぞー。

 

「いよっし、いっくぞー……!」

 

 バッとネイチャが走り出していくのを見送った。若いってのはいいな。

 

「あなたもさして変わらないわ」

 

 歳はな。あーあ、おれも海で遊びたかったなー。

 

「遊びに来ているわけではないのよ。それに……あなた、カナヅチでしょう?」

 

 ポセイドンがおれを受け入れてくれなかっただけだ。言葉は選んでもらいたい。

 

 それにしてもクソ暑い。なあ、ビーチ仕様の椅子に座ってるとおれ、メカ丸本体みたいにならないか? そっくりだろ見た目。自力で歩けないところまで含めて同一じゃねーか。

 

「……まったく。その怪我でよくやるものね」

 

 おれはドクターなのでな。いざとなれば自分の手術でもやってやる自信がある。正直あと2ヶ月はベッドでねっころがっていたかったが……まさかおれに責任感なんてもんが芽生えるとはな。

 

「……反省しているの? あなたが?」

 

 チームを作れなんて言われたせいだ。なぁベガちー、やっぱり勝ちたいもんなのか?

 

「私はそれほど拘っていないわ。けど……あの子、キタサンブラックさんのことは、きちんと見てあげなさい。それと……ナリタタイシンさんのことも、もちろん」

 

 正直に言うが、おれはトレーナーの資格こそ持っているものの、やはりそいつを一心に磨いてきた連中と比べれば劣るものがあるだろう。まあおれは天才なので、ちょいと努力すればその差は簡単に埋めることができる。

 

 だが、連中にあっておれにないものがある。レースへの情熱だ。

 

 おれは医者なのだ。おれもそうでありたいと願ってきたし、週に2、3回は病院へと赴いて研修したりしている。このトレセンでのお医者さんごっこも大概グレーだからな。

 

「ごっこ遊びの範疇で済むものではないでしょう? そう卑下する必要は……」

 

 医師免許を取るには、どうしたって数年は必要なんだ──凡人の場合はな。おれは天才なので多少は縮められるとしても、トレーナーとドクターの二の草鞋はどうしたって限界はある。アークナイツとウマ娘プリティーダービーを同時は結構重たいしな。端末的にも。

 

 実際サウロン様がチームとか言い出さなきゃ、おれは一年ほどトレーナーを休職するつもりだったんだ。なぁベガち、おれはドクターじゃなく、トレーナーになるべきだと思うか?

 

「私には何も言えないわ。私のように移籍してきたウマ娘は、トレーニングにしたってあなたがそれほど面倒を見る必要はない、だけど──あの子は違う。あの子にとっては、あなただけがトレーナーなのよ」

 

 十分言ってる。

 

 キタっちはヒヨコもヒヨコ、雛鳥だ。柄にもなく真剣なことを考え始めている。おれがケガをしているせいだろう、いつも鬱陶しく絡んでくる連中がおれを砂やコンクリに埋めたりしなくて平和なせいだ。

 

 余計なことを考え始めている自覚はある。

 

「トレーナーさんっ! 終わりました、次の指示をお願いしますっ!」

 

 ヒヨコがおれを見ていた。信頼のこもった瞳だ。

 

 よーし、じゃあぶっ倒れるまで走ってこい──とは言えなかった。本当にやりかねないからだ。

 

 チワワみたいなキレイな瞳で見られるのは苦手だ。

 

 うむ……よし、じゃあぶっ倒れるまで走ってこい!

 

「えっ、あっ……はい! トレーナーさんの指示なら、あたし……限界を超えますっ!」

 

 アドマイヤ先生に頭を叩かれた。はい、すんません。

 

「本気にしないで頂戴。キタサンブラックさん、あまり真に受けてはいけないわよ。私が先導するから着いてきて」

 

 アドマイヤ先生は後輩を連れて走って行った。

 

 もしかしたらおれは、ずっと後回しにしてきたことと向き合わなきゃいけない時が来たのかもしれない。

 

 

 

 

-

 

 

 

 ということで肝試しをすることにした。

 

「この辺りはぁ〜、とても穏やかな地域なんですな〜。青い海に、振り返れば遠くに見える鮮やかな山影……しかし、それは見せかけのものだった──界隈では有名な話があるんだけど、この近くには誰も寄りつかない、古びた墓地があって……出るんだって」

 

 ネイチャがなんか言ってる。

 

「で、出る……って?」

 

「そりゃぁ〜決まってますよ。現世(うつしよ)に消せども消えぬ未練を残した、亡霊が……どろりどろりと、復讐を願っては訪れる人たちを襲って来るとか、来ないとか……きゃぁ〜〜〜っ!!!」

 

「うわーーーーーーっ!!!」

 

 おわーーーーっ!! おいキタっち! でかい声を出すな! 

 

「ごっ、ごめんなさいトレーナーさん! で、でも……」

 

 合宿を挙げての肝試しなので、夜の砂浜にはたくさんのガキどもが怯えるような、かつワクワクしているような落ち着きのなさを放っていた……。

 

「はいはい、怖がるのはこれからですよ〜。ということでルール説明! ここに集まっていただいた皆さんには、今からペアになって、あっちにある墓場を回ってきてもらいまーす。もしかしたらそこが皆さんの墓場になるかもしれないですけどー、まあそうなったらご愁傷ってことで」

 

 やばいこと言ってる。

 

「お墓の前にはハンコが置いてありまーす。証拠としてこの紙にハンコを押してきて帰ってこれたらクリア!」

 

 しつもーん。クリアしたら何くれるんですかー。

 

「おーいお茶いっこあげまーす」

 

 知ってた。おれも買い出し行ってきたし。

 

「と、トレーナーさん……絶対クリアしましょうね! もしトレーナーさんが連れてかれそうになっても、絶対助けて見せますから!」

 

 相棒のキタサンが意気込んでいる。

 

 っていうかなんでおれ参加者側なんだよ。普通にお化け役やらせろよ。この包帯ぐるぐる巻きが見えてないのか。

 

「頑張りましょうトレーナーさん! お化けなんて……へ、へっちゃらですッ!!」

 

 うおあーーーーーーっ!!

 

「きゃぁーーーーーーっ!! な、なななななんですかトレーナーさん! 驚かせないでくださいっ!」

 

 おれの脅かしに素直に驚いてくれたのはおまえが初めてだ、キタサンブラック。ありがとな。

 

「……うわーーーーーーっ!!」

 

 おわーーーーーーーっ! な、なんだいきなり叫ぶな! びっくりするだろうが!

 

「お返しです! フン!」

 

 ……墓地に入ったら覚えてろよ。

 

「こっちのセリフです! こうなったら、トレーナーさんの喉がなくなるくらいびっくりさせますからっ!」

 

 大いなる戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 懐中電灯ひとつ。夜の森を渡るには心許ない装備だということは、決して否定できない。

 

 キタっちの先導で前へ進んでいく。ところでおれ、一応重症患者なのだが、その辺りのことは忘れられがちだ。おれが頑丈でよかったな。

 

「……トレーナーさんって、実は意地悪さんなんですか?」

 

 くだらんことを聞くな。そんな訳ないだろう。仮にそうだとしたら、おまえをここから生きては返さんからな。感謝しろ、まったく……。

 

「……うわっ!!」

 

 ほわァっ!?

 

「引っかかりましたね……フン!」

 

 くそ、ただの脅かしだった。こんな小娘一人に、おれがいいようにされている……。

 

「……さっきのこと謝るまで許しませんから!」

 

 おいおい、あまりワクワクさせるなよ。そう言われるともっと脅かしてやりたくなる。

 

 電灯の光が薄暗く森を照らしていた。僅かに流れる風が黒い影を揺らす……。森に住む生命たちの気配が不気味に漂っていた。

 

 ククク……。簡単な話だ、怖がるから脅かされる……そこから抜け出すのは簡単だ。怖がる側じゃなく、怖がらせる側に回ればいい。そうすりゃ少なくともおれは怖くないわけで。

 

 ギャァーーーー!!

 

「……その手には乗りませんから」

 

 ちっ、やるじゃん。

 

 歩いてると暗闇のシルエットに変化が訪れた。墓地についたのだ……。

 

 ……結構、その……あれだな。雰囲気あるな。別に怖くねぇけど。

 

「そうですね。結構その、雰囲気ありますね。別に怖くありませんけど」

 

 ま、ままままああれだ、さっさとハンコ打って終わらせてしまおう。な?

 

「こ、こここえ震えてますよ? あ、あたしは平気ですけど、ここここ、怖がってるんですか?」

 

 ばばばばっかお前これは武者震い通り越して大名巡りだお前、いいからさっさといくぞ、こんなとこに長居したら連中の仲間入りしちまう。

 

「れれれれ連中って誰ですかッ!?」

 

 ホワァーーーーッ!? でっかい声を出すな! びっくりするだろうが!

 

「おおおおおおおおばけなんているわけないんですから! もしいたとしても、とッ──友達になりましょう!」

 

 なるかぁ! いいから落ち着いて周りをよく見ろ! ただの夜中の墓場だ!

 

「ふー……は、はい。平気です……平気ですから!」

 

 震える身を寄せ合いながらおれたちは前へ進んだ。真夏だってのに寒気が止まらん。おそらくは風邪の一種である可能性が非常に高い。

 

 キタっちが押し黙ったために、先ほどの騒がしさが嘘のようだ──森の気配がうごめくのを感じる。だがそれだけだ。

 

 脳核の中に(ゴースト)はあれど、魂は肉体から出られはしない。外に飛び出したとしても、空気に溶けて存在などできない。

 

「……あっ、ありました……ハンコ。押しますね」

 

 ぺたん。あっけなく目標はクリアされた。

 

 よし。じゃあ後は帰るだけだな。まったく、ビビり散らかしてたのがアホらしくなってくる。

 

「……帰りはさっきみたいにおっきな声、出したりしないでくださいね」

 

 おまえこそ。

 

 来た道を戻るだけだ。なんか疲れたしおれもさっさと帰りたい──なんてな。ここ1番のタイミングでビビらせてやる。おれが昼間のうちにここらに何も仕込まなかったわけがないだろう。

 

 ヒュゥ、と夜風が吹いた。

 

「……今、なにか動きませんでしたか?」

 

 ははは、その手には乗らんぞ。おれはしらばっくれた。跳ね上げ式の案山子を草むらに隠してある。おれの好きなタイミングでそいつが跳ね上がり、この暗闇の中では墓場から蘇ったゾンビに見えることだろう。

 

「っ──だれ……? います、だれか……」

 

 ここだな。おれは地面に仕込んだワイヤーを蹴っ飛ばした。仕込んだバネが案山子くんを幽霊にしてくれる──って、あれ? 確かここらへんにあるはずなんだが……感触がない。

 

 えっ、なんでないの?

 

 視界の端に影のようなヒトガタが見えた気がした──動揺するな。幽霊の正体は枯れ尾花だと言われたのは、もう何百年も前のことだ。人類はもう学んでいる。

 

 がさっ。

 

 はっきりと聞こえた。おれの真後ろから──おいキタっち、妙な真似はやめてもらおうか。そんな子供騙しじゃおれはびびらんぞ。

 

「……トレーナーさんこそ。どうせ変な仕掛けでもしてたんじゃないですか?」

 

 鋭いな。だが……って、なんだよ?

 

「? な、なんですか?」

 

 いや、今おれの肩に手を置いただろ?

 

「えっ? いえ……あたしじゃないですよ?」

 

 えっ?

 

 咄嗟に周りを見渡した。誰もいない。

 

 おい、行くぞ。こんな気味悪いとこ、さっさとおさらばしちまおう。

 

「あっ、トレーナーさん、待ってください……」

 

 逃げ出そうとしたおれの手をキタサンが掴んだ。

 

 ……なんだよ? 震えが伝わってきてるぜ?

 

「……トレーナーさん、今……あたしの前を歩いてますよね?」

 

 ……。

 

「今、あたし……右の肩に、誰かが手を置いてるんです」

 

 笑えないジョークは嫌いだぜ。

 

「あたしもです。だから……お願いです、トレーナーさん。後ろに振り返って、確認してくれませんか? 誰かいるのか……っ、ちょ、ちょぉーっと! は、な、しぃっ〜、ませんよぉ〜!」

 

 はッ──放しやがれ! おれぁこんな見た目だが人間の側でな! まだそっち側に行くつもりはないんでな!

 

「どんなことがあってもあたしを助けてくれるってスカウトのとき言ってたじゃないですかぁーっ! ただでは済ませませんよ、トレーナーとウマ娘は一蓮托生──ですからっ!」

 

 力が強すぎる! くそったれ、道連れにされてたまるか! こ、この……うぐ! 傷跡が痛むぜ……! だがおれの墓場はアイダホに作るって決めてんだ!

 

「一緒のお墓に入りましょう! 大丈夫です、あたしが一緒ですからぁ!!」

 

 はーなーせぇーーー!!

 

 渾身の力で抗う。が、勝てない。フィジカルが強すぎる。

 

 ……やってやる! 反攻作戦だ、こうなりゃ手段は選ばん!

 

 覚悟を決めたおれの体を、誰かがつついた感触。つんつん。

 

「あの〜、盛り上がってるところ悪いんですけども〜……。次詰まってるんで、そろそろ帰ってもらってもいいですよ〜って、まぁ幽霊役のネイチャさんですけども〜」

 

 ……。

 

「……え? えぇ〜……」

 

 おれたちはへなへなと腰を下ろした。まだ心臓がバクバク言ってる。

 

 ……ネイチャ。おまえ明日倒れるまでランニング。

 

「えぇ〜? それはヒドいと思いますけどね〜。せっかくのイベントを盛り上げようっていう心遣いのつもりだったんですけどね。ふふっ、それにしてもせんせーの怯えっぷりと来たら、まさかウマ娘を放り出して自分だけ助かろうとするなんてぇ〜……。たづなさんに伝えたら、今度はどーなると思います?」

 

 ……分かった。交渉だ。口止め料を聞こうか、ナイスネイチャ。

 

「え〜? いやいやそんな、また怒られるって分かってるのにチクったりしませんよ〜。あんまり怒られてばっかだとせんせーが可哀想だし? まあ? 今度なにかお願いでも聞いてもらったら、アタシもこのことは忘れるかもしれないですね〜?」

 

 口ばっかり達者になりやがって。

 

「せんせーといっしょ、で・す・よっと。あ〜面白かった! キタサンもごめんね〜、まさかこんなにびっくりしてくれるとは思わなくってさ」

 

「い、いえ……肝試しですから。あたしの心が弱かっただけです、鍛え直します!」

 

「えっ……気合い入ってるねぇ……」

 

「……それと! あたしを見捨てようとしたトレーナーさんにはまた今度すんごい仕返しをしますから! 覚悟の準備をしておいてくださいね!!」

 

 ふむ。おれも道連れにされかけた腹いせに、すんごい落とし穴とか仕掛けといてやろう。

 

「ささ、帰りますよ〜。明日もきつ〜い夏合宿なんですからね〜」

 

 肝試し終了。珍しくおれがヒドい目に合わされずに終わるケースだった。

 

 

 

 

 が、話はここで終わらないのがおれのクオリティーと言えるだろう。言えるかぁ。

 

「トレーナーさんの腐った根性を叩き直します!!」

 

 おまえそんな性格だったっけ。思わずそう口にしたおれを誰が責められよう。

 

 夏はまだまだ続くらしい。

 

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