ウマ娘の頭悪いサイド 作:パクパクですわ!
はいはーい! どうもー、こちらは新進気鋭のアルファードでございますよォー!
今ならにんじんも安いよォー! 洗剤も付いてくるよォー!
「安いですわよー!」
そうですわよー!
「真似しないでくださる!?」
いいだろ。おれもたまにはお嬢様みたいな感じでいきたいんだ。
「五千兆回生まれ変わっても無理ですわね」
キィーッ! なんだと! 言い過ぎだぞ!
「いえ、トレーナーさんの性別が変わるのは、ちょっと……なんというか、その」
あ!? なんだ! はっきり言えよ!
「無理というか、生理的に、その、あり得ないというか、吐きそうになるというか」
ぶっ殺すぞガキが! メジロの最高傑作だからって調子乗りやがって!
もうこれはスカウトどころじゃない。マックイーンとは心ゆくまで話をつける必要がある。
おい座れ。おまえとは、じっくりと話をする必要があるようだな。
「いいでしょう。少し待ってくださる? 紅茶を淹れますわ」
え、いいの? ちょうど喉乾いてたんだよね。助かるわー。
「いいんですのよ。あなたはわたくしの大切な……大切な、えっと、遊び友達的な、うーん。知人? ようなものですから」
先生と呼ぶがいい。
「せめてトレーナーではなくて?」
おれはおまえのトレーナーじゃないだろ。
「元トレーナーでしょう。多少の恩義は感じていますわよ? ほら、どうぞ」
かちゃん。どこからともなく出てきたティーカップから湯気がのぼっている。スカウトのために出してきたテーブル以外には何もなかったはずなんだけど、どっから取り出したんだ? おれは不思議で仕方なかった。
まあいいや。喉乾いてたし。ごくごく……あっつ!
「勢いよく飲むからですわ」
猫舌なんだよ……。あーあっつ。火傷したかな……。
「まったく。紳士たるもの、味の感想でも述べて欲しいものですわね」
ふむ。おれは紅茶の味なぞ分からん。こんなもん色ついたお湯だろ。
「喧嘩を売られましたわ! 決闘ですわ! ボコボコにして差し上げますわ!」
瞬間湯沸かし器が。少しは慎みを覚えたらどうかね。おれを見習え、この優雅な姿……。
「軽そうな頭ですわね。カラッポなのではなくて?」
決闘だ! 決闘だ!! 発言を後悔させてやる!
「瞬間湯沸かし器ですわね」
くっ……。
おれはなんとか自制して、落ち着くために紅茶を啜った──あれ。なんか苦い気がするけどまあいいや。熱くてなんも分からんし。紅茶って全部こんな感じだろ。
「……かかりましたわね」
マックイーンがニヤリと笑った。
おれはそれを見て、なんだか意識が遠のいていくのを他人事みたいに感じていた……。
あれ。なんだか、意識が、眠く……かゆ、うま……。
………………。
…………。
……。
ー ー ー
はっ!
「! 目が覚めたようですわね、トレーナーさん」
おれは……。ここは、ベッド……部室か? おれはいったい……。
「心配しましたわよ。急に倒れるものだから……」
マックイーン……。それに……ネイチャ? なぜおまえまで。
「もー。せんせーってば、アレですよ? 日頃の疲れが溜まってたんだろうって。怪我とか病気とかじゃなかったから良かったんですがね、あんまり心配させないで欲しいって感じで、現場からはそんな感じでーす」
おれが……倒れた、のか? えーっと、確かおれは、新入生スカウトをしていたはず……。
「え。せんせーってば、なに? もしかしてスカウトしてるの?」
ああ。ひよっ子を2人以上入れないとちくわ大明神に殺される。死活問題だ。
「ちくわ大明神……? よく分かんないけど、メンバーを募集してるってこと?」
うむ……まあ、そうだ。
「うひょ〜! アレだねー、せんせーにはあんまり似合わないね〜!」
あまり言ってくれるな。自覚はあるさ。
まったく、おれとしたことが情けない。スカウトの時期もそう長いもんじゃないってのに……。
「大事を取って、今日はやめておいた方がいいのではなくて?」
「そーそー。また倒れたら大変だよー?」
医者の不摂生と笑うがいいさ。しかし……ネイチャ。なぜおまえまでここにいる?
「えっ。あー、うん。えーっとですね。まあ、なんといいますか。たまたま、そう。たまたま暇だったもんで、たまにはせんせーのツラでも拝んでやるかって感じで、まあ」
おれに会いにきたと。
「はぁっ!? あっ、いや、違いますけどねー! せんせーってばなーに言ってんですかねー! こんなうら若き乙女がせんせーみたいなだらしない人にわざわざトレーニングサボって会いにくるとかあり得ないと思うんですけどねー! ねー!!!」
それもそうか。そうだな。
「いや納得するの!? あー、もう。それはそれでもにょるといいますか……っていうかさ、せんせーはチームに何人か入れなきゃいけないんだよね」
嫌なことを思い出させてくれるなよ。まさに悩みの種だ。それはいずれ雨を浴びて育ち、おれの心の中でゆっくりと成長していく……。厄介ごとという大木にな……。
「ちょっと何言ってるか分かんないでーす……じゃなくってさ。それってその、つまりなんだろ。これは例え話なんですがね、例えばその、アタシとかが入ってもいいの?」
えー。マジでぇー。
「嫌そう! なんで!? アタシじゃダメなの!? 所詮アタシは3番目の女ってことなの!?」
知らん。なんだ3番目の女って、昭和かよ。今は平成通り越して令和の時代だぞ……。
「やだやだやだやだ! アタシのトレーナーになってよせんせー! 一生のお願いだから〜!」
「ネイチャさん。駄々をこねるものではありませんよ。それにこの男はだらしないのです。わたくしがアルファードの内側から、責任を持ってトレーナーさんを変えていきますので、安心なさってください」
いや、おまえもスピカに居ろよ。アルファードはおまえらのようなモンをホイホイ拾えるほど広くねーし。
「嫌ですわ〜!! な"ん"で"で"す"の"〜!!!??? びゃぁぁぁぁぁぁ……」
「う"わ"あ"あ"あ"〜ん"!!!」
うるせーな……。
だいたい、おまえらはもう結構レースやってんじゃねーか。おれが入れなきゃいけないのはひよっ子なんだよ。ただの移籍じゃちくわ大明神が納得しない。
「そんな〜……。もうやだ、せんせー頭撫でてよ〜」
なんでだよ。
なでなで……あれ? こんなガキの頼みを聞くはずもないおれだったが、意志に反しておれの手は優しくネイチャの頭を撫でていた。
なんだこれ。
「……、ふ、ふふ、えへへ。ホントに聞いてくれた……せんせーってば優しいですね〜……」
え、なにこれ。
おれの意志と無関係に体が動いてる。何これこわ。自分の体じゃないみたいだ。
「むぅ……。トレーナーさん。わたくしには何もないのですか?」
あるわけねーだろ。それよりなんだこれ、おれの体がリモコンロボットみたいになってるんだけど。なんか知ってる?
「知りませんわ」
「分かんないかなー」
ううむ。どういうことだ……。
「それよりさ、スカウトの途中だったんだよね?」
うむ……。倒れたとはいえ、今は貴重な時期だ。寝っ転がってはいられん。
体調はすこぶるいい。なぜ倒れたのかさっぱり分からん……。とにかくおれは体を起こすと、保健室を出た。出たのだが……。
なんかついてくる。
「あなたを自由にしていたら、どんなことをやらかすか分かりませんもの」
「せんせーは病み上がりだしさ、やっぱり助手? みたいなの。いりませんか〜? いりますよね、ネイチャさんとかちょうどいいと思うんですけどね〜、あっちょうど暇なネイチャさんがここにいますね〜」
やれやれ……。おれの邪魔はするなよ。
「いやいやそんな! せんせーの邪魔をしてやろうなんて! これっぽっちも!! するつもりなんて!!」
ふむ。では大丈夫だな。行くぞ……。
「へー……。リハビリ専門、なんですね」
そうだ。だがトレーナーでもある。怪我のケアはバッチリだ、実績多数。どうだ? ウチに来ないか?
「わ、私……昔から、体が弱くて……お医者さんに止められながらも走ってきたんです。私なんかを担当すると、色々面倒なんじゃないかって……」
ばっちこいだ。むしろ、そういうのこそおれの専門でもある。
ヌルくやるってことじゃない。限界ギリギリのトレーニングであなたの夢をサポート、アルファードは歓迎する。君の夢は?
「……! わ、私の夢は……」
いける。この小娘の心の天秤が傾いていく……。
「でもせんせーさ、この前怪しいクスリを作ってたよね。あれなに?」
おいおいおいおいおいおいおいおいおい。
「あやしい、クスリ……?」
小娘の天秤が元に戻っていく。
「そういえば、保健所の立ち入りがあったと聞きましたが……」
違う違う違う違う違う違う違う。あれはべつに、おれにやましいところがあるとかじゃなくて、事故でな。事故だったんだよ、マジで。
「ほ、保健所……!? それ……ど、どういうことですか!?」
「せんせーはね、時々アタシたちのことをモルモットみたいに扱うんだよ」
してないしてないしてないしてない!! や、やめろお前ら! 一体なんなんだ!!
「事実ですわ。わたくしも、いろんなことに巻き込まれたことがありますの」
「め、メジロマックイーンさんが……! あ、あのっ、ありがたいお話でしたが、私はやっぱりアルファードは遠慮しておきます! ごめんなさい!」
あっ、ちょ……!
止める間もなく走り去っていった。去り際の瞳はどこか怯えているようだった……。
「ふいー。こうして魔の手から一人、ウマ娘を救ってしまいましたなー」
どういうつもりだ! お、おれのスカウトを邪魔するのか……!
「まさかー。ご縁がなかったんですよ。それに、ウソはいっこもついてないですよー?」
ぐ、ぐぐ……! な……何が望みだ……!
「話が早くて助かりますよ〜……。あのさ、アタシ、一つ悩みがありまして〜……」
ええい、能書きはいらん! 要求を言え!
「デートして!」
お出かけと言え! くそっ、どこにだ!
「新しいパフェが出たって聞くじゃん? 行くしかないよね〜って。せんせーの奢りね!」
……もうスカウトの邪魔はするなよ?
「しませんって〜。っていうか最初からしてないって言ってるじゃないですか〜」
「……あの、わたくしには? わたくしには何かありませんの?」
ぐ、ぐぐ……! ど、どいつも、こいつもぉ……!
ええい! 春のヤマザキスイーツ祭りじゃぁ〜!!
そういうことになった。
がやがやがや……。
ウマ耳たちが目を輝かせていた。それも無理はない。なにせ連中は今や、財宝を前にしたヴァイキングと同じ。
え〜、ようこそ諸君。春のヤマザキスイーツ祭りの会場へようこそ……。諸君らの入学と進級を祝い、勝手ながらひと席設けさせてもらった。
今日は存分に楽しんでくれたまえ!
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!! やったーーー!!!」
「食べ放題ですの!? 食べ放題ですの!? 食べ放題ですのよね!?」
「こんなにたくさんのスイーツ……! 生きててよかった〜!!」
欲望に抗うことはできない。なればこそ、適切な対処が必要というものだ。おれは貸し切った体育館にパーティー会場を作り上げていた……。
生クリームの海に飛び込んでいくウマ耳どもを見下ろしながら、おれは口元がニヤつくのを抑えきれなかった。
「……ねーせんせー。今度はなに企んでるの? っていうか今更だけどこれ、許可取ってるの?」
おれの実績を考えてみろ、取れるわけないだろう。
「え? じゃあこれ、怒られるやつじゃないの?」
ふん。おれがそこまで考えていないとでも思ったか。いいか? あと数十分もしないうちに生徒会とかちくわ大明神とかがやってくるだろう。ヤツらはなにを見る?
「何ってそりゃ、このウエディングケーキみたいなヤツとか、シャンパンタワーみたいになってるシュークリームの山とか?」
ああ。そしておれは連中に向かってこう言い放つわけだ。おひとついかがですかってな。これで堕ちるさ。
「いや普通に怒られるでしょ。許可取ってないのは事実だし」
パクパクの海に沈んでいくマックイーンを眺めながらネイチャが言った。まあ普通ならコイツの言うようになるだろう。そしておれはまた今月の説教ノルマをクリアすることになる……って待て。
パクパクの海に沈んでいるマックイーン……?
あれ、なんであいつ普通に食ってんの、スイーツ。
「……え〜? どーいうこと?」
いやいや、あいつは今スイーツが怖くなる魔法にかかっているはず。本来ならばここから真っ先に逃げ出す……いや、スイーツという言葉を聞いただけで怖くて夜も眠れなくなるはずだ! なのに、なぜ……!?
「怖いですわ〜!! 怖いですわ〜!!」
叫びながらパクパクしているマックイーンを、おれはただ見つめることしかできない。まんじゅうこわいじゃねえんだぞ、あれは一体何が起こっている?
タキオンは錠剤の効果について全く分からないと言っていた。持続時間も……。いや、それにしても短すぎる。まだ半日も経ってないんだぞ……。
タキオン、タキオンはどこだ!?
「お呼びかな? ドクター……」
なんで居るんだ? まあいいや、タキオンあれなに? なんであんなんなってんの?
「ふむ……。時にドクター、私もこのマカロンをひとつ頂いてもいいかな?」
いいけど。
「では遠慮なく。……うん、いいね。粉砂糖の繊細な甘みが引き立っている……ドクターの手作りかい?」
まあな。おれスイーツ作るの趣味なんだよね。
「作るの早すぎじゃない?」
「作るのが早すぎるねぇ。まあそれはいいとして……ドクター、君……私のラボに入ったね?」
入ったけど。
「ふむ、やはりか……。となるとドクター、君……まさか、この全てにアレを仕込んだのかい?」
「アレ? アレって?」
タキオンの目(舌)は誤魔化せそうにない。まあコイツには誤魔化す理由も、その必要もない……。
そうだ、タキオン。おまえの言う通り……このスイーツの山には全て催眠薬が仕込んである。
「えーっ! せ、せんせーなにやってんの!?」
ええい騒ぐな。
「こ、こんなにいっぱいの女の子たちを眠らせて……い、いったいなにするつもりなの!? ま、ま、まさか……その、え、えっちなこと、とか……」
知れたこと! いいか、おれには後がないんだ! スカウトしなきゃちくわ大明神に殺されるんだよ!
「え、そっち? いや、それにしたってこの人数をアルファードに入れるの?」
いや、数人選んであとはリリースする。そしておれの優秀な手駒になってもらう……。
「さ……サイッテー! せんせーサイテーだよ! なに考えてるの!? せんせーにはアタシがいるじゃん!」
うるせー万年ブロンズ娘が! お呼びじゃねーんだよ! もっと若いヤツを連れてこい!
「い、言いましたね〜!? アタシは、そりゃ新入生でもないけど! せんせーが勝てって言うなら、G1だって取る気でいるのに!」
いるかそんなもん! そんなもんよりちくわ大明神をなんとかしろや!
「あー知らない! もー知らない! せんせーのこととか、もうアタシ知らないからね〜!? もうどーなっても助けてあげないから! せんせーが泣いて土下座しながら、頼むからアルファードに入ってくださいって言うまで、アタシもう知りませんからね〜!」
言ってろ小娘! 今に見てろ、そろそろ薬の効果が出始める頃だ! そうなればおれの勝ちよ! ちくわ大明神がなんぼももんじゃい!
「あー……ドクター。非常に言いづらいんだが……」
なんじゃい!
「件の錠剤。メジロのお嬢様に試したあの薬なんだが……アレ、実はただのラムネなんだ」
……。
…………。
………………なんて?
「いや……プラシーボ効果について調べる傍ら思いついた実験でね。正直軽いイタズラだったんだよ」
いやいやいや! ちょ、ちょちょちょちょーい! 通るか……通るかそんなもん! じゃあアレはなんだったんだ? マックイーンのアレは?
「まあ、思い込みが激しかったというか……いや、しかし興味深いサンプルだった。シチュエーションを整えれば、人は本当に思い込んでしまうんだね」
え? じゃあなに? アレただのラムネだったの?
「プライムデーで安かったから大量に買っておいたのさ。ブドウ糖は吸収率も良くて、優秀な糖分だからねぇ」
ふむ。じゃあ……えーっと。まあ……うーん。えー……とりあえず逃げるか。
「逃しませんよ?」
……スゥ──……。あ、こんちわ。
「はい、こんにちは。まずは言い訳を伺いましょうか」
あー……。えーっと、なんすかね。あの、日頃頑張ってる小娘ども、じゃない……えっと、ウマ娘たちに、喜んで欲しいな〜って……。
「よからぬことを企んでいたと、聞こえましたが……私の聞き間違いですか?」
……全部タキオンが計画したことだ! おれはなにも知らなかったんだ!!
「ちょ、ドクター! 私のイタズラのことは謝るから、巻き込むのはやめてくれたまえ!」
ちくしょー! おれだってやりたくてやったわけじゃねーんだよ! 大変だったんだからな、こんだけいっぱいスイーツ作ると材料費もバカにならねーしよー! おかげでウチの予算は4月にしてもうピンチだ!
「部費の予算はレースに関連する物品の購入や、遠征費を支給する目的で組まれています。予算の個人的な目的の仕様は、予算を横領したと解釈することも可能です──ここから先は、言葉を選んだ方が良さそうですね?」
……ちくしょう……おれだって……ガキどもに邪魔されなきゃ、こんなことをする必要も……。
「……仕方ありませんね。あなたに課していた新入生のウマ娘を3人以上スカウトするという宿題は、他チームからの移籍でも認めることとしましょう」
マジで!? あ、いや……マジ、ですか?
「ただし、最低1人は新入生をスカウトすること。そして今回の無許可での体育館の貸し切りと、未遂に終わったあなたの企みに関しての処罰は、また後日のお楽しみにしておきましょう」
……あっ、はい。あの……ホント、すんませんっした。もうしません、マジで。心……入れ替えます。あの、今回は、マジで……あの……。
「はいはい。後片付けはきちんとするようにしてくださいね──私も忙しいですし、今日はこの辺りにしておきます。それでは」
ちくわ大明神は去り際にスイーツの山からひとつ摘んで歩いて行った。危機は去った……いや、全然去ってない。
……散々だ、全く。タキオン、いつか仕返ししてやるからな。覚えとけよ。
「ドクター、八つ当たりも良いところだよ! 騙したのは悪かったが、まさかこんな大規模なことをしでかすとは予想出来ないじゃないか!」
くっそぉ……! また説教だ。今度は何を言われるかわかったもんじゃない。次はエリクサーでも開発しろとか言われるんじゃないか。
「はいはい、せんせーのことだからこんなことだと思ったよ。ところでせんせー? アタシに何か言わなきゃいけないことがあるんじゃないかなーって、ネイチャさんはそう思うんだけど〜……せんせーはどう思う?」
ナイスネイチャがニヤニヤしながらおれを見ている。おれに後がないからって調子に乗りやがって……。こいつには前々からちゃんと立場ってものを分からせてやる必要があると思っていたのだ。おれは言ってやった。
マジすんませんっしたネイチャさん……あの、マジお願いするんで、一生のお願いなんで、ウチに入ってもらうことって出来ますかね……?
「う〜ん、ちょっと頭が高いかなー。ほらほら、もっと跪いて〜」
とりあえずおれは土下座した。
頼む、後生だ。ウチに……アルファードに入ってくれ、ネイチャ。お願いします。
「え〜? なぁに〜? さっきアタシのことお呼びじゃないとか言ってなかったっけ〜?」
さっきのはごめんなさい。ほら、ネイチャはアレだよ、いい意味で遠慮しなくていいっていうか、おれもポロッと思ってもないことが出ちゃうっていうか。
「う〜ん、でもな〜。アタシもほら、結構いいセン行ってるウマ娘っていうか。前線で戦っちゃう系っていうか? ほら、結構強豪っていうの? 引く手数多だしさ〜」
頼むよ〜頼むよ〜。おれにはお前が必要なんだよ〜。お前しか頼れるヤツがいないんだよぉ〜。
「え〜? う〜ん、そこまでいうなら、まあ移籍してあげなくもないかな〜? ってカンジではあるんだけど〜。どうしよっかな〜でもな〜」
ネイチャがチラチラとおれを見下ろしている……。勝負を決めよう。
頼むよ〜。なんでも言うこと聞くからさ〜。
「ん? 今なんでもするって言った?」
なんでもするとは言ってない。
「よっし! 言質取ったからね! じゃあ毎週日曜日はデートってことで!」
待て待て待て。少し話そうぜ。
「ダーメ! せんせーが言ったんだからね、なんでもするって!」
なんでもするとは言ってない(2回目)。
まあいいや。ネイチャは都合のいい女なので、あとでどうにでもなるだろ。とりあえず1人確保したし、これでちくわ大明神にも多少の言い訳が立ちそうだ。
「はいじゃあ決定! これからよろしくね、せんせ〜?」
はいはい。ところでタキオン、ウチとかどう?
「絶対に遠慮しておくよ。可愛いらしい狂犬も見えていることだしね」
え? どういうこっちゃ。
「後ろを見ることが出来ないのは不便だねぇ。巻き込まれないように、私はこれで失礼するよ」
タキオンはスイーツを一つ摘んで帰って行った。意味深な言葉に首を傾げていると……。
「……ねえ。マジ、さぁ……いい加減に、して欲しいんだけど……」
……あっ、やべ。
「聞いてないって言ったよね。アタシ……絶対認めないって言ったよね」
ゲェーッ! タイシンだ、逃げろ!
「今日という今日はブッ殺してやる! アタシに説明もなしにまたなんかやらかして……! いい加減、こっちにも堪忍袋ってのがあるってこと、きっちり教えてやる!!」
おまえに我慢袋なんかないだろ! ちょ、ちょっと待とうぜ! おれだってやりたくてこんなことやってるわけじゃ……そうだネイチャ! ヘルプミー!
「……まあ、アタシが口出すことじゃないよね。頑張って、せんせ」
ウッソだろおまえ!? 裏切るまでが早すぎるだろ!?
「だってさ。じゃあ……歯ぁ、食いしばれッ!」
くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
なんだってこんなんばっかりなんだ。トホホ〜! もうスカウトはこりごりだよ〜!