『ナショナリズム艦娘一党独裁大本営鎮守府』 〜ウチの秘書艦達が “万歳”すぎる〜   作:ぷるりん@ぷるりん

1 / 1
01 「砲雷撃戦!よーい!」

ここは当鎮守府の司令部棟、執務室。

俺の職場だ。

 

現在、1時間後に始まる定例集会に向けて、個人的な最終確認をしている。

 

 

今日はここ、佐世保鎮守府の恒例、『定例集会』の日だ。

他ではどうか分からないが、ここでは、部隊の配置換えや今後の方針など、様々な重要事項がこの日に発表される。

 

 

しかも今日は特に、鎮守府の『重大な方針転換』について、発表する予定だった。

 

 

コンコン。

 

作業してる所に、執務室のドアをノックする音が聞こえてきた。

そのまま、ノックの主は俺の返事を待たずに、ノブを回す。

 

一応、上官の返事を待つことが、規則のはずなのだが。

まあ、ここの艦娘に対して、一々そんな事を気にしてもしょうがない。

 

 

ガチャリ。

 

 

「提督さんっ、いよいよ今日は本番ですね」

 

スタスタと軍靴の音を鳴らしながら俺の前まで歩いてくるのは、銀髪を二つのサイドテールに纏めた美少女。

青い軍帽とスカート、白い軍服にその身を包み、首元と髪に、それぞれ赤いリボンを巻き付けている。

 

 

まあ、俺の執務中に部屋に入ってくる相手なんて、十中八九彼女しかいない。

 

彼女は俺の秘書艦、『鹿島』だ。

 

 

「・・・・・ぁ゛、ああ」

 

いけない。

情けないことに、緊張で、喉がカラカラだ。

 

 

眠気を抑えるように、濃いめのコーヒーを、グイッ、と飲み干す。

昨日は、ロクに寝れなかった。

 

 

 

あぁ・・・、これから先に起こる事を考えると、本当に頭が痛くなる。

もはやプレッシャーだけで、胸がペシャンコに潰れてしまいそうだった。

 

 

「・・・もしかして、だいぶ緊張してますか?」

 

そんな俺をよそに、彼女はずいぶん余裕そうに見える。

 

 

相変わらずというか、何と言うべきか・・・。

 

こんな状況でも平気で居られる神経は、ホントに、流石だ。

この佐世保鎮守府に着任してからというもの、今まで毎日、鹿島に振り回されっぱなしの日々だった。

 

 

「も〜、しっかりして下さいねっ!」

 

その美しい容貌に、クスッと微笑みを浮かべて鹿島は、ポンと俺の腕を叩いた。

 

 

思わず少しだけ、ドキッとしてしまう。

少女然とした容姿に反して、彼女のしぐさには、大人の女性を思わせる『妖艶さ』がある。

 

きっと、鹿島の事だ。

それを分かった上で、俺をからかってるのだろう。

 

 

「・・・ハァ、まったく誰のせいでいつも、こんなに苦労してると思ってるんだ?」

 

思わず、苦笑しながら答える。

そんな彼女のイタズラ心にも、今は少しだけ救われた気がした。

 

 

 

「では、準備はよろしいですか?最初の挨拶、頑張ってくださいねっ・・・!」

 

 

 

「・・・私の、提督さんっ♡」

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

ここは集会所。

ちょうど、司令部と艦娘寮の間にある、式典用のホールだ。

 

 

普段は締め切られガランとした、だだっ広いホールに、今は大量の女性達が立ち並んでいる。

 

背丈や年齢はそれぞれの、しかし皆一様に若く、可憐な女性達だ。

通常ならば決して見ることのない、少々異様な光景。

 

きっと一般人達が見れば、アイドルのイベントか何かだと、勘違いしたかもしれない。

 

 

しかし、彼女たちは『艦娘』。

 

現在、世界人類を脅かす深海棲艦に対する唯一の対抗手段にして、この日本国を最前線で守る『歴とした軍人』だ。

その立ち振る舞いには、多くの国民を護ってきた誇りと、多くの死線を潜り抜けてきた風格があった。

 

 

普段は任務のため、可能な限り鎮守府を離れている艦隊達だが、この日ばかりは他の鎮守府に助けを借り、八割以上の艦娘が、一同に会していた。

 

 

しかし、何度見ても圧巻だな。

ホール前方、ステージ上に設けられた席から、立ち並ぶ艦娘達を見下ろす。

 

100人を優に超える、歴戦の艦娘達。

ここにいる彼女達だけでも、中小国くらいなら、軽く捻りつぶせるのだろう。

 

その事を認識すると、緊張で指が、カタカタと、小さく震えてくる。

 

 

いや、弱気になってはいけない。

 

仮にも、俺はここ佐世保鎮守府の提督だ。

彼女達の『責任者』として、堂々と胸を貼らなければ。

 

 

そろそろ、既定の時刻だ。

俺は、同じくステージ上にいる艦娘、加賀や大和達に、チラリと目で合図を送る。

 

そして立ち上がり、備え付けのマイクの前まで、歩いていった。

 

 

 

___プツッ、サーーッ___

 

マイクの電源が入り、ノイズ音がホールに響く。

話始める前に、まず敬礼をする。

 

 

すると、それまでザワついていた艦娘たちが、まるで待っていたかのように、『サッ』と、一斉に敬礼した。

 

 

「・・・みんな、だッ、・・・・・・・て、提督の『宮下 トオル』だ」

 

・・・あーやばい、噛んだ。

 

 

さっきまで引き締まっていた空気が、ガヤガヤと、一気に緩むのを感じる。

正直、かなり恥ずかしい。

 

何処からか、「てーとく頑張って〜!」とヤジまで飛んでくる。

うるさいうるさい!

今は進行に集中させてくれ!

 

 

「まずはこの重要な日まで、1人の欠員もなかった事に感謝したい。君たち一人一人の努力のお陰だ。・・・いつも、本当にありがとう」

 

耳が赤くなって居ないことを祈りつつも、普段から思っている事を素直に述べる。

何とか立て直すことが出来た。

 

そのまま、考えてきた言葉を続けていく。

艦娘達も、未だ賑やかながら、ちゃんと耳を傾けてくれているようだ。

 

 

「_____という事だ。これで私からの挨拶と、本日の流れについての説明を、締めようと思う。・・・私からは以上だ、ありがとう」

 

 

『・・・パチパチパチッ!!!』

 

私が締めくくると共に、ホール中が艦娘達の拍手で包まれる。

 

良かった。

 

想像していたよりも、好印象だったみたいだな。

拍手はそのまま、しばらく鳴り響いていた。

 

 

 

そして、俺がすでに着席して、拍手がまばらになってきた頃。

 

 

 

遅れて、ある『1人の艦娘』がステージの横、垂れ幕の裏から登場する。

 

 

 

彼女が現れた瞬間、ワァーッ!!!と一斉に湧く。

 

俺の時よりも大きな拍手と、艦娘たちの黄色い感性。

『彼女』はそれに動じること無く、堂々たる足取りで、ステージ上を歩く。

 

 

艦娘としての制服の上から身に付けているのは、かなり上等な軍帽と外套。

 

そのどちらとも、白の布地に金の刺繍と装飾が施されており、帝国海軍の、とても『階級の高いもの』のみに許される格好だとわかる。

 

 

彼女はマイクの前まで歩くと、そこで立ち止まる。

艦娘たちの方を向くと、喋り易いようにマイクの高さを調整し始めた。

 

女性としては、平均の背丈。

であるにも関わらず、その存在感は、今この場の、誰よりも大きい。

 

 

そして彼女は調整を終えた後も、しばらく何かを待つように、ただ黙って、その場に立っていた。

 

 

そのまま、しばらく時間が過ぎた。

数十秒、いやもしかしたら、そのまま数分が過ぎたかもしれない。

 

 

もしかして、話す内容を忘れてしまったのだろうか。

 

こちらが不安になるような時間、彼女はその美しい顔に、微笑みを貼り付けて、ただホール全体を見渡していた。

 

 

そして、会場中が静まり返り、シーンと、物音一つなくなった時。

 

この場の、緊張が頂点になったその時に・・・。

 

 

 

「・・・今から、半世紀ほど前」

 

彼女は、ポツリと呟くように、語り出した。

 

 

 

「・・・・・私たちは、敗北しました」

 

 

 

 

「戦って轟沈した者は、まだマシです」

 

彼女はそのまま、ポツリポツリと、静かに。

しかし迷いなく、その意思を伝える。

 

 

「・・・ある者は鉄クズへと解体され、ある者は外国へと接収を強いられ、ある者はただ『新型兵器』の的として、・・・その身を汚されました」

 

透き通るような、彼女の声。

それだけが静かに、ホールに響いていく。

 

 

 

 

「しかし幸いにして、何の因果かこうして再び、私達は艦娘として、今この地に立っています。」

 

ここで初めて、彼女の声に、グッと力が入る。

 

 

「それは、例えヤツらがッ!いくら私達の身体をケガそうとも・・・!この『魂』までは決して、奪えなかったという事ですッ!!」

 

同時に、一旦沈みきった会場中の空気に、ワッと一気に熱が篭もり出す。

気温が、一二度上がった気がする。

 

そのまま畳み掛けるように、演説は続く。

 

 

「私はこうして日本に戻って来た事を、ただの偶然とは考えません。再び艦隊として、この国に仕える事、・・・再び国民をお護りする事こそが、我々『艦隊』与えられた天命なのでしょう・・・!」

 

その口調は気付けばヒートアップし、鋭敏な物へと変わっていく。

それは見慣れたはずの彼女が、まるで何かに取り憑かれたかのようで。

 

 

「しかし目が覚めてみれば、どういう事だ・・・ッ!!!我が国の『この惨状』はッ!!!」

 

どんどん彼女とは違う、・・・なにか『異様なモノ』に、変わっていってしまうかのようで。

 

 

 

「私達が、戦ったのはッ!!!『こんなモノ』のためでは無いッ!!!」

 

灼熱の様な怒りのあまり、その顔をヒドく歪めて、彼女は叫ぶ。

 

 

「・・・敵国は未だ、我が国土をその軍で踏みつけて!!我が政府を飼い慣らし!!我が国民を支配していますッ!!」

 

気付けば場内は、艦娘たちの怒声と、拍手拍手喝采で溢れている。

 

中には、涙を流して激高する者までいた。

 

 

「私達の他に今、誰が民を救えますかッ・・・!?誰が、国を護るのですか・・・!?」

 

ああ、もう彼女を止めることは、出来ないんだな。

 

「私達しか居ないッ・・・!!今度こそッ!、今度こそは、この国を護り抜いてみせる!!・・・それが、我々『艦隊』の使命なのですッ!!!」

 

俺にも、この場にいる誰にも。

 

 

「今この時を逃せば、もはやこのような好機は、二度と訪れないでしょう!!だから今!!今この時こそ・・・!!」

 

 

雄弁に語るその後ろ姿が、俺には、今にも崩れてしまいそうな程、脆くて壊れやすいモノの様に感じられて。

 

 

 

「『暁の水平線』に・・・!!勝利を刻むのですッ!!」

 

その小さな背中を、本当は誰よりも傷つきやすい俺の秘書艦を、守らなければいけないと思った。

 





『船幽霊』…幽霊船,亡霊船ともいう。海上生活者の間に語り伝えられている霊異現象の一つ。
世界の海洋国に広く存在する俗信で,海上遭難者の亡霊が幻の船で現世の者に働きかけてくると信じられている。

日本では特に、水難事故の死者の霊とみなされ、船を沈没させ、生者を仲間に引き込もうとするとされる。
人の姿で現れるもの、船そのものの形で現れるもの、怪火・怪音などの怪現象として現れるのなど、全国各地にさまざまな伝承が残る。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。