よう実×貝木泥舟   作:グリル鍋

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001 プロローグ

 

 

 

 

 嘘とは何か、というのを読者の方々は一度でも考えてみたことがあるだろうか。

 

 まるで哲学じみた問いかけであり、およそ多くの善良な一般市民はそのような思考をした試しはないだろう。テーマ自体が取り扱いにくく、場も盛り上がらない。ともすれば不謹慎と言えるかもしれない。嘘は嘘だ、と嘘を嫌う者は憤慨交じりにそう糾弾するかもしれない。

 

 だが、生まれてこの方一度も嘘をついたことがないという人間は、この地球上には存在しないと俺は思う。人間は言葉を用いる生き物であり、だからこそ嘘と付き合わずに生きることなど出来はしないのだから。言葉には嘘が含まれている。否、言葉は全て嘘だ。嘘とは言葉だ。

 

 それを鑑みて、もう一度考えて欲しい。嘘と隣り合わせの生活を送る我々現代人だからこそ、嘘を日常的に用いるお前たちだからこそ、自分がいつも何をしているのか、何を()()()生きてきたのか、知る必要がある。

 

 自分で自分が何をやっているのか分かっている奴など存在しないとは思うが、それでも期待はしたい。自分を知る上で嘘を知ろうと必死に足掻く者が現れるのを、期待している。

 

 ——というのは勿論嘘だ。

 俺にそんな純情な感情があるわけないだろう。

 

 俺から言わせれば、嘘を知ろうとするなど素人のすることだ。危殆に瀕していると言っていい。

 

 嘘が何かなど分かりきっているからだ。

 わざわざごまかす必要もない。

 おためごかしを言うつもりもない。

 ごまめの歯軋りなんて、とうに見飽きている。

 

 嘘とは偽の言葉だ。

 言葉に本物も偽物も無いと言う輩もいるとは思うが、その論すらも本当なのか嘘なのか分かったものじゃない。詭弁とはまた少し違うが、似たようなものだ。

 

 偽の言葉——付け加えるとするならば、本物の言葉というのはいわゆる理想像というか、幻想上にあるものであって、厳密には存在しない。この世には偽の言葉だけが存在している。普段お前たちが使っているのも偽の言葉だ。

 

 前言撤回、発言の訂正、もしくは修正。

 一度出た言葉など、後からどうとでもできる。

 そのような存在が本物であっていい筈がない。

 

 詐欺師として。

 嘘を生業とする俺として、一家言どころか十家言でも百家言でも持たせて頂こう。嘘に関する話ならば、ちょっとした住宅街が出来上がってしまう。とんだ地域開発、まちづくりだ。

 

 そんな素晴らしい地域貢献をしてきた俺だが——最近はその考えを改めて強めるような、そんな機会に恵まれることがあった。

 

 特殊な学校に特殊な生徒。

 ゴーストバスターではなく、詐欺師として是非向かいたくなるような場所だった。騙しがいのある生徒が何人もいた。千石撫子とは関係ないが、蛇の生殺しという状態になっていた。

 

 今回の件は臥煙先輩の指示で働いた以上、当然ながら好き勝手に動くことができず少なくない不満を覚えたが、中々に面白いものも見れたため、よしとしよう。

 

 ——そんな風に、満足したフリをする俺だった。

 

 自分の気持ちに嘘はつけない、という言葉がある。

 生憎と、それも嘘だったようだ。

 

 

 

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