ブロッサムヒルの片隅、小さく佇んでいる集落の中央で『私』は目を覚ました。
うたた寝でもしていたのだろうか。私は欠伸を一つすると、再び街の警護を続けるのであった。
…時が経つ
私が妹のように可愛がっていた子が、忽然と姿を消した。
どうしてだろう?私は疑問と悲しみに苛まれていた。
それでも私は、与えられた任務である以上、ここを守護しなければならない。
…時が経つ
私は集落を守る傍ら、私は『妹』を懐かしむように思い出していた。
あの『花騎士で一番になってお姉ちゃんと一緒に戦う!』と、世の理も知らない無邪気な子供の様に語っていた姿が遠い昔のように感じられた。
あのこはげんきにしてるかなぁ
ポツリと声に出す。その声は響くことすらなく、突然吹いた風にかき消されたのであった。
…時が経つ
花騎士の同期が集落に訪れた。息災な様で何よりと思えたのだが、とても悲しそうな顔をしていた。それと同時に、居なくなったあの子を気にかけていた。
そういえばあのこはどうしてるのだろう
ただ、音もなく呟く。
よく本当の妹の名前で呼んでしまったりしていた妹にそっくりなあの子、元気にしてるだろうか。
私はそう行く末を案じながらも、今日もこの集落を守るために警護につくのであった。
…時が経つ
ある晴れた日の午後、私がいつも通りに村を守っていると、見覚えのある影が三つほど見えた。
一人目は『妹』
最後会った時からどれだけ経ったのだろうか。服装は時代を思わす甲冑の装いが服の上から多く見られた。そしてその身体は成熟しており、瞳からは全てを受け入れる──そんな意志の強さを感じた。
二人目は村の集落にいた『あの子』
ある日、この集落から突然いなくなった、私がよく妹と呼び間違いをしていたあの子。その立ち振る舞いは、まるで私を鏡に写した様な──そんな風に感じた。
そしてその瞳は、きらきらと情景の念を感じさせる様に、輝やいていた。
そして三人目は『同期』
最後に会ったあの時から、その姿こそ変わってはいないものの、その瞳は何処か、迷いなく遠くを見つめていた。
あれ、さんにんともしりあいだったんだ?
私はだんだんとこちらに歩いてくる彼女達に向かい口を開く。だが、彼女達はこちらを向くも、付近を見渡し首を傾げながら歩いていく。
私はその背後について行くことにした。単純にみんなでどこに行くのだろうと気になったのだ。
彼女達が足取り重く向かった村の奥地、そこには一つの墓標と植物が添えられていた。
私はそれを見ると理解した。
ああ、わたし────
しんでたんだ。
存在していないこの身で、声もなく弱々しく呟くと、身体が風に解けていく。理解してしまったから、きっと現には留まれないのだろう。
私は最期に三人に向かい大きな声で伝えた。
『 !!』
三人が一斉に振り向く、そこにはただただ綺麗に色づいた紅葉の木々が何かを伝える様、風々に靡いていたのであった。