はじまりのおはなし
ある一つの世界があった
黒い影の化け物と闘う世界
人々が戦いながら生きる世界
ある日、一つの≪黒星≫が流れた
流れてきた≪黒星≫は、悪意と憎悪、そして闇で世界を蝕んだ
その影響は黒い影の化け物を更に勢いづけ、ただでさえ化け物に苦戦していた民を苦しめた
そして、化け物と闘い慣れているはずの戦士達さえも、無残に殺されていった
≪黒星≫は、この世界の神さえも殺さんとしていた
神とて簡単にやられるわけにはいかない
自らの世界を、民を殺した≪災厄≫を許すわけにはいかなかった
死闘の末、神は≪黒星≫の封印に成功した
ただ壊す事は叶わず、封印するのに精一杯だった
無理もない
神さえも深手を負っていた
それほど、≪黒星≫は強大だった
神に討たれた≪黒星≫は予言を残した
――私は必ず蘇る――
――闇が私の欠片を集め、再び立ち上がるだろう――
――その時こそ、神と世界のオワリだ――
生き残った民は戦慄した
しかし、神も予言を残した
――悲観する事も絶望する事もない――
――異世界より、奇跡の訪問者が現れる――
――かの者は、世界を救う力を持ちうる者――
――その力を用いて、必ず黒い星を退けるだろう――
そして、静かに眠りにつく
世界を救う力を持つ者の訪れを夢見て……
パタンと本を閉じる。
その音は広大で静寂に包まれたこの場所にはよく響いた。
音を立てた人物は、その本の表紙を黒い手袋を嵌めた手で優しく撫でる。
本を見つめる目は、何かを咎めるような鋭さを持っているが―――
暫くじっとそのままでいたその人は、ふと顔を上げ視線を大きな扉へと移す。
両耳についた銀の耳飾りが揺れる。
大きな扉が開き、上品な白の燕尾服に帽子を被った青年が顔を出した。
「■■■殿、ここにいたか。もう時間だ、そろそろ出るぞ」
淡々と告げるとさっさと顔を引っ込めてしまった。
革靴が床に当たる音が遠ざかっていくのが分かる。
どうやら白い青年は待っていてはくれないらしい。
小さく微笑むと、持っていた本を周りのたくさん本の詰められた棚に返さず、傍のサイドテーブルにそっと置く。
また表紙をひと撫でする。
「やっと見つけた手掛かりだが……今は時間がないみたいだ。僕は僕のやるべき事をしよう。
……それまで、消えないでくれたまえよ」
そうつぶやくと、腰かけていた一人掛けソファの背に掛けておいた黒いマントを広げ羽織る。
消音のために敷かれた臙脂色のカーペットを踏みしめて、出入り口の扉へと歩いていく。
扉の前で立ち止まると、くるりと後ろを振り返り、広大な部屋を見回す。
「しばしの間、閉館だ。次来る時は、一体どれだけの世界と手掛かりが手に入るんだろうな」
黒マントの青年が出ていくと同時に、広大な部屋――
―――また再び明かりが灯るのはいつになるのか
ようやく掲載にたどり着くことができました。
なかなか長いお話になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。