自分の姿も見えない程の闇
音も響かない
声も届かない
そんな真っ黒な世界の中で、闇に溶ける黒髪と不気味なほどに鮮やかな紅色の瞳をもった、紫黒のローブを羽織った青年が、ぼんやりと淡く光って立っている事に気付く。
「お願いだ……。助けてほしい……」
悲しそうな、苦しそうな表情をして、こちらを見つめてくる。
「何度も繰り返したけど、どれもダメだった。
もう君達しかいない。
お願いだ。どうか■■■を救って……」
何を救ってほしいのか、わからなかった。
その部分だけ、ノイズ掛かって聞こえない。
どういう事なのか聞こうとしたが、その青年は闇に吸い込まれる様に消えてしまった。
また全てが闇に飲まれる。
―――……!!
――――……!!
何か聞こえる気がする。
――――おい!!
それは誰かの呼び声だった。
ゆっくりと目を開けた。
「おい!大丈夫か!?しっかりしろ!!」
「う……ん」
目に入ってくる光が眩しい。
よく見えるようになると視界に入ったのは俺の顔を覗き込む、黒髪に紅い瞳の青年と、紺色の毛をした耳の大きい小動物だった。
どうやら長く眠っていたらしい。
周りを見回せば、若々しい木々が広がっている。
「……?」
「よかった…。目が覚めたんだな」
黒髪の青年が安心したように息を吐く。
「ここは……?」
「辺境にある小さな森の入り口だよ。ナヴィ…旅の連れが何か見つけたみたいで後を追ってきたら、お前がいたんだ」
「きゅっきゅっ」
俺の質問に青年が答えてくれると、傍にいた紺色の小動物が嬉しそうに跳ねながら鳴き声をあげる。
「大丈夫か?見た感じ、外傷はないみたいだけど」
確かに、どこか痛いという感じはしない。
強いて言うなら、頭がじんわりと痛む気はする。
「……アンタは?」
「よし。一応、目の前の相手を認識できるぐらい意識はハッキリしてるみたいだな」
「俺はシリウス。しがない旅人だよ。こんな所で居眠りしてた、お前の名前は?」
優しく笑いながら、手を差し出してくる。
「……レン。多分」
手を握り返し立ち上がらせてもらいながら、戸惑いがちに答える。
「多分?」
「…なんか記憶がぼやけてて、ハッキリしないんだ。名前はかろうじて覚えてた」
「他に何か覚えてるか?」
「いや、何も……」
「そうか…。記憶喪失ってやつかもな…」
ふむ、と言いながら、何か考え込む姿勢を取る。
その間、自分の考えに沈む。
誰かに何か頼まれたような気がするが、肝心の何を頼まれたのかがわからない。
思い返しても、あるのは黒い闇だけ。
「そんな暗い顔すんなよ」
その声で意識を戻すと、シリウスがしょうがないなとでもいうような表情でこちらを見ている。
そんなに表情が暗かったのだろうか。
「何も覚えてないって不安だと思うけどさ、もしよかったら一緒に来ないか?
今から、この森の奥を調べに行くんだけど」
よく見ると森の向こうは薄暗い。
森の外のここが明るいのに、ひどくシンとしているのが怖く感じる。
「わかった。アンタについていくよ。今はその方が安全そうだ」
「よし、決まり!こんな小さな森でも、日が暮れれば面倒だから、とっとと奥確認して戻ってこようぜ」
そう言うと、紺色の小動物が嬉しそうに鳴き声を上げて、俺の周りをクルクルと回り出す。
……歓迎されてるようで、悪い気はしない。
「よかったなー、ナヴィ。楽しくなるぞー」
シリウスが紺色の小動物をナヴィと呼び、小さな頭を撫でまわす。
「あの…こいつは?」
「ん?ああ、忘れてた。こいつはナヴィ。知らないうちに俺について来てた。
なんかよく分かんない生き物だけど、害無いし、賢いからそのままにしてる。
まあ、旅のお供みたいな感じだ」
「きゅ!」
また一声あげると、存在を主張するように俺の前でぴょんぴょん跳ねる。
まあ…なんというか、害がないならいいだろう。
「さあ、行こうぜ、レン!」
シリウスはニッコリ笑って、森へと歩き始める。
彼について行こう。
そうすれば…もしかしたら、何かわかるかもしれない。
今は、それが一番である気がした。
ナヴィのフォルムは、某携帯獣のイー○イとかFFシリーズのカー○ン○ルとかみたいなのと思っていただけたらOKです。