元柳斎の養子(1900歳) 作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス
日間ランキング1位継続、お気に入り3000突破!
なんで?(困惑)
本作ほんとに息抜きでテキトーに浮かんだネタを盛り込んだオサレ詐欺作品なんやで……?
そんな本作を読んで下さった皆さんに感謝です
山本元柳斎重國。
『元流』の開祖にして総師範。護廷十三隊、死神統学院など、尸魂界の歴史に於いて必ずその名を聞く功績を残した男は、その実、大罪人である私をして恐れを抱くほどの苛烈さと冷酷さを兼ね備えた死神だ。
敵対した者はたとえ命乞いをしようが容赦はしない。護廷創立当初、彼に反感を抱いて叛逆した者達がいたが、それらは全て彼の一刀の下に焼き払われている。
全ては護廷のために。
世界の秩序と存在の均衡を維持するために。
それを妨げる存在を、あの男は遍く滅してきた。
かつて大罪人とされた私が生きているのは、人を統べる力を欲していたからに他ならない。
――あくまで”統べる力”である点に、私が採用された核心がある
設立当初は護廷とは名ばかりの殺戮集団として霊力なき魂魄に恐れられていた。それほど気性の荒い者達を統一するには、彼らを圧倒する力――挑む事すら考えさせない畏怖の象徴を据える事が最善だった。
元柳斎がその座に就く事も出来ただろう。
だが――”総隊長”という立場に就くには、その印象は不適格過ぎる。死神になり得る魂魄はなにも荒々しい者ばかりでないからだ。そもそもそんな恐ろしい存在を貴族が認める筈もない。
そこで私に目を付けた。
剣術のみで高位の霊力保持者を殺し続けてきた私の存在は既に周知されており、護廷設立前後で挑んでくる実力者は元柳斎を除いていなかった。
そして、その一戦で私は敗北した。
――生まれて初めて敗北を喫した
そのとき抱いたものの名は定かではない。屈辱か、喜悦か、どちらとも言えぬ複雑なそれを、しかし私は不快には思っていなかった。
一つ確かなのは、まだ私は強くなれる――その思考が浮かんだ事だ。
故に、私は元柳斎に条件を持ち掛けた。彼が設立する組織に属し、荒々しい者共を一手に引き受け扱く代わりに、定期的に手合わせする事を。
大罪人を引き入れるにあたって貴族達と揉めた可能性は高いが、そこは私の関知するところではない。
ともあれ、そんな経緯で護廷十三隊・十一番隊隊長を務めはじめて百余年。
定期的に死合を交わしつつ、着実に強くなっている実感を抱きながら日々を過ごしていた私は、最近になって別種の驚愕を抱く事になった。
総隊長が子供を引き取った。
初めてその話を聞いた時、私は耳を疑った。
話を聞く限り、一番隊隊士の持ち回りだった警邏地で拾ったらしい。最初は虚の出現を憂慮して一時的に保護したのだと考えた。その後子供は割り当てられた流魂街へ送られるのだろうと、そう予想し、その日は意識の外に放り出した。
だが、暫く経っても同じような噂が流れてくる。
同じ内容かと思えば実は違う。拾っただけならまだしも、引き取った――つまり、家族として受け入れたと意味するその噂に、私は耳を疑ったのだ。
よもやあの苛烈な男に、他者を家族として引き入れる情があるなどとは驚きだ。
――とはいえ、私には関係ない事だと、すぐにまた思考の外に放り捨てた。
それが翻ったのは半月が経ってからだ。
常であれば月に一度の頻度で死合を行っていた。私から声をかける事もあれば、仕事の都合であちらから言ってくる事もあり、その辺は互いの不文律だった。とは言え総隊長に比べればこちらの方が業務の余裕はあったため、大抵はあちらの都合に合わせ、声を掛けられるのを待っていた。
だが、待てど暮らせど元柳斎は来ない。
数か月待っても一度も声を掛けに来ない状況に際し、そこまで総隊長としての業務が忙しいのかと疑問に思い、噂をかき集めていけば――何たることか、拾った子供と過ごしているという。滅多に休暇を取らない総隊長が高頻度でそれを取り、邸宅で過ごしているのだと。
さすがに我慢の限界だった私は殺意の霊圧を放ちながら元柳斎の邸宅に向かった。
――その時があの子供と初めて会った瞬間だ
霊力があるのは分かる。とは言え、それは隊士から感じたものと同程度。傍らに浅打がある事に疑問はあったが、死神になる以前の私も適当に死体から奪っていたから似たようなものだろうと考えた。
その邂逅以後、私と子供の関係は”ただの知人”に過ぎない。
数か月の空白を埋めるように邸宅に押しかけ、問答無用で元柳斎を引っ張り出す時に顔を合わせるくらいだ。私の霊圧を感じ取って素早く元柳斎も出てくるので彼とは数言話した程度。
初対面時に霊圧で威圧したせいか最初は警戒してきていたが、それも徐々に解け、私の気配の消し方を真似ようとまでしている。
元柳斎から私の危険性を聞いているかは定かではないが、もし聞いているのだとすれば、あの少年は一般隊士達よりよっぽど肝が据わっている。
「……本当に、恐れ知らずな子です」
目を眇め、呟く。
霊圧も気配も消した私は眼下で展開される試合を注視していた。夜半、月が昇ってから総隊長と山本悠璃は人気のない荒野へ赴き、およそ一刻ほど斬り結ぶのだ。
ほぼ毎日行われているそれは悠璃を鍛えるためのものらしい。
明らかに総隊長は手加減している。白打も走術も使わず、純粋な斬術のみで応じているのがその証左。反面、少年の方はその三つを全力で使っている。
その霊圧を感じ取り、様子を見に来てみればこれだ。こんな事をしていたのかと少し驚いた。
それに、あの子供が瞬歩すら使えるとは思っていなかった。
「総隊長が教えたのか、はたまた見て学んだか……」
総隊長が瞬歩をこの試合で使っている様子は無い。つまり見て学んだとすれば、私と死合に行く時か。ただ見送っているだけかと思っていたが、もし見様見真似で使えるようになったとすればその時しか思いつかない。
途方もない才能があるのか。あるいは、純粋に霊圧操作能力が高いのか。
「――っ!」
――そこまで考えた時、目を瞠る事が起きた。
子供が刀を振り下ろした。
元柳斎は一歩後退してそれを避けたが――問題は、そこではない。刀の切っ先から輝く霊力が飛び、死覇装に切り傷を与えたのだ。
ただの剣圧ではない。
あれは相応の霊圧を有し、且つそれを操る能力に長けている者にしか出来ない霊力を伴った遠当て。凝縮するほど物理的な圧力を伴う霊圧を束ね、斬撃として飛ばす技だ。それは席官級以上の隊士なら可能な技術だが、かなり消耗するためわざわざ誰かに教える事はしない。よしんば教えるにしても、それは霊力を放出する鬼道系斬魄刀の持ち主同士に限られる。
あの少年はまず間違いなく斬魄刀の解放を可能としていない。
つまり総隊長から教わる事無く、自力であの遠当てを体得した推論が浮かび上がる。
「――どうであれ、成長が楽しみですね」
最初は愉しい死合相手を奪う者だと思っていたが――ともすれば、
そう考えを改めた私は、帰路に就く二人を追うように隊舎の自室へ瞬歩で引き上げた。
時は移り、翌日。
その日すべき最低限の業務を終えた私は、足早に一番隊隊舎まで足を運んでいた。廊下ですれ違う隊士達から恐怖の視線を向けられるが、それを無視し、隊首室まで移動する。
「総隊長、少しよろしいですか?」
「――開いておる」
「では失礼します」
隊士達に向けるものとは毛色の違う乱暴な返答を聞き、私はすぐに隊首室の扉を開けて入室した。
総隊長は執務机で書類を片付けていたが、私が入ってくるなりそれを脇に寄せ、警戒しながらこちらを睨み付けてくる。
「何用じゃ。死合なら一昨日にしたであろう」
「今日はその事で参った訳ではありませんよ。あなたが拾った子供……山本悠璃について、お話があるのです」
「儂には無い。帰れ」
にべもなく突っ返される。表情は険しさを増し、滲み出る霊圧に怒りが混じり始めているのを見て、相当あの子供を大切にしている事が窺えた。
「私を危険視している事は重々承知ですが、私とて剣士の端くれ。才ある者を見た時の衝動はあなたにも理解できるはずです」
「貴様と儂が同じとでも言いたいか」
「ええ」
「笑止。貴様は奪い殺す者、儂は活かし教える者じゃ。貴様なぞに関わらせるとロクな事にならんのは目に見えておる」
最早話す事は無いと言わんばかりに、脇に追いやっていた書類を手元に戻し始める総隊長。
その姿に、これはこれは、と内心で関心を抱く。
「私はまだ用件を申し上げていないのですが」
「戯けが。大方悠璃に剣を指南しようとでも言いたいのじゃろう」
「剣だけではありませんよ。斬拳走鬼、すべて指南するつもりです」
「……なに?」
そこで、ぴたりと総隊長が動きを止め、怪訝な目を向けてきた。
「……貴様、何を企んでおる」
「それを答える前に、総隊長、なぜ試合でずっと鬼道を使わないのです?」
「……気付いておったのか」
「当たり前です。私の探知能力を侮らないでください……それで、何故です? 見つかりたくないなら”
縛道の七十三・倒山晶は視覚を騙すだけで霊圧知覚までは騙せない。だが鬼道を編み出し、それを体系化したのは総隊長自身だ。霊圧知覚を騙す縛道を編み出している以上、それらを掛け合わせる事も不可能ではない。
それは総隊長も理解している筈だが、その上で使っていないのだとすれば、理由は自ずと絞られてくる。
「まぁ、答えは想像が付いています。大方あの子供に鬼道を使うのを見せたくないのでしょう?」
「……」
「沈黙は肯定と捉えますよ」
押し黙った男に、相変わらず分かりやすい人だと思う。苛烈、冷酷――思慮が浅いとは言わないが、しかし直情的なきらいがあるこの男の考えはとても読みやすい。加えて、決めれば中々意見を翻さない。
今後頑迷な思考にならないかが気掛かりだが――まぁ、そんな事はどうでもいい。
「なぜ総隊長が鬼道を見せたがらないのかは知りませんが、既に霊圧による遠当てが出来るのです。鬼道を扱う条件は満たしています。加えて斬魄刀を渡している時点で死神になろうとしているのは明白、今から習得しても問題ないと思いますが」
「うむ……それはそうじゃが、鬼道は霊圧を込め過ぎると暴発するじゃろう。儂が居ない時にそうなってはな……」
つまり、自分の見ていないトコで滅多な事をしないで欲しい、と。そう考え、鬼道を教えていないし、目の前で使っていないらしい。
ともすれば鬼道の存在自体教えられていないのか……
「……でしたら、
「儂はほぼ使えぬから無理じゃな」
そう首を振った総隊長は、机に立て掛けた杖に目を向ける。内包されている斬魄刀”流刃若火”の霊力の特性は”熱”。故に総隊長は炎系統の鬼道に極めて高い素質を持つが、水や氷はあまり得意ではない。回道は正にその水系統の鬼道に多く属しているので同様に不得意のようだ。
「それなら私が教えましょう」
「なに?」
「私の斬魄刀をお忘れですか?」
「……そうであったな」
総隊長は唸りながら眉根を寄せる。
私の斬魄刀の名は【
これの持ち主であると知ったある人物*4から回道を教わった事もある。
――つまり私は、あの少年に回道を教えられる訳だ。
その一連の経緯を斬魄刀から思い出したらしい総隊長は、しかし、と更に険しい表情を浮かべる。
「はぁ……それほどまでに私の事を警戒するのでしたら、ここで約束致しましょうか? あの子供と死合いはしないと」
「……悠璃が望んだら、じゃ。それと斬術、白打は儂で間に合っておる」
「ええ、それで十分です」
苦渋の末、総隊長はそう答えた。
私はその答えに満足し、今回の交渉はこちらの勝利だと会心の笑みを浮かべながら部屋を退出。まだあの子供が受け入れるかは分からないが――あれほど貪欲に力を付けようと足掻き、元柳斎に挑むのであれば、必ず食いつくだろうと確信していた。
――――数日後。
「よろしくお願いします!」
「ええ、どうぞよろしく。あなたが死なないよう鍛えて差し上げます。まずは回道習得に向けて、基本的な霊力操作から始めましょう」
つい先日に放った霊圧を受けても怯む様子が無い少年は、私に師事してきていた。
――直接的な戦闘行為は禁じられた関係だが、まぁいい。
回道を使えるようになれば自ずと戦死はしにくくなる。そうして強くなっていけば、いずれ死合える時が来るだろう。
元柳斎、そして強くなった悠璃と死合った私はかつてより強くなる筈だ。
――ああ、愉しみだ。
かつて、私は真に相応しい”剣八”を私の不甲斐なさのせいで弱くしてしまった。その過去を振り払い、殺し合う――その未来を思うと喜悦が止まらなかった。
悠璃は霊力の籠った遠当て(プチ月牙)で一撃与えたので、普通に試験に合格しました。そして鬼道の講師は初代剣八() 主に回道を教わります
少年時代の更木剣八は護廷十三隊創設当初の十一番隊隊長・卯ノ花八千流さんと死合った事があります。このとき、戦いが終わる事を恐れた更木は無意識に力のセーブを掛けるようになってしまい、これを卯ノ花は『己が犯した不甲斐ない事』と考えています
つまり卯ノ花は”真に相応しい剣八”こと更木の枷を解き放ち、互いに全力で殺し合える一戦のために、悠璃を強く育て、総隊長と合わせて死合って自分の糧にしようと企んでいました
山爺は更木関係は知りませんが、悠璃を糧にしようとしてる事に気付いたので、万が一にも
悠璃はただ鬼道を習いたい一心で試合をしていた事を卯ノ花さんは知りませんが、回道からとは言えその欲求をドストライクで突き刺してきたので易々とこの誘いに乗ってしまいました
やっぱ卯ノ花さんはつよつよです()
原作卯ノ花を見てたら甘い関係とかなり得る訳がないんだよなぁ?!
異論は認めます()