毎日、お腹を壊す光男。
学校でトイレを使うことをためらっていた。
なぜなら、クラスメイトから冷やかされるから。
そんな彼はある日、漏らしてしまう。
光男は泣いて学校のみんなが怖くなってしまう。
だが、彼を助けたのは普段離したことない女の子だった。

※本作はクローン病をテーマにした作品となります。

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おなか痛い

 僕の名前は光男(みつお)

 今年で12歳の小学6年生。

 学校が大好き。

 

 僕は生まれつきお腹が弱い。

 普通のご飯を食べてもすぐにお腹が痛くなる。

 1日に多い時は、10回ぐらいトイレに入るんだ。

 

 でも、小学校では絶対にうんちをしない。

 だって学校でうんちすると、みんなから笑われるから。

 どんなにお腹が痛くなっても帰るまで我慢する。

 

 朝ごはんを食べ終わると僕はトイレにこもる。

 なるべく、家でうんちをしておけば、学校でお腹が痛くなる回数が減るからね。

 だから30分以上、トイレでがんばるんだ。

 お腹をからっぽにするため。

 

 それでも、授業中にお腹が痛くなることもある。

 ある日、朝いっぱいトイレで出したのに、痛みがひどかった。

 授業中も中休みの時間も……止まることがなかった。

 

 それでも僕は絶対にトイレに行かない。

 トイレでうんちをすれば、絶対に明日から「うんち」ってあだ名になるから。

 お腹をずっとさすりながら勉強していた。

 

 今日は最悪だった。

 何回も痛みが起きては我慢して、引っ込むけど、数分後にまた痛みが起こる。

 僕は神様に祈った。

「どうか、うんちが止まりますように」

 

 それでも僕の願いが神様に届くことはなかった。

 給食の時間も痛みが酷くて、食べるのも辛かった。

 お掃除の時間はほうきを持っていたけど、おしりに力を入れるのに精一杯だった。

 

 そのあと、体育の時間になった。

 こんな日に限って、授業に体育なんて……。

 僕はもう迷っていた。トイレにいこうか。

 

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 体育でマラソンしたけど、どうにか我慢できた。

 やっと今日の授業は全部終わり、あとは帰るだけ。

 帰りのホームルームの時間になる。

 

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 クラスのみんなは、はしゃいでいた。

 僕はみんなと違って身体をブルブルと震わせていた。

 まだお腹が痛いから。

 

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 その時だった。

 後ろで遊んでいた男の子たちがドン!っと僕の背中に当たってきた。

 我慢していた緊張の糸が切れたみたいだった。

 

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 僕はついに漏らしちゃった。

 辛いお腹の痛みからは助けられたけど、嫌な音と一緒に臭いにおいが漂う。

 僕のことをおしたくせに、

 男の子たちは

「うわっ、光男のやつ漏らした!」

 と言って指をさして笑い出した。

 

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 それから僕は泣いてママが迎えにくるまで待っていた。

 ママや先生からは「なぜトイレにいかなったかの?」と怒られた。

 僕だっていきたかったのに……。

 みんな酷いよ。

 

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 次の日から僕はずっと学校を休んだ。

 だって行ったら「うんち」とか「うんこ」とか言われるに決まってる。

 正直、怖かった。

 

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 休んでから2週間がたった。

 今までお友達だった子も風邪の時ならお見舞いに来てくれたのに、全然来ない。

 だけど、ある日、クラスで話したいことない女の子が家に来た。

 

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 女の子の名前は小枝子(さえこ)ちゃん。

 大人しい子でクラスでもあんまり話しているところを見たことない。

 小枝子ちゃんはもじもじしながら僕に言った。

「ねえ、光男くん……学校来ないの?」

「もう行けないよ。だって僕は漏らしたから」

 

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 僕は泣きそうだった。

 でも小枝子ちゃんは笑ってこう言った。

「あのね、私のお兄ちゃんも光男くんと同じでこの前、中学校でお漏らししたんだよ?」

 僕はビックリした。

「ウソ?」

「ホント」

 

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 僕より年上なのに漏らしたんだ。

 きっといじめられたんじゃないかな。

「それからどうなったの?」

 小枝子ちゃんは自信を持って答えた。

「なにもないよ?」

 僕はまたビックリした。

 

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「あのね、お兄ちゃんはクローン病なの。病気なんだから仕方ないよ」

「クローン病?」

「そう。だからひょっとして光男くんもそういう病気なのかも? って思ったの」

 知らなかったそんな病気があるだなんて。

「私はお兄ちゃんが毎日お腹痛いところを見ているから光男くんの気持ち分かるよ」

 小枝子ちゃんは優しく笑ってくれた。

 

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 僕は次の日、ランドセルを準備して学校へ向かった。

 クラスのみんなは誰も僕がうんちを漏らしたことを言わなかった。

 むしろ心配してくれていたみたい。

 小枝子ちゃんが来てこういったんだ。

「ね、泣いていた光男くんを笑う子なんてこのクラスにはいないんだから」

 僕は嬉しくなって、また泣いちゃった。

 けど今度は胸がポカポカして気持ちよかった。

 

 



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