仕事で疲れて布団に入って寝て、肌寒さで目が覚めたら山の中だった。
自分の目線が縮んでいるような気はしたが、とりあえず喉が渇いていたので近くにあった川で水を飲もうと思ったら、水面に映る自分の顔が別人になっていることに気付く。
完全に知らない人の顔であり、明らかに子供になっている自分自身に戸惑う男は、何故か自分の名前が思い出せないことに困惑する。
どういうことだと考える男は、自分が思い出せる記憶を全て確認していった。
どうやら思い出せないのは自分の名前だけで、それ以外の全ては思い出せたようだ。
むしろ以前よりも鮮明に思い出せる記憶に、頭の回転は早くなったように感じた男。
それはそれとして腹が減った男は、魚を捕まえようと試みる。
川を泳ぐ魚を容易く素手で掴み取ることができた男は、この身体の身体能力が凄まじいことにも気付く。
木の枝を使った火起こしも簡単にできたあたりで、とりあえず生きていくことはできそうだと思った男は枝に刺した魚を火で丸焼きにしていった。
川魚を丸焼きにして食べた男は身体能力の確認をする。
投げた石が木を貫通、蹴りで大木を容易くへし折れた、へし折った大木を片手で掴んで小枝のように振り回せる、ジャンプしたら簡単に大木を飛び越せた、等々とできることをやってみた男。
子供の身体でありながら身体能力は大人顔負けどころか普通の人間ならできないことができたことに男は驚く。
スーパーマンにでもなったのかと思ったが空は飛ぶことはできなかったので、流石にそれは違うかと男は思ったらしい。
ここが何処なのか知る為に人里を探してみようと思った男は何となく人がいそうだと感じた方向に向かって進む。
凄まじい速度で駆けた男は、前方で巨大な熊に追われている少女を発見した。
走っていた少女が転んで倒れ、このままだと少女が熊に喰われるだろうなと思った男。
それは見たくないなと思ったので素早く熊を追い越して、熊の前に男が立ち塞がると爪を振るってくる熊。
熊の腕を掴んで力付くで遠くに投げ飛ばした男は、振り返って倒れている少女に無事かと問いかける。
礼を言うぞ、おかげで助かったと言ってきた少女が立ち上がろうとするが転んだ時に足を捻っていたのか再び転びそうになったので男が支えた。
歩けるかと聞いた男に、厳しそうだと答える少女。
男が少女に家は近いのかと聞くと、しばらく歩く必要があると答えた少女は困っていた。
見かねた男は、少女を背負って家まで運ぶよと言い出す。
背負われた少女は、家までの方向を指示していく。
駆ける男の速さに驚いた少女は、お主はその若さで達人なのかと言ってきた。
達人になったつもりはないよと言った男は少女に、そういえばきみの名前はなんていうのかなと聞いてみる。
命の恩人には名を教えておこう、櫛灘美雲がわたしの名だと言う少女。
櫛灘美雲か、史上最強の弟子ケンイチに出てくる敵キャラと同じ名前だなと思った男。
お主の名はなんというと聞いてきた少女に、自分の名前が思い出せない男は熊を容易く投げ飛ばした自分が金太郎みたいだなと思って坂田金時と名乗ることにしたらしい。
金時だな、覚えたぞと頷く少女の顔が櫛灘美雲によく似ていたので、まさか若い頃の本人じゃないよなと思った男。
もしかして史上最強の弟子ケンイチの世界に生まれ変わったんじゃないだろうかと考えた男は、とりあえず情報を集めようと思ったようだ。
櫛灘と表札がある少女の大きな家まで到着した男は、そのまま入って構わないと言われたので少女を背負ったまま家に入る。
少女から櫛灘家の者達に男が命の恩人であることが伝えられて歓迎された男は、一室を与えられてそこに住まうことを許された。
道場で師匠である父親と共に櫛灘流柔術の鍛練をしている櫛灘美雲を見ていた男は、何となく技を真似てみたら簡単にできてしまう。
それを櫛灘美雲の師匠に見られて才能があると判断された男は櫛灘流柔術を教え込まれていく。
櫛灘美雲の隣で驚異的な速度で櫛灘流柔術を学んでいく男。
あっという間に櫛灘美雲を追い越して先に進んだ男に、対抗心を抱いた櫛灘美雲も櫛灘流柔術に全力で取り組む。
櫛灘美雲と共に日々を過ごしていった男は櫛灘美雲と組手をしていく。
力0、技10の櫛灘流柔術であるが、優れた身体能力を活かして力10、技10の新しい櫛灘流柔術を編み出した男に圧倒される櫛灘美雲。
しかし2人は年中組手ばかりをしていた訳ではなく、夏になれば男が山から取ってきた竹を使って流しそうめんをしたり、井戸水で冷やしたスイカを並んで食べたりもしていた。
秋がくれば男が集めた落ち葉で焚き火をして、さつまいもを焼いたりもする。
冬になったら雪だるまを一緒に作ったり、かまくらを作って中に2人で入ったりもしていたようだ。
仲良く日々を過ごしていた櫛灘美雲と男。
時は過ぎて10代も終わりが近くなってきたところで櫛灘流の永年益寿の秘法まで教えられた男は、老化を完全に止めることに成功した。
18歳の肉体で老化を止めることができた男に対して、櫛灘美雲は20歳になってようやく老化を止めることができたらしい。
それから何年か経過して櫛灘美雲と共に戦場で戦うことになった男は、子供の時とは比べ物にならないほどに上昇した身体能力と櫛灘流柔術の技を用いて戦う。
戦場で風林寺隼人と名乗る金髪の逞しい男と出会った男は、やっぱり此処は史上最強の弟子ケンイチの世界なのかと考えたようだ。
櫛灘美雲に風林寺隼人と共に戦っていく戦場で敗北することはなく勝利だけを得ていった。
戦いに高揚していた櫛灘美雲が、己の技を振るえる場所を求めていることに気付いていた男。
今は共に戦えているがいずれは別れる時が近付いているかもしれないなと思った男は、久遠の落日は止められないだろうかと考える。
金時、お主も共に闇に来いと誘ってきた櫛灘美雲に丁寧に断りを入れた男。
何故拒むと悲しむ櫛灘美雲に、闇の思想は合わないと言って背を向けた男に抱きついた櫛灘美雲。頼む、一緒にきてくれ、金時と懇願する櫛灘美雲へ、闇には1人で行け、お別れだ、美雲と言って櫛灘美雲から離れた男。
それから久遠の落日を望む櫛灘美雲と闇の賛同者達を倒すことには成功した男であったが、それでも世界大戦は始まってしまう。
世界大戦を止めることはできなかったかと落ち込む男だったが、それでも挫けることはなく前を向いて男は歩いていく。
活人拳として闇と戦っていく男は戦いの中で幾度か櫛灘美雲と遭遇することになる。
執拗に闇へと誘う櫛灘美雲に断固として断る男は度々戦いとなるが、男が毎回勝利して気絶した櫛灘美雲を起きるまで膝枕しているという状態に毎回なっていた。
起きた櫛灘美雲が男の頬に手を伸ばして愛おしげに撫でることも毎回の行為となっているらしい。
互いを嫌ってはおらず、むしろ好いている2人ではあるが、活人拳と殺人拳で道を違えた2人。
相容れない2つの道を選んだ2人であるが、互いを想い合っていることに変わりはないようだ。
長い付き合いになる櫛灘美雲を嫌いになることはないんだろうなと思った男は、今日も櫛灘美雲を優しく倒していく。
こうして男に会えるだけで嬉しい櫛灘美雲は確実に男が好きだった。
流れに流れた男は風林寺隼人の息子である風林寺砕牙と出会って行動を共にすることになる。
暗鶚の里に向かった風林寺砕牙を迎えた静羽。
暗鶚最強の男である穿彗と出会い友となった風林寺砕牙。
暗鶚を改革しようと考える人々を率いて戦うことになった風林寺砕牙を手伝う男、坂田金時の助力により死者を出すことなく戦いは終わった。
敗北した暗鶚継続を願う者達は、かつて戦場で風林寺隼人から忘心波衝撃を教わっていた男によって記憶を失って新たな人生を送ることになる。
風林寺砕牙と結ばれた静羽は、風林寺静羽となって風林寺美羽が産まれたようだ。
幸せそうな風林寺夫妻を見守っていた穿彗は1人で旅に出たらしい。
暗鶚の戦いを終えた風林寺砕牙は妻と娘を連れて梁山泊に帰っていく。
人を殺めることなくこれからも活人拳として戦っていく風林寺砕牙。
これで風林寺砕牙と穿彗が闇の一影となることは無さそうだと思った男。
しかし闇の九拳という集まりは既にできているようである。
更に時が過ぎて天地無真流の道場に向かおうとする緒方一神斎の前に立ち塞がって戦いを挑んだ男は緒方一神斎を圧倒する。
緒方流古武術が全く通用しない男の凄まじい身体能力に敗北した緒方一神斎。
流石は妖拳怪皇、坂田金時と言って気絶した緒方一神斎に、闇ではそんな風に呼ばれているのか私は、と言いながら緒方一神斎を担ぐ男。
天地無真流の道場を狙うのを止めなければ何度でも止めにいくと目が覚めた緒方一神斎に忠告した男は立ち去る。
それから何度か緒方一神斎は天地無真流の道場に向かおうとしたが毎回必ず男によって止められることになった。
天地無真流の道場主は病で死を迎えることになったが、娘と弟子である義理の息子に看取られた安らかな最期だったらしい。
道場主が死んだことで天地無真流の道場を狙うことはなくなった緒方一神斎は、闇の九拳に前任者を殺害してから拳聖として所属することになったようだ。
闇の九拳に所属する櫛灘美雲は、何十年経とうが男の勧誘をまだ諦めてはいなかった。
今日も櫛灘美雲を返り討ちにして、気絶した櫛灘美雲の頭を膝に乗せて膝枕する男。
目が覚めた櫛灘美雲が膝枕の状態で日頃の愚痴を語り始める。
それを聞きながら相づちを打つ男は長い付き合いがある櫛灘美雲の相手に慣れていた。
いつまでもお主が共にいてくれるなら、こんな想いをすることもないんじゃがと言ってきた櫛灘美雲は男の頬に手を伸ばす。
男の頬を撫でる櫛灘美雲の手は、いつも優しい。
語りたいことを全て語り終えた櫛灘美雲は立ち上がると男の胸板に顔を寄せていく。
厚い胸板に頬擦りする櫛灘美雲は、とても幸せそうな顔をしていた。
男に甘える櫛灘美雲を自由にさせている男。
だいぶストレスが溜まってるんだろうなと思ったので男は櫛灘美雲に優しくしようと思ったみたいだ。
山で櫛灘美雲と出会ってから長い時が過ぎたと感じた男。
そろそろ史上最強の弟子ケンイチが始まる頃だろうかと思った男は、白浜兼一を一目見ておこうと思ったらしい。
向かった先で白浜兼一を発見した男から見て白浜兼一は明らかに才能が無いように見える。
あれをあそこまで鍛え上げるのは並みの鍛練では無理だろうなと判断した男が、梁山泊の育成能力は凄いなと感心していると白浜兼一が風林寺美羽と出会っていた。
父と母に祖父の3人から武術の手ほどきを受けている風林寺美羽は原作よりも強くなっているようだ。
背後から近付いた者を投げるような癖がある風林寺美羽に投げられた白浜兼一が完全に気絶してしまっていて困っている風林寺美羽。
それを見かねて近付いた男を警戒して構えをとった風林寺美羽を容易くすり抜けて白浜兼一に活を入れて起こした男。
目覚めた白浜兼一が記憶が曖昧になっていたが男に説明されて風林寺美羽に投げられたことを理解したようで文句を言う白浜兼一。
謝る風林寺美羽を一応は許した白浜兼一は遅刻すると言いながら走り出す。
その場に残された男と風林寺美羽だったが明らかに警戒している風林寺美羽が男に、貴方は何者ですかと聞いてくる。
私の名前は坂田金時、きみの家族の知り合いと言ったところかな、まあ、興味があるのはきみじゃなくてさっき走り出した少年の方だから気にすることはないだろう、と答えて男は白浜兼一が走り去った先を見た。
これから苦難の道を歩きそうな少年を見かけたから見ていただけで特に手を出すこともないしなと言って背を向けた男は、きみも学校があるんだろう遅刻するぞと風林寺美羽に言うと立ち去っていく。
さて、梁山泊がどうなっているのかと考えた男は梁山泊へと向かっていき、門を軽く指先で触れただけで開くと中に入る。
強い気を感じ取って臨戦体勢に入っていた梁山泊の面々から、現れた男の姿を見て警戒を解いた風林寺夫妻が男に近付いた。
お久しぶりですと言ってきた風林寺夫妻に、元気そうで何よりと言った男が笑う。
砕牙と静羽の知り合いかと判断した梁山泊の面々は警戒を解く。
そういえば今日きみ達の娘さんに会ったが警戒されてしまったようだよと言う男に、娘が失礼をと頭を下げようとする風林寺夫妻を止めて、私は気にしていないからきみ達が気にする必要はないさと言い含める男。
娘さんを見てきみ達を思い出したから梁山泊まで来てみたが、特に問題なく過ごせているようだね、穿彗はどうしているかなと言った男へ、穿彗は今も旅を続けているようですが何年か前に弟子をとったようですよと情報を教える風林寺砕牙。
どんな弟子をとったのか気になるから穿彗も探してみるとしようと男は言い出す。
隼人は世直しの旅にでも行っているのかなと聞いた男に、その通りです、父上は昨日世直しの旅に出かけましたと答えると風林寺砕牙は続けて、今日の夜には帰ってくると言っていましたが待ちますかと男に聞く。
いや、長居はするつもりはないよ、そろそろ帰らせてもらうと答えた男。
次に来る時は何か土産を持ってくるよと言った男が出ていこうとしたところで、梁山泊の門まで見送りにきた風林寺夫妻。
貴方のおかげで無事に戦いを終えることができましたと感謝をしている風林寺夫妻に、困っている人を助けるのは当たり前だから気にする必要はないさと笑いかけた男が去っていく。
1人で歩いていた男の前に現れた達人が、妖拳怪皇、坂田金時だなと確認するかのように問いかけてくる。
確かに私が坂田金時だが、何の用かなと言った男。名のある貴様の首には価値があると言い出した達人が構えをとった。
真正面から来る度胸のある相手は久しぶりだなと言う男は構えもとらず自然体でいる。
達人が繰り出した中国拳法の八極拳を残像を残して回避した男は、櫛灘流柔術を使うことなく持ち前の圧倒的な身体能力だけで達人を一撃で倒す。
腹部に叩き込まれた手加減された拳に敗北した達人を道の端に寄せて起こすことなく放置した男は夜の道を静かに歩いていく。
今日は色々なことがあったなと思いながら歩く男は、これからのことを考えていった。
穿彗の弟子も確認しておきたいし、無事に天地無真流を受け継いだ田中勤とその妻がどうなるかも見ておきたいかなと思った男。
やりたいことはまだまだ沢山あるから忙しいなと考えた男の最大の目標は、再びの久遠の落日を防ぐことである。
櫛灘美雲の望む戦乱の世が訪れることがないように戦うつもりでいる男は、闇との戦いをこれからも続けていく。
闇に男を引き入れる為に勝負を挑んでくる櫛灘美雲が諦めることがないとしても、男が闇に入ることは確実にないだろう。
男が自由に力を振るえるのが闇だとしても、決して男がそうすることはない。
凄まじい力を手に入れたとしてもそれをむやみに振るうことがない男は善良だ。
どうしても力を振るいたいと思ってしまった櫛灘美雲は、自由に力を振るえる戦を求めていた。
考え方が男とは正反対である櫛灘美雲は、それでも男のことを好いている。
互いをとても大切に思っている2人。
それでも道を違えたからには戦うしかないのだろう。
互いは自分の正しさを証明する為に、戦って決めるしかない。
敗北を続ける櫛灘美雲に、勝利を続ける男。
櫛灘美雲にとって大切なものは坂田金時という男と自分が力を振るえる戦だけである。
決して諦めることのない櫛灘美雲を止めることができるのは男だけだった。