暗鶚最強の男である穿彗の弟子を確認する為に、旅をしている穿彗の元に向かった男。
日本国内だけを巡っていた穿彗を発見することができた男は穿彗に話しかける。
随分と久しぶりだな穿彗と言った男に、誰かと思えば貴方ですか、お久しぶりですね坂田金時殿と言う穿彗。
砕牙に聞いたが弟子をとったそうだねと言って周囲を確認した男が、彼がそうかなと屋台で購入したタコ焼きを2箱持って此方に走ってくる青年を見ながら言った。
買ってきましたよ師匠、そちらの方は?と聞いてきた青年に、昔世話になった坂田金時殿だと答えた後、失礼のないようにしろよ里巳と穿彗は言う。
鍛冶摩里巳です、よろしくお願いします坂田金時殿と畏まった鍛冶摩里巳へ、そんなに畏まる必要はないさ鍛冶摩くん、と男は笑いかけた。
その年齢にしては随分と鍛えられた身体を持っているね、何度か瀕死になって蘇生されたこともありそうだ、だいぶ傷だらけだが穿彗の弟子になって大変だったんじゃないかなと言って鍛冶摩里巳の肩に男は優しく手を置く。
お察しの通り決して楽な道のりではありませんでしたが、師匠のおかげで病弱で20までは生きられないと言われていた身体が病に打ち勝つことができました、師匠の弟子となったことに後悔はしていません、寧ろ弟子にしてくれたことに感謝していますと言い切る鍛冶摩里巳。
きみのその片目は経絡を無理に抉じ開けた結果かなと言って眼帯に覆われた鍛冶摩里巳の左目を見る男に、師匠は止めようとしたんですが俺が強引に押し通した結果です、武の発展にこの身体を寄与できた事が心から嬉しかったんですが、師匠には物凄く怒られてしまいましたと鍛冶摩里巳は言った。
鍛冶摩里巳から武の発展になるなら命まで捧げそうな危うさを感じ取った男は、穿彗に苦労していそうだなと優しげな眼差しを向ける。
敏感にそれに反応した穿彗が男に日頃の色々な苦労を察せられたことに気付く。
複雑そうな表情をしていた穿彗に、鍛冶摩くんが買ってきてくれたタコ焼きが冷めてしまいそうだから食べた方が良いんじゃないかなと言った男は笑う。
冷めない内にどうぞ師匠と言って穿彗にタコ焼きを1箱差し出した鍛冶摩里巳に礼を言うと受け取った穿彗。
爪楊枝をタコ焼きに刺して持ち上げた穿彗は1口でほうばる。
熱々のタコ焼きを食べた穿彗は美味いなと頷いた。
鍛冶摩里巳は坂田金時殿の分も買ってきましょうかと言い出すが、食べたくなったら自分で買うから気にしなくていいさ、きみも食べないと冷めるぞと言う男。
タコ焼きをほうばった鍛冶摩里巳は熱かったのかはふはふと言っていたが、タコ焼き自体は美味しかったらしい。
美味しそうに食べる師弟を見ていた男も食べたくなったのか屋台に向かって走っていく。
凄まじい速度で駆けた男を見て鍛冶摩里巳が坂田金時殿は、やはり凄い武術家だったみたいだなと思ったようだ。
戻ってきた男も加えた3人でタコ焼きを食べていく。
全員がタコ焼きを食べ終えると穿彗から男に頼み事があるようだった。
里巳と戦ってもらえませんかと言った穿彗に、それは別に構わないと了承した男は、弟子の了解はとったのかなと穿彗に問いかける。
弟子は、やる気のようですから問題はないでしょうと答えた穿彗。
全く人通りのない自然に満ち溢れた山奥まで移動した3人。
暗鶚の構えをとった鍛冶摩里巳に対して両手をポケットに入れたままの男。
穿彗から始め!と合図がされた瞬間に跳躍して近付いた鍛冶摩里巳が放つ拳を容易く避けた男がポケットに手を入れたまま肘を折り曲げて肘打ちを鍛冶摩里巳の腹部へと叩き込む。
明らかに手加減された肘打ちであってもそれを喰らった鍛冶摩里巳が吹き飛んで大木へと叩きつけられる威力がある一撃。
技を使われた訳でもないのにこの威力、達人の速度ならば見切れていた俺でも気付いた時には肘打ちを喰らっていた、師匠と同じく達人の域を超えているのかこの人は、と思考を巡らせていく鍛冶摩里巳。
立ち上がった鍛冶摩里巳が足で印を結び腕に力をみなぎらせて拳を振るう。
暗鶚の技で挑んでくる鍛冶摩里巳の攻撃を手をポケットに入れた状態で肘や肩で打ち落として捌いていく男。
櫛灘流柔術の技を使うことなく男が持つ身体能力だけで鍛冶摩里巳の相手をする。
天性の肉体の性能は超人級すらも超えており、男は一度見ただけで技を完璧に真似られる才能まで持っていた。
印相、蹴合の印を手で結び、蹴りの威力を上げた鍛冶摩里巳が放つ蹴りを肘で受け止めた男は微動だにしない。
全く技が通用しないと思いながらも攻め続ける鍛冶摩里巳。
今度は此方から行くぞと言った男が繰り出す肘打ちを何とか捌いた鍛冶摩里巳は印相、肘収の印を結んでしなやかな肘捌きを見せつける。
筋肉質の人間特有の動きのロスが全くない鍛冶摩里巳は、弟子の中でもかなりのレベルにあった。
よく育てられているなと穿彗の育成能力に感心した男。
無月の舞を披露した鍛冶摩里巳の攻撃を肘打ちだけで迎撃した男は、そろそろ動の気を開放したらどうかなと鍛冶摩里巳に言う。
行きますよ、坂田金時殿!と動の気を開放した鍛冶摩里巳が繰り出す技の数々は威力がこれまで以上に強化されていたが、鍛冶摩里巳の遥か先にいる男にとっては脅威にはなり得ない。
これならどうですかと言いながら気を練った鍛冶摩里巳は、鎬断を繰り出す。
気の炸裂による経絡の一時的遮断現象を起こす技だなと一目見て判断した男が鎬断を躱して鍛冶摩里巳に接近する。
肘打ちを放つ男に練鍛鎧でそれを受けた鍛冶摩里巳だが、男の肘打ちの威力を完全に防ぐことはできなかった鍛冶摩里巳は吹き飛ぶ。
鎬断を身体で行ったとしても強引に力で捩じ伏せられることがあるんですね、勉強になりましたよ坂田金時殿と鍛冶摩里巳は楽しそうに笑った。
上半身の服を脱ぎ捨てた鍛冶摩里巳が、ならばこの技ならどうですか坂田金時殿!と言って塊・鎬断を披露した瞬間に止めろ里巳!と言った穿彗は戦いを止めようとしたが男の眼差しに止められる。
全身で鎬断を行う鍛冶摩里巳の塊・鎬断を男は避けると鍛冶摩里巳の背後に回り込んで肘打ちを叩き込んだ。
鎬断でずたずたになった鍛冶摩里巳の気の流れを癒す気も肘打ちと同時に叩き込んでいた男。
完敗です、負けましたと言った鍛冶摩里巳に近付いて頭を殴った穿彗。
何するんですか師匠と頭を押さえながら言う鍛冶摩里巳に、使うなと言った技を使ったからだ馬鹿弟子!と穿彗は怒る。
確かに塊・鎬断の使用は危険だから控えた方が良いなと言って男も頷く。
組手で必殺の技を使ってどうするつもりだお前は!その内死人が出るぞ!塊・鎬断の使用は禁止だ!わかったな里巳!と強く言い切る穿彗が弟子の影響か表情豊かになっているなと男は思ったようだ。
弟子をとったことは穿彗に良い影響を与えているみたいだなと考えた男は、弟子を激しく叱る穿彗を宥めておく。
師匠以外で実力差がかなりある相手と戦うことになった時に弟子がどうするのか確かめたかったのかなと問いかけた男に、その通りですが弟子が思ったよりも馬鹿だということがわかりましたと落ち込む穿彗。
気分が乗ったからといって師匠であるわたしに使用を止められている技を使うとは思ってもいませんでしたからね、おおいに裏切られた気分ですよ、と言いながら穿彗は鍛冶摩里巳を見る。
わたしの言うことは今まで真面目に聞いてきた弟子だったんですが、武の発展の為になるなら何でもしそうなところが問題ですねと言って穿彗はため息を吐く。
弟子のことをしっかりと考えている良い師匠になったじゃないか穿彗と言った男は笑みを浮かべる。
良い師匠になれていればいいんですが、思っていたよりも弟子を育てるのは大変ですねと日頃の苦労を滲ませながら穿彗は言う。
俺は師匠に出会って鍛えられたおかげで今も生きていられるので、出会えて良かったと思っていますよと言って笑顔を見せた鍛冶摩里巳。
師は弟子を育て、弟子は師を育てる。
互いに成長している穿彗と鍛冶摩里巳の師弟が良い関係だと思った男。
これを見れただけでも穿彗とその弟子を探して良かったと考えた男は、良ければ櫛灘流柔術も少し教えようかと言い出す。
暗鶚以外の技も弟子に教えてもいいかもしれないと思っていた穿彗が了承した。
白浜兼一よりかは才能があるが、才能に満ち溢れているわけではない鍛冶摩里巳に櫛灘流柔術を教えていく男は実際に技をかけて身体で覚えさせた後に、鍛冶摩里巳の身体を操って技を出させていく。
力0で技10の流派である櫛灘流柔術を学んだ鍛冶摩里巳は凄まじい鍛練の量で技を1つ修得する。
鍛冶摩里巳が覚えた技は嵐車であり、ほとんど力を使うことなく相手を投げる技であった。
とりあえず技を1つ修得させたところで、それでは私はそろそろ行くとするよと言って立ち去ろうとした男に、ありがとうございましたと頭を下げる穿彗と鍛冶摩里巳。
また会おう2人ともと言いながら背を向けて歩き出す男。
日本国内にある地下格闘場で荒稼ぎして生活費を手に入れた男は、定住することなく流れるように日本を旅していく。
一定の場所にほとんど留まることのない男を闇の情報網を使って見つける櫛灘美雲。
男の前に現れた櫛灘美雲は女性用のスーツを着用していていつもの服を着ていない。
どうやら戦いに来たわけではないようだと判断した男は、今日は何の用かなと櫛灘美雲に聞いた。
見てわからぬか、デートじゃと答えた櫛灘美雲が近付いてきて男の腕に自らの腕を絡めて腕を組んでくる。
新鮮な刺身が有名なようじゃから食べに行こうと言い出す櫛灘美雲。
櫛灘美雲が予約していた高級な店に入ることになった男と櫛灘美雲は個室で食事をすることになる。
旬の新鮮な刺身を食べていく男と櫛灘美雲は食事を楽しんだ。
酒もかなり入って軽く酔った櫛灘美雲の頬が赤く染まっていて密着が強くなってきたと感じる男。
食事を終えて会計は男が全て支払って済ませた。
男に寄り添いながら歩く櫛灘美雲は軽く酔っていても頭はしっかりと回っているようで、実は部屋も取ってあるのじゃがのうと言い出して男をじっと見つめる。
部屋まで送れば良いのかなと言った男に一緒に泊まっていけばよいと言う櫛灘美雲。
そんなことをしたらきみが綺麗だから我慢できないよ私はと言った男に、我慢などする必要はないじゃろうと言って櫛灘美雲は微笑む。
闇の九拳としての立場はいいのかなと聞いた男に、誰にも文句は言わせぬと言い切る櫛灘美雲。
美雲と言って櫛灘美雲を見つめる男へ、金時と言った櫛灘美雲が男を見つめた。
互いに名前を呼んだ後に顔を寄せて口付けを交わした男と櫛灘美雲の2人はそのまま並んで夜の街に消えていく。
次の日の朝。2人の体力には差があったようで、まだベッドで眠っている櫛灘美雲を置いて部屋を出ていく男。
櫛灘美雲はとても満足そうな顔で眠っていて起きることはない。
先に部屋の代金を支払った男は宿泊していた防音設備がしっかりとしている高級なホテルから出ると駆け出していく。
ホテルに1人残された櫛灘美雲が起きた時には男は既に県外に出ていたようだ。
男を狙う達人は数多く存在しており、妖拳怪皇坂田金時の名は武術界では有名になっている。
日本国内を出ることはない男を探す達人は多いが、出会えても勝利することは誰もできていない。
櫛灘流柔術の技を引き出すことすらもできておらず、単純に身体能力だけで圧倒されて倒される達人達。
たとえ特A級の達人級であっても肉体の性能が男とは違い過ぎて勝負にもならないようだ。
そして今日も現れた達人が男の手加減したデコピンで容易くかなりの距離を吹き飛ばされて失神する。
気を失った達人を通行の邪魔にならないように運んで空き地に放置した男。
今日の達人はあまり強くなかったなと思いながら歩いていく男に向かって飛んできた矢。
その矢を受け止めると手紙がくくりつけられており、どうやら矢文であったようである。
手紙を開いて読んでみると、ある場所に男を招待したいと書いてあった。
明らかに罠であることは理解できたが暇ではあるので向かってみることにした男は手紙に書いてあった場所まで向かう。
刀剣や槍に鎖鎌と弓などで武装した者達が沢山いる山の中に到着した男が真正面から突入していく。
盛大に放たれた矢の雨を全て回避しながら突き進んだ男が弓を持つ者達を先に仕留めて気絶させる。
達人級とそれ以外も入り交じる相手の実力を瞬時に判断して手加減の度合いを調節した男は縦横無尽に敵を倒す。
振るわれる刀剣をへし折り、突き出された槍を破壊して、伸ばされた鎖鎌の鎖を引きちぎった。
全ての敵を倒し終えた男の前に現れた3人。
特A級の達人級であり、闇の武器組の頂点である八煌断罪刃達。
不動の武士、來濠征太郎。死神と踊る武王、ミハイ・シュティルベイ。偃武の執行人、エーデルトラフト・フォン・シラー。
その3人が各々の得物を携えて男に襲いかかる。
既に小太刀を抜いている來濠征太郎が接近して小太刀を突き出す。
ミハイ・シュティルベイが大鎌で刈り取るように動く。
エーデルトラフト・フォン・シラーが剣を隙間なく振るう。
その全てを技を使うことなく身体能力だけで避けた男は3回拳を叩き込むだけで戦いを終わらせた。
腹部に拳を叩き込まれて意識を失った3人は妖拳怪皇の規格外さを知ることになったようだ。
特A級の達人が3人で連携していても坂田金時には敵わないことを知った3人。
今回戦ってみて大きく隔てるような実力差を感じ取り、坂田金時には八煌断罪刃全員でかからなければ敗北は確実だと判断した3人は集結を考えたらしい。
しかしなかなか予定が合うことはないようで、八煌断罪刃全員の集結が難しいと考えた3人は断念する。
これでしばらく八煌断罪刃が男に手を出すことはないだろう。
闇の九拳にも八煌断罪刃が妖拳怪皇に敗北したことは伝わっていて興味を示す者達はいるようであり、実際に戦って実力を知っている緒方一神斎にどんな相手であったのか聞く者もいた。
武術を使われることなく圧倒的な身体能力だけで此方の武術が破られて全く通用しませんでしたねと語った緒方一神斎に、更に興味を引かれた九拳の者達。
確か同門でしたよね櫛灘美雲さん、妖拳怪皇の武術家としての腕前はどうなんですかと聞いた緒方一神斎。
武術家としてもわしより上であることは確かじゃろうなと答えた櫛灘美雲。
その答えを聞いて戦ってみたいと考えた拳魔邪神シルクァッド・ジュナザードは妖拳怪皇の居場所を密かに探らせることにしたようだ。
日本国内を転々としている妖拳怪皇の居場所を確実に知っているであろう櫛灘美雲に聞かなかったのは、明らかに妖拳怪皇に執着している櫛灘美雲が素直に教えるとはシルクァッド・ジュナザードには思えなかったからだった。
女宿は妖拳怪皇を闇に引き入れたいようじゃが、そう簡単にはいかない相手なのは間違いないわいのうと思いながら林檎を食べるシルクァッド・ジュナザード。
それにしても妙に機嫌が良さそうな女宿は何があったんじゃろうなと思ったシルクァッド・ジュナザードは2つめの林檎をかじっていく。
闇の九拳の集まりを終えた面々が去っていく中でシルクァッド・ジュナザードを呼び止めた櫛灘美雲が、探るのも挑むのも構わんがわしの邪魔はするでないぞ拳魔邪神と忠告して去っていった。
これも年の功かの、どうやら内心を女宿には見抜かれていたようじゃわいのう、さて、妖拳怪皇坂田金時はどのような男か興味深いところじゃのうと考えを巡らせていくシルクァッド・ジュナザードは、顔を覆う仮面の下で楽しげな笑みを浮かべる。
坂田金時と早く死合いをしてみたいものじゃわいのうと内心で考えたシルクァッド・ジュナザードの願いが叶う日は近い。