櫛灘美雲の幼なじみになった転生者   作:色々残念

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第21話、旅人

旅人である男は1ヶ所に長く留まって定住することはなく流れるように日々を過ごしていき、今日も日本の何処かでのんびりと生きていた。

 

男の首を狙っている闇に居場所を特定されることもなく、戦いとはかけ離れた穏やかな生活をする男。

 

そんな平和な日常をおくっていても錆び付くことなく研ぎ澄まされている男の感覚は、僅かな違和感すらも感じ取るだろう。

 

どんなに巧妙に気配を隠そうと必ず敏感に察知する男に奇襲は通用しない。

 

闇の人間に発見されたとしても、自らに闇の手が伸びるよりも速く男は移動する。

 

去っていく男の速度に完全に着いていけていない闇は、坂田金時という男の情報を必死に集めていたようだ。

 

男が驚異的な身体能力の持ち主という基本情報は闇では広く伝わっていた。

 

そして梁山泊のように決まった場所を持たない男は旅人で、移動を続けていることは闇も掴んでいるが今現在何処にいるのかまではわかっていない。

 

闇に莫大な賞金まで懸けられて狙われている男は今日も旅をしていき、向かった先で楽しんで過ごしていく。

 

到着した町では祭りの用意がされていて、色々な屋台の準備をしている人々を発見した男。

 

焼きそばの屋台を準備していた人がぎっくり腰になって動けなくなり、物凄く困っているのを見つけた男は、とりあえずぎっくり腰になった人を病院まで優しく運んでいった。

 

すまねぇな兄ちゃんと男に言ってきたぎっくり腰になった人が、今日の祭りは無理そうだなと落ち込んでいたので、ぎっくり腰の人が用意していた焼きそばの材料と屋台の場所代を全て男が買い取る。

 

代わりに焼きそばの屋台をすることにした男は祭りが始まると焼きそばを作り始めていき、食べたお客さんから美味しいと評判で行列が並ぶ人気の焼きそば屋台となっていたようだ。

 

ぎっくり腰の人が用意していた焼きそばの材料が無くなるのは早かったらしく、手早く店じまいをした男は賑やかな祭りを回っていき、久しぶりの祭りを楽しむ。

 

飴細工や射的にくじ引きにライターやバッジを売っている屋台までもあり、型抜きをやっている店を発見した男は型抜きを連続で成功させて3万円ほど稼ぎ、祭りに使うお金を確保していた。

 

いか焼きと焼き鳥にステーキ串やフランクフルトを食べていた男は胃袋の空きを考えて、まだまだ食べられるなと思ってたこ焼きとフライドポテトに唐揚げを購入する。

 

冷えた酒も欲しいところだが18歳に見えるこの顔では買えないだろうなと思った男は、残念そうな顔でため息をつく。

 

櫛灘流柔術の延年益寿の秘法を使ったことには後悔していないが、酒が自由に飲めないのは残念だなと考えた男。

 

屋台の食事だけで腹を満たした男は、鳴っている太鼓の音を聴くと太鼓を打っている人は腕がいいなと判断したらしい。

 

祭りを充分楽しんだ男は後片付けを手伝っていき、屋台の解体も終わらせてから静かになった夜道を歩く。

 

わざと人通りの少ない道を選んで通っていった男は、祭りの最中に感じ取っていた気配の主が現れる時を待っていた。

 

ここなら邪魔になるような人はいない、そろそろ出てきたらどうかなと背後を振り返って問いかけた男の声に反応して現れた達人。

 

妖拳怪皇坂田金時殿とお見受けする、武術家として手合わせを願いたいと言ってきた達人は、闇に所属する達人ではなく男と戦いたいだけの達人であったようだ。

 

達人の構えは空手であり、日々部位鍛練を重ねてきたであろう分厚く無骨な手がかなりの強度を持っていることが一目でわかった男。

 

空手の達人に合わせて空手の構えをとった男に、鋼鉄すらも容易く貫く貫手を放った空手の達人。

 

廻し受けで貫手を捌いた男は淀みなく流れる水のように滑らかに身体を動かして正拳突きを放つ。

 

戦いの最中であろうと空手の達人が思わず見とれてしまう程に、見事な男の正拳突きが空手の達人に叩き込まれていく。

 

正拳突きの一撃で空手の達人を倒した男は、空手の達人は決して弱くはないが流石に人越拳神本郷晶には劣るなと考えていた。

 

旅を続ける男は向かった先で偶然闇の武器組に所属している達人と出会う。

 

フランキスカ・フリークスの異名を持つシェルマン・カミューという名のフランキスカ使いと真正面から対峙した男。

 

フランキスカとは5世紀頃から西ヨーロッパでフランク人によって使用された投げ斧であり、そしてフランキスカを使った民族だからフランク人と呼ばれていたのである。

 

死ね坂田金時と言いながら間合いをとって凄まじい速度で投げ斧であるフランキスカを投げたシェルマン・カミューは妖拳怪皇坂田金時など過去の達人に過ぎないと思っていた。

 

しかしシェルマン・カミューが全力で投げたフランキスカをいとも容易く掴み取った男を目にして、化け物か、こいつはと思わず言っていたシェルマン・カミューは認識を改めたらしい。

 

掴み取ったフランキスカをへし折って刃も砕いた男に、よくもわたしのフランキスカをと言って予備のフランキスカを手に持ち直接斬りかかったシェルマン・カミューの攻撃を回避した男は、シェルマン・カミューに拳を叩き込み気絶させたようだ。

 

完全に気絶しているシェルマン・カミューが持っている予備のフランキスカも粉々に破壊しておく男。

 

シェルマン・カミューを倒してから闇に情報が伝わる前に素早く移動した男が向かう先は山であり、自然の中でしばらく過ごすつもりのようである。

 

山で野宿して生活する男は朝から食料を調達して、豪勢な朝食を作っていく。

 

満腹になるまでボリューム満点な肉が多い朝食を食べて少し一休みをすると男はバイオリンをケースから取り出す。

 

演奏を始めた男はジークフリートが思いついたメロディーから生み出された曲を1人だけしかいない山中で奏でていった。

 

いい演奏ができたと思った男が1人で頷いていると雲行きが怪しくなってきていたようで、曇り空の今にも雨が降りそうな天気となる。

 

素早くテントを組み立てた男がテントに入るとちょうどそのタイミングで凄まじい豪雨が降りだす。

 

雨を弾くテントの音を聴きながらテントの中で横になった男は、雨が降り止むまでしばらくは外に出ない方が良さそうだと思ったらしい。

 

今日は特に用事もなくて暇だから昼寝でもするかと考えた男が寝始めたところで大量に降り注ぐ雨は更に勢いを増していく。

 

降り止むまでテントの中で昼寝していた男が、雨が止んでから外に出るとちょうど虹が見えていた。

 

久しぶりに虹を見たなと思った男は朝から調達していた食料を調理して昼食を作る。

 

できあがった昼食を食べ終えた男に近寄ってきた熊を気当たりで追い払って、見ただけで完璧に覚えている様々な武術の技を繰り出していく男。

 

凄まじい威力の技が振るわれる度に男から発生した暴風が吹き荒れていき、男の周囲の木々の葉が大きく揺れた。

 

数多の武術を身に付けている男が最初に学んだのは櫛灘流柔術であり、男が最も使い慣れている武術も櫛灘流柔術である。

 

しかし男が今まで戦いの中で全力で櫛灘流柔術を使ったことはほとんどなく、身体能力か他の武術を使って戦ってきたようだ。

 

男が戦いの中で櫛灘流柔術を全力で使う時こそ、妖拳怪皇坂田金時という男が本気になる時だろう。

 

最もそんな時は早々訪れることはない。

 

超人級すらも越えている坂田金時とまともに戦いになったのは、拳魔邪神シルクァッド・ジュナザードだけである。

 

それでも静動轟一をシルクァッド・ジュナザードが極めたことでようやくまともに勝負になる段階になったというだけで、全力を出した男の本気をまだ完全には引き出せていないシルクァッド・ジュナザード。

 

それはシルクァッド・ジュナザードも理解しているようで、いずれは坂田金時という男の全力を出させるつもりでいるようだった。

 

ティダード王国で弟子の育成をしている時でも、頭の片隅では坂田金時のことを考えているシルクァッド・ジュナザードはどうすれば坂田金時の全力を引き出せるかを思考し続ける。

 

結論としては全力を出さねばならぬ状況を作り上げる必要があると考えたらしい。

 

拳魔邪神シルクァッド・ジュナザードは1人の武術家として純粋に坂田金時という男の全力を見てみたいようだ。

 

それがたとえどんな手段であったとしても坂田金時の全力が見れるなら構わんわいのうと考えるシルクァッド・ジュナザード。

 

しかしわし1人では無理そうじゃわいのうと判断したシルクァッド・ジュナザードは、時を待つとするかのうと冷静だった。

 

しばらく山で穏やかに過ごしていた男は再び旅に出ることにして、荷物をまとめてから背負うと走り出す。

 

旅人である男は移動を続けて辿り着いた港町で新鮮な魚介類を味わってから宿泊施設を探していくと、ちょうどいい宿泊施設を発見する。

 

新鮮な刺身が美味かったなと思いながら宿泊施設のベッドに横になった男。

 

ベッドの上で天井を眺めながらこれからどうするかなと考えていると、僅かに漏れた殺気と近付いてくる気配を察知した男がベッドから立ち上がって無造作に部屋の唯一の入り口である扉を開けて通路に出た。

 

完全に気配を消して進んだ先で短剣を隠し持った達人を見つけた男は、ほんの僅かな一瞬で短剣を隠し持つ達人の意識を刈り取っていく。

 

闇の武器組ではなさそうだが狙いは私で間違いなさそうだと判断した男は達人が隠し持っていた短剣を使えないように粉々に粉砕しておいたようだ。

 

完全に意識がない達人を達人が持っていた鍵の部屋番号で宿泊している部屋を把握してから、部屋まで運んでベッドに寝かせておいた男。

 

意識を失っている達人は明日の朝まで起きることはないだろう。

 

とりあえずこの宿泊施設から出るとしようかと思った男は、部屋に戻って荷物を背負うと支払いを済ませて宿泊施設を出ていく。

 

新たな宿泊施設を探したところで旅館を発見した男は、今度は旅館に泊まることにしたらしい。

 

泊まりだけで食事は無しにした男が旅館の部屋に荷物を置いて座布団に座ると、今度は襲いに来る奴が居なければいいがと言った。

 

武術界では妖拳怪皇坂田金時の名は有名であり闇の達人以外にも狙われることが多い男は、旅先で偶然達人と出会うこともよくあるようだ。

 

これまで数多の達人と戦ってきた男は武器術には全然興味がないので武器を扱った術は全く身に付けていないが、武術にはとても興味があって今まで戦ってきた達人の武術を見ただけで覚えることができている。

 

使い手であった達人以上に武術を使いこなす男の才能は並外れていて、超人級以上の技量で放たれる技は凄まじいものとなるだろう。

 

戦う度に新たな武術を身に付けて更に強くなっていく男の実力は、とてつもないものになっていた。

 

たとえ特A級の達人だろうが手加減した一撃で簡単に倒せてしまう男が、これまで戦いに苦戦したことはあまりない。

 

戦っている相手の技を見て覚えるためにわざと戦いを長引かせることはよくある男が、身に付けられなかった武術はなく、覚えた全ての武術を完璧に使いこなせる男。

 

しかし妖拳怪皇の異名を持つ坂田金時という男と戦う相手は、まず最初に男の超人級すらも超えている凄まじい身体能力を攻略しなければまともに戦うこともできないだろう。

 

身に付けている武術を使わずとも達人を倒せる圧倒的な身体能力を持っている男は格下の相手には必ず手加減をするようにしていた。

 

それは相手を殺さぬように気遣っていたからであり、男が自らに課した枷でもある。

 

この世界で活人拳として生きると決めてから戦った相手を決して殺すことはなかった男は、敵に勝る力を必要以上に振るうことはない。

 

旅館に泊まった男は何事もなく翌日の朝を迎えることができたようで、荷物を背負って朝から旅館を出た男が再び旅に出た。

 

旅人として旅を続けていく男が歩みを止めることはなく、突き進んでいった道の先で武者修行をしていた達人と出会う。

 

強い相手との戦いを望んでいた達人は、当然のように坂田金時という男に戦いを挑んできたようだ。

 

達人の構えは壁掛拳であり、中国武術の中でもより実戦的なものの1つであった。

 

両腕を鞭のように使い、相手に反撃の隙を与えずに倒す剛の拳である壁掛拳。

 

達人の気血が送り込まれた腕が振るわれて回避した男の背後にあった大木に直撃すると容易く大木がへし折れていく。

 

気血によって鋼以上の強度を持つ達人の腕が連続で振るわれていき、それら全てを避けていく男。

 

真正面から腕を振り下ろす烏龍盤打という技を繰り出す達人の腕が地面に深々とめり込んだ。

 

地面にめり込んでいた腕を瞬時に引き抜いて、今度は男の背後に素早く回り込んだ達人が倒発鳥雷撃後脳という後頭部を狙った相手を殺しかねない危険な技を放つ。

 

達人に壁掛拳の技を出させるためにわざと自分の背後をとらせた男は、その技もあっさりと回避する。

 

達人が次々と絶え間なく繰り出す壁掛拳の技を見ていった男は全ての技を覚えていく。

 

そろそろいいかと思った男が単純な身体能力だけを使って達人を拳の一撃で倒すと、気を失った達人が地面に倒れ込んだ。

 

達人の壁掛拳を間近で見て学んで身に付けた男は、更に強くなっていたようで、使える新たな武術が増えたことをとても喜んでいた。

 

気を失っている達人を置いて移動した男は旅を続けていき、新たな町へと辿り着いていたらしい。

 

旅人である男は今日も宿を探して町を練り歩き、発見した宿泊施設に入ると部屋をとって荷物を置いてからベッドに座る。

 

ベッドの上でこの町の名物は何だろうなと考えていた男は、旅をしているとその土地の特色というものを強く感じるなと思っていたようだ。

 

色々な町を巡ってきた男は色々な物を見てきていて、様々な美しい風景も見てきていた。

 

旅人としての生活を物凄く満喫している男は今日も何処かの町で穏やかに楽しく過ごすが、男の穏やかな時は長くは続かないようで、日本各地に居る達人達との出会いが確実に近付く。

 

旅をした先で出会う達人達と戦っていくことになる男は、これからも戦いの日々を続けることになるだろう。

 

それでも旅を決して止めることはない男は今日も1人の旅人であり続ける。

 

男が旅をしていく日本各地で出会うことになった数多の武術の達人達。

 

闇に所属はしておらずとも達人の領域にまで辿り着いていた才能のある者達を、1人残らず圧倒的な実力差で倒していく男。

 

達人達との戦いの日々を終えた男は留まることなく旅を再び続けていった。

 

昔からよく知っている気配を察知した男が、ゆっくりと近付いてくる気配の主に今日は何のようかな美雲と問いかけていく。

 

今日は闇への勧誘にきたところじゃなと言ってきた櫛灘美雲に対して男は、私は闇には所属することはないよ美雲と優しく言い聞かせた。

 

金時は命を奪うことには抵抗がないじゃろうと言った櫛灘美雲は確信していたようだ。

 

確かに坂田金時という男は命を奪うことには特に抵抗がないが、それでも人を殺したことはない。

 

穏やかな人生を過ごしていた前世が確実に楔となっていて、人を殺すことは悪いことだと感じる男は自然と活人拳の道を選んでいた。

 

たとえ命を奪うことに何の抵抗がないとしても、活人拳として生きることにした男が殺人拳となることはないだろう。

 

確かに私は命を奪うことには抵抗はないけど、それで殺人拳を選ぶつもりはないよ美雲と言う男。

 

とても殺人拳に向いておると思うのじゃがのうと言った櫛灘美雲は、困ったような顔をする男を見つめて楽しげに笑った。

 

金時が自由に力を振るえるのも闇だけじゃろうと言って手を差し出した櫛灘美雲は、この手を取れ金時、わしはいつでもお主を受け入れようと言い出す。

 

その手は取れないよ美雲、私は活人拳としてこれからも生きていくからね、私を闇に勧誘するのは諦めなさいと言った男に、ならば力付くで連れていくとするかのうと言って櫛灘流柔術の構えをとった櫛灘美雲。

 

本気の櫛灘美雲による気を用いた多重の分身が男へと襲いかかる。

 

当たれば瞬時に投げられる気を避けていった男は、櫛灘美雲の本体を見つけ出して一撃で倒した。

 

気絶した櫛灘美雲を抱きかかえていた男の腕の中で、目を覚ました櫛灘美雲は金時の腕の中は暖かいのうと思ったらしい。

 

櫛灘美雲が目覚めたことに気付いた男は櫛灘美雲を抱きしめている腕を離そうとしたが、まだ抱きしめていてくれぬか金時と言ってきた櫛灘美雲に応える形で抱きしめ続ける。

 

金時と男を呼んだ櫛灘美雲にどうしたのかなと言った男。

 

今日はしばらくこのままでいてほしいのじゃがのうと言ってきた櫛灘美雲に、ああ、いいよと言う男は櫛灘美雲を抱きしめたまま立ち続けていた。

 

男の腕の中で抱きしめられながら会話をしていった櫛灘美雲は3時間程度で満足したのか、もうよいぞ金時と言い出す。

 

櫛灘美雲から腕を離した男の頬を優しく撫でると物凄く穏やかな顔で微笑んだ櫛灘美雲。

 

これから弟子を連れて武器組の庵にまで行かねばならぬからのう、今日はここまでじゃなと言った櫛灘美雲は男に背を向ける。

 

そんな櫛灘美雲の背に狙いは赤羽刀かなと言う男に振り返って、金時は察しがいいのうと櫛灘美雲は笑う。

 

まあ、今回は私は動かないよと言ってきた男に櫛灘美雲は、そうしてもらえると此方は助かるのじゃがなと言って去っていった。

 

今回の1件は梁山泊が動くことは間違いないから私の出番は無さそうだなと思った男は、今日は何処に泊まるとするかなと考えていたようだ。

 

問題なく旅を続けていく男が向かった先で宿泊施設を見つけることができなかった男は少し困っていたが、通りがかったある道場の主に声をかけられることになる。

 

貴殿は武術家であるなと話しかけてきた道場主に、そうですよと頷いた男。

 

困っているようだがどうかしたのかと聞いてきた道場主に宿泊施設を探しているんですが見つからないんですよと男は答えた。

 

この町には宿泊施設はないぞと言う道場主に野宿しかないかと言った男が立ち去ろうとすると道場主に呼び止められる。

 

部屋なら沢山あるから泊まっていけと言ってきた道場主に助かりますが良いんですかと聞く男。

 

別に構わん、どうやら貴殿は悪人ではないようだからなと答えた道場主。

 

男は道場主に連れられて部屋まで案内されることになり、道場主が住まう屋敷に泊まることになった。

 

一晩泊まることになった男はお礼として道場の掃除を引き受けることにしたようで広い床に雑巾がけをしていく。

 

掃除を終えたところで綺麗に手を洗った男に道場主からお手製の握り飯が渡されたようだ。

 

動いた後の飯は美味いですねと言いながら男は握り飯を6個も美味しそうに食べていった。

 

それじゃそろそろ旅に戻るとしますと言った男は荷物を背負うと道場主に泊めてくださってありがとうございましたと頭を下げて言うと歩き出す。

 

達人である道場主が男に戦いを挑まなかった理由は、実力差があり過ぎると一目で悟っていたからである。

 

勝てぬ敵とは絶対に戦わぬ流派である道場主は、男に掃除をされて綺麗になった道場を見て人として真っ当な男であったなと思ったようだ。

 

あの男がまたこの町にきた時には泊めてやるとしようと考えた道場主は、その時はもう一度握り飯でも作ってやるかと思って笑う。

 

男と交流した時間は多くはないが、すっかり男のことを気に入っていた道場主だった。

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