妖拳怪皇の異名を持つ坂田金時という男の弟子であり、新白連合で唯一達人に到達しているジークフリート。
とある音楽学校の特待生であり、作曲した曲が発売されてから売れ行きも好調であるジークフリートは音楽家としても素晴らしい才能を持っているらしい。
武術家としてのジークフリートは基本的にカウンター主体であって後の先という戦闘スタイルを持つ。
完全なる円運動による相手からの攻撃への回避行動や、よく練られた内功による防御に優れていたジークフリートだが、達人に到達して相手の攻撃を脱力によって無効化することもできるようになっていた。
中国拳法の高等技術である消力に近い技まで使えるようになっているジークフリートは、相手の攻撃を無効化する技術に関しては完璧に限りなく近いだろう。
しかしまだ伸び代があるジークフリートを鍛える為に坂田金時という男は師匠として弟子に試練を与えていく。
弟子に武術を教えるのではなく弟子の武術を伸ばしていく育て方をした男は、ジークフリートの持ち味を一切殺すことなく鍛え上げることに成功していたようだ。
手加減をした男とひたすら戦うという実戦的な修行を続けたジークフリートは格段に腕を上げていったようである。
あらゆる流派の数多の武術を用いて弟子であるジークフリートと戦っていく男の攻撃は多彩であり、変幻自在に武術を切り替えていく男に対応するのは一苦労であることは間違いない。
だがそれがジークフリートにとっては何よりの経験となり、どのような武術であっても見事にカウンターで返してみせたジークフリートは立ち止まることなく前へと進む。
達人として更に腕を上げていったジークフリートに対して手加減を緩めていった男の攻撃は徐々に威力が上昇していくが、それでもジークフリートはカウンターで受け流して攻撃を返し続けた。
相手のリズムを読み、攻撃を完璧に見切り、軸をずらして受けてその力に自分の力を乗せて打ち出すという輪唱アタックというカウンター技を編み出してから時は経ち、立派な達人となったジークフリート。
洗練されていった輪唱アタックに加えて輪唱アタック改という技まで増えており、相手の攻撃に対してカウンターで対抗していくジークフリートの技量は男との戦いで更に高まり続けていく。
それなりに実力がある達人の攻撃であっても完璧にカウンターで返すことができるようになっているジークフリートは、それだけで満足することはない。
更なる先を求めて男に挑んでいくジークフリートがアニッマートォォオ!と叫びながら攻撃をカウンターで返す。
そんなジークフリートがギリギリで返せる威力の攻撃を連続で繰り出す男には容赦はないが、弟子なら必ず返せるはずだと師匠として信じていた。
師の期待に見事に応えていったジークフリートは男が繰り出した全ての攻撃をカウンターで返していく。
以前白浜兼一と武田一基のヒゲ剃りマッチを見て覚えていた白浜兼一の無拍子を男がジークフリートに向かって放つ。
かつて白浜兼一の無拍子によって敗れたジークフリートであるが、達人となったジークフリートは以前のジークフリートとは完全に別物であり、達人の威力で放たれた無拍子すらも脱力からのカウンターで完璧に受け流してみせた。
続けて男が連続で繰り出していく武田一基の技であるオートゥリズムすらも全てカウンターで返していくジークフリートは、達人としてカウンターの極みにまで近付いていたようだ。
戦いの中で進歩していったジークフリートは苛烈になっていく男の攻撃に対応して急速に強くなり、己の編み出したカウンターを完璧に極めようとしていたらしい。
もう少しで何かが変わると感じたジークフリートは、カウンターの極みに繋がる何かを掴みかけていたが、ジークフリートが戦いの最中にメロディーを思いついたことで戦いは一旦中断となる。
持ち歩いている五線譜紙に思いついたメロディーを書いていったジークフリートが、五線譜紙がいっぱいになってしまいましたと困った顔をしていたので紙を差し出した男。
助かりました、流石は我が師ですね、これでメロディーが書けますと喜びながら紙にメロディーを書いていくジークフリート。
やはり我が師との戦いは新たなメロディーを生み出していきますね、実に素晴らしいですよと言ってきたジークフリートに、今日の戦いは少し激し過ぎたかと思ったけど、響くんが喜んでくれるなら良かったよと男は言う。
しばらく大量の紙にメロディーを書き込み続けていたジークフリートが動かしていたペンがようやく止まり、新しい曲が3曲ほど完成していた。
それでは完成したこの曲を早速演奏してみましょうか我が師よと言い出したジークフリートに、響くんがきっとそう言うと思ってもう準備はしてあるよと言った男は既にバイオリンを用意していたようだ。
坂田金時という男とジークフリートによる演奏が始まっていき、修行の為に移動していた山中で師弟のバイオリンの美しい音色が響き渡っていく。
曲調が全く違う3曲の素晴らしい曲が連続で奏でられていくと、凄まじく激しい戦いの後だとは思えないほどに、とても穏やかな気持ちになっていた男とジークフリートの師弟は顔を見合わせて思わず笑った。
戦いの中で思いついたメロディーなのに穏やかな気持ちになるなんて不思議な曲だね響くんと言う男に、それは戦いの中で確かに感じた我が師の優しさを形にしたからかもしれませんよと言ったジークフリート。
わたしの成長を願って振るわれた拳から感じた我が師の優しさで思いついたメロディーだからこそ、こんな素晴らしい曲になったのではないでしょうかと語ったジークフリートは微笑んだ。
真正面からそんなことを言われて少し気恥ずかしくなった男は誤魔化すように、それじゃあそろそろ戦いを再開しようか響くんと言いながらバイオリンをケースにしまっていく。
ええ、そうしましょうか我が師よと言ったジークフリートも自分のバイオリンをケースにしまってカウンターの構えをとると、どうぞ、打ち込んできてくださいと言い放つ。
達人でなければ反応できない凄まじい速度で振るわれた男の拳を完全なる円運動で受け流し、拳の威力に自分の力を合わせたカウンターを繰り出したジークフリート。
素早く繰り出されたジークフリートのカウンターを片手で受け止めた男は、今の響くんならもっと速度を速めても大丈夫そうだねと言うと更に速い拳をジークフリートに打ち込んだ。
既に目では追いきれていない男の動きを勘で感じ取ったジークフリートは、男の攻撃をカウンターで返していく。
五感を極限化したものこそが第六感の感覚である勘であり、達人はこの感覚を目で追いきれない動きを察知するセンサーとして武術に取り込んでいる。
虚空の勘にまでは達人として辿り着いていたジークフリートは更に勘を研ぎ澄ませていった。
速度が上がっていく男の攻撃に対応する最中に虚空以上に鋭い勘である清浄の勘にまで到達したジークフリートは、凄まじい速度で放たれた男の攻撃を完璧にカウンターで返すことに成功したらしい。
弟子クラスを軽々と超えた達人級の激しい戦いはそれからも続いていき、男とジークフリートは幾度もぶつかり合ってかなりの速度での攻防が行われていく。
男との戦いで確実に腕を上げたジークフリートは、駆け出しの達人から立派な達人と言える程度には実力をつけていたようだ。
戦いの手を止め、フォルトナ程度には1人でも負けませんねと言ったジークフリートに、今の響くんの実力なら、もっと上等な達人を相手にしても大丈夫だと思うよ、流石に闇の九拳や八煌断罪刃は無理だけどねと師匠である男は言う。
闇の九拳は想像がつきますが、八煌断罪刃は想像がつきませんね、どのような集団なのですかと男に聞いてきたジークフリート。
闇の武器組の頂点といったところで使う武器はそれぞれ違うが、特A級の達人級が7人と超人級が1人揃っているから実力は侮れない相手だと思っておいた方がいいと答えた男は真剣な顔で弟子に知っている全てを語った。
師である男から全てを聞き、八煌断罪刃はどうやらわたしとは合わない相手のようですねと言うジークフリートは静かに戦意を胸に秘める。
それを敏感に感じ取った男は、今の響くんでは絶対に勝てない相手だから遭遇した時は逃げてほしいんだが、響くんには頑固なところがあるから八煌断罪刃に普通に立ち向かいそうな気がするねと言ってため息をつく。
まあ、私が気をつけて八煌断罪刃とは響くんを戦わせないようにしようと言って弟子の説得を諦めた男。
今の武術界について男が知っていることをジークフリートに話していき、ジークフリートが気になったところを詳しく聞いていくと男は丁寧に答えていった。
特に史上最強の弟子である白浜兼一が凄まじく狙われていることを語った男は気の毒そうな顔をしていたらしい。
知らなかったことを色々と知ることができました、ありがとうございます我が師よと言ったジークフリートに、一応響くんが知っておいた方がいいことはこれで全部かなと語り終えた男が頷く。
兼一氏を狙うのは闇だけではないのですね、武術界では兼一氏の名が広く伝わっているようですし、高校以外も護衛した方がいいのでしょうかと言うジークフリート。
とりあえず今のところは兼一くんに護衛は必要ないだろうね、それと響くんは自分の学校にちゃんと行きなさいと言った男。
一応行ってはいますよ、呼び出しがあれば直ぐにでも我が親愛なる魔王の元に向かいますがねと言うジークフリートに、どうやら新島くんとも少し話をする必要がありそうだねと言って考えた男は弟子の将来に関して気にしているようだ。
我が師と我が魔王の出会い、また新たなメロディーが湧き出てきましたよと言い出したジークフリートに男が大量の紙を差し出す。
ありがとうございます我が師よ、浮かぶ、浮かびますよ、新たな素晴らしいメロディーがと言ったジークフリートはとても楽しそうで、達人の速度で紙に書かれていくメロディーは何枚もの紙を埋め尽くしていった。
新たな曲ができましたと嬉しそうに笑ったジークフリートに、その曲を一緒に演奏するには、先に客の相手をしないといけないかなと男が言う。
客ですかと言って達人であるジークフリートが気配を探るが全く発見できない相手。
そんな相手が自分よりも確実に格上だと悟ったジークフリートは、我が師よ、この相手は今何処にと男へ聞く。
今山に入って此方に向かってきているところだが、直ぐに現れるだろうね、数少ない超人の1人だからなと答えた男。
ほら、来たぞと男が指差した先に立っていた二刀を持つ超人級を見て、達人になったわたしでも全く感じ取れないほどに気配が消えている相手を、容易く見つけ出してしまった我が師は相変わらず凄まじいですねと思ったジークフリート。
八煌断罪刃の頭領が態々こんな山まで何の用かな、と聞くまでもないか、狙いは私の首だろう、二天閻羅王、世戯煌臥之助と言い放った男に、妖拳怪皇、坂田金時、その命貰い受けると言って二刀を構えた世戯煌臥之助。
特A級すらも超える超人級を相手にしていても全く武術の構えをとることのない男は自然体であり、とても落ち着いていた。
超人級の技量で振るわれる二刀が別々の生き物のように動き、男へと業物である二刀の刃が迫っていくが、必要最小限の動きでそれを避けた男が無造作に放つ蹴りが世戯煌臥之助に叩き込まれていく。
避けられぬとは、なんという蹴りと驚いていた世戯煌臥之助は、身体の芯まで響く強烈な蹴りを喰らった脇腹が痛んでいることを実感していたようだ。
自在に二刀を操る世戯煌臥之助が繰り出す斬撃の余波で山中の木々が切り裂かれていくが、男に世戯煌臥之助の二刀が当たることはない。
超人級すらも超えている男の凄まじい身体能力を捉えきれていない世戯煌臥之助。
特A級の達人すらも超えた超人級である自分でも追うこともできない速度で移動する坂田金時という男が武術を使っていないことから本気ではないと世戯煌臥之助は判断する。
身体能力だけで二天閻羅王、世戯煌臥之助を完全に圧倒していった妖拳怪皇、坂田金時は止まることなく動き続けていく。
ここまで相手に攻撃が当たらず、一方的に攻撃され続けることは初めての経験であった世戯煌臥之助だが、それでも二刀を振るっていった。
目で追いきれない坂田金時の動きに勘だけで反応して世戯煌臥之助が斬撃を放つ。
坂田金時の動きに合わせて世戯煌臥之助が勘で二刀を振るえるようになっていても、超人級の技量で振るわれた二刀を超人すらも超えた動体視力で見て回避することができる坂田金時に当たることはない。
絶え間なく続く男の強烈な攻撃によって意識が完全に飛びかけていた世戯煌臥之助は使い慣れた二刀を力強く握り締めてなんとか意識を保っていた。
追い込まれていた世戯煌臥之助は流石は妖拳怪皇、坂田金時、やはりやりおるわと考えながら二刀を振るう。
世戯煌臥之助の耐久力を実際に何回も攻撃して確認していった男は、正確に世戯煌臥之助が耐えられる限界を把握していたようである。
そろそろこの世戯煌臥之助との戦いを終わらせるとしようかと考えた男が拳を固く握り締めていく。
戦いの決着は一撃で決まり、超人級である世戯煌臥之助の二刀が振り下ろされるよりも速く動いた男の拳が、世戯煌臥之助の腹部に打ち込まれていた。
こうして超人級の相手である世戯煌臥之助すらも倒した男がとてつもなく強いことをあらためて実感したジークフリートは、我が師は何処に辿り着いているのでしょうかと疑問に思ったようだ。
倒れてから全く動かない世戯煌臥之助に、手加減はしてあるから、しばらくすれば起きるだろうね、その前に刀をへし折って移動しておこうと言った男が二刀を折るとジークフリートを連れて移動していく。
坂田金時という男に倒されて山中に1人残された世戯煌臥之助が目覚めたのは、男とジークフリートが山を立ち去って、30分ほど経過してからだったらしい。
山中からしばらく移動してジークフリートの豪邸にまで到着した男とジークフリートが新しい曲を演奏していき、奏でられていった曲が終わると良い曲ができたねと言った男。
こうして素晴らしい曲ができたのは我が師のおかげでもありますよと言ってきたジークフリートに、響くんがメロディーを思いついてくれたからじゃないかなと男は言うと笑った。
それじゃあ良い演奏もできたところで、私は旅に戻るとするよと言いながら荷物を背負った男はジークフリートに背を向ける。
去っていく男の背に、またいつでも来てください我が師よ、お待ちしていますと言ったジークフリート。
1度ゆっくりと振り返って、また今度会おう響くんとだけ言って走り出した男は、しばらく止まることはない。
超人級でも追いつけない凄まじい速度で走っている最中に、八煌断罪刃の頭領まで出てくるとは、どうやら私の首は大人気のようだなと思った男。
業物だった二刀はへし折っておいたから代わりの武器を用意するまで私を襲いにくることはないだろうが、超人級の勘で居場所を察知して他の連中を送り込んでくるかもしれん、そうなれば面倒なことになるなと男は考えていた。
だったら先手を打って此方から攻めるのも悪くはないかと思った男は、闇の武器組の拠点を狙って積極的に潰し始めていく。
闇の武器組に男に敵うような達人は全くおらず、日本国内に存在していた闇の武器組の拠点が容赦なく潰され続けていったようだ。
闇の武器組が日本国外に追い出されていき、日本の反闇勢力が活発に行動するようになる。
思いつきで行動して日本国内の闇の勢力を削いだ男は、それからも止まることなく動き続けていき、日本国内にある闇の武器組の拠点を全て壊滅させた。
坂田金時という男がこれまで全く行ってこなかった拠点への攻撃を踏み切った理由は何だと思った闇は、何か坂田金時を怒らせるようなことを闇の武器組がしたのではないかと考えていたらしい。
金時は単なる思いつきで行動しただけじゃろうな、たまにそういうことをするからのうと正解に辿り着いていたのは闇では櫛灘美雲だけである。
闇の武器組の拠点が日本国内に無くなったとしても、闇の武器組が消えた訳ではなく、確かに存在はしているが確実に数は減っていた。
拠点にいた闇の武器組は男に倒されてビッグロック送りになっていたからだろう。
日本国内の武器組は僅かになり、無手組の拠点に避難してくることも増えていて、無手組も迷惑しているようだ。
武器組が坂田金時に狙われていると思っている無手組としては、武器組には拠点に来ないでほしいと思っているようで、武器組を追い返す無手組も存在していたらしい。
武器組と無手組の戦いとなることもあり、日本国内の闇の勢力は力が弱まっていた。
確実に日本の闇に打撃を与えた男はこれでしばらくは闇による襲撃はないだろうと考えていて、日本国内に存在した闇の勢力を半分削いだことは特に気にしていないようである。
闇の武器組の頂点である八煌断罪刃は今回の件で全く動くことがなかったが、それは八煌断罪刃の全員が坂田金時という男の実力を確かに知っているからだろう。
久遠の落日を前に八煌断罪刃の貴重な戦力を減らす訳にはいかないと判断して、日本国内の武器組を見捨てた八煌断罪刃。
日本国外から武器組の戦力を集めるつもりである八煌断罪刃は、日本国内を全く出ることのない坂田金時に安心していたが、坂田金時が近々日本を出ようと考えて色々と行動していることを八煌断罪刃はまだ知らない。
色々と伝を使ってパスポートを入手した男は、これでようやく日本を出てあの場所に向かえるなと考えていた。
行くって言ったからな約束は守らないと、と思った男はティダート王国へ向かうつもりのようである。
日本国外への旅行の準備を整えている最中に近付いてきていた気配を敏感に察知して、私は忙しいんだが、今日は何の用かな美雲と言った男。
現れた櫛灘美雲が確かに忙しそうじゃなと頷くと、旅行にでも行くつもりかのう、何処に行くんじゃ金時と聞いてくる。
ティダート王国と答えた男に、拳魔邪神がおるところじゃな、何故そんな場所に金時が向かうのかのうと疑問に思っている櫛灘美雲。
ティダート王国には友人が1人居るからね、これから会いに行くつもりなんだと男は言った。
金時の友人か、それは興味深いのうと言ってきた櫛灘美雲は、それならこれからわしもティダート王国に金時と一緒に向かうとしようと言い出す。
普段着ている服とは違う女性用のスーツを身につけている櫛灘美雲が何故か持っていたパスポートを男に見せて、こうしてパスポートも確りと用意してあるから何も問題はないのうと言うと男に笑いかける。
パスポートの名前が坂田美雲になっているのはどうしてかなと不思議そうに聞いた男に、公的にはわしが坂田金時の妻ということになっておるからじゃのうと堂々と答えた櫛灘美雲。
いつの間にそんなことにと物凄く驚いている男に、これはそれなりに前からじゃなと言って自分のパスポートを見ていた櫛灘美雲は、とても嬉しそうな顔をした。
まあ、色々と気になることはあるけど、それはそれとして美雲が着いてきたいなら構わないよ、でも弟子のあの子は放っておいて良いのかいと聞いた男に、千影なら問題はないじゃろう、わしの居ぬ間に菓子を喰うかもしれぬが、その程度なら許容範囲内じゃからなと答えた櫛灘美雲。
果物が食べられるようになっても誘惑に負けてしまう程度には菓子が好きなんだなあの子はと言う男。
千影は自分の部屋に菓子の本を隠しておるからのう、果物が食べられるようになったとしても菓子が好きでたまらぬようじゃ、とため息をつく櫛灘美雲。
櫛灘流を継いでくれるなら多少は目をつむるが、限度というものがあるのでのう、千影を1人だけにして長く放置しておると際限なく菓子を食べ続けそうじゃなと言った櫛灘美雲は、弟子のお菓子好きに少し困っているらしい。
素直な良い子ではありそうだが、たまに年相応の子どものような顔をしている時があったね、甘い果物を食べている時は幸せそうな顔をしていたけど、あの子は甘いものが大好きなんだろうねと頷いた男は、櫛灘千影のことを思い出していた。
本当に弟子の子は放っておいて良いのかなと聞いた男に、2週間程度なら問題はないからのうと答えた櫛灘美雲。
私もティダート王国にそう長く滞在するつもりはないから2週間で帰れるように日程を調整しておこうかと言いながら予定をメモ帳に素早く書いていく男。
すまんのう金時と言う櫛灘美雲に、気にしなくていいよ美雲、それじゃあそろそろ行こうかと言って男は手を差し出す。
差し出された男の手を掴んだ櫛灘美雲は金時と一緒に旅行に行くのは久しぶりじゃなと思って楽しそうに笑った。