山中で岩に座って月を見ながら酒を飲んでいた男に近付いてくる闇の無手組の達人。
闇討ちをすることなく真正面から歩みよってきた闇の達人の名はマイクロフト。
山中にいた男の元にマイクロフトがやってきたのは偶然ではなく、マイクロフトが妖拳怪皇坂田金時という男を闇の情報網を使って探していたからだ。
妖拳怪皇坂田金時が闇の武器組の頂点である八煌断罪刃を返り討ちにしたことは闇でも有名になっていて、坂田金時がそれだけの実力者であるなら戦ってみたいと考える闇の達人は多いようだが、なかなか坂田金時と出会うことはないらしい。
あまり定住をしない男は凄まじい健脚で移動を続けていて次に何処に向かうのかは普通は全くわからないようだ。
櫛灘美雲やシルクァッド・ジュナザードは例外のようで男を直ぐに見つけることができるが、闇の情報網を使っても他の闇の達人が男を発見するには時間がかかる。
マイクロフトも時間をかけて男を探したがなかなか見つからない。そんな時に男が誰にも邪魔されない場所で酒を飲もうと酒を購入して山に入る姿を見ていた人々からの情報を運良く入手した闇。
その情報がマイクロフトに伝わって急いで移動したマイクロフトが到着したのは夜になってしまっていた。
珍しく男が夜中に月を見ながら酒を飲みたいと思っていなければ昼間の内に酒を飲んだ男が素早く山を立ち去り、完全に男を見失っていたかもしれないので男の気まぐれもマイクロフトには幸運だったと言えるだろう。
日本酒で満たされた杯を傾けて酒を飲む男の前に立ったマイクロフトは、妖拳怪皇坂田金時殿とお見受けする、正々堂々武術家として手合わせ願いたいと言い出して構えをとる。
酒瓶と杯を岩に置いた男が岩から降りると、だいたい突然襲いかかってくる相手ばかりだったからきみみたいな相手は珍しいな、正々堂々武術家としてか、いいだろうと構える男。
その構えは酔八仙拳かと構えから男が今回使おうとする武術を見抜いたマイクロフト。
地を転げ負の中に勝を得る拳法であり、起源は古く道教の八人の仙人に由来していると聞くと語ったマイクロフトに詳しいなと男は言う。
中国拳法と我が拳は無関係ではないのでねと言って笑ったマイクロフトは、そろそろ行かせてもらおうと言いながら間合いを素早く詰める。
マイクロフトが放った寸勁が回避した男の背後にあった大木を容易くへし折った。
寸勁の達人であるマイクロフトは、身体のどこかが触れていさえすればそこからあらゆる方向に寸勁を流し込むことが可能だ。
香港統治時代にマイクロフトの一族が中国拳法より奪い獲り独自に進化させてきたものらしい。
一族に代々伝わるマイクロフトの技を1度見て学んだ男。
それだけでマイクロフトの技さえも男は身につけたようだが、今回は酔八仙拳だけを使っていくようである。
アクロバティックでトリッキーな動きが多く修得の難易度も高い酔八仙拳を使い手であった達人と戦った時に見て覚えた男は完璧に使いこなす。
マイクロフトが武術家として手合わせを願ったことで武術を使っている男に翻弄されるマイクロフト。
韓湘子という技を使ってわざとマイクロフトに避けさせてから地を転げ回り連続攻撃を叩き込んでいく男へ渾身の寸勁を放とうとしたマイクロフトの腕を掴んで軌道を逸らして地面に寸勁を打ち込ませた男。
続けて男は張果老という右裏拳を顔面に左後ろ蹴りを腹部へと同時に叩き込む技を繰り出してマイクロフトを沈めた。
気を失っていたマイクロフトが目覚めた時、男は再び月を見ながら酒を飲んでおり、目覚めたマイクロフトにきみも一緒に飲まないかと言って取り出した杯を男が差し出す。
月見酒か、悪くはないなと言いながら杯を受け取ったマイクロフト。
日本酒の酒瓶を傾けてマイクロフトが持つ杯に男は酒を注いでいく。
一口酒を飲んだマイクロフトは久しぶりに飲んだ美味い日本酒に、これは、いいものだなと笑う。
たまには美味い酒が飲みたいと思ったんでな、色々と探し回って見つけたのがこの酒だよと言って自慢気に男が酒瓶を見せつける。
なるほど、探すだけの価値はあるだろうと日本酒の味で納得したマイクロフトは頷いた。
杯の中にある酒を飲み干したマイクロフトが、もう1杯もらえるだろうかと言い出したので構わないよと言った男は笑顔でマイクロフトの杯に酒を注ぐ。
月を見ながら日本酒を飲んでいく男とマイクロフト。
日本酒の酒瓶が空になるまで一緒にいた男とマイクロフトは会話を交わしていて互いのことを少し知ることができたようだ。
貴殿に比べれば、まだまだ武術家としてわたしは未熟であると実感した、鍛え直すことにしよう、またいずれ手合わせ願おう坂田金時殿と言って立ち去ったマイクロフトに、珍しい闇の達人だったなと思った男は就寝の準備を始める。
酒が入っていても全く酔っていない男は、準備を素早く済ませると眠りにつく。
早朝に起きたところで朝食を調達しにいく男は川魚をとってきて塩焼きにして食べていった。
朝食を食べ終えた男が下山したところで待ち構えていた複数人の闇の武器組の達人達。
武術家として手合わせ願いたいとは特に言われていないので男は身体能力だけで武器組の達人達を倒す。
武器術には興味がない男は武器組の技を観察することもせずに手早く倒していく。
気絶した闇の武器組の達人達が目覚めた頃には男は既に他県に移動しており、追跡が再び困難になっていたようだ。
それでも闇は男の追跡を諦めてはおらずこれからも続けていくらしい。
しかし闇が意図していない偶然の出会いというものも存在しているようで街中で出会った妖拳怪皇坂田金時とキックの魔獣呂塞五郎兵衛。
DオブDに備えて既に整形をして若く見せている呂塞五郎兵衛はキックボクシングの達人である。
武器組のように問答無用で襲いかかることはなく近場にある空き地に誘う呂塞五郎兵衛は坂田金時の首を狙っていた。
闇の無手組の達人である呂塞五郎兵衛と空き地で対峙する坂田金時が構えをとることはない。
呂塞五郎兵衛のキックボクシングの技を見ていく男は、先を見据えて準備をしても目先の欲に突き動かされるタイプだが技は達人だなと考える。
充分技を見ることができたと判断した男が超人すらも超えた身体能力で動き、呂塞五郎兵衛と間合いを詰めると顔面を手加減したデコピンで弾いて身体ごと吹き飛ばす。
一撃で完全に意識を失っている呂塞五郎兵衛が空き地の雑草の上に落ちていく。
手加減したし達人だから死にはしないだろうと思った男は呂塞五郎兵衛を置いて素早く立ち去った。
偶然の出会いというものは時に連続して巻き起こるようであり、逆鬼至緒に敗北して警察病院から脱走したばかりのクリストファー・エクレールと遭遇した男。
日本警察め、坂田金時を雇っているなんて聞いていないぞと勘違いして驚いているクリストファー・エクレールに、きみは何か勘違いしているようだね、少し落ち着きなさいと男は優しく言い聞かせていく。
落ち着いてる暇はないんだよ、この怪我でどこまでやれるかはわからないけど、逃げる為にはやるしかないかなあと言って男に襲いかかるクリストファー・エクレール。
古代ギリシャのパンクラチオンを起源に持つフランスの格闘技であり、特異な足技が数多いサバットから敵を破壊する技のみを突き詰めて完成させた殺人サバットの使い手であるクリストファー・エクレールは怪我をして本調子ではなくとも並みの達人には負けないだろう。
しかし男は明らかに格上であり、応戦した男の拳によって決着となった。
倒してしまったものは仕方ないと判断した男は警察病院にまでクリストファー・エクレールを運んでいき、クリストファー・エクレールの脱走に気付いて大騒ぎになっていた警察病院に引き渡す。
お名前をと聞かれた時に名乗るほどの者ではありませんと言って立ち去った男。
多分また脱走するんだろうなとは思ったがそれを男は言わない。
かつて行われた暗鶚の改革によってその身を闇に金銭で売り買いされることもなく、隠れ里で自由に過ごしている元暗鶚の者達の元に向かった男は、買い込んだ山の様な土産を背負っていた。
金時さんと男のことを覚えていた元暗鶚の者達が歓迎している中で、男が前に会った時よりも大きくなっていた叶翔が現れる。
男の姿を見て金時さんだと隠れ里の誰よりも喜んだ叶翔は、俺、前よりも強くなりましたよ見て下さいと言って男の目の前で拳を振るって上達を見せていく。
かつて男が風林寺砕牙や穿彗に協力したことで暗鶚が継続されることがなくなり、よって闇に売られることもなく人越拳神本郷晶の弟子となることもなかった叶翔。
暗鶚の技自体は残しておこうと思った元暗鶚の者達によって幼い頃から鍛えられてきた叶翔は暗鶚の技を身につけており、前に男とあった時よりも確かに強くなっていたようだ。
昔から男は子供になつかれるようで幼い頃から付き合いがある叶翔も男に完全になついていた。
元暗鶚の者達全員に持ってきた土産を渡してから叶翔の相手をする男。
行きますよ金時さんと言いながら暗鶚の体捌きで向かってきた叶翔 を櫛灘流柔術で投げていく男は、叶翔の実力に合わせて手加減して投げていく。
すげえ、やっぱり気付いたら投げられてると言いながら男に挑み続ける叶翔。
とても元気な叶翔は体力面でも優れているようで、幾度も男へと向かっていった。
疲れきって大の字になって倒れていた叶翔に水を渡した男は、だいぶ強くなっていたね翔くん、見違えたよと言って微笑む。
金時さんに成果を見せようと思って頑張ってきましたからねと言うと叶翔は渡された水を飲んだ。
一息ついた叶翔に男が確か翔くんは暗鶚以外の武術を見るのが好きだったね、それなら骨法という武術には興味あるかなと聞くとはい、ありますと素早く答える叶翔。
実は以前偶然にも山で骨法を学ぶ機会があってね、とりあえずそれなりには骨法を学んできたから、武術好きな翔くんが興味があるというなら見せてみようと言いながら軽く骨法の動きを見せた男。
目を輝かせている叶翔を見て、どうやら興味はあるようだねと言った男に、骨法って武術を俺にもっと見せて下さい金時さんと言ってきた叶翔は自分が疲れきっていることも忘れてしまっているらしい。
目の前で男が行う滑らかな骨法の体捌きを見ていく叶翔は初めて見る骨法の動きに随分と独特だなと思ったようだ。
それでもやっぱり武術が好きな叶翔の顔には、満面の笑みが浮かぶ。
ここはこうかなと男の動きを見ながら真似ようとする叶翔は新しい玩具を与えられた子供のように楽しそうだった。
骨法の独特なスライドするかの様な足捌きを直ぐに真似ることは叶翔にも出来ず、見かねた男がゆっくりとよく見えるように見本を見せていく。
それでなんとか形になった骨法の足捌きを少し見せた叶翔はとても喜んで男に感謝する。
骨法を叶翔にも見える速度で一通り見せたところで日も暮れてきたので今日はここまでと切り上げた男。
叶翔が家に泊まっていって下さい金時さんと言うので男は叶翔の家に泊まることにしたらしい。
夕食を食べながら色々な話をした男と叶翔は穏やかな時間を過ごす。
布団に横になってからも武術の話をする叶翔は本当に武術が好きなようである。
骨法以外にも学んできた他の武術の技を明日見せるから今日はもう寝なさい翔くんと言った男に、はい、金時さんと言って寝始めた叶翔。
素直ないい子だなと思った男も眠りにつくと危険を感じない限り起きることなく眠り続けていく。
朝になって叶翔よりも早く起きた男が布団を静かにたたんで朝食の準備を始めていると起きてきた叶翔が朝飯作るのくらい俺がやりますって、金時さんはお客さんなんですからゆっくりしてて下さいと言い出す。
しかし男は、ここまで作ってしまったんだから全部作っても構わないだろうと言って手早く朝食を作り終えてちゃぶ台の上に置いていった。
またお客さんに朝飯作らせちゃったよと困っていた叶翔に、とりあえず冷めるから早く食べようかと男は言う。
いただきますと言って食べ始めた叶翔は金時さんが作ってくれる朝飯は、いつもめちゃくちゃ美味いと思いながら食べていく。
めちゃくちゃ美味かったです、ごちそうさまでしたと両手を合わせた叶翔は食べ終わったら満足そうな笑顔になっていたので、口に合ったようでようで良かったよと男も笑みを浮かべる。
それじゃあさっそく武術を見せていこうかと言った男に、何を見せてくれるんですか金時さんとわくわくしている叶翔。
まずはカポエイラから見せていこうかと言った男が蹴り技主体のカポエイラの技を見せていく。
身体を片手だけで支えて縦横無尽な蹴りを出していった男の技を見た叶翔は、これが本物のカポエイラかと感動して見ていきながら、こうすればいいのかなと動きの真似を始める。
ゆっくりと見える速度で技を出す男を真似て技を覚えようとする叶翔は真剣だった。
なんとか見て覚えた技が形になった叶翔は、できましたよ金時さんと言って技を見せていく。
うん、よくできてるねと言った男は翔くんは武術の才能に満ち溢れているなと思って笑う。
こうして武術を見せて翔くんが気に入ったものを少しだけ覚えさせることは前から続けているが、翔くんを弟子と呼ぶには何かが違うような気がするかなと考えた男。
続けてキックの魔獣から見て学んだキックボクシングの技を見せていく男に、これがキックボクシングですか、ここはこうかと言いながら技を真似ようとする叶翔。
今度はジェームズ志場の動きを見て覚えた裏ボクシングの技を見せることにした男は、ジェームズ志場が編み出した技を披露する。
普通のボクシングとはまた違うんですねと興味津々な叶翔が技を真似ていく。
それからも様々な武術を見せていった男に、見て真似て色々な技を少しだけ覚えていった叶翔は楽しそうだった。
あまり長居をするのもよくないだろうと考えた男が、そろそろ旅に出ようとしたところで、早くないですか、もう少し此処にいてもと言った叶翔が寂しそうにしていたので、今度は早めに来るよと言って安心させるように笑顔を見せる男。
また来て下さいよ金時さんと言いながら手を振る叶翔に手を振り返して男は去っていく。
叶翔が見えなくなってから表情を引き締めた男が考えるのは近く開かれるDオブDに招待されていた天地無真流は参加しないということと元暗鶚から翔くんもDオブDに呼ばれることになりそうだということだ。
むしろ今の翔くんなら色々な武術が見れそうだと喜んで行きそうだと思った男は、1人で行かせるのはまずいと私の勘が警鐘を激しく鳴らしているからあまり向かわせたくはないが止めても行きそうだから私が同行するしかないかと判断する。
幼い頃から知っている翔くんを死なせはしないと決意した男。
弟子である響くんの修行も考えないといけないなと思った男は、忙しくなってきたなと気合いを入れた。
ちなみに叶翔が武術好きになった理由である幼い頃に見た男の櫛灘流柔術は流麗で素晴らしいものだったようで、今でも叶翔はそれを思い出して再現しようとするが現在になっても再現できてはいないらしい。
最近出費が激しいから一稼ぎしていこうと地下格闘場に向かった男が試合をしていき、勝利を重ねて稼いでいった。
充分に稼いだと判断した男は地下格闘場を素早く後にする。
男の居場所を掴もうと努力する闇が、ある県に存在する地下格闘場に先ほどまで男が居たという情報を入手して闇の達人を派遣していく。
櫛灘美雲の気配が近付いてきたところでまた勧誘かなと思った男だったが、何故か別の達人の気配も察知したので様子を見に行くことにした。
男が見たのは対峙する櫛灘美雲と闇の無手組の達人であったが、明らかに格下である無手組の達人をわしの邪魔はするなら容赦はせんと闇の無手組には伝えておいたはずじゃがと威圧していた櫛灘美雲。
威圧に戦力差を悟りながらも我が白鶴拳の鉄壁の防御は破れまいと強がりを言い出す無手組の達人。
ならば試してみるとするかのうと言った櫛灘美雲が無手組の達人を殺すつもりだと判断した男が瞬時に動く。
振り下ろされていれば頭頂部から胴体までの両断が可能なほどに威力がある櫛灘美雲の手刀を左手で止めた男。
同時に男は右手を使って白鶴拳の防御を容易く破って腹部に右拳を叩き込み、手加減した一撃で無手組の達人を倒す。
どんな相手だろうと私の目の前で美雲に殺しはさせないさと言った男に、仕方あるまい、金時に免じて見逃してやるとするかのうと言って殺害を諦めた櫛灘美雲は掴まれていた手を動かして男と手を繋ぐ。
それで何故あれほど苛立っていたのかなと聞いた男に、其奴が執拗に金時を追うのをやめろと言ってきたのでのう、苛立ちも含めて直ぐに手が出ていたようじゃと答えた櫛灘美雲。
あの程度の達人に使うには過剰な威力の技を使っていたから、美雲が結構怒っていたのは直ぐにわかったよと男は言う。
流石は金時じゃな、わしのことをよくわかっておると嬉しそうな櫛灘美雲は男に寄り添って身を預ける。
それで今日はいつものように闇への勧誘にきたのかなと言った男へ、今日はやめておくとするかのう、もうしばらくこのまま一緒に金時と過ごしたいところじゃなと言って櫛灘美雲は男の顔を覗き込む。
それなら場所を移動しようか白鶴拳の達人もいずれは意識を取り戻すだろうしなと言う男に、頭頂部から胴体まで綺麗に割ってやれば二度と起きることなどないんじゃがのうと言った櫛灘美雲。
見逃したんじゃなかったのか、いいから行くぞ美雲と言って繋いだ手を引いて走り出す男に着いていく櫛灘美雲は、昔もこうして男と一緒に走ったことを思い出して楽しそうに笑った。