月饗祭は毎回50万人以上が訪れる大きなイベント。
これだけ多くの一般の人も巻き込んだイベントはそうはない。
そしてそういう大きなイベントは運営も大変だ。十傑は店を出すが、それと並行で運営の方もやらなければならない。こういうことの打ち合わせなどを含めた仕事はこの時期から始まる。
ちょうど連帯食戟に重なってしまうのは避けられないこと。
そして連帯食戟が終わればあとは秋の選抜。だが、秋の選抜の方の打ち合わせはある程度終わっている。不測の事態が起きても対処できるようにしてはあるが、始まってみないと分からないというのが正直なところ。一年生の三人は秋の選抜に出るだろうから十傑のメンバーは僕を含めて7人ということになる。
これで上手く回していければいいが…。
まぁ…失敗したらオレの責任だから別にいいけど。
話は戻って月饗祭のことだ。十傑の仕事と並行してどういうコンセプトにするかも決めていけなければいけない。それに場所だ。三つの中でオレのコンセプトと会っているところを選ばなければいけない。
今まで2年ともオレは参加を見送って来た。それは出張で料理をしたりと忙しいこともあってこの時期ぐらいは休みたいというものだった。
だが、今年でオレも卒業だ。
そのことを考えれば最後くらいは出るのもいいんじゃないだろうかと思い始めたのが3月ごろだった。
今のところ第二席の木久知、第三席の司、第四席の小林は月饗祭で手助けしてもらえることになっている。これだけでも本当にありがたい。今までの月饗祭の歴史を振り返っても、十傑に名を連ねるメンバーが同じ料理店を運営することなんてないだろう。もちろん、最終日だけだが。
それぞれ自分の店を開きたいだろうし、さすがに3日間全てお願いするわけにはいかなかった。
これから他の奴らにもしっかりと自分の口で伝えるつもりだ。大変なことを頼むわけだから、人づてではなく、しっかりと自分の口で伝えることに意味があると思っている。
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その年の月饗祭は色んな意味で記録にも記憶にも残るものになる。それは遠月学園に通っている生徒にとっても、訪れたお客にとっても同じだ。
遠月学園十傑に名を連ねる者たちが、一つの店に集まり、同じ厨房で料理をする。歴代を見てもあり得ないような光景が広がっており、出て来る皿はどれも一級品だ。
食べた者を魅了し、虜にしてしまうような味。
たった一日の奇跡のような日だったと人々は言う。