かつて、主人公とプレイヤーを支えた呪文があったそうです。



※2013年に5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)に投稿した作品です。
 当時はまだドラクエ11も無く、ギラは存在しない魔法になってました。
 内容は変わらず、ネットの海に放りっぱなしでは寂しいので、ここで保存できたらいいなと思って再投稿してます。

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ギラ「攻撃呪文です。よろしくおねがいします」

エニックス「攻撃呪文?」

 

ギラ「はい。火の玉で相手にダメージを与えます」

 

エニックス「ほうほう。特徴的だね。他には?」

 

ギラ「場合によっては、ベギラマとして雷になれます」

 

エニックス「雷! それは凄いな!」

 

ギラ「はい。是非とも御社にて、その能力を発揮させていただきたく……」

 

エニックス「なるほどなるほど。では、後日郵送で結果を報告させていただきますね」

 

ギラ「はい。本日はお時間を割いていただき、ありがとうございました」

 

 

その後、ギラは採用通知を受け取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

勇者「ギラ!」

 

ゴゥッ!!

 

勇者「うお! おおさそりが一撃で沈んだ! すげー!」

 

ギラ(ふふふ。まだこの次の段階があるなんて知ったら、勇者喜ぶだろうなぁ)

 

ギラ(今後は物理回避の高い影の騎士なんかも出てくるし、しっかり準備しとかないとな)

 

ホイミ「ギラくんお疲れさまー」

 

ギラ「あ、ホイミちゃん」

 

ホイミ「今日もいっぱい頑張ってたねー」

 

ギラ「ホイミちゃんほどじゃないよ。

   薬草持つ必要なくなって、洞窟探索が楽になったわー。って勇者が喜んでたよ?」

 

ホイミ「ほんとー? えへへー。嬉しいなぁ」

 

レミーラ「ちーっす、二人とも」

 

ギラ「ようレミーラ。お前も、今日あがりか?」

 

レミーラ「おうともさ。勇者の野郎、全然戦闘下手くそでよー。

     何回、ガライの墓暴きしてんだーって話よ」

 

ホイミ「そうだねー。あたしのタイミング間違えて、死んじゃうこともたくさんあるよねー」

 

ギラ「でも、始めた頃よりは凄い上達してるよ。

   当初は、武器を持ってるだけじゃ意味ないって知ってるはずなのに、装備してなかったし」

 

ホイミ「教えてあげてた、村人Aさんかわいそうだねー」

 

レミーラ「ま、そのおかげかは知らんが出ずっぱりで忙しい限りだわ」

 

ギラ「俺も、物理より強いからってとりあえず打ってくれるし」

 

ホイミ「変なところがマメだから、あたしもよく使ってHP満タンにしてくれてるよー」

 

レミーラ「いつまでも、こうやって勇者のお供をしていたいな。おれ達」

 

ギラ「ああ、そうだな」

 

ホイミ「うんうん。あたしたちはずっと一緒だよー」

 

ギラ・ホイミ・レミーラ「「「あはははは!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、数か月後

 

ドラゴンクエストⅡ制作決定会議のことである。

 

 

ギラ「ちーっす」

 

キアリー「あ、お疲れ様です」

 

ギラ「? 誰だコイツ」

 

ホイミ「あれ、聞いてないのー? 今度、Ⅱで登場するキアリー君だよー」

 

キアリー「はじめましてギラ先輩。キアリーです。

     毒を治す役割として今回から参加させていただきます」

 

ギラ「ああ、よろしくな」(毒なんてステータス異常がつくようになったんだ……)

 

ルーラ「これで全員そろった?」

 

ギラ「え? いや、レミーラがまだ来てないけど」

 

ルーラ「あっ……」

 

リレミト「……」

 

マホトーン「……」

 

ラリホー「ギラ、ちょっと心して聞いてほしいことがあるんだ」

 

ギラ「な、なんだよ……みんなして」

 

ラリホー「先日な、エニックスさんが正式に辞令を出したんだ」

 

ギラ「なんの……だよ……?」

 

 

 

 

 

ラリホー「ドラゴンクエストⅡに、レミーラは登場しない」

 

 

 

 

ギラ「!!!!!」

 

ラリホー「真っ暗なステージが不評だったそうだ。何より、子どもは凄い記憶力を持っている。

     何度もダンジョンに挑むうちに、すっかり地形を暗記してしまうんだ」

 

ラリホー「つまり、そんな呪文なんてもう……必要ないそうだ」

 

ギラ「なんだよ……それ……」

 

ギラ「あの暗いダンジョンで……あいつが、どれだけみんなの心の光になってくれたか……」

 

ギラ「エニックスの奴らは、考えてくれなかったのかよ。

   聞いてなかったのかよ、子どもたちの声を!?」

 

 

ラリホー「もう決まったことなんだ。お前も、早く訓練しておけよ」

 

ギラ「訓練……?」

 

ルーラ「知らないの? Ⅱからは、一対一じゃなくてパーティバトルになるのよ。

     味方が増えれば、勇者たちが対峙する敵の数も増える。

     あなた達も、一部は単体ではなく一体以上……

     つまりは、グループ分けされたモンスター全員に効果があるように

    進化してもらわないといけないのよ。火の玉から閃熱に変更ね」

 

ラリホー「ウィザードリィのようなゲームを作りたい、というのがクリエイターの真の願望だからな。

      少しずつ作品を重ねて、ゲームそのものに慣れて欲しい気持ちから、

     ドラクエⅠでは一対一だった」

 

マホトーン「PCゲームの時代は既に終わりを告げた……。

      世界はすっかり『ふあみりこんぴうた』の時代になっとる」

 

リレミト「ゲーム慣れした子どもたちに、次なる高みのゲームを。

     今度のエニックスの気合は一味違いますよ」

 

 

 

ギラ「そんなこと……聞きたいんじゃない」

 

 

 

ギラ「俺は……ずっと、みんなと……一緒に……」

 

ラリホー「……それは誰だって同じだ」

 

ルーラ「でも、使われるだけの私達だって、必要なくなればいずれ消えてしまう」

 

ラリホー「だから、一生懸命工夫するんだ。

     子どもたちが喜んで使ってくれる、そんな呪文に。俺たちはそうでなければならない」

 

ギラ「……くそ……わかったよ……」

 

キアリー「僕も精一杯サポートします。頑張りましょう、ギラ先輩!」

 

ギラ「ああ、そうだな。おれ達の存在意義は……ユーザーを喜ばせることだもんな。

    へこたれてちゃ、いけないよな……」

 

ホイミ(ギラくん……)

 

 

 

 

 

 

 

それから、さらに一年後

 

キャラメイクの出来る、エニックスの望んだドラゴンクエストⅢの誕生である。

社会現象にまでなるほどの大ヒット超名作は、子どもも大人も夢中になってやりこんだ。

 

魔法使い「イオナズン!!」

 

戦士「らいじんのけん!!」

 

僧侶「ベホマ!」

 

勇者「あ、これはまずいわ。ルーラで逃げるか」

 

――――

 

――

 

 

ギラ「……」

 

メラ「や、ギラ先輩。こんなところで、何してるんです?」

 

ギラ「メラちゃんか……」

 

メラ「今日も頑張ってましたねー。燃費良いから、ボクよりも使ってもらえて羨ましいですよ」

 

ギラ「使い勝手がいいだけだよ。イオ君の方が、殲滅能力は高い。

    魔法使いのMPが安定してきたら、多分俺はもうお役御免だよ」

 

ヒャド「なに言ってんすか先輩www

    俺なんて、3段階も進化するのに誰も使ってくれねーんすよwwww」

 

メラ「あんたはイオの下位互換として、中盤使われまくるじゃない」

 

ヒャド「でもwwwでもwwwヒャダインてwwwイオラのが強い(確信)」

 

ギラ「俺も、らいじんのけんがあるから使ってもらってる程度だよ。

    勇者なんて、王者の剣を手に入れたら絶対バギさんを使うに決まってる」

 

メラ「使ってくれてるだけありがたいじゃないですか! とにかく、今は一生懸命頑張りましょうよ!」

 

ギラ「ああ……そうだよな」

 

 

 

 

 

 

アバカム「……」

 

ホイミ「? どうしたのー、アバカムくん」

 

アバカム「あ、ホイミ先輩」

 

ルーラ「そんな隅っこ居ないでこっちきたらどう?」

 

アバカム「いえ……自分は、そっちに行く権利なんてないですよ」

 

ホイミ「何言ってるのー? みんなで一緒に頑張ってる仲間じゃない!」

 

ルーラ「そうよ。ほら、おいでおいで」

 

アバカム「すみません……」

 

レムオル「はー。エジンベア超えてから、俺の役目なくてつれーっすわー」

 

ボミオス「俺も俺もー。なんつーかさ、敵が使うと使い勝手良いんだけど、

     なかなか魔法使いが使ってくれねーんだよなー」

 

ラリホー「こらこら、泣き言ばっかいってないで。

     いつ使ってくれても大丈夫なように、ちゃんと準備はしとけよ?」

 

レムオル・ボミオス「「うーっす!」」

 

アバカム「……いいなぁ」

 

ホイミ「ん?」

 

アバカム「自分は、習得する頃には既にさいごのカギがあって

     ……使ってもらったこと、一度もないんすよ」

 

ルーラ「……」

 

アバカム「たしかに、これいつ使うんだ? って思うような呪文ってたくさんあります。

     でも、大体は初見ならとりあえず使ってみて、役に立つ。なんてことはあるんですよ」

 

アバカム「でも……でも、自分は……」

 

ルーラ「大丈夫よ、アバカムくん」

 

ホイミ「わたしも、MP温存だからって使ってもらえないことあるんだー」

 

ルーラ「たまたま手持ちに、さいごのカギがない! なーんて、うっかり偶にあるのよ?

    主に、私のバシルーラのせいだけどね」

 

アバカム「……たしかに」

 

ルーラ「ラリホーくんが言ってたけど、そういう場面はいつだって訪れるかわからないわ。

    だから、私たちはいつ使ってもらっても存分に全てを発揮できるように、常に訓練しなきゃ」

 

アバカム「……はい。弱音はいてすみませんでした」

 

ルーラ「いいのよ。さ、今日は飲むわよー。お得意のバシルーラ飲み使っちゃおうかしら」

 

ホイミ「きゃー、ルーラちゃんのアルコールを他人内に飛ばす瞬間移動飲酒法がまた出ちゃうー!」

 

アバカム「あはは。それ、ほんとに死人でるんでやめてくださいよww」

 

ルーラ「あら、酷い言いようね、もう!」

 

ワイワイガヤガヤ……

 

 

ギラ(あいつも……悩んでるんだな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――導かれし者たち制作決定後

 

 

エニックス本社にて。

 

 

バァン!!

 

エニックス「どうした、ギラ。ノックもしないで」

 

ギラ「……どういうことですか」

 

エニックス「なんだ」

 

ギラ「呪文リスト、見させてもらいました」

 

エニックス「ああ。お前は変わらず、べギラゴンを維持だ。何か不満か?」

 

ギラ「そんなんじゃない!!」

 

ギラ「ここには……アバカムも、ボミオスも、レムオルだって居ないじゃないか!!!」

 

エニックス「使えない呪文だ。ユーザーが使ってくれないのなら存在する意味はない。

      だから消したのだ」

 

エニックス「代わりに、マホステやメガザルなど起死回生に使える呪文を多く取り入れた。

      最近のユーザーは、どこかしら一発逆転を狙っている節があるからな。

      良い刺激になるだろう」

 

ギラ「……どうなるんだよ……あいつらは」

 

エニックス「さあな。思い出したら、また使ってやるつもりだ」

 

ギラ「俺たちは……ゲームでしか存在できない。

   なのに、そのゲームですら使ってくれないなんて……」

 

ギラ「どうしたらいいんだよ!!!」

 

エニックス「吠えてばかりいないで、まずは自分の立場をわきまえたらどうだ」

 

ギラ「!」

 

エニックス「メラやイオの登場以降、お前の出番は少しずつ減っている。自覚はあるな?」

 

ギラ「それは……」

 

エニックス「とはいえ、習得レベルや消費MPなどから考えるに、お前の能力は悪くない。

      最近では、漫画とのタイアップも予定としてあってな。

      そこでは、ギラ系は非常に強力な扱いをされている。

      両手でこう構え、指の動きはこうで。極大閃熱呪文なんて大層な名前もあるんだぞ」

 

ギラ「……」

 

エニックス「そういう根強いファンの心をしっかり掴むのが、

      古参であるお前の役割だ。訓練を怠るなよ」

 

ギラ「……くそっ!!」

 

バタン!!

 

エニックス(……)

 

 

 

その後、ギラは立派に役目を果たし続けた。

 

共に戦っては、すぐにわかれる仲間たちのことを決して忘れず

 

自分がその分まで、やってやる。そんな気持ちで

 

彼は、ひたすらにMPを消費し、時にはいかずちの杖として、主人公一行の助けをし続けた。

 

 

ダイの大冒険では、強力な攻撃呪文として

 

ロトの紋章では、合体魔法の相方として、マダンテの材料として

 

アベル伝説ではドドンガを焼き殺したり

 

ゲームだけにとどまらず、映像として受け手に対する絶望や信頼感を与える演出をしっかりと熟す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

DQⅦ制作決定後のこと

 

 

 

ザメハ「あの、ギラさん」

 

ギラ「ん? ザメハじゃないか。久しぶりだな」

 

ザメハ「ええ、しばらくぶりです」

 

ギラ「どうしたんだ? ……あ、まさか!! お前、Ⅶで出られるのか!?」

 

ザメハ「いや……それがですね……」

 

ギラ「?」

 

 

ザメハ「俺、キアリクの婿養子になるんですよ」

 

ギラ「え?」

 

ザメハ「単体で使う奴なんていないし、意味がないなら……そうしようって」

 

ギラ「つまり、キアリクは麻痺と眠りを解消する呪文になるってことか?」

 

ザメハ「そうです」

 

ギラ「……ザメハは……ザメハはどうなるんだ」

 

ザメハ「……」

 

ギラ「唯一の目覚め呪文である、ザメハの名前はどうなるんだよ!?」

 

ザメハ「なくなります。もう、今後のシリーズでも俺の名前はきっと……」

 

ギラ「それで……いいのかよ……」

 

ザメハ「使ってくれず、呪文欄の隅でいつもカーソルを眺めるよりは……ずっといいです」

 

ギラ「……」

 

ザメハ「今日はその報告で、先輩方を回ってるんですよ。

    これで、俺もたくさん決定ボタンしてもらえる、って」

 

ギラ「おまえ……は……!!」

 

ザメハ「いいんです。本当に。

    おれのことを、これから生まれてくる子どもたちは知らないかもしれないけど」

 

ザメハ「小さい頃からやってるドラクエユーザーは、覚えていてくれる。

    キアリクの効果をみて、ザメハと効果が統合したんだな。

    そう感じてくれるだけで、もう十分俺は報われています」

 

ギラ「……くっ!」

 

ザメハ「さよなら、ギラ先輩。俺は世代じゃなかったけど

    ……雷呪文の時のあんたが、すっげー好きでしたよ」

 

ギラ「待て、ザメハ! ザメハぁああ!!!」

 

 

ギラ(こうやって……どんどん呪文が消えて、生まれて……)

 

 

ギラ(何を考えてるんだよ……エニックス……)

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

――

 

 

 

 

スクエニ「えー次のジョーカーでは、お前らメイン攻撃呪文を更に進化させるぞー」

 

メラ「おお!」

 

スクエニ「メラガイアー、イオグランデ、ギラグレイド、バギムーチョ、マヒャデドス。以上だ。頑張れよ」

 

メラ「メラガイアー……これでボクも、遂にカイザーフェニックスを超えるメラ系になれるってこと?」

 

イオ「またMP消費が問題でって渋られるのかなぁ……」

 

ヒャド「バギムーチョてwwwカラムーチョかよwww」

 

バギ「うるっさいwww

   あんたも、マヒャドデスじゃなくて微妙に言いづらいじゃないwwwwドスてwwモンハンwww」

 

ギラ(……また、ここにもいない奴がいるんだな……ボミオスとかは何だかんだで残ってるけど……)

 

ギラ(俺は……お前たちに会いたいよ。レミーラ、ザメハ)

 

ホイミ「なんか、また大変なことになっちゃったねー」

 

ギラ「ホイミ」

 

ホイミ「私はなんか、調整だー! って、べホマなしなんだってさ」

 

ギラ「え?」

 

ホイミ「べホマズンも、完全回復じゃないんだってさ」

 

ギラ「そんな……」

 

ホイミ「だいじょーぶだよ。一度はラスボスすら使ってくる有名な呪文なんだもん

    それにね、FFでいうリジェネみたいな効果のも使えるようにしろー、って言われちゃったし。

    まだまだ期待されてるからさ。」

 

ギラ「……」

 

ホイミ「だから、安心してね。ギラくん。私は、ずっと君と一緒だよ」

 

ギラ「……ありがとう、ホイミ」

 

 

ドラゴンクエストモンスターズシリーズ

 

個性豊かな、本来敵であるべきモンスターを仲間に従え遊べるドラゴンクエスト外伝

 

漫画からの逆輸入なども積極的に行う、とくぎの豊富さが売りでもある大ヒットゲーム

 

昔、出場停止勧告を言い渡された呪文の再稼働チャンスでもある、救済策

 

肩を落とし、地面とにらめっこしていた呪文も拾い上げられ、人気となり

 

再びナンバリングシリーズに復活を果たした呪文も少なくはない

 

それほどまでに効果は絶大だった。

 

 

だが、逆を言えば

 

そこですら使われないということは

 

もう、二度と……

 

 

 

 

 

 

年々、製作期間の伸びているナンバリングタイトル

 

 

それだけ準備期間があり、また呪文たちへの勧告もずっと早い

 

 

その日もまた、作品の目途が立ち、呪文たちがスクエニ本社に集められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ⅸ呪文発表会

 

 

 

 

 

 

スクエニ「今度はモンスターズシリーズから、最上級呪文をそのまま出すぞ。覚悟しとけー」

 

ヒャド「バギムーチョさんちょりーっすwwww」

 

バギ「うるっさいwwww」

 

メラ「バーン様のメラって呪文でないかなぁ」

 

イオ「まぁた雑魚一掃役かー」

 

 

ギラ(……あれ?)

 

ギラ(あれは、まさか……)

 

 

ザメハ「……」

 

ギラ「ザメハ!!」

 

ザメハ「あ、ギラさん!」

 

ギラ「どうしたんだよ、また復活できたのか!?」

 

ザメハ「いやー、キアリクの奴に嫌われちゃいまして……」

 

キアリク「何言ってんのよ。あなたが、何度もスクエニに抗議したおかげじゃない」

 

ザメハ「あっ、こら。」

 

キアリク「この人、7、8の間もずーっと訴えていたんですよ。

     先入観のある人は、キアリクで目が覚めるなんて知らないはずだ、って」

 

ザメハ「実際、やっぱりそうだったようでして。結果として、なんとか……。

    場合によっては、またキアリクの世話になることもありますがね」

 

ギラ「ああ、良かったよ。本当に……良かった……」

 

 

 

 

 

 

 

 

スクエニ「あー、ギラ。ギラはいるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギラ「? なんだろ」

 

ザメハ「ギラさん、また一緒に冒険しましょうね」

 

キアリク「私達夫婦の活躍、見ていただきたいですから」

 

ギラ「ああ。わかってるよ」

 

 

 

 

コンコン

 

スクエニ「入れ」

 

ギィ

 

ギラ「失礼します」

 

ギラ(……ん?)

 

ドルマ「……」 ペコッ

 

 

スクエニ「まあ座ってくれ」

 

ギラ「何でしょう」

 

スクエニ「……ギラ、お前はどういう呪文だ?」

 

ギラ「え? それは、火炎で相手グループにダメージを与える呪文です」

 

スクエニ「そうだな。習得レベルやスキルも低い、使い勝手のいい呪文だ」

 

ギラ「若干弱いおかげで、アイテムに付与されることも多いですからね。

   それが売りなんで、今まで頑張ってこれましたが。」

 

スクエニ「ああ。そうだな」

 

 

スクエニ「君は実に……そう、Ⅰからずっと……頑張ってくれたな」

 

 

ギラ「はい。これからも、そのつもりです」

 

スクエニ「……この子、新人でな。ドルマという。新しい属性である、闇を担当するんだ」

 

ドルマ「どうも……」

 

ギラ「はぁ」

 

スクエニ「それで……だな」

 

 

 

 

 

 

スクエニ「今度のシリーズ、ギラは出ないことになったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

ギラ「……」

 

 

ギラ「え?」

 

 

スクエニ「全体呪文としては、既にヒャドやバギ、イオがいる。

      彼らはそれぞれ属性が違うから、上手くバランスをとってやっているが……」

 

スクエニ「ギラのみ、メラと属性が被るんだよ」

 

ギラ「でも、俺は全体化でメラは単体特化。棲み分けは出来ています」

 

スクエニ「それでもな……見栄えとして、少し問題があるんだよ」

 

スクエニ「呪文が一番使われる場面って、いつだかわかるか?」

 

ギラ「……ボス戦ですか?」

 

スクエニ「そうだ。ボスというのは、たいていは一匹だな?」

 

ギラ「ええ、まあ。仲間を従えているのも居ますが」

 

スクエニ「その場合だな。ギラは圧倒的に使われないんだよ。

     弱点をつく場合に、ボス戦でギラは使われない」

 

スクエニ「ダメージの高い、メラをみんな使うんだ。テンションシステムを使っても、もちろんな」

 

ギラ「……」

 

 

ギラ「……つまり、なんだよ」

 

ギラ「俺も……他の呪文と一緒で」

 

ギラ「使えないから、使われないから」

 

ギラ「次の世代を育てるため……お払い箱にするってことかよ」

 

スクエニ「こちらとしても、手放すのが惜しいが……容量の問題もあってね……」

 

ギラ「ふざけんなよ!! 少ない文字を駆使してダークドラゴンをダースドラゴンと表記したり!!

   へ を平仮名カタカナ併用したりした、あんたらの熱い制作魂はどこいったんだよ!!!」

 

ギラ「そんな自分勝手な都合で!!! 簡単に呪文を消してもいいのかよ!!!

    俺のことが好きな子どもは!! 

    ハドラーやアルビナスの気持ち考えたことあんのか!!??」

 

スクエニ「……悪いが、既に決定している。君は今後、モンスターズに出てくるのが関の山だろう」

 

 

スクエニ「ナンバリングシリーズに置いて、一切出番はないと思っていてくれ」

 

 

ギラ「ッッッ!!!!!」 ギリッ!!

 

 

 

バァン!!!

 

 

ダダダダダ……

 

 

 

ドルマ「……泣いてましたね、あの人」

 

スクエニ「まったく、ドアも閉めずに出ていきおって」

 

ドルマ「……本当に、わたしで良いんですか」

 

スクエニ「属性の概念を一新するためだ。君が不安を覚える必要はない」

 

ドルマ「でも、わたし……あんな立派な人になれる自信はないです」

 

スクエニ「……」

 

ドルマ「ギラなんて正直、昔からいるだけの老害かと思ってたんですけど」

 

ドルマ「少なくとも、今のあなた方よりも、ゲームを知っている人でしたね」

 

スクエニ「自分の首を絞める発言は慎みなさい」

 

ドルマ「……すみません」

 

 

ダダダダダ……

 

ギラ「くそっ……くそっ……くそっ!!」

 

ホイミ「ギラ!」

 

ギラ「!」

 

ピタッ

 

ギラ「なんだよ……ホイミか」

 

ホイミ「ごめん……その……話、聞こえたんだ」

 

ギラ「……そっか。なんだ、笑いに来たのか?

   初代からいるくせに、デインにお株を奪われた後は遂にリストラって、とかよ」

 

ホイミ「そんなことすると思う?」

 

ギラ「……」

 

 

ホイミ「あたしね、ギラが好きだよ」

 

 

ギラ「え……?」

 

 

ホイミ「だって、イオより早く覚えるし、メラより使い勝手いいし、

    バギより安定してるし、ヒャドより活躍するんだもん」

 

 

ホイミ「そんな、キミが好き」

 

 

ギラ「……」

 

ホイミ「ね、ギラ。レミーラのこと、覚えてる?」

 

ギラ「忘れたことないよ」

 

ホイミ「でしょ? おんなじなんだよ」

 

ホイミ「もう会えないかもしれないけど、あたし達はずっと忘れない」

 

ホイミ「レミーラも、二フラムも、アバカムも、レムオルも、フローミも、マホステも、

    マジャスティスも、ギガジャティスも、コーラルレインも

    メイルストロムも、マホアゲルも、ペスカトレも」

 

ホイミ「いつだって、あたしたちと一緒に居る。

    共に戦って、使って、敵を倒し、時に主人公をやっつけた記憶は残る」

 

ホイミ「だから……」

 

ギラ「……ありがとう、ホイミ」

 

ギラ「今度、ベホイムとかいうのも覚えるんだろ?」

 

ホイミ「あ、うん。魔力の設定もあるみたいで、

    能力値で回復量も変わるんだって。攻撃呪文も一緒だよ」

 

ギラ「……そんな世界で、使ってみて欲しかったな」

 

ホイミ「ギラ……」

 

ギラ「あっはっは。まぁ仕方ないさ。そういう時代の流れだ」

 

ギラ「良いんだ。前に、ザメハが言ってた。覚えていてくれたらそれでいいって」

 

ギラ「だから、俺もそれでいいんだ。

    忘れないで、あったことを……そこに居たことを覚えてくれていれば」

 

ホイミ「……」

 

ギラ「それに、スクエニはリメイク大好きだからな。

    どーせ、また呼び寄せられるよ。だから心配すんな」

 

ホイミ「わかってるよ」

 

ギラ「……じゃ、またな」

 

ホイミ「……うん。またね。絶対、またね。だからね」

 

ギラ「ああ」

 

 

 

 

 

 

生まれては消え、消えては生まれる呪文

 

どんなダメな威力でも、使い道のなさそうな仕様でも

 

きっと一度は、誰かがどこかで使ったことはあるはず

 

コントローラーや携帯機を投げたくなるような効果であっても

 

呪文は、書かれた内容を完遂する。

 

決して、彼らが裏切ることはない。

 

 

 

 

だから忘れないでください

 

シリーズを支えていた呪文のことを

 

初代からずっと使われた、呪文を

 

 

 

 

 

 

ギラ「攻撃呪文です。よろしくおねがいします」

 

 

 

 

 

 

おしまい




ダイの大冒険がリメイク中なので、どうしてもこの作品が忘れられず再投稿しました。
皆さんも、テレビ東京系列にて毎週土曜朝9時30分に放映されている「ダイの大冒険」を見ましょう!


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