幻覚がゴジラがないので漫画を描けとか言ってくるので悩んでいる   作:袴紋太郎

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お久しぶりです

たぶんあと2話か3話くらいですね


最後までやるのが筋だ

 

連休で家に篭ってる伊月ちゃんの様子を見に来たんですが。

 

『なにこれ、オーラが出てる』

 

うん、なんかこう澱んだダークなオーラが部屋の前から漏れ出てるよ。

 

周りに人がいないかだけ確認。

 

そーれ、ピンポーン。

 

伊月ちゃーん、生きてる、よねー(汗

 

『救急車呼ぶ準備だけしとくか』

 

「あ~い」

 

生きてはいるようだ、ゾンビみたいな声してるけど。

 

しつれーします。

 

 

……

 

………え、ここJKの部屋だよね?

 

『うっそだろ、最低限の家具しかねぇぞ』

 

ミニマリストでござったかー

 

伊月ちゃんは…あらら、なんて色気のない格好で突っ伏してるんだか。

 

ちょっとー嫁の貰い手無くすわよあんた!

 

「そのときはせんせーもらってくださいよー」

 

馬鹿言ってないでほら、牛丼買ってきたから食べなさい。

 

「ごはん!」

 

モリモリ食べる伊月ちゃんを横目に、書きかけの原稿を覗く。

 

うん、相変わらず流石の書き込み料。

 

Gペンじゃなくて、ペンタブの方がよくない?

 

『紙とインク代も馬鹿にならねぇしなぁ』

 

「いやー慣れてる物が一番いいというか、中々切り替えられなくて」

 

そこは個人の好き好きだしねぇ(パラパラ

 

あーやっぱり怪獣漫画に近いか。

 

「う、マズイでしょうか」

 

いやいや、他のアッシーズもこんな感じだしね。

 

…最近思うよ、描きたい漫画と売れる漫画は違うって。

 

今更別方向にーってのは、うん、無理だね、勇気が出ないや。

 

「―――先生、どうしてガメラやモスラも描こうって気になったんですか?」

 

いきなりどしたの。

 

「だって先生、考案やネタ帳だけでそれ以上描こうとしなかったし、なんでかなって」

 

………出てきてくれないかなぁって。

 

「誰がです?」

 

原作者。

 

「原作者って、ゴジラの!? 居るんですか!」

 

『いるぜ! 別の世界にな!』

 

いやまぁ、うん、そうね、うん。

 

いるなら、知ってるなら、名乗り出て、教えて欲しいんだよね…名前。

 

分からないんだ、これが。

 

肝心の名前を聞こうとしても、ノイズが走って分からなくなる。

 

キーボードやら絵の頭文字、果てはモールス信号まで試した。

 

なのに、何故か途中から認識出来なくなる。

 

他の人に頼んでも同様、まさしくオカルトだ。

 

盗作扱いなら、それでいい。

 

裁判だろうがなんだろうが受けるべきさ。

 

これ以上、このコンテンツを自分のオリジナルだと言い張るのは、しんどい。

 

佐々木さんの事を私はどうこう言えないんだよ。

 

私は…私たちは幽霊(ゴースト)書き手(ライター)なのだ。

 

名誉を独占するのは、許されない。

 

『…』

 

「もし、もし現れなかったら、どうするんですか」

 

事実を公表しようかなぁ、あはは連載ストップで漫画界追放かも。

 

「それはダメですよ」

 

ダメかな。

 

「ダメです」

 

どうして?

 

「だって【ゴジラを実写化】してないじゃないですか」

 

「先生が言ったんでしょ、夢は実写化だって」

 

「筋を通してください、最後までやりきって作品に向き合う…それが先生の責任です」

 

筋、か。

 

そうだね、うん。

 

書ききるのが、筋だ。

 

ねぇ伊月ちゃん、こんな感じに言われて恐縮なんだけど。

 

「はい!」

 

ウルトラマン見たでしょ? たぶんアレが最有力だわ悪いけど。

 

「んぎゃー!」

 

作業机に突っ伏す伊月ちゃんに、めんごめんごと。

 

筋、うん、筋だ…ちょっくら、様子見に行くかね。

 

今週号の、読者人気が下がったホワイトナイトのジャンプを手に取る。

 

一度、本気で話してみよう。

 

 


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